MacBookファーストインプレッション
~随所に見られるこだわりと改善点



手前がMacBook、奥は2003年秋に購入したPowerBook G4の梱包箱。スリムになって持ち帰りが容易になった。最近はMac OS XのパッケージもCDサイズになるなど、梱包のコンパクト化も進んでいる

 日本時間16日夜に製品発表された「MacBook」。17日にはアップルストア銀座をはじめ一部量販店店頭などでも販売が開始され、いち早く手にしたユーザーも少なくないようだ。編集部でもローエンドの1.83GHzモデルを店頭で購入。今回はこの製品を使って、MacBookのファーストインプレッションを行なう。

 製品はアップルストア銀座にて購入。本体価格は134,800円だが、512MBの純正メモリを2枚購入し、その場で換装を依頼している。おまけとして.Macのパッケージがついた。

 伝票上はそれぞれが値引きによって調整されているが、支払総額は本体とメモリ2枚を表示価格相当で買った場合と同じ158,740円。オンラインのBTOを使えば、あらかじめ搭載されている256MB×2との交換になるので146,770円で済むのだが、いち早く手に入れるのも仕事のうちなので仕方がない(オンラインでは納期が3~7日)。

 ちなみに筆者は個人でも2.0GHzのブラックをBTOでオーダー済み。未着だがこちらはメイン機材のリプレース機として購入しているので、いずれ機会があれば移行プロセスや利用環境などをまじえて紹介する。

 量販店でも同等メモリはほぼ同価格で販売されている。メモリのポイント還元率は15%前後、本体の還元率が5%前後であることから、ポイントを現金値引きと考えられるユーザーなら出費はBTOとほぼ同レベルと見ていいだろう。店頭購入でメモリを増設する場合は、現実的な再利用の方法があるかどうかは別にして、手元に2枚の256MB DDR2メモリが残ることになる。

 MacBookの主な仕様を、15型MacBook Proと従来モデルの12型iBook G4それぞれと比較すると下記の表のようになる。今回の評価機とあわせてローエンドモデルで比較した。

【表】スペック比較
 MacBook15型MacBook Pro12型iBook G4
発売時期2006年5月2006年5月仕様2005年7月
CPU(クロック周波数)Core Duo(1.83GHz)Core Duo(2.0GHz)PowerPC G4(1.33GHz)
システムバス667MHz667MHz133MHz
搭載メモリ
(標準メモリ/最大メモリ)
DDR2 667MHz
(512MB/2GB)
DDR2 667MHz
(512MB/2GB)
DDR 333MHz
(512MB/1.5GB)
内蔵HDD60GB
(シリアルATA 5400rpm)
80GB
(シリアルATA 5400rpm)
40GB
(ATA 5400rpm)
光学ドライブCD-RW/DVD-ROMDVD±RW/CD-RWCD-RW/DVD-ROM
GPUIntel GMA950ATI Mobility Radeon X1600ATI Mobility Radeon 9550
ビデオメモリメインメモリ共有128MB32MB
インターフェイスUSB 2.0×2
FireWire 400×1
USB 2.0×2
FireWire 400×1
USB 2.0×2
FireWire 400×1
AirMac Extreme標準搭載標準搭載標準搭載
Bluetooth 2.0+EDR標準搭載標準搭載標準搭載
ネットワークGigabit EthernetGigabit EthernetEthernet
内蔵モデムなしなし56K V.92
本体サイズ
(幅×奥行き×高さ)
325×227×27.5mm357×243×25.9mm285×230×34.2mm
本体重量約2.36kg約2.54kg約2.23kg
AppleStore価格134,800円249,800円119,800円

●メモリは同スペック、同容量を2枚セットで増設

 来日中の米Apple Computerハードウェア担当副社長であるデビッド・ムーディ氏によれば「同スペック同容量のメモリ2枚セットによる増設を強く推奨する」とのこと。言うまでもなくデュアルチャネルによる性能的なメリットを得るためだが、特にその効果はGPU性能において顕著に表れるという。

 実際、メインメモリを共有するGMA950を利用するMac miniおよびMacBookにおいては、標準仕様はもちろん、BTOプランにおけるコンフィグレーションでもすべて2枚セットの構成が取られている。一方で専用のグラフィックメモリを有するATI Mobility Radeon X1600を採用しているiMacとMacBook Proのコンフィグレーションでは、標準仕様でメインメモリは1枚差し、さらに1枚単位の追加も可能となっており「(GMA950の)GPU性能において顕著な効果」という言葉を裏付けるものとなっている。

 そのメモリスロットへのアクセスは、まず本体底面のバッテリを外す。従来製品同様に、コインなどを使ってバッテリのロックは解除できる。バッテリが外れればプラスネジ3個が見えるので、それを緩めてメモリスロットのカバーを外す。レバーは取り外し用で、取り付けはレールに合わせて押し込めばいい。レバーの使い方と、メモリの切り欠きを示して押し込む方法を記した説明書きが本体内に貼られているので、決して難しい手順ではない。

バッテリを外すと、中にメモリ交換手順を記した説明書きが貼られている メモリとHDDのカバーは、3本のプラスネジでネジ止めされている。精密ドライバーで外そう。ネジは完全に抜け落ちないよう工夫されている レバーを手前に引くと入っていたメモリが外れる。取り付けるときはレールに合わせて指でメモリを押し込んでやるようにする

 アップルストアでの購入時は1時間程度待ったということだが、これは混雑による順番待ちや取り付け後の動作確認なども含めたもので、実質的な作業時間は5分とかからないだろう。ユニバーサルバイナリへの移行過程である現在、サードパーティ製アプリケーションの多くは、Rosettaによるバイナリトランスレートに頼らざるを得ない状況がしばらく続くことになる。Rosettaでは一般的にメモリに余裕があれば動作速度の向上も図られる傾向があるので、メモリは標準以上にしておくようにしたい。

 びっくりしたのは、同じ手順でアクセスできる内蔵HDDだ。従来のiBook G4やPowerBook G4では、やりたくないことの筆頭が内蔵HDDの交換作業(当然、無保証)で、完全分解とほぼ同義と言えるほど面倒な手順だった。しかし今回は前述のカバーを外して、HDDについているベロを引っ張ればスルリと抜ける簡単さ。マウンタの取り外しと取り付けは必要だが、こちらも交換には5分とかからないだろう。この簡単さを知っていれば、個人用途のブラックもBTOのお世話にならずに済んだはずと、ちょっと後悔しているぐらいである。

内蔵HDDはここにある。iBooK G4などの分解経験者であれば、このアクセスの良さはびっくりすると同時に、涙が出るほど嬉しいはず 爪楊枝か何かでベロを起こし、そのまま引き出してやると簡単にHDDが取り出せる 取り付けにはマウンタが必要で、このマウンタの取り付けにはトルクスネジが使われていた

●マグネット式の開閉機構は“頑丈さ”の向上にも寄与

 インターフェイス類は向かって左側面に集中している。ACアダプタはMacBook Proから採用されている「MagSafe」による接続だ。MacBook Proでは85Wタイプだが、MacBookでは60Wタイプとなっている。個人的には、利用機会の多い航空会社で採用されている機内シート電源の上限が60Wということもあって、大いに歓迎すべき点だ。

 Mini-DVIコネクタは別売のアダプタを介して、DVIあるいはVGA、コンポジット、Sビデオへの外部出力が可能。ミラーリングのほか、拡張デスクトップとして外部ディスプレイを利用する場合は最大1,920×1,200ドットの表示が可能となっている。

 ほか、USB 2.0×2ポート、FireWire 400×1ポート、Gigabit Ethernet、光デジタル/アナログ兼用のオーディオ入出力を備え、インターフェイス類は15型MacBook Proと比べても遜色がない。唯一とも言える違いはExpressCard/34スロットの有無だ。

 光学式ドライブは右側面にスロットローディングタイプが搭載される。評価機ではCD-RW/DVD-ROMコンボドライブだが、上位機にはDVD±RWをサポートするSuperDriveが搭載される。ただしSuperDrive搭載モデルでも2層書き込みには未対応。現時点ではポータブルタイプで2層書き込みをサポートするのは、17型MacBook Proのみである。

インターフェイス類は向かって左側面に集中している。15型MacBook Proと比べても遜色がない 光学ドライブは右側面にスロットローディングタイプが搭載される。評価機はCD-RW/DVD-ROMコンボドライブだが、上位2モデルにはSuperDriveが搭載される 電源はMagSafeによる接続。充電中はオレンジで転倒しているが、満充電状態になるとグリーンの点灯へと変わる

 外装表面の質感はホワイトモデルの場合、iBook G4の最終型とほぼ同じである。ワイド仕様になったことと格段に薄くなったことで、見た目のスッキリ感は増した。いっぽうでそのスッキリ感から来る印象のまま手に取ると、見た目以上の重量感(2.36kg)にちょっと驚かされることになる。

マグネットは液晶パネル側、左右両端に内蔵されている。わかりやすくするためわざとクリップをくっつけているが、利用時はうっかり何かくっつけたりしないように

 すでに紹介されているようにMacBook本体にラッチはなく、マグネット式の開閉機構を採用している。'99年に発表されたクラムシェル型の初代iBookにもラッチはなかったが、バネを使ったパネルの固定を行なっていたため、パネルを閉じる最後の瞬間は、まさに貝のごとくパクッとされたのを覚えている。MacBookのパネル開閉ではそういったこともなく、スムーズな開け閉めが行なえる。

 クリアワイドスクリーンの採用については好みが分かれるところだろう。Windows搭載のPCではすでに見慣れた感もあるが、Macでは初採用だ。映り込みはある程度抑えてあるとされるが、やはり少なからず存在するし黒い画面では顕著となる。上下左右の視野角も決して狭いとは言わないが、実用になる範囲はそれなりに限られている。DVD鑑賞に適しているとされるクリアワイドスクリーンだが、あくまでパーソナルユース向けで、何人ものユーザーが一斉に覗きこむようなものでもないということだろう。

 MacBookの発表とあわせて、MacBook ProのBTOにもクリアワイドスクリーンの選択肢が加わった。しかしMacBook側には従来型の反射を抑えたスクリーンの選択肢はない。これについてムーディ副社長は「MacBook Proは、プロフェッショナルユースをメインターゲットとしているため、選択肢を多様にすることでプロとしての繊細なニーズに応えるため」と、想定するユーザー層の違いを挙げた。

 MacBookがiBook G4の後継としての役割を果たす以上、米国の教育市場における需要は重要だ。求められるのはいわゆる“頑丈さ”である。仮に低学年の児童たちが乱暴に扱っても壊れにくい強さが要求される。これまでのiBookは初代のクラムシェルデザインはもとより、前モデルも本体にそれなりの厚みがあったことで、見るからに頑丈さを意識できた部分がある。

 今回はMacBook Proに匹敵するほど薄くなったわけだが、ムーディ副社長は本体自体は薄くなっても素材(ポリカーボネート)自体の頑丈さは変わっていないこと、ラッチを廃したことで機構的な破損の可能性をなくしたこと、キーボードの取り付け構造を変えて強度を高めていることなど、設計による“頑丈さ”が図られていることを紹介した。

 ほかにも、MacBook Proから採用されているMagSafeで、不用意にコードを引っかけることによる落下事故を抑制したり、前モデルまでは取れやすいと指摘の多かった本体底面の足を、本体内側から固定する仕組みに変えるなど、トータルでの取り組みが行なわれている。

 これまでのポータブル製品と大きく違うのは、キーボードの取り付け構造にもある。従来まではパームレスト部分を含むパーツに1つ大きな穴があいていて、そこに各国向けのキーボードユニットをはめ込む構造が採られていた。しかし、MacBookではこのパームレスト部分のパーツにキー個々の穴が開いていて、カバーの下からキーが出ている構造だ。これは前出の頑丈さを高めることに加えて、児童によるキートップを外すなどのイタズラを抑止する目的もあるという。

 個々のキーにはテーパーがない。また従来はアールが付いていたキートップ表面もほぼフラットになっている。ちなみにテーパーがないため小さく感じるが、キートップ自体の面積は他のポータブル製品とほぼ同じである。キータッチは悪くないが好みは分かれる。個人的には「やや慣れが必要か」と感じる部分はあるが、いずれは吸収できる要素とたかをくくっている。

●ワイド化されたトラックパッドは便利だがときに不便

 気になるのはトラックパッドの配置だ。MacBook Proに続いてワイドタイプのものが採用されている。同社のポータブル製品は伝統的にセンターぴったりにトラックパッドが配置されているのが特徴。ご存じのとおり、JISキーボードではUSキーボードに比べてホームポジジョンがやや左にオフセットされる。従来から両手をホームポジションに置いた際、トラックパッドが両手の中間に来ることはなく、相対的に右寄りとなっていた。ちなみにUSキーボードでもJISキーボードほどではないにせよ、やや右寄りとなる。

 それでも“慣れ”の要素も含めて実用面での影響は少なかったのだが、今回ワイドタイプになったことで、影響が拡大している。もちろんキーの打ち方にもよるのだが、いままではパームレストのはずだった右手親指付け根の直下がトラックパッドになってしまうことで、使用中に何度か触れてしまうことがある。

 もともと、トラックパッドの位置については左へオフセットすべきだと考えている。実際、同社のエクゼクティブと会いキーボードについて語った際に、何度か話をしたこともある。現在の配置になっているのはデザイン的な理由も大きいが、もう1つはこれまでの製品がワールドワイド共通の仕様と言うことで、パームレスト部分のパーツが単一だったことも影響している。

 しかし今回は個々のキーにハメコミ穴を持たせた構造のおかげで、パームレスト部分のパーツはJISキーボード対応のほぼ日本市場向けとも言っていい独自パーツとなっているはずである。それなら、いずれトラックパッド部分を左側へとオフセットすることも可能なのではないだろうか。

 大きな期待をこめて、ムーディ副社長にはトラブルの実演もまじえてリクエストをしておいた。笑いながら「大いに参考にする」とは言っていたものの、果たしてどうなるかは分からない。実際、筆者が進言した程度でなんとかなるものなら、とっくになんとかなっているはずなので、いかんともしがたいのが……。マイナーチェンジを経て、いずれはトラックパッドのオフセットが実現することを期待するしかないだろう。

キーボードとトラックパッド。いままでにないタイプのキーボードは、人によっては慣れも必要かも知れない。個々のキーは小さく見えるがキートップの面積は従来製品とさほど変わらない ホームポジションに指をあわせるとこうなる。右手親指付け根の直下にトラックパッドとクリックボタンが位置することが分かるだろう MacBook Proと同様、iSightカメラを内蔵。稼働時は右にグリーンのLEDが点灯する。左に見える穴はマイクだ

 最後に、まだ手元に来ていないハイエンドモデル、2.0GHzのブラックについても触れておこう。標準仕様においてミッドレンジに位置する2.0GHzホワイトとの違いは、搭載HDDの容量のみとなる。前者が80GB、後者が60GBだ。アップルストアのBTOによって、ホワイトの2.0GHzを80GBに仕様変更した場合の価格は166,100円。ブラックとの本体色の違いによる価格差は、13,700円と計算される。

 約14,000円のプレミア度は確かに本体色にあるらしい。ホワイトが表面をポリッシュに仕上げてあるのに対し、ブラックはマットな質感へと加工されている。黒色は塗装ではなく、素材自体が黒いため仮に傷がついても地色が見えることもない。ポリカーボネート素材の価格自体も黒のほうが高いようだ。さらに各種コネクタ部分の内側や、スロットローディングの光学式ドライブの埃進入防止の布までが黒で仕上げてある。こうしたこだわりの部分が、プレミア価格として乗っけられているというわけだ。

 ムーディ副社長は、2.0GHzのブラックは特に12型PowerBook G4の後継として既存ユーザーにお薦めの製品だと言う。また「Macのポータブル製品を、すべてCore Duoを搭載する完全なラインナップとして移行させることを完了した」と明言した。これはデスクトップ製品、独立したディスプレイ製品を含め、すべてのMac関連製品がワイドスクリーンとなったことも意味している。

□アップルのホームページ
http://www.apple.com/jp/
□製品情報
http://www.apple.com/jp/macbook/macbook.html
□関連記事
【5月18日】【大河原】MacBookキックオフインタビュー
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2006/0518/gyokai160.htm
【5月17日】アップル、13.3型ワイド液晶のCore Duoノート「MacBook」
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2006/0517/apple1.htm

(2006年5月19日)

[Reported by 矢作晃]

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