元麻布春男の週刊PCホットライン

価格を超えたMacBookの魅力




●同日発表だったVAIOとMacBook

 4月16日、またもやソニーとAppleの新製品発表が重なった。2005年の9月8日、両社はデジタル音楽プレーヤーである「ウォークマンA」シリーズと、「iPod nano」をそれぞれ発表したが、今回はソニーとAppleがそれぞれノートPCを含むPCの新製品を発表した。前回と異なるのは、今回はソニーの方が発表順が先立ったこと、そして両社の新製品が直接競合するものではなかったことだ。

 先出しとなったソニーの新製品は、Blu-ray Discに対応したノートPC(VAIO type A)とミニタワーPC(VAIO type R)、それから手のひらサイズのモバイルPC(VAIO type U)。方向性は異なるがいずれも「尖った」製品であり、現時点でのボリューム市場を狙った製品ではない。

 方向としては、VAIOの将来的なイメージを牽引するような製品群である。ターゲットは、先進的な(先物買いの)個人ユーザーであり、法人用途はほとんど意識していないと思う。言い換えれば、個人が指名買いする製品であり、他社製品と比べてどうの、という製品ではない。

5月16日に発表されたソニー「VAIO type A」(左)、「VAIO type U」(中)、「VAIO type R」(右)

●ボリュームゾーンを狙ったMacBook

MacBook

 それに対し、Appleが発表した「MacBook」は、従来のiBookの置き換えとなる、ボリュームゾーンのど真ん中を狙った製品だ。とはいえ、一部の制作/クリエイト系を除いて、法人需要に強いとはいえない現在のAppleのこと、企業の一括大量導入を意識しているわけではないだろう。ターゲットとなるのは、メインストリームの個人ユーザーと、同社が得意とする教育市場(特に米国の)だと考えて間違いない。

 従来のMacは、市場の主流とは異なるOSを採用しているがゆえに、購入時に他社製品と比べられることはなかった。ボリュームゾーン狙いであっても、実際は指名買いしかないという、ある意味特異な製品である。

 たとえば、メディアでの「夏商戦向けPC」といった特集に、Windowsマシンと同列にMacが取り上げられることはほとんどなかった。これがメディアによる露出機会の減少を招き、製品の実体が知られることなく、ますます指名買いする一部のユーザーのもの、という色彩が強まっていく。

 当然、市場シェアは減少し、サードパーティ離れや、市場標準からの乖離を招く。アプリケーションソフトウェアの種類でWindowsには大きな差をつけられてしまったし、インターネットコンテンツの利用という点でも大きなハンデを背負っている(特にわが国における動画コンテンツではその傾向がある)。

 こと音楽配信ということでは、AppleのiTunes/iPodが大きなシェアを握ることでMacユーザーは孤立せずにすんだが、それもiTunes/iPodのWindows対応なくして現在のシェアはなかっただろう。iTunes/iPodのWindows対応を行なうという決断は、Appleを救った(主に利益という点で)し、Macというプラットフォームも結果的に救ったのかもしれない。

●価格だけではないMacBookの強み

 今回MacBookに注目が集まったのは、

1. Intelプロセッサに切り替えて、初めての値頃なノートPCであること
2. BootCampによりWindowsが利用可能になったこと

の2点からだろう。1は、PC市場に占めるノートPC比率の高いわが国では特に重要なことだ。

 確かに、MacBookの価格は市場で最も安価なものではない。が、Intel Core Duo 1.83GHz以上を搭載したノートPC、という範疇では間違いなく最も安価な部類に入る。Mac miniでは採用したIntel Core Soloプロセッサ、あるいは最近追加されたYonahベースのCeleron Mプロセッサ(プロセッサ・ナンバ400番台のもの)を用いれば、もっと安価なMacBookも作れたハズだが、Appleはその道を選択しなかった。

 今回の発表に合わせて来日した、同社のワールドワイドハードウェアプロダクタメーケティング担当バイスプレジデントであるデビッド・ムーディ氏によると、こうした安価なプロセッサでは、求められる性能要求に応えられない、ということであった。ならばなぜMac miniにはCore Solo搭載モデルがあるのか、と突っ込みたくもなるが、Mac miniとMacBookではプライスポイントが異なる(599ドルのMac miniと、1,000ドルオーバーのMacBook)ということなのだろう。

 ただし、安価なボリュームゾーン向けのノートPCだからといって、MacBookの質感は決して悪くない。むしろ、このクラスとしてはトップクラスと呼ぶべきだろう。特にマットブラックの黒は、引き締まって小さく見える。白の上位モデルをBTOで80GB HDDにしてスペックを揃えても、なお13,700円の価格差が生じることからして、黒はプレミアムカラーという扱いのようだ。

 これだけ違うのだから、黒には強度などのメリット(カーボン入り、というわけではないだろうが)があるのかとたずねてみたが、黒の方がクールに見えるだろ、とかわされてしまった。

 質感の良さは、ディテールにも行き届いており、コネクタ底部や光学ドライブのスリット部から見える部分も含めたカラーコーディネイト、ポリカーボネート素材自体に着色したことにより傷がついても他の色(素材色)が露出しないことなど、十分な配慮がなされている。傷など手荒に取り扱われても大丈夫な仕様は、子供が利用する教育市場を意識してのもので、キートップが外れにくい一体型のキーボード、交換が容易になったHDD、とれやすいゴム足はやめモールド成形の足を採用した底面など、いたるところに配慮が見られる。

 HDDの交換はリチウムポリマーのバッテリパックを取り出し、シールドを外して行なうが、ユーザーによるHDDの交換や将来の大容量ドライブへのアップグレードをふまえたものではない、という。実際、現在入手できないドライブをMacBookで利用できるかについて、現時点では答えようがない、ということであった。

ホワイトモデルはコネクタ内部まで本体と同色で統一 底面はモールド成形の足を採用 バッテリ部分のアップ

 ちなみに、このバッテリベイ内のシールドは3つのネジで固定されているが、ネジがシールドから外れて紛失しないようになっている。このシールド内にはメモリスロットもあるが、メモリの増設(ディスプレイメモリがメインメモリと共有になるMacBookでは、2つのスロットに同じモジュールを2枚挿してデュアルチャネル構成にすることが推奨されており、実際には増設というより交換になる)はユーザーで行なうことが想定されている。こうした目に見えない部分の質感も良好だ。

 MacBookを実際にどこで作っているのかについて、他のベンダ同様Appleも情報を公開していない。が、台湾のODM/OEMメーカーの中国工場で作っている、というのが今やこの世界の「常識」だ。おそらくMacBookも例外ではないだろう。それでも、これだけの質感が出せて、このスペックのものをこの価格で売れる(しかも多くのPCベンダにはないOSの開発費負担もある)のだから、他のPCベンダも言い訳はできない。質感の低いノートPCは、日本以外の場所で作っているからでもなければ、コストダウンのせいでもない。PCベンダに真剣に質感までコントロールしようという意志がないか、そこまで神経が及んでいないかのどちらかである、ということだ。

 逆に、ここまでやっておきながら、なぜACアダプタやMini-DVI-Videoアダプタのようなアクセサリ類まで同色のオプションをそろえられなかったのかと、言いたくなるほどだ。実際、ムーディ氏は苦笑していたから、おそらく今回の発表で行なったインタビューで面会したほとんどのプレス(相当な数だと推定される)から、同じ質問を受けているのだと思う。

 一方、BootCampだが、本稿執筆時点において、配布されているバイナリにアップデートはない。内部のアーキテクチャは、基本的にこれまでリリースされたMac miniやMacBook Proに準じており、新しいドライバディスクは必要ないということなのだろう。逆に言えば、MacBook Proで非サポートとなっているパワーマネージメント関連機能は、MacBookの時点でもまだサポートされていない、ということになる。8月のWWDC、2007年の早期と言われる「Leopard」の正式リリース時といったマイルストーンで、ドライバサポートの前進があることを期待したい。

 現状のβ版はもちろん、BootCampが正式リリースされたからといって、BootCampによるWindowsの利用を前提にIntel Macを購入するユーザーはそれほど多くないだろう。量販店等でインストールサービスが行なわれれば良いとは思うが、Intel Mac上のWindowsのサポートまで期待するのは難しい。それでもWindowsが動くチャンスがあることで、Macを買ってみようかというWindowsユーザーの心理的な障壁は低くなるだろうし、とにかくMacのハードが売れないことには、Macのプラットフォームのシェアは拡大しない。

●タワー型Macに搭載されるCPUは

 筆者はPC市場全体に占めるMacのシェアが15〜20%あった時期を知っているが、すぐにそれだけのシェアを回復できないまでも、二桁のシェアを獲得することは、プラットフォームとしての生き残りに急務だと思っている。それを実現するのにBootCampがプラスに働くことこそあれ、マイナスに働くことはないだろう。

 今回の発表で、ポータブルタイプのMacについてはIntelアーキテクチャへの移行が完了したとしている。つまり、第1世代のIntelベースのノートPCのラインナップは、これで完成である。もっと薄型/軽量なサブノートタイプのMacを欲する声は、ずっと前(それこそ10年以上前)からあるが、Appleはあまり興味がないようだ。携帯性の高いMacが欲しいユーザーは、3種類の中で最もバッテリ駆動時間の長いこのMacBookを使うほかないだろう。

 これでPowerPCが残るのはいよいよPower Mac G5のみ。すでにオンラインのApple StoreからPowerPCベースのPowerBook、iMac、Mac miniは姿を消した。順当に考えればPower Mac G5の後継となるIntel Macは、デスクトップPC向けのIntel Core 2 Duo(Conroe)を使うことになるのだろうが、意外とXeon(Woodcrest)を使うのもアリかもしれない。

 Power PCからIntelになって、デュアルプロセッサ(PowerPC G5)がシングルプロセッサ(Conroe)になるというのは、性能うんぬんにかかわらず、ジョブスCEOの美学に合致しない気がする。そして何より、Woodcrestの方がConroeよりコア、FSBともクロックが高い(つまりは性能が高い)し、リリースが早い。一刻も早くラインナップの更新を行なうのであれば、Woodcrestの方がふさわしいと思える。

□関連記事
【5月18日】【大河原】MacBookキックオフインタビュー
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2006/0518/gyokai160.htm
【5月17日】アップル、13.3型ワイド液晶のCore Duoノート「MacBook」
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2006/0517/apple1.htm

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(2006年5月19日)

[Reported by 元麻布春男]


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