●超低電圧版Core Solo搭載ノートの活発化 南カリフォルニアが次世代ゲーム機のプレビューで沸いた5月9日、北カリフォルニアのサンフランシスコではHewlett-Packard(HP)がノートPC 7モデルを発表した。うち2モデルは「Pavilion」ブランド(dv2000シリーズ)と「Presario」ブランド(V3000シリーズ)のコンシューマー向けPC。いずれも外装に日本写真印刷の「Nissha IMD」と呼ばれる転写箔を用いたグラフィックスパターンを採用しており、店頭でのアピールを狙っている。
残るビジネス向け5モデルのうち、日本人のユーザーに最も興味深いのは、「HP Compaq nc2400」だろう。12.1型のWXGA(1,280×800ドット)ディスプレイを採用したNapaベースの2スピンドルノートで、最小構成での重量が1.29kgという軽量機だ(この構成には光学ドライブが含まれていない可能性があるが、仮にそうだとして光学ドライブの重量を含めると約1.5kg)。国内にはもっと軽量な2スピンドルノート松下の「Let'snote W」シリーズやソニーの「VAIO type T」シリーズ等も存在するが、米国でこのクラスは珍しい部類に入る。 さらに珍しいのは、nc2400が採用するプロセッサが超低電圧版(ULV)のCore Soloプロセッサ(U1400)であることだ。もちろん米国にULVを採用したノートPCが存在しないわけではない。Dellの「Latitude X1」などULVを採用したノートPCは存在するが、かなり珍しいのではないかと思う。Lenovoの「ThinkPad X」シリーズも、米国での主流はLV版である。
nc2400がULVを採用しただけでも珍しいのに、5月10日からはGatewayもULV版プロセッサを採用したモバイルノート「NX100X」の個人向け販売を開始した。こちらは企業および教育市場向けには少し前から販売していたものだが、個人向けの一般販売もスタートしたということになる。nc2400と異なりNX100Xはシングルスピンドルだが、やはりNapaベース(Core Solo U1300)。12.1型のWXGAディスプレイも共通だが、シングルスピンドルだからといってそれほど軽量なわけではない(約1.4kg)。 とはいえ、ULVのプロセッサを採用した軽量ノートPCが米国の大手と言われるPCベンダ3社から揃うというのは結構珍しい。いよいよ米国人も軽量モバイルノートPCに目覚めたのか、とも思ったのだが、ここで気になるのが先日発表されたIntelのブランドだ。ConroeとMeromには基本的に「Core 2 Duo」しかないという。だが、現時点で提供されているULV版プロセッサ(Yonahベース)は、すべてシングルコアのみ。Meromの世代にULV版はどうなるのだろう。 ●本当のシングルコアCPUへの期待 デュアルコアのMeromでULV版が出るのなら一番良いのだろうが、それならなぜ今のYonahではULVのデュアルコアを出せないのか、という疑問が生じる。現在のCore Soloは、L2キャッシュの容量がデュアルコアのCore Duoと同じ2MBであることから考えて、ダイそのものはデュアルコアと同一で、片側のコアを殺したものだと推定される。 低電圧でデュアルコア動作できないというより、デュアルコア動作させると従来からのULVの熱エンベロープに収まりきらなくなるからシングルコア動作になっているのではないかと思われる。それがいくら日々製造プロセスに改良が加え続けられているといっても、同じ65nmプロセスを用い、EM64Tを含む機能の追加が行なわれるMeromで、急にデュアルコア動作でもYonahのCore Solo並のTDP(5~5.5W)に収まるようになるとは考えにくい。 Intelは間違いなく、シングルコア(ダイ上の片方を殺すのではなく、最初から1つしかコアがないという本来の意味で)のモバイル向けプロセッサを作っているハズだ。その根拠は、将来のUMPC向けに現在のYonah/Meromより劇的にTDPの小さなプロセッサを開発していることを明らかにしているからだ(図1)。将来はTDPを10分の1にしたいとさえ言っている。UMPCが採用するプロセッサの条件の1つは、フルスペックのWindowsが動くということであり、これはx86互換を示している。
だが、この図で気をつけなければならないのは、TDPとパッケージを小さくするとは言っていても、通常のPC向けプロセッサ並の性能を確保するとはどこにも書いていないことだ。Intelは、65nm世代において、通常のプロセッサに使う製造プロセス(P1264)に加え、特別にリーク電流対策を施した省電力プロセッサ向けの製造プロセス(P1265)をわざわざ用意している(図2)。P1265は消費電力は下がるが、トランジスタの速度も抑えられる(図3)。
筆者はUMPCのプロセッサにはこのP1265を使うのではないかと思っているのだが、TDPが劇的に下がる反面、性能もそれなりに下がるだろう。はたして、ノートPCに使える性能レンジになるのかは、良くわからないのだが、ひょっとすると名称(ブランド)も含めて別物になるかもしれない(たとえばIntel Core Lightとか)。 仮に、性能が今の半分で、TDPが10分の1になれば、エネルギー効率という点では今の5倍のプロセッサということになるが、ノートPC用として今の半分の性能が受け入れられるかは疑問だ。もちろん、それで構わないというユーザーもいるに違いないが、大手PCベンダの商品企画としては通らないだろう。 冒頭で触れたように、これまで重量が2kgを超えるノートPCが「Thin & Light」だった米国に、日本人の感覚でもThin & Lightかなぁと思えるPCが大手から登場しつつある。この新しい息吹を消さないためにも、ULV版プロセッサの継続的な提供とアップグレードが必要だ。現時点ではIntel Core 2 Soloは存在しないのかもしれないが、いずれ登場すると期待したい。
□関連記事 (2006年5月12日) [Reported by 元麻布春男]
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