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クアッドコアCPUを2段階投入するAMDのロードマップ




●Rev. G世代でクアッドコア「Deerhound(ディアハウンド)」をリリース

 AMDは2段階でクアッドコアCPUの投入を計画している。第1陣は2007年中盤で、まずサーバーCPU「Opteron」系でクアッドコア「Deerhound(ディアハウンド)」を投入、2008年にはキャッシュ構成などをさらに改良したクアッドコアOpteron「Zamora(サモラ)」を導入する。また、2008年にはデスクトップ向けのクアッドコア「Greyhound(グレイハウンド=Athlon 64 X4?)」も投入する見込みだ。

 いずれのクアッドコアも、K8(Opteron/Athlon 64/Turion/Sempron)アーキテクチャベースとなる。クアッドコアの投入時期は、Intelのマルチダイ型クアッドコア「Clovertown(クローバタウン)」の方が先になるが、1個のダイ(半導体本体)に4コアを集積した“コンピュータアーキテクチャ的な意味での”クアッドコアは、おそらくAMDの方が先になる。

 AMDは、5月5日(日本時間5月6日深夜)に行なう投資者向けカンファレンス「2006 Annual Meeting of Shareholders」で、クアッドコアを含めたCPUロードマップをある程度明らかにする可能性がある。Intelが、先週のSpring Analyst Meetingで、アグレッシブにロードマップを公開したためだ。

 AMDのロードマップでは、1年サイクルでK8アーキテクチャを拡張して行く。現在は、2006年のリフレッシュであるK8「リビジョンF(Rev. F)」投入の秒読みを開始し始めたところだ。

AMD CPUコアの移行予想図
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 Rev. Fでは、DDR2メモリインターフェイス(DDR2-800まで)と仮想化支援技術「AMD Virtualization Technology(Pacifica:パシフィカ)」の実装を行ない、CPUソケットも一新した。次のステップは2007年前半の65nmプロセス版K8「リビジョンG(Rev. G)」で、プロセスを微細化するだけでなく、CPUの設計を一新する。その次は2007年末から2008年前半に予定されているK8 “New Core”だ。New Core K8はRev. G CPUコアをベースに、周辺機能を革新したリビジョンになる見込みだ。

 Rev. Gは、以前の記事で伝えたように、CPUコア自体の設計をこれまでのK8から大きく変更する。ダイ写真を見る限り、Rev. Gでは、特に命令フェッチとデコーダ回りが強化されると推定される。また、Rev. Gではサーマルマネージメントを拡張、PowerNow!などの周波数切り替えもより細かく制御可能にし、クロックゲーティングによるCPUブロック単位での電力制御も強化すると言われている。

Single core K8 Revision G(一部推定)
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●デスクトップのRev. G「Brisbane」はデュアルコアで2007年前半

 デスクトップ版のRev. Gのコードネームは、デュアルコアが「Brisbane(ブリズベーン)」、シングルコアが「Sparta(スパルタ)」となると言われる。デスクトップRev. Gでは、このほか、「Ballpeen Hammer(ボールピーンハマー)」と「Drill Hammer(ドリルハマー)」というコードネームも伝えられている。位置付け的にはBallpeen HammerはBrisbane、Drill HammerはSpartaに対応するようだ。

 これは、CPUコードネームが2階層になっていることを示すのかもしれない。ダイ(半導体本体)のコードネームとして、デュアルコアダイがBallpeen Hammer、シングルコアダイがDrill Hammerで、BrisbaneとSpartaはCPU製品としてのコードネームなのかもしれない。AMDもIntelも、同じダイを、サーバーとデスクトップ、ノートPCといった異なる市場向けの別製品として出荷している。

 ちなみに、AMDもIntelに合わせて、CPU+チップセットのプラットフォームにコードネームをつけ始めたと言われる。詳細は不明だが、市場セグメントを細かく分けて、それぞれに名前を割り当てている。例えば、ハイエンドデスクトップのAthlon 64 FXは、デュアルPCI Expressチップセットとの組み合わせで「Clipper(クリッパ)」となる。

 スケジュール的にはBrisbaneが2007年の前半に登場、Spartaが2007年後半に登場となる。基本的にはBrisbaneがメインストリーム&パフォーマンス系CPUで「Athlon 64」系ブランド、Spartaがバリュー系CPUで「Sempron」系ブランドになるようだ。ただし、Rev. G世代でも、Athlon 64系が全てデュアルコアに移行するわけではないようだ。Rev. Gの外部向けのサンプルは、出荷が始まるのが2007年の頭と言われている。そのため、2007年の早期に、Rev. Gが市場に出てくることはないと思われる。65nm版CPUの投入は、Intelより1年以上遅れることになりそうだ。

 デスクトップ版Rev. Gは、Rev. Fのインフラを継承する。Rev. Fで導入されるSocket AM2を使い、メモリもデュアルチャネルDDR2メモリのまま。CPUのTDP(Thermal Design Power:熱設計消費電力)も、上限はRev. FとRev. Gで変わらない。Rev. FとRev. Gのどちらも、Athlon 64 FX系は125W TDP、Athlon 64 X2系は89Wが上限となる。基本的には同じマザーボードでRev. FからRev. Gにかけて対応できることになる。同じTDP枠内で動作周波数を引き上げるものと推定される。一方、シングルコアのバリューCPU Sempron版は、Rev. Fの62WからRev. Gでは45W程度まで下がると言われる。

 ただし、AMDの下位のCPUのTDPはかなり変動があるので、製品発表直前まで確定できない。上位CPUのTDPは、AMDがボードベンダーに配布するデザインガイド上のマザーボードスペックに制約されるため、変更しにくい。しかし、下位のCPUのTDPは、TDP枠の中での変更が比較的容易だ。

●Rev. G世代では超低消費電力版のモバイルCPUも

 モバイルノートPC向けCPUでは、Rev. Fでデュアルコアの「Turion 64 X2(Taylor:テイラー)」が登場する。AMDは、2007年頭までにTurion 64系を全てデュアルコアに移行させる見込みだ。シングルコアのRev. E世代はTurion 64系から消えることになる。TaylorのTDPは35Wで、従来のTurion 64のTDP枠を引き継ぐ。数字上はIntelの次期モバイルCPU「Merom(メロン)」と同レベルとなる。Turion 64系は、デスクトップ用K8と同じCPU設計で、製造工程でトランジスタスペックを変更することで、低消費電力化を図ったCPUだ。

 Rev. G世代のTurion 64 X2系CPU「Tyler(タイラー)」は、2007年の前半と見られている。基本的なスペックはRev. Fを引き継ぐ。Rev. Fと同じSocket S1でデュアルチャネルDDR2、Pacificaに対応、TDPも35Wレンジだ。シングルコアのモバイルRev. Gは「Sherman(シャーマン)」で、こちらはSempron系ブランド用となる。インフラはRev. F世代のMobile Sempron「Keene(キーン)」を継承し、TDP 25W、Socket S1、デュアルチャネルDDR2となる。

 このほか、AMDは62Wでデスクトップと同じTDP枠のノートPC用CPUもRev. Fに移行させてゆく。しかし、Rev. F世代では、35WのTurion 64 X2ラインを推進し、62W系は後退させてゆくと言われている。このほか、AMDはモバイルのTurion 64系コアを使った省電力デスクトップCPUラインもRev. Fでデュアルコアに移行させて行く。

 AMDは、Rev. G世代からモバイルノートPC向けに超低消費電力K8を投入すると言われている。AMDは、以前から何度も超低消費電力版の投入を検討していたが、Rev. Gでは本格的に9〜11WのTDP枠のモバイルCPUを進めているようだ。ただし、AMDは需要が十分でないと判断した場合は、この市場への参入を取りやめる可能性もある。

●サーバーに先行してクアッドコアを投入

 デスクトップとノートPCのCPU世代交代は、ある程度同期しながら進む。それに対して、サーバーCPUはRev. Gからかなり動きが変わり始める。

 AMDはRev. Fでは、2006年第3四半期に、Rev. Fの「Santa Rosa(サンタローザ)」を投入する。Santa Rosaでは、CPUソケットが新しい「Socket F」となり、1,207ピンのLGA(Land Grid Array)型のパッケージとなる。Santa Rosaでは、デュアルチャネルDDR2でRegistered DIMM(DDR2-667まで)をサポートする。TDP枠は現行Opteronの95W枠のほか、新たに120W枠が設けられる。120WはOpteron “SE”ライン用で、Rev. G世代で登場するクアッドコアOpteronのインフラのためでもある。また、低消費電力Opteron “HE”ラインは、Rev. Eまでの55W TDPから、Rev. Fでは68W TDPへと増える。

 ちなみに、Opteronでも、UP(Uni-Processor)対応の100シリーズは、Socket Fではなく、デスクトップと同じSocket AM2になる。物理的にはAthlon 64 X2系と同じだ。Unbuffered DIMMでデュアルチャネルDDR2(DDR2-800まで)に対応する。コードネームは「Santa Ana(サンタアナ)」でTDP枠は103Wと125Wとなる。

 Rev. GのOpteronは、MP(Multi-Processor)対応の800シリーズとDP(Dual-Processor)対応の200シリーズが、まずクアッドコアに移行する。コードネームはDeerhoundで、2007年第3四半期頃の登場だと言われる。Deerhoundではキャッシュが共有となり、2MBのL3キャッシュも搭載する。これは、Deerhoundが単純に2つのデュアルコアOpteronをくっつけただけのCPUではないことを示している。AMDは、同社のクアッドコアは、ワンダイ(半導体本体)に4コアを統合したものになると説明している。

 興味深いことに、AMDはDeerhoundではL3だけが共有になるとは言っていないらしい。そのため、DeerhoundではL2キャッシュも共有にして、全体のキャッシュ量を節約した可能性もある。だとしたら、その理由はダイ(半導体本体)の肥大化を抑えるためと、キャッシュSRAMの消費電力の低減にあると推定される。Rev. Gでは65nmプロセスによってシュリンクするが、CPUコアを倍増させて、L3も載せるため、ダイサイズ(半導体本体の面積)は200平方mmを超えると推定される。

 Deerhoundは、CPUコアを4基に増やしながらもRev. Fのインフラを継承する。同じSocket Fで、上限は125W TDP、デュアルチャネルRegistered DDR2。つまり、CPUを載せ替えるだけで、同じプラットフォームでCPUコア数を2倍にできることになる。

●Rev. GベースのNew Coreが2007年末前後から登場か

 AMDは、さらに改良を加えた新K8ファミリを準備している。Rev. G世代のCPUコアと、拡張されたインターフェイスやキャッシュ構成を組み合わせたCPUになるようだ。AMDが“New Core”と呼んできたK8は、この世代になる見込みだ。つまり、“Rev.”はCPUコアの世代を示し、新CPUコアと新しい周辺機能が組み合わされて初めて“New Core”と定義していると見られる。

 New Coreについては、まだ概要が見えていない。プロセス技術は65nmで、市場毎のCPUの分化がますます進むと言われている。共通する特徴は、次期インターコネクト技術「HyperTransport 3」を採用、メモリをDDR3世代へと進め、CPUソケットも変えると見られている。時期的には、2007年の終わりから2008年の前半にかけてと言われていたが、これも変動する可能性がある。

 デスクトップCPUのNew Coreは、DDR2とDDR3の両対応で、パワーマネージメントを強化。ソケットは、AM2と下位互換を保つM3とウワサされている。New Coreでは、デュアルコア/シングルコア版のほかに、クアッドコアのGreyhoundがあると言われる。Greyhoundでは、4CPUコア構成で、キャッシュのコンフィギュレーションも変わるとも言われている。

 モバイル版のNew Coreも、DDR2とDDR3の両メモリをサポート、HyperTransport 3も実装する。ただし、メモリやHyperTransportのコントローラは、モバイル向けのフィーチャが加わるとされている。AMDは、この世代ではL2キャッシュは共有になると示唆していた。TDPはRev. F/Gを踏襲し、25Wと35Wとなるようだ。モバイルとデスクトップのNew Core世代のコードネームについては、情報が錯綜しているため、まだ確認ができない。

 サーバーCPUのNew Coreは、クアッドコアのZamoraとなる見込みだ。目立つ違いは新メモリモジュール規格「FB-DIMM」のサポートだ。DRAM業界関係者によると、AMDはDDR3に対応するFB-DIMM 2あたりからサポートする予定で、準備を進めているという。AMDはRegistered DDR2からFB-DIMM DDR3へ移行することになる。つまり、New Core世代のAMDのメモリサポートは、FB-DIMM2 DDR3とUnbuffered DDR3の2系統ということになる。ただし、FB-DIMM 2はまだ「AMB(Advanced Memory Buffer) 2」で議論があり、不確定な部分がある。

 ZamoraではL3キャッシュを共有すると言われている。そのため、おそらくL2はコア毎に独立して備え、L3だけを共有するアーキテクチャになると推定される。インターコネクト技術はHyperTransport 3。また、AMDは以前からNew Core世代のサーバーCPUでは「Enhanced Direct Connect」アーキテクチャになると説明している。この中身は、まだわかっていない。

●不鮮明なAMDのCPUマイクロアーキテクチャの更新

 クアッドコアへと急ぐAMD。しかし、AMDのCPUロードマップには不安材料もある。Intelは今年中盤から新設計の「Core Microarchitecture(Merom:メロン)」への移行を開始するのに対して、AMDは従来通りK8系マイクロアーキテクチャのまま。Rev. Gでコアを拡張するものの、基本的には2008年までK8を拡張し続けることになる。問題点は明瞭で、新マイクロアーキテクチャの「K10」がロードマップ上にないことだ。

 それに対して、IntelはCore Microarchitectureで大きく刷新、2008年頃にはさらに次々世代マイクロアーキテクチャ「Nehalem(ネハーレン)」も投入する。約2年サイクルで新マイクロアーキテクチャを投入して行くIntelに対して、AMDはCPUアーキテクチャ更新のサイクルが、少なくとも5年以上と長くなってしまっている。AMDにとって痛手になる可能性がある。

 ただし、AMDにとって好材料もある。それは、CPUコアのマイクロアーキテクチャの拡張より、CPUコアの並列化アーキテクチャの方が重要度が高くなっていることだ。コアの革新より、CPUダイ上でいかに多くのコアを並べるかが重要になりつつある。また、K8系は、もともとIntelのNetBurst系よりはPerformance/watt(パフォーマンス/消費電力)がよい。そのため、Intelと比べるとCPUマイクロアーキテクチャの刷新の必要性が薄い。

 とはいえ、AMDがCPUマイクロアーキテクチャの開発でつまづいているのも確かだ。AMDは過去数年、CPUアーキテクトやエンジニアを大量に雇い入れている。いずれも、IBM、Intel、Hewlett Packard(HP)といったトップCPUベンダーで経験を積んだ人材だ。こうした事実は、AMDがCPU開発チームを再編成していることを示唆している。

 そして、おそらくはCPU開発の方向性もかなり変えている。AMDの最近のCPUアーキテクチャ関係のプレゼンテーションでは、強調されるポイントがCPUコアのマイクロアーキテクチャの拡張から、それ以外の部分へと広がっている。下のスライドがそれを象徴している。

2005 Analyst Dayで示された資料
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 図にある、マルチコア(CMP:Chip Multi-Processor)やモジュラリティ、フィーチャといった右上の部分の拡張が、AMDがK8 New Coreまでの流れで実現しようとしていることだ。CPUコア内部のマイクロアーキテクチャ上の拡張は、CPUの拡張の1つの要素でしかない。

 そして、AMDはこのところ、コプロセッサや特定用途向けのアクセラレータの可能性について言及することが多くなっている。下は、2005年11月のMicro-38カンファレンスでAMDのChuck Moore氏(AMD Senior Fellow)が行なったプレゼンテーションの一部だ。こうした動きを見ると、AMDが特定用途向けのコプロセッサやアクセラレータとその統合を真剣に考えていることがよくわかる。

 将来のAMD CPUのアーキテクチャはかなり今とは違った姿になる可能性がある。

2005年11月に行なわれたChuck Moore氏のプレゼンテーション資料
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【4月24日】【海外】CPUコアの設計が一新される65nm版K8
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2006/0424/kaigai263.htm

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(2006年5月3日)

[Reported by 後藤 弘茂(Hiroshige Goto)]


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