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冷却ファンを追加できるファンレスHDD
「バッファロー HD-HCU2」レビュー

HD-HCU2+冷却ファン


 株式会社バッファローから発売された外付けHDD「HD-HCU2」は、ちょっと変わった性格の製品で、現状の外付けHDDの問題点を浮き彫りにしてくれるところがある。

 既存モデルの「HD-HBU2」と比較しながら、ベンチマークとレビューを行なった。

●薄利で血を流しながらの戦い

 レビューの前に、いま外付けHDDがどういう状態にあるのかを見ておこう。実はHD-HCU2が誕生した裏には、この市場の状態が影響しているのだ。

 いま、外付けHDDの売れ筋は250GB級の3.5インチ内蔵タイプだ。ついでに言えば、2.5インチのポータブルタイプは80GBが売れ筋となっている。

 外付けHDDは、ここ数年のノートPCや内部増設できない省スペースデスクトップの隆盛に伴い、出荷量が増加している。具体的な数字はないが、HDDメーカーのOEM出荷量では、大手PCメーカーと肩をならべる水準にあるという。

 これだけの仕入れ量があれば、当然ながら仕入れコストも有利になる。たとえば、現在250GBで7,200rpmのIDEベアドライブを、店頭で1個単位で買うと10,000円~12,000円前後である。

 しかし、同じドライブを入れた、外付けHDDは標準価格で18,000円前後であり、店頭の実売価格は15,000円台も普通である。さらに、これに20%前後のポイント還元が行なわれるのだからすさまじい。

 USBインターフェイス付きのケースや取扱説明書、化粧箱などのコストを考えると、かなりの薄利であることは間違いない。もちろん、HDDの仕入れ価格は、店頭での1個単位の価格よりもずっと廉価であることも間違いないが、それでもいかほどの利益が確保できているのかは疑問である。とはいえ、シェアの確保のためには、降りるわけにいかない戦いである。したがって、いま大型家電店の店頭では、バッファロー、アイ・オー・データ機器、ロジテックの3社が凄絶な叩き合いを演じているわけだ。

 アイ・オー・データ機器の決算報告の一節にある「競合他社との価格競争は一層熾烈を極めており、期を通して当社売筋製品の中には、採算割れのものも見られる」という一節には、液晶ディスプレイなどとともに、外付けHDDが含まれているとみていいだろう。

 ちなみに、IEEE 1394/USB 2.0兼用タイプや、Ethernet対応のNASタイプなどは、出荷数量としてはUSB 2.0専用タイプに比べるとずっと少ないという。

●差別化した高機能タイプの投入

左HD-HCU2、右HD-HBU2

 以上のような市場で、バッファローは「HD-HBU2」というモデルを主力として戦っていた。7,200rpmの流体軸受けドライブを搭載し、筐体はファンレスとなっている。

 これに対し、新たに投入されたHD-HCU2は、HDDの冷却に力を入れている。この付加価値で、HD-HBU2と比べて2,000円ほど高い価格が設定されている。

 冷却についてみてみよう。筐体に放熱性鋼板を採用した「ヒートシンクボディ」と、通気性を考慮して空気孔を配置している。筐体の天地はメッシュになっていて、煙突状に空気が流れるようになっている。ヒートシンクボディは「HD-HBU2」でも採用されているが、全体の構造でより冷却を重視しているのだ。

 さらに、2,205円で別売される専用冷却ファンが、ボディの屋上部分に合体するようになっており、空気を吸い出して冷却効率を高めるようになっている。また、冷却ファンには本体の底部につける部品がセットになっており、筐体全体を横倒しにして積み上げることもできる。

 この製品が面白いのは製品情報のページに、通常の場合と、冷却した場合の平均故障時間のグラフを載せて、「冷却すればHDDは長持ちする」と訴えている点だ。これは裏を返せば、HDDは常に故障する可能性があるということを意味しており、技術的には正しい知識なのであるが、メーカーとしては、ある意味で勇気のある発言といえるだろう。

同社サイトに掲載されているグラフ

 当然、「じゃあ、安い方のHD-HBU2の方が壊れやすいの?」という素朴な質問が来ることを覚悟していないと、書けない情報だ。

 ちなみにバッファローに、この質問の答えを聞いてみると「両方とも十分な品質を持っていますが、HD-HCU2の方がより壊れにくいとお考えください」と言われた。言ってみれば「安心感」に対して、顧客がお金を払ってくれるかどうかに、この製品の成否がかかっているわけだ。

●外観

 新しいHD-HCU2の外観は、既存のHD-HBU2とは、かなり異なったデザインとなっている。

 HU2が白とシルバーグレーで背が高く幅があって奥行きが浅い形だったのに対し、HCU2は黒とシルバーグレーで背が低くて幅が薄く奥行きが深い。背の高さと色の違いのためか、見た目の安定感はHCU2の方がある。また、HU2の下端部は左右が面取りされており、なんとなく倒れやすそうな印象がある。

 しかし、両機の仕様については共通点が多く、インターフェイスはUSBのみ、7,200rpmで流体軸受け採用のドライブ、ヒートシンクボディによるファンレス構造となっている。

 ちなみに冷却ファンのカバーはプラスチック系の素材で、金属系の素材を使った本体に比べてチープな作りだ。

 本来、冷却性能を追求するなら、最初からファンを筐体に内蔵するべきだろう。たぶん、それができなかったのは、ファンを内蔵することによって、HD-HBU2との価格差が広がることをおそれたのではないか。

旧モデルのHD-HBU2 新モデルのHD-HCU2 オプションのOP-FAN。ボールベアリングを採用し、騒音は14dB

 冷却ファンの電源は、HDD本体の裏にあるミニプラグ型の専用端子から供給される。この端子はHDD本体の電源と連動している。バッファローの外付けHDDには、USB接続されていると、PC本体の電源が入ったときのみ、HDDが回転するという機能「PC連動 AUTO 電源機能」があり、これによってHDDのファンもPC本体を使用する場合のみ回転する。さらに要望するとすれば、温度センサーと連動し、必要なときだけ動作するとよかっただろう。

【お詫びと訂正】初出時にHDD本体とファンの電源が連動しないという記載をいたしましたが、両者の電源は連動しており、PCの電源ON/OFFにも連動します。ご迷惑をおかけした関係者の皆様にお詫びして訂正させていただきます。

●冷却性能を検証する

 結論から言うと、専用ファンの「OP-FAN」を搭載することで、ケース外面の温度は最大9.6度低下した。ただし、HDD付近、つまりケース内部の温度は、39.4度から35.6度へと3.8度の低下に止まった。

 同社のリリースでは外気温35度の環境下で最大7度の低下が謳われている。計測方法/環境による誤差はあるが、冷却性能の高さは確認できた。

温度データロガーの「おんどとり」。ケース後部のUSB端子脇よりセンサーを内部に挿入した

 計測は、放射温度計でケース外面の4箇所を測定したほか、温度データロガーで温度の変化を記録した(センサーは背面のUSB端子脇より挿入)。計測の際には、「Device Estimate Ver.2.02.01」にてSequential Writeを1時間実行した。


 外面の温度を見てみると、ファン搭載/非搭載時ともに、筐体の上に行くにしたがって温度が上がる傾向がある。上面のファン付近が最も温度が高くなる部分で、そこが両モデルの温度差が最も出る部分になっている。外面の温度計測においては、HDDの上面で10度弱の温度低下が計測できた。


HD-HBU2の表面温度。上面は45度まで上昇する HD-HCU2の表面温度。同様に上面が43.6度まで上昇 OP-FAN利用時の表面温度。上面は34度まで、側面は20度台に下がる

 次に、ケース内部の温度を見てみよう。【グラフ1】はファンを搭載していないHD-HCU2を、【グラフ2】はファンを搭載したHD-HCU2を、それぞれ1時間計測したもの。グラフはともになだらかな上昇曲線を描いているが、最終的には3.8度の低下が計測できた。

【グラフ1】ファンを搭載していないHD-HCU2の温度変化 【グラフ2】ファンを搭載したHD-HCU2の温度変化

●ヒートシンクボディをさらに冷却できるファン

 モデルチェンジによって、HD-HCU2はボディ単体での冷却性能が向上し、ファンを取り付けることでHDDをさらに冷却できることも確認できた。また、ファンを取り付けることで、HDDを横置きにしてスタックすることも可能になる。2,000円という価格なら十分購入に値すると感じた。

 次期モデルでは、ファンを一体型にした構造で、より一層の作りこみを行なったモデルを期待したい。より合理的な構造でエアフローを改善し、冷却性能を高められるだろう。

□HD-HC250U2の製品情報
http://buffalo.melcoinc.co.jp/products/catalog/item/h/hd-hcu2/
□HD-HB250U2の製品情報
http://buffalo.melcoinc.co.jp/products/catalog/item/h/hd-hbu2/
□OP-FAN(オプション 冷却ファンユニット)の製品情報
http://buffalo.melcoinc.co.jp/products/catalog/item/o/op-fan/
□関連記事
【2月15日】バッファロー、ヒートシンクボディのUSB 2.0外付けHDD
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2006/0215/buffalo.htm
【2004年6月2日】バッファロー、ファンレスで7,200rpm/流体軸受ドライブの外付HDD
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2004/0602/buffalo2.htm

(2006年4月28日)

[Reported by date@impress.co.jp]

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