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マクセル、水/アルミ利用の10W級燃料電池
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固体分子形燃料電池(PEFC) |
4月24日 発表
日立マクセル株式会社は24日、水とアルミニウムによる水素発生を利用した、10W級の「固体高分子形燃料電池(PEFC)」を開発したと発表した。
室温で大量の水素の発生が可能で、従来の「直接メタノール型燃料電池(DMFC)」の5倍の出力を達成したとする燃料電池。筐体内に水とアルミニウムのカートリッジを備え、マイクロポンプで水を供給することで反応を起こす。
新型のPEFCでは、新開発のアルミニウム微粒子化プロセス技術で水素の発生効率を向上させ、理論限界の95%程度にあたる水素発生(アルミニウム1gから水素1.3L)を実現。さらに、同社が磁気テープで培った分散塗布技術で膜-電極接合体(MEA)を最適化することで、280mW/平方cmの出力密度を実現したという。
今回発表されたPEFCの主な仕様は、出力平均が10W、最大が20W、電圧が7.4V。本体サイズは100×60×160mm(幅×奥行き×高さ)、重量は920g。
将来的には、モジュールのサイズを87×31×97mm(同)まで縮小して体積を70%削減し、リチウムイオン電池と同等以上のエネルギー密度を目指す。
開発中の小型モジュール | 分散型のPEFC | 水とアルミニウムのカートリッジ |
●燃料電池が次世代電源の有力候補
主任技師 西原昭二氏 |
24日に行なわれた説明会では、同社の主任技師 西原昭二氏が登場し、開発の経緯や新電池の特徴を説明した。
同氏は、モバイル機器の小型軽量化/高性能化とともに、資源の有効利用や環境保全のためにクリーンなエネルギーへの需要が高まっているとし、「燃料電池が次世代電源の有力候補である」と述べた。
従来の燃料電池は、メタノール改質機や高圧水素ボンベなどを必要とし、複雑な補機やコスト高、発熱などの問題があった。今回開発したPEFCでは、室温での水素発生が可能であり、高温を伴う改質機が不要であるという。将来的にはアルミニウムの廃材をリサイクルして利用可能で、環境にやさしい電池になるという。
質疑応答でアルミ合金や水の純度について問われると、同社は「合金でも経験上は遜色なく発電し、水については水道水でも水素が出る」と答えた。また、コストについては、「アルミニウムは1kgで700円程度であり、カートリッジでは数百円に、廃アルミニウムを利用した場合はもっと安くなるだろう」と説明した。
実用化の時期については、利用されるアプリケーションの開発次第で、製品化のキッカケを探っている状態とし、主な用途については、バックアップや軍隊などでの特殊な用途が主になるとした。ノートPCについては、リチウム電池の方が適しているだろうと語った。
PEFCとDMFCの比較 | 分散型PEFCの構造 |
PEFCを接続したノートPCを展示 | 背面 |
□日立マクセルのホームページ
http://www.maxell.co.jp/jpn/
□ニュースリリース
http://www.maxell.co.jp/jpn/news/2006/news060424.html
(2006年4月24日)
[Reported by matuyama@impress.co.jp]