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マミヤのカメラ事業撤退とムーアの法則の関係




●マミヤがカメラから撤退

Mamiya ZD
 4月21日、マミヤ・オーピーは、光学機器事業をコスモ・デジタル・イメージングに営業譲渡し、カメラ事業から撤退すると発表した。同社は、プロ用の中判カメラを主力とするメーカーで、昨年12月に2,130万画素の中判デジタルカメラである「Mamiya ZD」を発表したばかりだった。今後同社は、電子機器とスポーツ事業に特化することで、黒字化を目指すという。

 中判サイズというプロフェッショナル向けのカメラメーカーだけに、Mamiyaブランドの一般的な知名度は高くない。が、戦前に創業したマミヤ光機にルーツを持つ、いわば名門。営業譲渡先のコスモ・デジタル・イメージング傘下で、事業再建がうまくいくことを祈るばかりだ。

 さて、マミヤ・オーピーのカメラ事業撤退のニュースで思ったことの1つは、大型撮像素子を使ったカメラの特殊性である。ここでいう大型撮像素子とは、普及型のデジタル一眼レフカメラで使われている、いわゆるAPS-Cサイズより大きなCCD、あるいはCMOSセンサのことを指す。この大型撮像素子を採用したデジタルカメラをリリースしたメーカーは、過去に何社かあるが、ほぼすべてが事実上カメラ事業からの撤退を余儀なくされている(ほぼと書いたのは、コダックはコンパクトカメラは続けているからだ)。

 もちろん例外の1社とはキヤノンだ。キヤノンだけが、いわゆる35mmフルサイズの撮像素子を採用したカメラや、APS-Cより一回り大きなAPS-Hサイズの撮像素子を採用したデジタルカメラをリリースし、その事業を継続している。APS-Cより大きなセンサを使ったカメラを、一般商業ベース(受注生産等の特殊品は除く)に乗せられているのはキヤノンだけだといって間違いないだろう。こうなると、大型撮像素子を採用したカメラ(その一例がフルサイズ一眼)を出せない他社に問題があるのではなく、それを出せるキヤノンが例外、と考えるべきだと思う。

 なぜキヤノンが例外でいられるのか。それは筆者には分からない。もちろん、自社で撮像素子を作っていることが大きな要素であることは確かだろうが、それは必要条件ではあっても十分条件ではない。そうでなければ、ソニーや富士フィルム、松下電器、こうしたCCDセンサの大手は、みなフルサイズのデジタル一眼レフカメラを製造していることだろう。

●CCDも半導体素子である

 撮像素子であるCCDやCMOSセンサは、純粋な半導体ではないにせよ、やはり半導体素子である。半導体素子であれば、その技術トレンドは多少の遅れや誤差があったにしても、最終的にはムーアの法則から逃れることはできない。純粋な半導体であるプロセッサが、18カ月でトランジスタ数を倍増させ、2年ごとに製造プロセスが微細化していくように、同じことが撮像素子にもおとずれる。程度の差はあれ、世代ごとにセンサは微細化し、必然的に高画素化していく。トランジスタ数が増えてもプロセッサのダイサイズが縮小するように、高画素化した撮像素子も全体サイズは小さくなっていく。それが半導体技術というものの最適化のされかたであり、ムーアの法則である。

 つまり、技術進歩とともに、撮像素子は高画素化し、サイズが縮小していくのがムーアの法則にのっとった姿だと考えられる。もちろんカメラの場合、レンズを含めた光学系を毎回新設計できるわけではないから、一定期間撮像素子のサイズをキープしなければならない。あるモデルが1/1.8型CCDだったから、次は1/2.5型にしよう、というわけにはいかないが、長期的に見ればCCDサイズは高画素化を図りつつ、少しづつ小さくなっていくことがトレンドとなっている。

 実際の製品を見ても、以前はコンパクトタイプのデジタルカメラでもハイエンド製品の多くは2/3型CCDを使うものが主流だったが、現在は1/1.8型CCDが主流になっているようだ。もちろん、こうした変遷には、デジタル一眼レフカメラの低価格化により、従来のハイエンド価格帯におけるコンパクトタイプの市場性が薄れた、といった他の要素も関係している。だが、CCDサイズは大きくなるより、小さくなっていくのが、半導体技術から見れば必然である。現在デジタル一眼レフで主流のAPS-Cをフルサイズに拡大するというのは、ムーアの法則に対する挑戦であり、それほど勝算があるとは思えない。少なくとも半導体の世界で、ムーアの法則に逆らって成功した、という話は聞いたことがない。まだ、将来の主流はAPS-Cよりさらに小さいフォーサーズ(4/3型)に移行するという話の方が、半導体から見るとありそうに思える。

 その一方で、カメラ側(特にその利用者側)には、常にフルサイズ待望論がある。その根拠となっているのは、35mmフィルム用の一眼レフカメラ用のレンズ資産の活用ということだろう。35mmフィルム一眼レフカメラで使っていたレンズを、その時と同じ画角で、同じパースペクティブで、同じボケ量で使いたい、という希望である。APS-Cで35mm焦点距離換算1.5〜1.6倍になるのは、使えないよりマシだが、やはり本来の姿ではない、というわけだ。

 もちろん、これが間違っているとも思わない。が、こうした35mmカメラ用のレンズは、もともとはフィルムカメラ用に設計・製造されたもの。デジタル一眼レフカメラで使えることが保証されていたわけではない。35mmフィルムカメラで使うのが、一番本来の姿であるハズだ。

 採算性が悪く、リスクの高い大型撮像素子のカメラに手を出して会社が傾くより、最初からAPS-C(またはもっと小さい素子)を前提に新設計したレンズの発売に務める方が、最終的にはメーカーもユーザーも幸せになれるのではないか。もしそうなら、カメラメーカー(キヤノンは別かもしれないが)は、そうハッキリと言うべきではないか。マミヤ・オーピーのニュースを聞いて、そう思う。

□ソニーの民生向けデジタルスチルカメラCCDラインナップ
http://www.sony.co.jp/Products/SC-HP/imagingdevice/ccd/minsei_stil.html
□関連記事
【4月21日】マミヤ、カメラ事業から撤退(DC)
http://dc.watch.impress.co.jp/cda/other/2006/04/21/3690.html

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(2006年4月24日)

[Reported by 元麻布春男]


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