|
TI、リチウム二次電池から効率的に3.3Vを発生させるIC
4月4日 発表
日本TIは4日、リチウムイオン二次電池から3.3Vの電源電圧を効率的に発生させるIC「TPS63000」の量産を開始したと発表した。1,000個購入時の単価2.75米ドルで、すでに販売中。 携帯電話機やデジタルカメラなどのバッテリに使われているリチウムイオン二次電池は、放電とともに出力電圧が非線形に下がっていくという特性を備える。使い初め(満充電状態)は4.2Vを出力し、徐々に電圧が下がる。ある程度放電すると出力電圧は3.7V付近で安定し、一定に近い電圧を保ちながら放電する。そして寿命が近づくと電圧が急激に下がり、終端電圧である2.7Vに達して電池切れとなる。 4.2V~2.7Vと出力が変化する電池から、3.3Vの電源電圧を安定に取り出すことは簡単ではない。直流電圧の変換回路であるDC-DCコンバータには通常、入力電圧を上げて出力する昇圧型と、入力電圧を下げて出力する降圧型がある。欲しい電圧が5Vであれば昇圧型DC-DCコンバータを、欲しい電圧が1.2Vであれば、降圧型DC-DCコンバータを使う。しかし3.3Vが欲しい場合は、入力電圧を上げるときと下げるときの2通りの状態が起こる。 ここで考えられるのは2つの方法だ。1つは、リチウムイオン電池の出力電圧が3.5Vに下がったところで電池の使用を止めること。こうすると入力電圧は最低でも3.5Vなので、降圧型DC-DCコンバータが使える。ただし4.2V~3.5Vの出力範囲だけを使うので、電池の寿命は実質的に短くなってしまう。 もう1つは、昇圧型DC-DCコンバータによって電圧を5Vに上げ、続いて5Vを入力とする降圧型DC-DCコンバータを使って3.3Vを得ること。この場合は2.7Vまでリチウム電池を使いきれるものの、2つのDC-DCコンバータを介するために電力損失が大きくなるという問題が生じる。高性能のDC-DCコンバータでも、変換効率は最大で95%ほどで、少なくとも5%程度の電力損失がある。DC-DCコンバータを2個使うと電力損失は2倍の約10%になる。 そこで最近では、昇圧型コンバータ回路と降圧型コンバータ回路を組み合わせた、昇降圧型DC-DCコンバータICが他社から製品化されていた。入力電圧が高いときは降圧コンバータ回路だけが動き、下がっていくと昇圧コンバータ回路と降圧コンバータ回路が同時に動く。リチウムイオン電池の電圧がさらに下がると、昇圧コンバータ回路だけが動くようになる。 ただし、この製品ではリチウムイオン電池の出力電圧が安定する、3.7V付近での変換効率が下がるという問題があったと日本TIは指摘する。「この方式だと、電池の寿命は期待ほどには延びないと考えています」(日本TI ハイパフォーマンス・アナログ事業部 パワーマネジメント製品部 弥田秀昭技師)。
そこでTIは、昇圧コンバータ回路と降圧コンバータ回路が同時に動作しないタイプの昇降圧型DC-DCコンバータICを開発した。入力電圧に応じて昇圧コンバータ回路と降圧コンバータ回路を最適なタイミングで切り換えながら、目的の出力電圧を安定に出力させるという。この結果、リチウムイオン電池の出力電圧が安定する、3.7V付近での変換効率が96%と高いDC-DCコンバータICを実現できた。 開発したDC-DCコンバータIC「TPS63000」の入力電圧範囲は1.8~5.5Vと広い。出力電圧範囲は1.2~5.5V(可変)あるいは3.3V固定、5V固定。出力電流は入力電圧3.6~5.5V、出力電圧3.3Vのときに最大1200mA。スイッチング周波数は1.5MHz。
□日本TIのホームページ (2006年4月6日) [Reported by 福田 昭]
【PC Watchホームページ】
|
|