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IDF基調講演レポート

マローニ氏が超小型PC「UMPC」をデモ
〜Merom、Santa Rosaも概要を発表

ショーン・マローニ氏

会期:3月7日〜9日(現地時間)

会場:米San Francisco
   Moscone Center West



 Intel Developer Forum 2006 Springにおいて、Intel上席副社長兼モバイルプラットフォーム事業部長のショーン・マローニ氏は、MeromやMeromを用いる新プラットフォームのSanta Rosa、それにMicrosoftのOrigamiプロジェクトとの関連性も指摘されるハンドヘルドPC、WiMAX用通信カードの発売といったトピックを織り交ぜながら、モバイル分野においてx86ベースで製品を開発する必要性、市場での可能性を説いた。

 2005年秋のIDFでは、IntelCEOのポール・オッテリーニ氏がノートPCの分野だけでなく、より省電力で小型のデバイス向けにもIntel Coreのアーキテクチャを展開すると話していた。

●“インターネットの多様性”が“PCの適応性”を求める

 マローニ氏の基調講演前半は、業界全体を俯瞰しつつ、最終的には「UMPC(Ultra Mobile PC)」と名付けられた、超小型PCの必要性や市場での可能性を訴求することに費やされた。

 「近年、インターネット上でのビデオ視聴数が急増している。それらのコンテンツにアクセスするためのサービスも充実し、Google、Yahoo!、AOLなど、さまざまな検索ポータルがビデオコンテンツのアーカイブを行なっている」

 マローニ氏の話は、最近のインターネット事情の変化から始まった。同氏がビデオコンテンツの増加を指摘したのは、インターネット上でのビデオ配信サービスについて話をするためではない。インターネットが常に変化し続けるメディアである事を示すためのものだ。

 同氏はビデオコンテンツの話に続き、複数のネットサービスを組み合わせ、別の新しいサービスが生まれる最近のWebサービスのトレンドに話題を移した。

 同氏は、現在パーソナライズ、すなわち個人の環境や設定、ニーズに合わせて情報や機能を提供するインターネット上のサービスが増えてきていると指摘する。RSS、Tagging、AJAX、マッシュアップといった技術、テクニックを使うことで、ユーザーはよりパーソナライズされた情報や機能をネット上にあるリアルタイムのデータで扱えるようになってきた。

 これらのテクニックでは、XMLデータからユーザー向けに適したビューで情報を見せたり、あるいは複数のXMLデータを組み合わせて別の切り口でサービスを提供したり、といったアプリケーションを提供できる。

 例ではGoogle Earthの航空写真と、公開されている航空機のリアルタイムなフライト情報を組み合わせたFBO Web(http://www.fboweb.com/)などの、マッシュアップサービスを紹介。FBO Webのフライトトラッキングサービスでは、Google Earthと同様の3Dグラフィックス機能を駆使しつつ、現在、どこを飛行機が飛んでいるかをビジュアル化してくれる。

Google Earthと航空機情報を組み合わせたサービスを紹介。3次元的に航空機の位置を確認できる

 「こうしたパーソナライズによるインターネットの進化は、今まさに始まったばかりだ。現在、2億5,000万の人がブロードバンドインターネットを使っているが、他のメディアに比べればまだまだ少ない。TV、携帯電話、ラジオなどの方がずっと数が多く、またブロードバンドではないインターネットユーザーも少なくない」とマローニ氏。言い換えれば、それだけ伸びる可能性があるという事、加えてブロードバンドアクセスをワイヤレスで移動しながら利用できれば、さらに市場を拡大していく可能性を秘めている。

UMPCの試作機。サイズ的にはポータブルメディアプレーヤに近く、PSPなどよりは大きい。バッテリー持続時間はまだ言えないとのこと

 マローニ氏は、ここで新しい携帯電話向けチップの「Monahans」がサンプル出荷した事をアナウンスしたが、同氏の話の本命はUMPCである。PCのフル機能をハンドヘルドデバイスに組み込んでいき、前述したような新しいパーソナライズされたサービス・アプリケーションと組み合わせて利用するという提案だ。

 同氏が考えるPCの良さ。それは“適応性”だ。インターネットは常に変化し、動画コーデックにしろ、サービスにしろ、その形態が変化し、常に進化し続けている。動画アーカイブやマッシュアップなどはその一例にしか過ぎない。

 そうしたインターネットの多様性、変化の速さに追随し、最新のアプリケーションとサービスを利用するには、それらに追随する適応性が重要。そしてその適応性は、ソフトウェアをインストールすることで機能を変化させることができるPCのプラットフォームが最適という考え方だ。

 「パーソナライズされた情報、アプリケーションをいつでもどこでも利用するためのデバイスを携帯したい。しかし、ノートPCでは大きすぎる。UMPCはパーソナライズされたインターネット社会のための新しいデバイスだ。近い将来の発売に向けて、何社かがすでに開発へと取り組んでいる。UMPCの使い勝手や製品としての質を高めるための人間工学的な研究や熱の問題などに取り組み、これらを業界に向けてフィードバックするため、事業部全体でUMPCを推進していく(マローニ氏)」

 なお、基調講演後にモバイルプラットフォーム事業部のムーリー・エデン氏に話を聞いたところ、現在のUMPCのリファレンスデザインでは超低電圧版のDothanが使われているとの事。しかし、今後はYonahベースのシングルコアへの切り替えについて検討を進めていくという。

ディスプレイ部を回転させることで、キーボード付きPDAのような使い方から、タブレットPCライク、ゲーム機ライクなど、いくつかの形態に変化する

●Merom、Santa Rosaの概要をアナウンス

 しかしモバイルプラットフォーム事業部の現在のミッションは、新しいIntel Coreを進化させ、PCに新たな魅力を加えていくことだ。マローニ氏は、話題をUMPCからノートPCへと移した。

 すでにIntel Core Duo(Yonah)搭載機が発売中だが、Yonahに使われているコアのアーキテクチャは“Enhanced Banias”アーキテクチャと内部で呼ばれているものだ。すなわち、Pentium Mのアーキテクチャを基礎に改良を加えつつ、デュアルコア化を図ったものである。

 これに対して、2006年後半に投入されるMeromが採用するアーキテクチャは“New Intel Core”アーキテクチャと呼ばれ、いくつかの新しい考え方を導入している。

MeromはBaniasの3倍を超える電力あたりパフォーマンスを実現 左がYonahで右がMerom。ここではダイサイズは似たようなものに見えるが、キャッシュエリアの面積の違いからダイサイズが大きくなっていることが想像できる。MeromのキャッシュサイズはYonahの2倍、4MB実装されている Santa Rosaの構成。さまざまな新機能が追加されるが、やはり目玉は無線LANの大幅な高速化と内蔵グラフィックスがWindows Vista世代に見合う新世代コアにグレードアップする

 キャッシュアクセスの高速化、64bit化、シングルサイクルでのSSE命令実行、内部実行ユニットの増加やバッファの増加、より積極的な省電力対策、そして命令数を減らし、デッドオペレーションを減らすMacro Ops Fusionといった機能がそれに相当し、トータルでは消費電力あたりのパフォーマンスでBaniasの3倍となる。

 基調講演では、これらNew Intel Coreの機能については、軽く流す程度の紹介にとどめられた。細かなディテールは翌日のテクニカルセッションで説明されることになっている。また会場にはDELL、Samsung、ソニーの各社から、Merom搭載の試作機が展示された。

 これら初期のMerom搭載機では、既存のNapaプラットフォーム(現行のInte Core Duoマシンと同じプラットフォーム)を用いるNapa Refleshプラットフォームが用いられるが、来年にはSanta Rosaという新プラットフォームへと移行する。

 Santa Rosaは、新GMCHのCrestlineとICH8M、それに無線LANチップのKerdonで構成されるプラットフォーム。Crestlineは第4世代の新グラフィックスコアが統合されており、管理性とセキュリティを強化。最大10ポートのUSB 2.0と3ポートのシリアルATAが利用できる。また無線LANチップはMIMO技術を応用したIEEE 802.11nに対応しており、現行の54Mbpsから5倍の高速化を達成する。

 そしてこのSanta Rosaでは、新しい機能としてRobsonという機能が加えられる。Robsonを用いることで、Windowsの起動とアプリケーションの立ち上げが大幅に高速化される。

 RobsonはディスクI/Oの一部をNAND型フラッシュメモリに置き換える技術で、Windowsの起動時間を半分にまで短縮できる。また、アプリケーションの起動速度が高速化されるというメリットもある。デモではWindowsの起動のほか、異なるアプリケーションの起動、ファイルの読み込みを繰り返すテストが行なわれた。アプリケーションテストでは通常15秒かかるオペレーションが、Robsonありでは3.3秒で終了した。

 Robsonで注目されるのは、これがバッテリ消費をも抑えるという点だ。前述のアプリケーションテストを通じての平均消費電力は、Robsonありの場合で約2Wなのに対し、Robsonなしでは2.7Wを消費する。

●韓国でWiMAXアクセスサービス開始、世界へ拡大

WiMAX通信カードを年内に発売する。2.3〜2.5GHz帯に対応し、ワールドワイドで利用可能としているが、日本ではこの周波数帯は利用できない

 最後にマローニ氏が伝えたのは、WiMAXの拡がりだ。

 2年前にアナウンスされたWiMAXは、時を経て現在、世界的に採用の動きが拡がっている。一番最初に商用サービスが開始されたのは韓国で、韓国テレコムが2.5GHz帯を用い、今年からIEEE 802.16eでのモバイルユーザー向けインターネットアクセスサービスを開始しているという。

 802.16eではハンドオーバー機能などが強化されており、時速120km以上でのハンドオーバーにも対応する。基調講演ではWiMAXアクセス機能を持つハンドヘルドPC搭載のデモ用スクーターなども紹介されたが、実際、自動車をインターネットと接続する用途にも、将来的には使われていく可能性がある。Intelでは802.16eの展開について、2007年には始まると見込んでおり、これに合わせる形で年内には802.16e対応のWiMAX通信カードを発売する。

 この通信カードは2.3〜2.5GHzの周波数帯に対応するワールドワイド仕様のもの。ただし日本ではこの帯域が携帯電話で利用されており、利用できる可能性はない。Intelによると、世界中のほとんどの地域において、上記周波数帯のどこかでWiMAXが利用可能になるとの事。業界標準は2.3〜2.5GHz帯になりそうだが、日本はローカル仕様として5GHz前後の帯域で空きを探す事になる。

 なお日本で鷹山が2005年末に開始したWiMAXサービスは、バックボーンに4.7GHz帯のWiMAXを利用し、アクセスラインは無線LANでカバーする方式を採用しており、WiMAXのネットワークに直接PCからアクセスできるわけではない。

 マローニ氏は世界初となる、無線LANとWiMAXの統合型無線チップを開発することに成功した事も紹介。今後、さらにこの分野への開発に力を入れるとし、質疑応答では将来的なCentrino向け無線チップへのWiMAXの統合に意欲を見せた。

□IDF Spring 2006のホームページ(英文)
http://www.intel.com/idf/us/spring2006/
□IDF Spring 2006レポートリンク集
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2006/link/idfs.htm

(2006年3月9日)

[Reported by 本田雅一]

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