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テムザックとNTT Com、ショッピング補助ロボットの実証実験を開始2月9日開始 株式会社テムザックとNTTコミュニケーションズ株式会社(NTT Com)は9日、共同で電子タグ(RFID、無線ICタグ)、IPv6を使った大型ショッピングセンターでのサービスロボット実証実験を開始した。
この実験は経済産業省情報経済課による「平成17年度電子タグ実証実験事業」を両社が共同で受託し、ロボット産業振興会議の協力のもと、福岡県にあるショッピングセンター「ダイヤモンドシティ・ルクル」で行なわれるもの。 経済産業省側の目的は「IPv6ネットワークに対応した電子タグの利活用方法を検証」し、「日常生活の支援におけるサービスロボットの有用性、電子タグの位置情報を活用したサービスロボットの低廉化および汎用化の可能性を検証する」というもの。 通常、サービスロボットを動かすためには位置や環境情報獲得のために高精度なGPSなど各種センサーを実装する必要があるが、そのためにロボットが高価格になってしまうという短所がある。そこで今回の実験ではインフラとして床におよそ5,700枚のRFIDを埋め込むことで、ロボットに位置情報を提供。インフラ側を知能化すれば、サービスロボットのコストを下げることが可能だという。 タグにはEPC(Electronic Product Code)が振られており、その情報はネットワーク越しに管理されている。位置情報や各種サービスもネットワーク越しにサーバーからロボットに提供されている。 実験のためにテムザックによって開発されたロボットは、ショッピング同行ロボット「T12-1」、遠隔ショッピング支援ロボット「T12-2」の2台。それぞれ、呼べば来ることから、前者は「クル」、遠隔操作用のカメラで見る(look)機能を持つことから、後者は「ルク」という愛称がつけられている。両方合わせると、実験場所を提供した「ルクル」となる。 ロボットは高さ170cm、奥行き120cm、幅73cm。重量はおよそ160kg。駆動方式は独立2輪駆動+バランスキャスター×2で、その場回転することができる。移動速度は最大時速6kmだが、運用時の速度は約2km以下となっている。 バッテリはリチウムイオンで、通常の待機状態であれば8時間程度は保つという。障害物検知を行なう超音波センサ、レーザーレンジセンサ、バンパーセンサを持ち、前後に取り付けられたバンパーの下それぞれに、無線ICタグのリーダーがある。
まず、「クル(ショッピング同行ロボット)」のデモが行なわれた。クルはいわば、客のあとをついてくるショッピングカートロボットである。最初に、客はロボットに自分を認証させるためのアクティブタグを持つ。アクティブタグを持つことで、その所持者のみがロボットを操作することが可能になる。 次に、ロボットの背面につけられたタッチパネル・ディスプレイで、行きたい店舗を選択する。ロボットは、床に埋められたRFIDの情報をベースに位置を補正し、間の店舗を紹介しながら移動していく。目的店舗まで到達するとディスプレイで店舗内情報を案内する。 ショップ内の一部商品にはRFIDが付けられており、ロボットのアンテナにかざすことで商品情報を表示させることもできる。 ロボットの背面には荷物を入れるスペースがあけられており、購入した商品はそのなかに入れてロックすることができる。カギは最初に渡されるアクティブタグを使う。 また、利用者がパッシブタグ内蔵型PDAを店舗にかざすことで、離れた場所にいるロボットを呼ぶこともできる。利用者の位置情報をPDAを通じて店舗のリーダに読み取らせ、そこからロボットを呼ぶという仕組みだ。これによって、常にロボットにつきまとわれるのではなく、ロボットはある程度離れたところにいて、人間は自由に買い物するという形を取ることが可能だという。 午前中の報道公開のあとは、一般の来客者のなかから体験希望者をつのって、実験が行なわれた。
いっぽう、遠隔ショッピング支援ロボット「ルク」は、遠隔地のPCからブラウザを通じて操作することができるロボットである。基本的にクルとほとんど同じ機能を持つほか、カメラが取り付けられており、実際のショッピングモールをロボットで移動しながら、店員とやりとりしたり、ウインドウショッピングすることができるという。
記者公開された当日は、平日だけあって、店内は母親に連れられた子供たちが多く、特に子供たちは動き回るロボットに興味津々。子供に手を引かれて実証実験デモに参加した親子連れが多かったようだ。なかには、じーっとロボットを見つめ続ける子供も見られた。
なお、今回の全体予算はロボット、RFID、システムそのほかを合わせると総計で一億数千万円がかかっているが、本来の実用的用途だけに限れば数千万円程度の投資でインフラ整備が可能になるという。 経済産業省 情報経済課長の加藤洋一氏は「ITとロボティクスの融合は、日本がアドバンテージを持つべきであり現に持っている分野。今後、この分野をさらに後押しし、電子タグの普及に弾みがつけばいいのではないか。普及のためには国内だけではなく海外も視野に入れた、さまざまなレベルでの標準化が重要だ。実験を通して、色々な課題と今後の方向性を探っていきたい」と語った。 今回の実験では開発に問題があり、IPv6のアドレスを実際に持っているのはロボットに搭載されたカメラだけで、あとはv4とv6のハイブリッドで運用されている。NTTコミュニケーションズの牧貞夫 取締役第一法人営業本部長は、今後、IPv6を使って実際にモノとモノの通信アプリケーションを実証し、IPv6基盤に反映させたいと述べた。
いっぽうテムザックの高本陽一社長は、「いったんインフラが入れば、そのあとは導入すればするほど1台あたりのコストは安くなる。今後は、高齢者のために重たいものを持ってついてきてくれるロボットや、あるいはハワイのアラモアのショッピングセンターに遠隔操縦ロボットが100台あれば、リアルなショッピングモールでロボットを操縦してショッピングができる」と将来像を語った。 また、サービスロボットを実際に普及させるためには、啓蒙も重要だという。例えば、車に対しては危険だという一般常識があり、敢えて車の正面に飛び出す子供はいない。しかしながら、ロボットの前に飛び出す子供はたくさんいる。テムザックのロボットの場合、抱きつこうとする子供もいるそうだ。そういう意味で、ロボットが社会のなかに溶け込むためには、ロボットとはどのようなものなのか伝える啓蒙も重要であり、今回のような実験が必要なのだという。 なおこの実験は、2月15日まで継続、一般公開されており、希望者は体験することも可能だ。実験の様子は「ダイヤモンドシティ・ルクル」ウェブサイトでも見ることができる。 □テムザックのホームページ (2006年2月10日)
[Reported by 森山和道]
【PC Watchホームページ】
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