|
Google ラリー・ペイジ氏基調講演レポート
1月6日(現地時間) 開催 CES2006最後の基調講演は、Googleの創業者の1人で、製品部門担当社長であるラリー・ペイジ氏である。同氏は、検索結果を評価する「PageRank」を、やはり創業者の1人セルゲイ・ブリンとスタンフォード大学に在学中に考案した。大学などでの技術的な講演はしているようだが、こういう大きな舞台に登場することは少ない。 この日、会場には白い布が張られ、講演が始まるまで流れる音楽もクラシックだった。スクリーンには、世界各国の言葉で、おそらくはGoogleで検索されたであろう単語がスクロールしていく。ただ、ランキング上位の単語なのかはよくわからない。なぜなら、「ウェルシティ前橋」や「九段会館」といった日本語がときどき混じるからである。 ラリー・ペイジは、自動車の後ろに掴まって舞台に登場した。この車は、DARPA Grand Challenge(ロサンゼルスからラスベガスまでの砂漠地帯を無人で踏破する自動車を作る競技)で優勝したスタンフォード大学のStanleyである。
●ラリー・ペイジ氏から家電/IT業界への要望 話を始めたラリー・ペイジは、ちょっと“オタク”的な印象の人。「こんなにたくさんのカメラは生まれて初めて見た」ということだが、大舞台に臆している雰囲気はない。 「今度は“Google Fast Food”というのをやりたいと考えている。車のダッシュボードにあるボタンを押せば、携帯電話で注文が行なわれ、車が自動的に店まで行って、シューターから商品が落ちてくる。運転者は、店の場所を知らなくても大丈夫」とまずは冗談から話を始めた。
それからデモを見せたのは、フォルクスワーゲンと共同で開発した、Google Earth/Mapを組み込んだ車のダッシュボード。さらには、普通の携帯電話でも同じようなナビゲーションが可能になることを示した。 その後、同氏は家電、IT業界に対しての要望を話し始めた。Googleが便利に使ってもらえたのは、インターネットがTCP/IPやHTTPといった仕様で共通化されていたから。 それに対して、たとえば家電やコンピュータ、携帯電話など、我々は数多くのACアダプタを使わなければならない。さまざまな電圧、さまざまな国の電源に対応したものが1つあればいいんじゃないか? と指摘した。逆に、携帯電話は、Bluetoothを使うことで、ヘッドセットと携帯電話を自由に組み合わせることができるようになっているとも。
また、USBは便利だけど、たとえば、自分のデジカメにある映像を他人にあげたいときに、わざわざパソコンにつないでからでないと転送できないってのは不便。デバイス同士が直接データをやりとりできるような仕組みが必要だとした。 たとえば、携帯電話だとBluetoothでヘッドセットと自由に組み合わせることができる。このような感じで、さまざまなデバイスをメーカーや種類を問わず自由に組み合わせてデータ交換ができたり、ACアダプタならどんなデバイスにも電力供給ができるようにする必要があるとした。 その上で、データの転送プロトコルやインターネット接続などの機能を持ち、デバイス同士、インターネット接続などに使え、電力も供給できるインターフェースを一緒に開発しませんかと提案した。 言っていることはわからなくもない。たしかに筆者など、海外取材するときには数多くのACアダプタを持っていかねばならない。 ●Google TalkがBlack BerryやNOKIA770にも Googleが開始したメッセンジャーサービス、「Google Talk」は、現在では、クライアントはWindows用のみだが、スマートフォンである「Black Berry」(RIM)や「NOKIA 770 Internet Tablet」への対応が進められているという。 また、AOL株式の取得により、AOLのメッセンジャーサービスであるAIMとの接続が可能になった。もともと、Google Talkは、Jabber/XMPPに対応しているため、iChatやGAIMといったメッセンジャーソフトともチャットが可能。AIMとの相互接続が可能になることで、さらにユーザーが増えることになる。 今回の講演前のウワサでは、Googleが安価な「Google PC」を発表するというのがあったが、実際には、そういう発表はなかった。ただ、インターネットによるデジタルデバイド、特にアフリカなどでの問題を解決するためにMITが中心になって行なっている、いわゆる100ドルラップトップのプロジェクトに協力しているという話をし、そのプロトタイプを見せた。これを見て、短絡的に「Google PC」と思った人もいたようだ。
●ソフトウェアのセットアップを簡単にするGoogle Pack Googleからの最初の発表は、「Google Pack」。これは、ソフトウェアのダウンロードを簡単に行なえるようにするサイトである。専用のツールをインストールすれば、あとは、ソフトウェアのインストールを指示すれば、アップデートなども含めて自動的に行なわれ、実行するまでは、ユーザーは手を触れる必要がない。専用のインストーラーを作り、ダイアローグボックスなどがインストール途中で表示されないようにしているのだという。 「ただ、インストーラーを最初に使うときには、許諾契約に従うかどうかを指定しないとダメだとウチの弁護士に言われたので」と言っていたように、インストーラーを最初に使うときだけは、使用許諾契約を受け入れるボタンを押す必要があるようだ。 しかし、以後は、リストアップされたソフトウェアのどれを使うのかをチェックするだけで、インストールが行なわれ、Runをクリックすれば、ソフトウェアが起動する。対応するソフトウェアは、スタート時点では、ブラウザの「FireFox」やAdobe Reader(PDF)、ウィルススキャンソフトなど。 Google Packは、「Google Updater」と呼ばれるソフトウェアをが常駐して専用サーバーを監視しているようだ。それでアップデートを見つけると自動的にダウンロードしてインストールを行なう。起動されるとすべてのソフトのインストールを自動的に開始する。インストール過程でユーザーの手を煩わさないようになっているところが単なるダウンロードソフトと違う点。 いまはまだ数が少ないが、ソフトウェアが増えてくれば、新しいマシンの環境構築なんかも簡単にできるようになるかもしれない。現在のバージョンは米国向けなので、対象となるソフトウェアは英語版。一応、対象以外の言語を使用中であることを検出するとインストールは行なわれない。日本でもサービス開始が期待される。
●ロビン・ウィリアムス登場 ペイジ氏は、もう1つの発表として、人間とGoogleを統合する試みがあり、今回は、そのプロトタイプを見せると述べた。 舞台が暗くなり、なにやら頭に機械のようなものを装着した人が登場。これが俳優のロビン・ウィリアムスだった。「グットモーニングベトナム」や「ミセスダウト」などで有名なロビン・ウィリアムスは、日本で言う漫才師のようなトークでも有名。あまりにすごくて文章にしにくいのだが、会場は笑いっぱなし。ペイジ氏が「ファイアウォールって何?」と聞くと「コンピュータのコンドームと考えていただいてかまいません」などと答える。当日、日本語通訳サービスがあったのだが、通訳の女性はほとんど笑っていて、翻訳どころではなかったのである。
●Google Video MarketPlace Googleが開始したGooble Videoは、テキストによるビデオの検索が可能なものだが、視聴可能なのは、インターネットに公開されているものだけなので、本数が限られている。これを解消すべく、CBSテレビやSONY BMGとGoogleは提携、有償のビデオ販売サイト「Google VideoStore」を開設する。SONY BMGからはミュージックビデオ、CBSからは現在放送中の「サバイバー」などの番組が購入できる。もちろん、検索も可能で、最初の30秒は無料。内容にかかわらず1本1ドル99セントだという。 また、NBAのバスケットボールの試合や、CBSが版権を持つ昔のテレビドラマ、「I Love Lucy」(アイラブ ルーシー)、「The Brady Bunch」(ゆかいなブレディ一家)、「Twilight Zone」(ミステリーゾーン)や「Rocky and Bullwinkle」(空飛ぶロッキー君)、「Felix the Cat」(フェリックス)といった、日本でも放映された名作もリストアップされている。再生には、「Google Video Player」を利用し、コピー管理を行なわないので、ポータブルデバイスへ転送して楽しむといったことが簡単にできるのだという。 これについては、後で質問が出たが、ペイジ氏は、「多くの人は、正当な方法でビデオを入手したがっており、非常に安い価格で提供しているため、不正は少ないだろう」と述べた。 残念なことに、購入できるのは米国内のみ。質問に対してペイジ氏は、映像には、さまざまな権利がからんでおり、国単位での扱いしかできない、各国でのサービスの開始を待って欲しいとのこと。また、一般ユーザーがビデオを販売することは、現時点のシステムではできず、もう少し待って欲しいとのこと。しばらくは、特定のコンテンツホルダーと提携の上、販売を行なわせるようである。 ビジネスモデルについては、収入の一部をGoogleが徴収するが、ほとんどはコンテンツホルダーに支払われることになるとのこと。 最後に、ペイジ氏は、Q&Aセッションを設けたのだが、そこにもロビン・ウィリアムスが登場、またもやワンマンショー状態だった。 2005年あたりから、基調講演に有名人を呼ぶのがかなり激しくなってきた。まあ、講演するほうにしてみれば、お金はかかるが、手軽に話題を呼べるし、ウケもいい。この傾向は当面続くかもしれない。
□2006 International CESのホームページ(英文) (2006年1月8日) [Reported by 塩田紳二]
【PC Watchホームページ】
|
|