●First4Internet提供のアンインストールツール 10月末のMark Russinovich氏のBlogから始まったソニーBMGのrootkit騒動は、2カ月近くを経過して、ようやく完全にアンインストールする環境が提供されるようになった。ただし、それは当初一部で予想されていたMicrosoftの提供によるものではなく、rootkitを含むコピープロテクション技術であるXCPの開発元、First4Internetが提供するアンインストールツールだった。 Microsoftは毎月、定期的に悪意のあるソフトウェアの除去ツールをリリースしている。そして、12月分に件のF4IRootkitへの対応が含まれると予告されていた。12月中旬にWindows Updateにより配布された除去ツールには、確かにrootkitを取り除く機能が加わっていたものの、XCPのアンインストール機能は残念ながら含まれていなかった。すなわち、Windows Updateを実行することで、XCPによるCCCDを再生したことのあるユーザーのPCから取り除かれるのは脆弱性の要因となり得るrootkit本体(arise.sys)のみである(画面1)。
当然のことながら、XCPをPCから取り除いてしまうと、XCPによるコピープロテクションのかけられたCDの再生ができなくなる。再びXCP CDを再生しようとすると、再びEULAが表示され、合意するとまたXCPがインストールされることとなる(もちろん、無理やりユーザーがファイル削除をしてしまうと、WindowsからCD-ROMドライブが消えてしまう)。 結局、XCPのアンインストールは、XCPのないCDとの交換とセットになっていなければならない。そうである以上、XCPのアンインストーラを配布できるのは、CDを交換することのできるもの、つまりSony BMG以外にないということになる。Sony BMGはXCP CDを普通のCDへ交換する方針を明らかにしており、作業が開始されている。 Sony BMG製のCDを国内販売するソニー・ミュージックジャパンインターナショナルも12月12日から交換作業をスタートさせており、12月21日の時点で、同社が販売したXCP付き42タイトル(うち2タイトルはXCPは含まれていないが、ジャケットにその表示があるもの)中、17タイトルの交換が始まっている。残りのタイトルについても、追って交換が始まる予定だ。交換の受付は2006年3月末までを予定している。 ●完全なアンインストールが可能 CDの交換がスタートしたことを受け、XCPのアンインストーラの配布も始まった。XCPのアンインストールには、Microsoftが作成したWindowsのコンポーネントを再配布することが必要だといわれていたが、おそらくMicrosoftは再配布を認めたのだろう。アンインストーラのコピーライトはFirst4Internetになっているが、配布しているのはSony BMGとなっている。ソニー・ミュージックジャパンインターナショナルの日本語サイトにも、アンインストーラのダウンロードリンクと、Sony BMGによるアンインストール作業についての告知文の和訳が掲載されている。 ここで入手したアンインストーラを実行すると、rootkit(F4IではシステムからDRMファイルを見えなくするarise.sysを、rootkitではなくcloaking componentと呼んでいる)を削除し、XCPを最新のService Pack 3にするか、XCPを完全にアンインストールするかを選択する画面2が表示される。Service Pack 3を選択するユーザーがいるのかどうかは知らないが、CDの交換が始まった現在、多くの人はアンインストールを選ぶだろう。 アンインストールを選択すると、ファイルのコピー作業が行なわれ、すぐに処理は完了する。システムの再起動を促す画面3が表示され、再起動すると、system32フォルダからXCPは消えていた。ちなみに、ユーザーが無理やりXCPを削除し、WindowsがCD-ROMドライブを認識しなくなった状況を作り出して、アンインストーラを実行してみたが、ちゃんとCD-ROMドライブが復活することを確認した。
なお今回、XCP CDを再生し、専用プレーヤーソフト(Player.exe)を表示させてみたが、以前(画面4)と異なるメッセージが表示されるのに気づいた(画面5)。ネットワークから切断した状態では、このメッセージが表示されるようにならないことから、ネットワーク経由でプレーヤーの一部が更新されたものと推定される。Player.exeが外部と通信しているのは、以前のテストでもファイヤーウォールソフトにより確認していたが、やはり薄気味悪い。
●未解決の問題も CDの交換とアンインストーラの提供で、PCに関する部分についてはとりあえず最終的な解決策が提示されたことになる。後は、米国で起こされている訴訟にどういう結論が出るかだが、これは裁判の行方に注目しているほかない。 Sony BMGには、このXCPとは別の、MediaMaxといわれる全く異なったコピープロテクト技術にも問題があることが指摘されており、12月に入ってようやく公式な対応がとられ始めた。現時点でMediaMaxについては、脆弱性を修正するパッチの提供と、MediaMaxの開発元であるSunnCommによるアンインストーラの提供のみで、MediaMaxを含まないCDへの交換は行なわれていない。果たしてこれで済むのだろうか。 MediaMaxによるコピープロテクションが行なわれたCDのリストを見ると、Alicia Keys、Britney Spears、Chris Brownなど、いわゆる売れ筋のアーチストが多いことに気づく。これらの交換を余儀なくされれば、XCPのタイトル交換とはケタ違いの支出となることが予想される。 以前も述べたように、元々CDはコピー保護技術を想定していないパッケージである。そこに後付けでコピー保護技術を付与し、なおかつ既存のプレーヤーとの互換性を持たせるというのは、矛盾した話だ。どこかに歪が生じると考えた方が良い。その歪は、CDを販売するレコード会社にも経済リスクとなって降りかかってくる可能性があるということを、知っておくべきだろう。
□アンインストールツールダウンロードページ (2005年12月22日) [Reported by 元麻布春男]
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