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FPD International 2005レポート

高付加価値液晶パネルへの転換を図る台湾勢

会期:10月19日~21日

会場:パシフィコ横浜 展示ホール



 前回はおもに韓国企業の展示内容をレポートした。今回は台湾企業によるフラットパネルの展示内容を、お届けする。

 台湾のフラットパネル、特にPC用カラーTFT液晶パネルは、どちらかと言えば品質よりも低価格が売り物とされている。日本や韓国などの液晶パネルに比べると技術力では劣るものの、低価格を武器にデスクトップPCディスプレイやノートPCなどでシェアを拡大してきた。今回のFPD Internationalを見ると台湾企業からは、「安かろう」から脱却し、技術力で日本や韓国のパネルメーカーと正面から競おうという意識が強く伺えた。

 それでは大手パネルメーカーであるAU Optronics(AUO)とChi Mei Optoelectronics(CMO)、Chunghwa Picture Tubes(CPT)のブースで注目を集めた展示物を、10月18日に開催された記者会見の内容を交えながら紹介しよう。

●AU Optronics(AUO):TV用広視野角技術を披露

 台湾の最大手液晶パネルメーカーであるAUO(友達光電)は、幅広い製品系列を有している。PCディスプレイ用パネルやノートPC用パネル、TV用パネルなどの大型液晶パネルのほか、デジタルカメラ用パネルや携帯電話機用パネル、携帯型DVDプレーヤー用パネル、車載用パネルなどの中小型液晶パネルまである。

 18日の記者会見ではExecutive Vice PresidentのDr. Hui Hsiung氏がスピーチし、大型液晶パネルで今後拡大する市場はTV用、中小型液晶パネルで今後拡大する市場は携帯電話機用と車載用との見方を示した。AUOは価格競争に陥らないような製品展開を進めており、性能の高い製品を業界に先駆けて発売する、競争相手の少ない製品分野に力を入れるといった手を打っている。

台湾AUOから見たTFT液晶パネル産業。日本、韓国、台湾、そして中国と新興の液晶パネル企業が勃興してきた 台湾AUOの事業戦略。例えば、応答時間の短い液晶パネルを業界に先駆けて発売することによって製品に付加価値を付け、価格競争を避ける 台湾AUOの製品別売り上げ比率。2003年1月の時点ではPCディスプレイ用パネルが売り上げの88%を占めていた。それが2005年9月の時点では44%に下がっている。一方でTV用パネルの売上高が急速に伸びている。2005年9月の時点では、売り上げの24%をTV用パネルが占めるようになった

 AUOが2006年に向け、開発に力を入れている液晶パネルは2種類ある。1つはTV用パネル、もう1つはPCディスプレイおよびノートPC用ワイド(16対10)パネルだ。

 TV用パネルは複数名による視聴が前提となる。斜め方向や真横に近い角度から見ても、正面とあまり変わらない画像品質を要求される。そこで広視野角技術「AMVA(Advanced Multidomain Vertical Alignment)」を開発した。AMVAを採用したパネルの視野角は、水平/垂直方向ともに178度と広い。

2006年に向けたパネル開発の方向。TV用パネルと、PCディスプレイおよびノートPC(NBとはNoteBook PCのこと)用ワイドパネルに力を入れる 広視野角技術AMVAの効果。AMVA技術は広視野角技術MVAの改良版である。MVAの弱点だった色あせを減少させた。なおMVA技術は富士通が開発した。AUOは富士通からMVA技術を導入し、独自に改良を加えた。AMVA技術は別の広視野角技術S-IPS(Super In-Plane Switching)に比べると輝度およびコントラストの減少が少ないと主張する 実際に展示されていたAMVAパネル。32型WXGA(1,366×768ドット)パネルで比較した。上がAMVAパネル。下が従来パネル。2つのパネルを縦に並べた状態で回転させ、色調の変化が来場者に分かるようにしていた

 さらにTV用パネルでは、応答時間の短縮に力を入れている。動画表示の品質を高めるためだ。このためAUOは、応答時間(Gray to Gray)が4msと短い液晶パネル技術を開発した。

 またTV用に、画像処理回路をオプションとして用意した。松下電器産業やソニー、シャープ、パイオニアなどの国内薄型TVメーカーは、画像処理回路を独自開発するのが普通である。しかし海外のTVメーカーによっては、画像処理回路を独自開発しない企業がある。そこでAUOが画像処理回路を供給し、画質の調整を可能にする。

4msと短い応答時間(Gray to Gray)を実現したTFT液晶パネル技術。なおAUOでは、応答時間を短くする技術を「GFI」と呼んでいる 展示ブースでは、32型WXGA(1,366×768ドット)パネルを上下に並べて比較していた。上が応答時間4msのパネル。下は応答時間8msのパネル AUOが液晶TVメーカー向けに用意した画像処理技術。鮮やかさ、コントラスト、色の濃さ、色調などを調整できる

 PC用のワイド液晶パネルでは、ノートPC用に12.1型/13.3型/14.1型/15.4型/17型のワイドパネルを供給する。15.4型ワイドと17型ワイドの解像度はWXGA+(1,440×900ドット)になる。PCディスプレイ用には20型/23型/24型などのワイドパネルを供給する。20型の解像度はWSXGA+(1,680×1,050ドット)、23型/24型の解像度はWUXGA(1,920×1,200)である。

PC用のワイド液晶パネルにおける展開 23型WUXGA(1,920×1,200)液晶パネルを展示。画素ピッチは0.258mm。色再現範囲はNTSCの72%。視野角は、水平/垂直方向ともに170度。輝度は250cd/平方m。コントラスト比は800対1。応答時間(Gray to Gray)は8ms。消費電力は6.5W。質量は3kg

●Chi Mei Optoelectronics(CMO):56型の4倍フルHD高解像パネルを開発

 CMO(奇美電子)は、台湾の大手液晶パネルメーカーの中ではTV用パネルに早くから進出していた。18日の記者会見ではAssistant Vice PresidentのDr. Kuo Chen-Lung氏がスピーチし、同社の概況を述べた。

 CMOは、過去5年の年平均成長率(CAGR)が75%という、ものすごい勢いで売り上げを伸ばしてきた。2005年第2四半期の時点で、TV用液晶パネルのシェアは世界第2位、PCディスプレイ用液晶パネルのシェアは世界第4位である。

CMOの概要。創立は'98年 CMOのシェア。TV用液晶パネルの出荷数量では韓国Samsung Electronicsを抜き、世界第2位につけている CMOの液晶パネル製品。TV用パネルの種類が多い

 今回のFPD Internationalでは、解像度が3,840×2,160ドットときわめて高い56型TV用液晶パネルを出品し、来場者の注目を集めていた。フルHDTVの4倍のドット数(QuadフルHDTV)を誇る。当面の用途は何かとの質問に対し、説明員は「業務用や情報表示用などが考えられる。博物館の展示用もありうる」と回答していた。CMOの関連会社にはChi Mei Museum(奇美博物館)があり、同博物館で使われるのかもしれない。

3,840×2,160ドットの56型TV用液晶パネルの概要。2006年第3四半期に量産を始める予定 56型TV用液晶パネルの展示。解像度は3840×2160ドット。画素ピッチは0.324mm×0.324mm。表示寸法は1244.16mm×699.84mm。視野角は水平/垂直方向とも176度。コントラスト比は1,000対1。色再現範囲はNTSCの75%。応答時間(Gray to Gray)は8ms。質量は30kg。バックライトはCCFL(冷陰極管)が32本。信号入出力は8チャンネルのLVDS。消費電力は不明

 また14.1型で300gと軽いノートPC用液晶パネルを展示していた。2006年第2四半期に量産を開始する予定である。

14.1型で300gと軽いノートPC用液晶パネルの概要。解像度はWXGA(1,280×800ドット) そのパネルの展示。輝度は240cd/平方m。コントラスト比は400対1。応答時間は16ms。消費電力は5.3W

●Chunghwa Picture Tubes(CPT):65型のLCoSリアプロTVを出品

 CPT(中華映管)は元々、CRT(ブラウン管)の製造企業として'70年に設立された。その後、液晶パネルやプラズマパネルなどを製造品目に加えて現在に至っている。

 18日の記者会見では、Vice PresidentのKay C. Y. Chiu氏がスピーチし、同社の事業展開を述べた。TFT液晶パネルの市場シェアでは現在、台湾で第3位、世界で第6位に着ける。今後は2007年に世界で第4位のTFT液晶パネルメーカーを目指す。具体的には、これまで主力製品だったPCディスプレイ用パネルの比率を抑え、TV用パネルとノートPC用パネルの売り上げ比率を伸ばす。

 Chiu氏はまた、2005年~2006年におけるPC用液晶パネルの出荷計画を述べた。PCディスプレイ用パネルでは17型の出荷を伸ばし、15型の出荷を縮小する。ノートPC用パネルではワイド品の比率を急速に増やす。2006年にはすべてのノートPC用パネルをワイド品にする計画である。

CPTの製造品目の推移。'70年の白黒TV用CRTが始まり CPTの最近の売上高と市場シェア。TFT液晶パネルでは世界第6位、CRTでは世界第3位のシェアを占める CPTの事業計画。2007年には、売上高を2005年の2倍に拡大する。牽引役はTV用パネルとノートPC用パネルである

PCディスプレイ用パネルの出荷計画。2005年~2006年は、全体の出荷数とともに17型の比率を急速に増やす ノートPC用パネルの出荷計画。ワイドパネル、特に15.4型のワイドパネルに注力する。2006年後半には15.4型ワイドパネルで24%、世界第2位のシェアを目指す

 CPTがFPD Internationalに出品した中では、LCoS(Liquid Crystal on Silicon)技術による65型フルHD対応リアプロジェクションTV(リアプロTV)が目を引いた。LCoSとは、ミラー電極や駆動回路などを形成した半導体チップとガラス基板の間に液晶層を挟んだデバイスである。液晶層に電圧を加えることで、ミラー電極で反射する光の偏光状態を制御する。LCoSと偏光ビームスプリッタを組み合わせると光を通したり、遮ったりできるようになる。さらにレンズ光学系と組み合わせると、リアプロTVを構成できる。LCoSは開口率が高いので、ドット間のすき間のほとんどない、滑らかな画像を得られるという特徴がある。

LCoS技術による65型フルHD対応リアプロジェクションTV。解像度は1,920×1,080ドット。輝度は600cd/平方m。コントラスト比は1000対1。色再現範囲はNTSCの75%。視野角は水平方向が120度、垂直方向が60度とやや狭い。応答時間は10ms未満。外形寸法は1,500mm×1,060mm×450mm。説明員によると、2005年末には量産を開始する予定 光学系の展示。LCoSおよび光学系はCPTが独自に開発したという LCoSと偏光ビームスプリッタ(プリズム)を組み合わせたモジュールの図面。赤色(Red)、緑色(Green)、青色(Blue)で合計3つのLCoSデバイス(図中のmicrodisplay)を使う。入射光(Input)からまず緑色(Green)が分離され(図中の左上)、それから赤色(Red)と青色(Blue)に分離される(図中の右下)。各LCoSデバイスで反射した光は再び集められ、出力される(図中の左下)

LCoSと偏光ビームスプリッタ(プリズム)を組み合わせたモジュールの実物。手前左側でフレキシブルプリント基板が接続されている板がLCoSデバイス。そのとなりのガラス状の物体が偏光ビームスプリッタ(プリズム) LCoSデバイスを形成したシリコンウエハー。LCoSの大きさは0.7型。表面に微細なミラー(反射鏡)をマトリクス状に作り込んであるため、周囲の景色がきれいに映り込んでいる。

□FPD International 2005のホームページ
http://expo.nikkeibp.co.jp/fpd/japanese/
□AU Optronics(AUO)のホームページ(英文)
http://www.auo.com/
□Chi Mei Optoelectronics(CMO)のホームページ(英文)
http://www.cmo.com.tw/cmo/english/index.jsp
□Chi Mei Museumのホームページ(中文)
http://www.chimei.com.tw/museum/index.html
□Chunghwa Picture Tubes(CPT)のホームページ
http://www.cptt.com.tw/
□関連記事
【10月】FPD International 2005レポートリンク集
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2005/link/fpd.htm

(2005年11月2日)

[Reported by 福田昭]

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