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Fall Processor Forum 2005レポート マルチコア普及への平坦でない道のりカンファレンス会期:10月25日~26日(現地時間) 会場:米カリフォルニア州サンノゼ DoubleTree Hotel 今回のFall Processor Forumはメインテーマとしてマルチコアを掲げた。正しくは「The Road to Multicore」である。 なぜマルチコアプロセッサが必要となるのか。マルチコアプロセッサの利点とは何か。マルチコアプロセッサの普及に向けた課題は何か。このような疑問に答える講演が2本あったので、紹介したい。 まず、マルチコアプロセッサがなぜ必要なのか、である。米Azul Systemsの共同設立者でCTOを務めるScott Sellers氏の講演「Unshackling Innovation Through Multicore Architectures」が、マルチコアの必然性を解説した。なおAzul Systemsは、ネットワークを通じて複数のプロセッシングハードウェアを接続したシステムの開発企業であり、ハードウェアの中核としてマルチコアプロセッサを開発している。
●消費電力問題がマルチコアを促す なぜマルチコアなのか。言い換えると、なぜシングルコアではプロセッサチップの性能を上げられないのか。単純に言ってしまえば、消費電力が限界を超えてしまうからである。 シングルコア、すなわち1個のプロセッサコアで処理性能を高めるには、動作周波数を上げるのが手っ取り早い。しかし半導体チップの製造技術として普及しているCMOSプロセスは、動作周波数に比例して消費電力が増えてしまうという欠点を抱えている。そして現在は、消費電力の大きさがマイクロプロセッサの性能向上を制限するようになってしまったとの認識をSellers氏は示した。
半導体チップは電力消費によって発熱する。回路の動作速度は温度によって変化するので、放熱によって温度を下げてやらないと半導体チップの動作が保証できなくなってしまう。PCやサーバーなどのプロセッサでは、放熱はファンによる強制空冷が主流になっており、一部では伝導水冷が使われている。伝導水冷は放熱性能は抜群であるものの、かつては大型コンピュータのCPUに使われていた複雑な放熱技術である。普及するとは言い難い。 そこでマルチコアプロセッサが登場する。複数のプロセッサコアに負荷を分散し、シングルコアに比べて動作周波数を抑えることで消費電力の増加を抑えるとともに、シングルコアでは達成できないような高い性能を実現する。これまでに、数多くのマルチコアプロセッサが開発されてきた。 Sellers氏は、米Azul Systemsが開発したマルチコアプロセッサ「Azul Vega」の概要も紹介した。命令セットアーキテクチャを見せないという、非常に変わった設計のチップである。24個と数多くのプロセッサコアを搭載する。
●マルチコアでも消費電力問題は解消されない ただしマルチコアプロセッサでも、消費電力の問題がなくなるわけではない。今後は、微細化によって半導体チップのリーク電流が急増する傾向にある。単純にプロセッサコアを増やしただけでは、消費電力の急増傾向を回避できないとSellers氏は指摘する。問題をクリアするには何らかの工夫が必要となる。 またプログラムによっては、マルチコアによる負荷分散がうまくいかないことがある。順番に処理しなければならないタスクは、1個のプロセッサコアで処理せざるを得ない。このようなタスクがプログラムにある割合以上で含まれていると、マルチコアによる性能向上があまり期待できなくなる。 このほかにもマルチコアプロセッサは課題を抱えている。 ・用途によってはソフトウェア開発の手法を変えないと性能が出にくい などである。
●ソフトウェアプログラムをマルチコアに適合させる マルチコアに関する最も大きな課題は、ソフトウェアプログラミングだと言われている。米MicrosoftのSoftware ArchitectであるHerb Shutter氏は「Software and the Concurrency Revolution」のタイトルで基調講演し、ソフトウェアプログラミングの並列化に関する現状を解説した。マルチコアプロセッサの性能を最大に引き出すためには、ソフトウェアプログラムをできるだけ並列化し、各プロセッサコアに負荷を均一に分散させなければならない。並列化はプログラムの開発作業に大きな影響を与える。プロセッサのマルチコア化は、ソフトウェア産業に非常に多くの作業を要求することをShutter氏は強調した。 一方で、シングルプロセッサの性能向上に頼っていたのでは、アプリケーションの処理速度は上がらなくなってきた。ソフトウェア開発者が、ハードウェアの性能向上をそのまま享受できた時代は終わったとの認識を、Shutter氏は示した。 また現状では、並列化の問題は主にクライアント側のアプリケーションソフトウェアにあり、サーバー側のアプリケーションソフトウェアでは並列化の問題は解消されているとShutter氏は述べた。現在は、並列化を進めるための努力が、各所でなされているという。
□Fall Processor Forum 2005のホームページ(英文) (2005年10月27日) [Reported by 福田昭]
【PC Watchホームページ】
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