●Intelが2006年後半にCPUマイクロアーキテクチャを一新
Intelは、現在、米サンフランシスコで開催されている「Intel Developer Forum(IDF)」で、2006年後半に投入する次世代マイクロアーキテクチャ(まだ名前がついていない)の概要を発表。実際のチップと、動作デモも公開した。
次世代マイクロアーキテクチャは、65nmで製造をスタートし、サーバーからモバイルまでの範囲で一斉に投入される。現在、Intelのx86系CPUは、デスクトップ&サーバーがNetBurst(Pentium 4)アーキテクチャ、モバイルがBanias(Pentium M)アーキテクチャに分かれているが、次世代マイクロアーキテクチャでは統合される。
次世代マイクロアーキテクチャに属するのは、デスクトップCPU「Conroe(コンロー)」、モバイルCPU「Merom(メロン)」、デュアルプロセッサ(DP)サーバーCPU「Woodcrest(ウッドクレスト)」、マルチプロセッサ(MP)サーバーCPU「Whitefield(ホワイトフィールド)」の4CPUファミリ。Conroe、Merom、Woodcrestが2006年後半に、Whitefieldが2007年に登場する。次世代CPU群はいずれもデュアルコアで、NetBurst系デュアルコアCPUとYonah(ヨナ)を置き換える。デスクトップとモバイルではシングルコアの従来アーキテクチャCPUも平行して残る。そのため、デュアルコア=次世代マイクロアーキテクチャ、シングルコア=旧アーキテクチャという棲み分けとなる。
次世代マイクロアーキテクチャでは、NetBurstとBaniasの両アーキテクチャの継承に、新しい拡張をプラスすると説明された。NetBurstのフィーチャであるバスやEM64T(Extended Memory 64 Technology)、VT(Virtualization Technology)など「*T」と呼ばれる拡張技術を継承、一方、Baniasからは電力最適化の設計思想を引き継ぐという。ただし、Hyper-Threadingは、「最初の実装には含まれない」(Stephen L. Smith氏, Vice President, Digital Enterprise Group)ことも公式に明らかにされた。もっとも、「時間が経てば実装するかもしれない」と含みも残した。
実際には、次世代マイクロアーキテクチャの開発は、Baniasを開発したIntelイスラエルの開発チームが担当した。そのため、Banias→Yonah(ヨナ)の発展型として開発したMeromに、NetBurstのフィーチャとバスを取り込んだと推測される。
●パフォーマンス/電力の時代へ
次世代マイクロアーキテクチャCPUはいずれもマルチコア。Conroe、Merom、Woodcrestがデュアルコアで、Whitefieldが4コアとなる。アーキテクチャの最大のポイントは、パフォーマンス/電力(Performance/Watt)を高めること。Intelは、これまでのCPU設計の思想を「パフォーマンス最適化時代(Performance Optimized Era)」と呼び、これからは「パフォーマンス/電力時代(Converged Performance/Power Era)」に移行すると宣言した。モバイルではPentium MからConverged Performance/Power Eraに入り、デスクトップ&サーバーも次世代アーキテクチャから移行する。
そのため、次世代マイクロアーキテクチャでは、高周波数化を指向したNetBurstの設計思想から離れ、より多くの処理を並列化することに注力した。マルチコア化による複数スレッドの並列実行と、CPUコア内部アーキテクチャの改良により、より多数の命令を並列できるようにした。
その結果、同じ消費電力当たりの整数演算性能はMeromは初代Pentium M(Banias)の3倍、Conroeは0.13μm版Pentium 4(Northwood:ノースウッド)の5倍になるという。デスクトップの方がギャップが大きいのは、Pentium 4のパフォーマンス/電力が、もともと極端に悪いからだ。
●TDPレンジは大幅に下がる
次世代マイクロアーキテクチャCPUではパフォーマンス/電力が上がるため、ターゲットとするTDP(Thermal Design Power:熱設計消費電力)レンジも下がる。サーバーが80W、デスクトップが65W、サブノートPCが5W、また、今回、公式には明らかにされなかったが通常電圧版モバイルが35Wとなる。4コアのWhitefieldはPentium D(Smithfield:スミスフィールド)と同等クラスのTDPと言われる。デスクトップは、Pentium Dの130Wの半分になり、初代Pentium 4のTDPレンジに戻ることになる。SFF(スモールフォームファクタ)のPCが作りやすくなる。
これらのCPUは、マイクロアーキテクチャは共通で、違いはキャッシュなどになる。デスクトップのConroeは複数のL2キャッシュサイズで提供される。キャッシュサイズは公式には明らかにされていないが、4MB版と2MBの2種類になる。キャッシュサイズは異なっても、バスは既存のPentium 4/Dと共通となる。モバイルのMeromのキャッシュコンフィギュレーションは1種類。IDFでのプレスブリーフィングの図では2MBに見えるが、4MBを搭載すると言われている。
サーバーCPUは、ワイドレンジのL2キャッシュサイズになるという。DPのWoodcrestはConroeと同じダイ(半導体本体)と見られるため4MBと推測される。MP向けの4コアのWhitefieldもL3キャッシュではなく、大容量のL2を持つように見える。 ●マイクロアーキテクチャの詳細は公開されず
マイクロアーキテクチャについては、全貌ではなく、一部だけが明らかにされた。次世代マイクロアーキテクチャも、NetBurstやBaniasと同様に、実行できる命令から実行するアウトオブオーダ(out-of-order)型実行アーキテクチャを取る。ただし、NetBurstとBaniasのどちらとも大きく異なる。 まず、目立つ違いは1サイクルに4命令を発行できること。「4wideの(命令)デコーディングと実行ができる。完全に4命令並列だ」(Smith氏)と説明された。現行のNetBurstとBaniasのどちらも最大3命令発行/サイクルだが、Merom系アーキテクチャではこの点が拡張されている。つまり、1度に実行できる命令数が多いことになる。 パイプラインは14ステージ。これは、「現行世代(のPentium M系)よりも少しパイプラインが深いが、NetBurstよりずっと少ない」(Smith氏)。パイプラインが深いと、高クロック化が容易となり、パイプラインが浅くステージ数が少ないと高クロック化が難しい。14ステージというステージ数は、このCPUがNetBurstのような高周波数指向ではないことを示している。 また、マルチコアを円滑に動作させるには、より多くのデータと命令をCPUコアに供給する必要があるが、そのための拡張も加えられている。メモりからL2へ、L2からL1へのプリフェッチや、2つのコアのL1間のスヌープやデータトランスファなども拡張されている。
マイクロアーキテクチャの分析については、追ってレポートしたい。
□IDF Fall 2005のホームページ(英文) (2005年8月25日) [Reported by 後藤 弘茂(Hiroshige Goto)]
【PC Watchホームページ】
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