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IDF Fall 2005レポート

モバイルプラットフォーム向けのマルチバンドソリューション

講演を行なったAlan Crouch氏。手に持っているのが、4つの無線デバイスを内蔵したハンドヘルドデバイスのプロトタイプ

会期:8月23日~25日(現地時間)

会場:Mosconeコンベンションセンター
   (米国カルフォルニア州サンフランシスコ)



 Intel Developer Forum Fall 2005開幕の前日となる22日(現地時間)に、プレス向けに同社の研究開発に関する説明が行なわれた。このうち、「Enabling Your Mobile Lifestyle」と名付けられたセッションでは、Intel Communication Technology LabsのDirector and General ManagerであるAlan Crouch氏が、モバイル環境におけるワイヤレス接続の将来について語った。

●RF干渉に対する取り組み

 そのタイトルからも分かるとおり、モバイルプラットフォームに関するセッション。現在のモバイルプラットフォームの用途は広がっている。例えば、インターネット常時接続、IP電話、メディアのダウンロードやストリーミング受信などを利用する人が増え、モバイル環境においてもデスクトップと変わらないネットワーク接続環境が求められている。

 モバイル環境においては特にワイヤレス接続が重視されるわけだが、その規格は近距離であればUWB、Bluetooth、Wi-Fi、広域であればWiMAXやW-CDMA/GPRSなどといった具合に、さまざまな規格が利用されている。これらの規格をシームレスに、そして常に最適な方法で接続することが理想となる。

 その障害となるのが、RF干渉だ。例えば、IEEE 802.11b/gとBluetoothが同じ2.4GHz帯を使っているため、同時利用時に干渉が発生することはよく知られているが、ワイヤレス規格の同時使用においては、常にこうした周波数帯の問題がつきまとう。

 こうした干渉をプラットフォームレベルで監視し、常に最適な状況を実現しようというのが、「Mitigate Radio Interference」と呼ばれるものだ。ICHに複数の無線デバイスを接続し、各々を切り替えながら利用するイメージになる。

 そのMitigate Radio Interferenceを実現したハンドヘルドデバイスのプロトタイプも公開された。これらは、「Bulverde」コアのXScaleをベースに、W-CDMA/Wi-Fi/GPS/Bluetoothの各無線デバイスを内蔵しているという。特に小さい方の機器は、手の平に乗るほどの大きさでありながら、底面にSDカードスロットを搭載。液晶ディスプレイで動画を再生するデモが行なわれた。

Mitigate Radio Interferenceの概念。左側が従来のSimulteneous Radio Operationと呼ばれる利用方法で、周波数帯の制限により同時使用できる無線デバイスが限られる。Mitigate Radio Interferenceの場合は、さまざまな無線デバイスを組み込んでおき、随時切り替えながら利用する プロトタイプと同じ機能を内蔵し、さらに小型化したハンドヘルドデバイス。動画再生のデモが行なわれた

●常に最適なネットワーク環境による接続

今後のワイヤレスネットワークにおいてチャレンジしていく3つの目標。シリコン無線デバイスの実用化や、シームレスなネットワーク相互運用性の向上、世界レベルでの規格の標準化を進めていくとしている

 さて、ここで現在Intelが取り組んでいる、3つの方向性が示された。まず最初に紹介されたのが、複数の周波数帯をカバーできるCMOS無線チップの開発である。といっても、これはすでに今年6月に京都で開催された「2005 Symposia on VLSI Technology and Circuits」において発表され、日本国内の報道関係者向けにも説明会が実施されている。

 2.4GHz帯と5GHz帯の送受信機やベースバンド部を収めたダイに、電力増幅回路などを加えたシステム・イン・パッケージで、トランシーバ部の再コンフィグレーションが可能なうえ、アナログベースバンド部が最大100MHzのバンド幅を持つことから、将来のIEEE 802.11nへも対応可能とされる点、消費電力を抑制している点などが本チップの特徴となる。

 ただ、こうした本チップの特徴以上に、先に紹介したMitigate Radio Interferenceのような、複数の無線デバイスをワンチップ化し、より低コスト、省スペース、低電力のマルチバンドソリューションを提供できる可能性を示していることが重要といえる。

IEEE 802.21の概念。MIHと呼ばれる仕組みによって、各無線デバイスをシームレスに切り替えられる

 続いては、異なるネットワークの相互運用性に関してであるが、現在IEEEによって「IEEE 802.21」という規格の策定が進められている。IEEE 802.21は「Media Independent Handover(MIH)」を介して、Wi-Fiやセルラーネットワーク、ほかの802.11シリーズ無線LANなどのハンドオーバーを行なえるように策定されている規格だ。

 このMIHでは、ユーザーがまったく気にすることなくネットワークを切り替え、しかもネットワークデバイスのパワーマネージメントも行なってくれる。例えば、Wi-Fiを利用可能なホットスポットのエリアから外れると、そのことを検出。自動的にセルラーネットワークデバイスをONにし、ネットワークを切り替え、Wi-Fiデバイスは電力を抑制してしまう、といった具合だ。

 このほか、WiMAXやIEE 802.11eなどを世界的な規格とすることが重要であるとし、例えば周波数帯のライセンスに関する問題の解決や、各規格の標準化に対してリーダーシップを発揮して取り組んでいくと述べた。

□IDF Fall 2005のホームページ(英文)
http://www.intel.com/idf/us/fall2005/
□関連記事
【6月20日】インテル、CMOSプロセスの802.11n対応RFトランシーバを開発
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2005/0620/intel.htm

(2005年8月23日)

[Reported by 多和田新也]

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