HP研究所 シニアフェロー アラン・ケイ氏

6月20日　開催

　日本ヒューレット・パッカード株式会社(日本HP)は20日、東京都杉並区立和田小学校にて、「アラン・ケイワークショップ」を開催した。

　このワークショップは、HP研究所 シニアフェロー アラン・ケイ氏が提唱する、オブジェクト指向のコンピュータ言語ツール「Squeak(スクイーク)」を用いての授業風景を視察するというもの。

　開催にあたり、日本HP ガバメント・パブリックアフェアーズ部部長 瓜谷輝之氏は同社の社会貢献活動を紹介。その一環として、2004年3月に杉並区の和田小学校、済美養護学校にノートPC、プリンタなど計約157台を寄贈したと語った。

日本HP ガバメント・パブリックアフェアーズ部部長 瓜谷輝之氏	日本HPの社会貢献プラン

　授業前には、HP-Sqeakers アドバイザー 阿部和広氏によるSqueakのデモンストレーションが行なわれた。

　Squeakでは、画面に書いた絵がそのままオブジェクトとなり、オブジェクトに対して回転、サイズの拡大/縮小、移動角度の設定、音声などが設定できる。これにより、アニメーションやゲームなどを、プログラム言語を意識することなく作成できるという。

　授業では、和田小学校の5年生、6年生計4クラスで1人1台ノートPCを使用し、Squeakを利用する。各クラスには日本HPの社員ボランティア「HPスクイーカー」がつき、製作上のわからない操作など、アドバイスを受けながら授業を進めていく。

　5年生の授業では、生徒それぞれが手書きで作成したアイデアメモを元に、Squeakを用いてのアニメーション作成。6年生は5～6人1組での班構成で学習し、それぞれが作成しながら、班内でオブジェクト動作のアイデア交換なども積極的に行なっていた。

白い画面に描かれた車。オブジェクトとして扱うことができ、拡大/縮小、時間設定による移動、角度設定による回転などが可能	青いハンドルと関連付けられた車は、ハンドルの動きに合わせて向きを変え、コースを走らせることができる	5年生の授業。あらかじめ作成したアイデアメモを元に、画面上にオブジェクトを作成していく

　授業後、日本HPのグローバルシチズンシップ(企業市民としての取り組み)について、常務取締役 鈴木邦夫氏はSqueakを例にとり、「単に物を寄付するだけ、ボランティアを派遣するだけではなく、水に石を投げ込んで波紋を広げるように、子供たちの創造力を豊かにしたい」との姿勢を示した。

6年生の作成例。画面枠にぶつかり、跳ね返ったボールをバットを使って打つ、というもので、このバットはコントローラで移動/操作が可能。ボールがバットに当たると音が鳴る	オブジェクトに条件付けがされており、盤面上で同じ色の駒が他色の駒をはさむと、同色に変わるという	振り子のオブジェクト。振り子が隣の振り子にぶつかり、最終的に反対側の振り子が跳ね上がる状態をアニメーションで表示した

　質疑応答では、アラン・ケイ氏は「コンピュータはツールとして考えられていたが、本のように使うこともできるのではないか」と話し、「本を読むだけでは、アイデアは生まれない。1番面白い本の活用の仕方は、本について何人かで話し合うことだ。コンピュータでも同じことができるのではないか」と語った。

　また、生徒が作成していた振り子のオブジェクトを例に取り、学習ツールとしてのSqueakについて言及。「端の振り子が隣にぶつかると、慣性が発生し、隣り合った振り子を通じて反対側の振り子が動く。この動作をSqueakで表示しようとした生徒がいた。このオブジェクトはアニメーション動作だが、実際の振り子の動作ではない。これをきっかけにして、実際の振り子を叩き、どのようにして振り子の間で慣性が交換されるのかを学ぼうとするようになれば、Squeakはアニメーションではなくシミュレーションになる」と説明した。

□日本ヒューレット・パッカードのホームページ
http://www.hp.com/jp
□スクイークランドのホームページ
http://squeakland.jp/

(2005年6月21日)

[Reported by ishid-to@impress.co.jp]