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本田雅一のE3レポート
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5月17日~20日(現地時間)開催
会場:LA Center Studios
毎年の事ながら、毎度驚かされれるのは北米における熱狂的とも言える任天堂の人気だ。GAMECUBEは成功していないじゃないかと言われるかもしれないが、子供の頃に遊んだNES、Super NES、そしてゲームボーイシリーズの記憶は、成長してゲーム業界で働くようになっても、根強く心に刻まれているのだろう。
今年のE3前日に行なわれた任天堂のプレスカンファレンスも、やはり同様に熱狂的なものだった。プレス以外にも代理店など関係者が呼ばれているとは言え、記者会見に並ぶ列ではNintendo DSを遊ぶ姿を数多く見かけた。また例年より集まった人の数も、ざっと見ただけで多い。会場での歓声を聞いていると、取材している自分たちまで楽しくなってきてしまうほどだ。
その彼らが今、もっとも気になっているのが任天堂の次世代ゲーム機、コードネーム「Revolution」だろう。しかし任天堂社長の岩田聡氏から公開された情報は、ほんの少しだけだった。話題の“革命的コントローラ”が何なのかも、今回は語られていない。
岩田氏自身が「パズルを解くためのヒントを少しだけ公開しましょう」と話したように、任天堂の発表したRevolutionの発表内容は、まるで謎解きのようだ。
●現存するピース
本誌の読者は、Revolutionに関する情報をまだ知らないという人もいるかもしれない。まずは事実として明らかになっている部分をまとめることにしよう。
採用プロセッサはIBMと共同開発の、コードネーム「Broadway」、GPUはATIが開発を担当したコードネーム「Hollywood」、これにBroadcom製の無線LANチップ(あるいは無線LAN機能をシステムチップに統合している可能性もある)が組み合わされる。また、GAMECUBEに対する上位互換性があり、GAMECUBEのゲーム開発環境を拡張した開発用パッケージを用意することで、これまでの開発スキルを生かすことを意識した設計。
またコントローラに新しい要素を取り込み、ゲームの遊び方を変えるとも話している。任天堂はNintendo DSの時にも同様のアナウンスをしたことがあった。結局、それはタッチセンサーの標準装備だったが、今回は何が組み込まれるのか。今回の発表では明らかになっていない。
今回明らかになったのは、512MBのフラッシュメモリ、12cm光ディスクの採用、SDカードスロットなどを装備し、オプションでDVD再生機能を利用可能な事。またコントローラはワイヤレス接続となり(これで全次世代機がコントローラのワイヤレス化を達成することになる)、非常にコンパクトな筐体に収められる。発売は来年。
「Revolution」を掲げる任天堂社長の岩田聡氏 |
どれぐらいコンパクトか岩田氏がRevolutionを手にしているところを参考にしていただきたいが、最終的にはさらに小型化が進められ、DVDケース3個を重ねた程度になるという。CPUとGPUの高性能化が進み、それに伴って発熱対策のために大型化する昨今の流れに逆流するデザインだ。
また下位互換性についても新しい情報が提供された。過去の任天堂ゲーム機のエミュレータを搭載し、過去20年以上にわたって発売されてきたすべてのソフトウェアを動作させることが可能になる。ソフトウェアはネットワーク経由でダウンロード可能になるようだ。
●埋まらない謎のピース
もっとも、Revolutionに関してはわかっている事よりも、わからないことの方がずっと多い。
Revolutionの光ディスクドライブはスロットイン方式を採用 |
光ディスクドライブはスロットインである事は見た目からわかるものの、任天堂はプレスカンファレンスの中で「DVDドライブ」だとは一言も言わなかった。DVD技術をベースにした別仕様のディスクを利用する事も考えられるが詳細はわからない。GAMECUBEのドライブがメディアを松下電器が提供していることを考えると、あるいはBlu-ray Discという可能性もゼロではないが、その場合はドライブのコストがネックとなるかもしれない。
またSDカードスロットをどのように使うかも謎だ。もちろん、ゲームデータの保存などに使うことは出来るだろうが、それならばSDカードでなく独自規格でもかまわない。単純に業界標準として採用したのか、それともSDカードでなければならない理由があるのか。
そして512MBのフラッシュメモリ搭載。岩田氏はコントローラ、ネットワーク機能、フラッシュメモリの搭載。これらの組み合わせで何が出来るかを想像して欲しいと話していた。Revolutionが提供する「革命的なゲーム体験」を実現する上で、新開発のコントローラとともに重要なピースになるようだ。
また性能に関しても興味深い。DVDケース3個分のサイズとなると熱設計はかなり厳しくなる。あまり消費電力の高いCPUやGPUを搭載するわけにもいかなくなる。絶対的なピーク性能では、PS3やXbox 360よりも低くなるだろう。
それでもなお強気のコメントに終始するのは、よほど自信があるからかもしれない。岩田氏は以前、一昨年、GAMECUBEのセールスが振るわない事に関して認め、どのように今後、食らいついていくかを話すなど実直な側面がある。無い袖を振り回して混乱させる事はないはずだ。
ただ、それが何かを探るには、やや材料が不足しすぎという印象だ。ハードウェアの絶対性能がライバルよりも低いとするなら、ほかの要素で異なる製品、より魅力的な製品であると見せる必要がある。しかし、その何かは藪の中だ。あるいは他社の発表内容を吟味した上で、何らかの対策を練るために延期したのかもしれない。
また、個人的にもっとも気になっているのが、協力パートナーとしてIBMとATIを紹介するときに「ゲーム以外の分野での協業も進めている」と話していた事だ。IBM、ATIと組んで何をやるのか。
コンパクトな筐体が本体のベースユニットから取り外せるようになっていたが、なぜこのような手の込んだ仕掛けにする必要があったのだろう? 考えれば考えるほど、埋まっていないピースの数は増えていく。
□E3Expoのホームページ(英文)
http://www.e3expo.com/
□関連記事
【5月18日】「Nintendo's E3 2005 Press Conference」レポート ~その1~(GAME)
http://www.watch.impress.co.jp/game/docs/20050518/nin1.htm
【5月18日】任天堂、「Revolution」の仕様の一部やこの秋発売予定のGBASP互換機「Game Boy Micro」など発表(GAME)
http://www.watch.impress.co.jp/game/docs/20050518/revo.htm
(2005年5月19日)
[Text by 本田雅一]