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本田雅一のE3レポート
リアルタイムシミュレーションのパワーを見せつけたPS3

P3を抱えて記念撮影に応じるSCE社長兼CEOの久夛良木健氏(写真右)とSCEA COOのHIRAI氏

5月17日~20日(現地時間)開催

会場:LA Center Studios



 すでに先週のうちに新機種発表で気勢を上げていたXbox 360。一方で変則的なアーキテクチャから「性能を引き出すのが難しすぎるのではないか?」など、いくつかの懸念が渦巻いていたPlaystation 3(PS3。これまで次世代PSがPS3と紹介される事もあったが、3世代目がPS3になると発表されたのは、実は今回が初めて)。今回はかなり北米で苦戦するのでは? と思われていたPS3だが、E3 2005前のプレスカンファレンスではデモでライバルを圧倒した。

●数字よりも映像が語るPS3のスゴさ

Playstation 3

 これまでPS3は、その数字の凄さで語られることが多かった。1+8コアのプロセッサ構成、高速通信インターフェイスを備えたアーキテクチャ、そしてNVIDIAとの共同開発による高性能GPU。しかし、いくら大きな数字が並んでも、それが遊び(ゲーム)の中の何かを変えなければ、それまで以上の感動を引き出すことはできないだろう。

 ゲーム機のグラフィック性能が上がるだけでは、3Dゲーム機第1世代から第2世代への進化の延長線にしかない。PS3が3世代目の製品として、過去のPS、PS2と同様の成功を収めるためには、新しいグラフィック+αが必要だ。

 現在、次世代機と言われているPS3、Microsoft「Xbox 360」、任天堂「Revolution」は、いずれもハイビジョン時代を見据えた設計になっている。日本でも地上デジタル放送への移行が進む中、ハイビジョン受像器が増えているが、実は最大市場の北米は日本以上にハイビジョン受像器が伸びている。

 つまり次世代機においてハイビジョンクオリティで映像を出力できるのは“当たり前”で、長い目で見た時に差別化要因とはなりにくい。もちろん、実際には機種による3D画質の差は出てくるだろうが、高解像度の最新シェーダを駆使したグラフィックに“深み”をもたらさなければ「あぁ、たしかにキレイだね」で終わっていたかもしれない。

 たとえば、デモ映像の中でロンドン市街をシミュレートしたものやNVIDIAによる最新のシェーディング技術を用いたキャラクタの映像があった。これまで以上に高い質感を持ち、ジャギーもほとんど見えない、それだけでも驚きではある。通常のインタラクティブな3Dグラフィックでも、PS3の能力を感じることはできるかもしれない。

 しかし、個人的にもっとも興味深かったのは、風呂桶に溜めた水にアヒルの人形や戦艦の模型を落としていく映像だった。このデモでは水面の変化やそれに伴うアヒルや戦艦の動きなどを、シミュレーションコードを用いてリアルタイムに演算している。

 さらに三次元の動きを検出するコントローラを用い、コップを手に持って水を汲み、こぼしてを繰り返すと、それが目の前の実際の風景であるかのように画面内の各種要素が振る舞った。インタラクティブな操作に対する“自然な振る舞い”は、あらかじめ動きのパターンをプログラムしていたのでは実現できない。

 対して日常生活や経験の中で染みついた物理現象によるさまざまな事象を、物理シミュレーションによってリアルタイム演算で求めることが可能になれば、その振る舞いはどんどんリアルの世界に近づいていく。映像的には地味なデモだが、使い方次第でゲームのインタラクティブ要素に大きな変革をもたらすかもしれない。

 また地形をフラクタル演算でリアルタイムに生成しながら、演算で求めた仮想の地表を飛び回るデモ映像も興味深い。ゲーム内の3Dワールドを自動生成するアプローチはこれまでにもあったが、演算能力が増す事でより自然な地形生成が行なえるようになる。これも使い方次第で、伝統的なゲームスタイルの殻を破る要素になるはずだ。

 PS3のスゴさはスペック上の数字で追うよりも、その応用例を実際に動画で見る方がピンと来やすい。もちろん、ゲームとしてのおもしろさは、実際にPS3上で動作するタイトルでのみしか判断できないが、何かが変わる可能性を感じるには十分なデモだったとも言える。

 このほか、ハードウェア仕様を見るとBluetooth、USBコントローラ以外に、無線LAN経由でPSPをコントローラとして利用できるほか、「Network(Over IP)」との記述もある。Ethernet経由でのリモート操作ということだが、これがどのように使われ、ゲームの中に反映されるのかも興味深いところだ。

●ホームメディアセンターとしての可能性も示唆するPS3の仕様

 一方、AVマニアが仕様を決めたのではないか? と思えるほど豪華な端子類とサポートフォーマットの多さも興味深い。

 HDMI端子2個を装備し、デジタルでのフルHD(1080P)出力を2系統行なえる。2台のフルHDモニタを並べ、デュアルディスプレイのように使うことが可能。2系統に別々の映像を出力する場合でも、1080Pのクオリティをキープできる。

 発表の中ではHDMIの細かな仕様が語られていなかったが、最新仕様に準拠しているのであれば、HDMI端子からは6本のS/PDIFデジタル音声信号が出力可能だ。たとえば24bit/96KHzの6チャンネル出力も行なえる。また、対応するAVアンプなどと組み合わせれば、BD-ROMのビデオフォーマットに採用される見込みの「Dolby Digital Plus」や「DTS-HD」などにも対応できるはずだ(これらの音声フォーマットはHDMI出力が義務づけられる予定)。

PS3正面 PS3背面。HDMI×2などインターフェイスが充実 左側面 右側面
横置き状態 Bluetoothで接続されるワイヤレスコントローラ

 またSDカードスロットの装備も意外に感じる人が多いだろう。プレスカンファレンス後、SCEの久夛良木健社長兼CEOにそのことを聞いてみると「取材はまた今度ね」とかわされたが、2.5インチHDDスロットに装備するHDDと組み合わせ、デジタル写真を大型テレビやプロジェクタで楽しめるフィーチャーを用意するのかもしれない。現在のデジタルカメラを見れば、SDカードとコンパクトフラッシュのサポートが必要な事は明らかだ。

 HDDとの組み合わせでは、音楽配信サービスの利用やCDリッピングなども可能だと思われる。メモリスティックに書き出し、PSPで楽しむ事もできるようになるだろうが、SDカードスロットがここにどのように絡んでくるかはまだわからない。

 光ディスクドライブは公約通り、BD-ROMドライブが搭載される。ゲームには25/50GB(仕様上の最大は27/54GB)という大容量は不要という意見もあるだろうが、フルHD対応に伴い、ゲームに挿入されるムービーもHD化されて行くはずだ。ムービーのHD化が進めば、いずれDVDでは容量が足りなくなると考えられる。

 また書き換え型のBD-REやライトワンスのBD-Rに対応し、それぞれに記録されたビデオの再生も可能になる。BD-REは現行の保護ケース付きは利用できず、裸ディスクのBD-RE 2.0からとなる。SACDに対応している点も興味深い。ありとあらゆるデジタルコンテンツの再生に対応しようとしているのがわかる。

 また非常に細かい点だが、電源ケーブルが直出しではなく、IEC標準の3端子コネクタになっているところ。IEC端子は必須というものではなく、明らかにコストアップ要因。音質や画質の面では有利だが、オーディオ機器でも低価格製品では採用されていない。にも関わらずPS3に採用しているところに、AV機器としてのコダワリを感じさせた。

 ハイエンドAV機器の置き換えにはならないだろうが、家庭向けとして十分なクオリティを備えている可能性はある。PS2のDVD再生機能はオマケ的要素が強かったが、PS3のAV機能はかなり“本気”の仕様になっているかもしれない。

□E3Expoのホームページ(英文)
http://www.e3expo.com/
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(2005年5月18日)

[Text by 本田雅一]

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