元麻布春男の週刊PCホットライン

新プラットフォームに対するIA-64ベンダの反応




●IA-64市場に富士通が参入

 3月1日のサンフランシスコを皮切りにスタートしたIDF Spring 2005は、極東、ロシア、初のアフリカ開催となるエジプトを経て、6月のウクライナで最終を迎える。それから2カ月弱で次のIDF Fall 2005がサンフランシスコで始まるのだから、年2回開催といいつつ、IDFは通年行事となりつつある。この世界ツアーの日本版がIDF Japanとして去る4月の7日、8日の2日間にわたって開催された。

 開催期間の違いなど、IDF Japanには米国開催のIDFとは異なる部分がいくつもあるが、特に今年のIDF Japanで感じた違いの1つは、IA-64の取り上げ方の違いだ。最初のIA-64プロセッサであるItanium(Merced)の時から、日本電気や日立製作所は、世界的には苦戦の否めないこのプロセッサをサポートしてきた。

PRIMEQUEST

 IDF Japanにおいて、IA-64の扱いが大きくなるのもある意味では当然だ。特に今回は、直前にIA-64に関連した発表がベンダからあったことも影響しているのかもしれない。発表の1つは日本HPのメインフレーム級サーバーでのLinuxサポート、もう1つは富士通のIA-64ベースのメインフレーム級サーバーである「PRIMEQUEST」の発表である。

 中でも富士通のPRIMEQUESTは、Intelの前エンタープライズプラットフォーム事業本部長であったマイク・フィスター氏が非常に力を入れていた案件。すでに自社アーキテクチャ(メインフレーム)とRISCベースのUNIXサーバー(SPARC)を持つ富士通に、IA-64の採用を働きかけるのは、大変なことだったに違いない。残念ながら氏はPRIMEQUESTのデビューを見ることなくIntelを離れてしまったが、エンタープライズプラットフォーム事業本部改め新デジタルエンタープライズ事業本部にとって、4月6日にに行なわれた発表会はビッグイベントだったハズだ。

 翌日のIDF Japanで冒頭のキーノートスピーチを行なうことになるIntelのアビ・タルウォーカー副社長(デジタルエンタープライズ事業本部長)も出席、PRIMEQUEST上の主要OSサプライヤであるマイクロソフト日本法人のマイケル・ローディング社長、Red Hatのアレックス・ピンチェフ副社長と席を並べた。IA-32プロセッサにおける64bit拡張(EM64T)のサポート表明以来、IA-64には外部からの事業縮小や事業撤退の予測がつきまとう。PRIMEQUESTの発表会に事業本部長が出席することは、こうした懸念に対する打ち消しの意味もあるのだろう。

富士通の発表会に出席したIntelのタルウォーカー副社長とマイクロソフトのローディング社長

 実際、今IntelにIA-64プロセッサを止められては大変なことになる。富士通、日立、NECとわが国のメインフレーマーは、みなメインフレーム級のサーバーにIA-64を採用した。いずれのベンダも、自社でチップセットの開発から行なうなど、大きく、長期に渡る投資を行なっている。いまさらハシゴを外されては困るのである。発表会にタルウォーカー副社長とローディング社長が顔を揃えたことも、まるでハシゴを外したりはしませんという表明であるかのようだった。

 それはともかく富士通は、このPRIMEQUESTでWindows ServerとLinuxのサポートを行なう。ACOS上のアプリケーションをIA-64上でサポートするNECとは異なり、メインフレーム環境のIA-64への移行は当分行なわない見込みだ。同様に、SPARCサーバーをIA-64で置き換えるというわけでもない。要するに、既存のメインフレームとSPARCベースのサーバーに、さらにIA-64のサーバーを追加するのが富士通の戦略である。

 IA-64を追加した理由は、やはりアプリケーションプラットフォームとしてWindows Serverが今後急速に伸びてくるという予想からだろう。もちろん、IA-32上に蓄積されたソフトウェア資産の継承という点も重視しており、IA-64上でIA-32アプリケーションを動作させるIA-32EL(IA-32 Execution Layer)のチューニングにも相当口を出したらしい。現状のIA-32ELは、すべてのアプリケーションにおいて実際のIA-32プロセッサに匹敵する性能を発揮しているとはいかないようだが、アプリケーションによってはXeonプロセッサに匹敵する性能に達しているようだ。

●各社の独自技術が満載されるIA-64システム

 PRIMEQUESTの最大の特徴は、市販のIA-64用Windowsがそのまま動く互換性を維持したまま、システムの完全な二重化を図った点にある。メモリ、バス(クロスバー)、チップセットの内部にいたるまで二重化され、全体が同期動作することで、完全な二重化を実現している。

 90nmプロセスで量産される(PCI Expressインターフェイスチップのみ0.13μmプロセス)「プレアデス(昴)」という開発コード名を持つ6チップ構成のチップセット、チップセット間の接続に用いる同期型バス(開発者の名前をとってMTL、Mori/Muta Transceiver Logicと呼ばれる)など、中核技術は自社開発のものだ。

 もちろん、こうした自社開発技術へのこだわりは、このクラスのサーバーを手がけるNEC、日立、HPなどに共通するもの。いずれのサーバーもチップセットは自前だ。言い換えると、プロセッサのホストバス(FSB)の受け手がIntel製ではない、ということでもある。

6種類のチップで構成されるプレアデスチップセット。メモリコントローラやバッファチップは1台のシステムに複数が用いられるため、6個で1組というわけではない 90nmプロセスの200mmウェファで製造されるプレアデスのNorth Bridgeチップ

 現在のIntelのIA-64プロセッサロードマップでは、年内に登場する90nmプロセスによるデュアルコアプロセッサの「Montecito」、その次のMontecitoのマイナーチェンジ(おそらく65nmプロセスへのシュリンクがメイン)と見られる「Montvale」まで、現在のプラットフォームと互換性を維持することになっている。が、その次の世代の「Tukwila」では「Richford」と呼ばれる新しいプラットフォームへ移行することになっている。

 Richfordで採用されるチップセットでは、メモリがFB-DIMMになるだけでなく、同時期のXeon MP(コード名「Whitefield」)とプラットフォームが共通化される。これはTukwilaとWhitefieldで、FSBが共通化される、ということを意味する。

 おそらくタイミング的に考えて新しい共通のFSBは、Point-To-Pointインターフェイスをベースにしたものになるのではないかと思われる。当然のことながら、こうしたFSBの変更はチップセットを自社開発するサーバーベンダにも影響を及ぼす。2007年と見られるRichfordプラットフォームの導入までまだ約2年あるわけだが、このクラスのサーバーにとって2年という時間は決して長くない。

●好意的に受け入れられている次世代チップセット

 果たしてメインフレーム級のサーバーベンダにとって、Intelのロードマップはどう映っているのだろうか。富士通の発表会、あるいはIDFの展示会場で、この点についてたずねてみたところ、返ってきた答えはいずれもプラットフォームの更新に好意的なものだった。

 Xeon MPとプラットフォームを共通化することが必要かどうかはともかく、FSBの更新を含めた定期的な技術革新はどんなクラスのサーバーだろうと不可欠なのである。メインフレーム級のサーバーといっても、今ではクラスタリングをサポートしたx86サーバーとの競争に常にさらされている。技術革新を怠れば、存在そのものが脅かされる。プラットフォームの性格上、1〜2年毎に新しい技術を採用するというわけにはいかないとしても、5年くらいのサイクルで新しい技術を採用することは欠かせない。

 Intelが新しいRichfordプラットフォームで導入しようとしている技術の1つにFB-DIMMがある。DIMM上にAMB(Advanced Memory Buffer)チップを搭載することで、チップセット〜DIMM間のインターフェイスを高速化、大容量化に有利なPoint-To-Pointインターフェイスに変換しながらも、メモリチップそのものは汎用品が使えるというアイデアだ。

 その導入目的が一義的にはこのメモリの大容量化(インターフェイスの高速化により減少傾向にあるチャネルあたりのDIMM搭載量を増大させる)にあることは明らかだが、AMBでDRAMのデバイスレベルのインターフェイスをチップセットから分離することは、プラットフォームへの影響を最小限に抑えつつ新しいメモリ技術へ対応できるようになるという効果ももたらす。

 これまで、SDRAMからDDR SDRAM、そして DDR2 SDRAMとメモリチップのデバイスレベルのインターフェイスの変化に伴い、チップセットも変更を余儀なくされてきた。しかし、FB-DIMMの世代になれば、動作電圧の変更などボードレベルの修正は欠かせないにせよ、これまでのようにチップセットを全面的に改める必要はなくなる。DRAMの更新サイクルより長い技術サイクルでプラットフォームの更新が行なわれるサーバーに適したメモリ技術だ。FSB、メモリインターフェイスなど、主要インターフェイスのPoint-To-Point化は、技術の陳腐化を避けつつ寿命を延ばすという点で、サーバーにとって重要なものと考えられる。

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【4月6日】富士通、「世界最強」を自負する大規模基幹向けIA-64サーバー(Enterprise)
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http://enterprise.watch.impress.co.jp/cda/topic/2005/04/05/4998.html

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(2005年4月15日)

[Reported by 元麻布春男]


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