元麻布春男の週刊PCホットライン

KOUZIROのPentium 4 640搭載PCを試す




 2月22日、Intelはプロセッサーナンバーが600番台のデスクトップPC向けPentium 4プロセッサ4種と、Extreme Edition 1種を発表した。すでに先週末の2月19日に事実上のデビュー(アキバでのフライング販売開始)を飾った600番台のPentium 4の動作クロックは3.0GHz(プロセッサナンバー630)~3.6GHz(同660)で、なぜか既存のPentium 4の最高クロックであった3.80GHz品は含まれていない。Extreme Editionの方も動作クロックは3.73GHzで、Extreme Editionとしては最高クロックに達しているものの、やはり3.80GHzを超えることはできなかった。

 動作クロックを更新する代わりに性能向上の手段として選ばれたのはL2キャッシュの増量。600番台のプロセッサは、500番台のプロセッサの2倍にあたる2MBのL2キャッシュを搭載する。Extreme Editionも、これまで販売されてきた130nmプロセスのものが512KBのL2キャッシュと2MBのL3キャッシュを搭載していたのに対し、600番台同様2MBのL2キャッシュを搭載する(L3キャッッシュを搭載しない)90nmプロセスのものに改められている。600番台とExtreme Editionの性能面での差別化ポイントは、FSBの違い(前者の800MHzに対し、後者は1,066MHz)ということになる。

 このほか、両者に共通する特徴は64bit拡張技術であるEM64Tの採用と、Windows XP SP2でサポートされたDEP(データ実行防止)への対応。EM64Tについては、「シングルプロセッササーバー向けのPentium 4」(動作クロックによる型番末尾にFが付く)やNoconaコアのXeonプロセッサで採用されていたが、デスクトップPC向けのプロセッサではこれが初めてだ。一方、DEPをサポートするeXecute Disable Bit(XD Bit)については、すでにプロセッサナンバーの末尾にJが付くPentium 4とCeleron Dプロセッサでサポートが行なわれているが、Extreme Editionでのサポートはこれが初めてとなる。

 この2つに加えて600番台のプロセッサではEnhanced Intel SpeedStep Technology(EIST)のサポートが行なわれており、プロセッサの負荷に応じて動作クロックと動作電圧がダイナミックに変更される。機能自体はすでにモバイル向けのプロセッサで行なわれており珍しいものではないが、IntelのデスクトップPC向けのプロセッサではやはりこれが最初だ。

 動的な動作電圧の変更についてはプロセッサだけでなく、マザーボード側の対応も不可欠だが、LGA775のデザインガイドにはこの機能が含まれており、デザインガイドに準拠している限り、BIOSのアップデートでEISTのサポートが可能となる(貸し出し時期が正式発表前であったため、評価機のBIOSはEIST未サポートであったが、とりあえず動作に問題はなかった。製品ではEISTをサポートしたBIOSになると思われる)。ちなみに、Extreme EditionでEISTがサポートされないのは、「最高性能を追求したExtreme EditionにEISTは似合わないから」らしい。

●新製品投入に敏感なホワイトボックス系PC

KOUZIROのPentium 4 640搭載PC「FRKT4P32F8K」

 というように、新しい5種のプロセッサ(600番台4種とExtreme Edition 1種)が採用する新機能は、個々に見ていくと目新しいものではない。が、これらの機能を包括的に採用した「全部入り」は、今回の新製品が初めてだ。だが、発表と同時に新しいプロセッサを搭載した新製品が華々しく、続々と登場しているかというと、そうでもない。一般向けの対応OSがまだ存在しないEM64Tは別としても、残りの機能(EIST、増量されたL2キャッシュ、XD Bit)はBIOSの更新で対応できるものばかり。プラットフォームレベルでの互換性は高いのだが、大手PCベンダーの対応は迅速とは言えない状況だ。

 かつてなら、Intelの新製品のタイミングに合わせてPCベンダーも新製品をリリースするのが常であり、だからこそIntelのロードマップにみなが注目していたし、発表日にIntelの新製品を確保できるかに鎬を削ったものだが、この1~2年でその構図は崩れてしまった。低価格化と同時に利幅の小さくなったPCから利益を上げるべく、独自の製品供給計画を重視するようになっており、Intelの発表とPCベンダーの発表は非同期になりつつある。そんな大手PCベンダーに代わって、Intelの新製品をいち早く搭載したPCを発表するようになったのが、いわゆるホワイトボックス系のPCだ。BTOやCTOによる機動性を武器にしたホワイトボックス系PCが、発表日の主役になっている。

 全国250店舗のヤマダ電機で販売されるフロンティアブランドのPCを供給するKOUZIROも、そんなホワイトボックス系PCサプライヤーの1社。ここで紹介するFRKT4P32F8Kは、Pentium 4 640(3.20GHz/FSB 800MHz)を採用したPCで、OSにWindows XP Media Center Edition 2005を搭載、代表的なMMORPGの1つである「リネージュII」をプリインストールしたモデルだ。

●メモリはDDR/DDR2両対応

 黒いミニタワーの筐体は、左側面にプロセッサのヒートシンクファンに対応したダクト付きのもの。ヒートシンクファンはプロセッサの温度によりファンの回転数が変動するタイプだが、ダクトにより冷却効果が高まる反面、そのノイズもストレートにダクトから放出される。静音性より高性能を求めるユーザー向け、ということなのだろう。ネジ止めになっている3.5インチHDDベイ以外のストレージと、拡張カードはネジなしで固定可能なケースだが、試用したPCでは拡張カードはネジと青い樹脂製のクリップで二重に固定されていた。

 マザーボードはIntel 915Pチップセット(82915P MCH+ICH6)を用いたもの。MSIの「915P Combo-FR」だ。名称(Combo)の由来ともなっているこのマザーボードの最大の特徴は、メモリスロットがDDRとDDR2のコンボ仕様になっていること。写真でオレンジのスロットがDDR2用、緑色のスロットがDDR用だ。それぞれDDR2 533(PC2-4300)とDDR 400(PC3200)に対応するものだが、同時に利用することはできない。つまり、DDR DIMMかDDR2 DIMMのどちらか2枚が最大実装量となる。

 標準構成では512MBのDDR400 DIMMが2枚装着されており、取り外さない限りこれ以上の増設はできない。マザーボード上にはほかにPCI Express接続のGigabit Ethernetコントローラ(Marvell Yukon)、C-Media製CODECチップによる7.1chオーディオ機能(S/PDIF出力付き)、VIA製のIEEE 1394コントローラ、VIA VT6410によるパラレルATA RAID機能(本機では未使用)が搭載されている。ストレージデバイスはHDDがSerial ATAのWD2500JD、光学ドライブはLG4163である(評価機にはLG4120が用いられていたが、製品ではLG4163が使われる)。FDDは、USB 2.0接続のカードリーダーと一体になったタイプだ。

【表1】FRKT4P32F8Kの主な仕様
CPUPentium 4 640
マザーボードMSI 915P Combo-FR
メモリPC3200 (DDR-400) 1GB
グラフィックスGeForce 6600 256MB
ディスプレイドライバForceWare 66.72
HDDWD2500JD
光学ドライブLG4120(製品ではLG4163になる予定)
LANMarvell Yukon GbE (PCI Express)

本体正面 本体背面 本体側面にはCPUに直通しているダクトを装備
マザーボードはMSIの「915P Combo-FR」 ダクトを備える側面カバー Pentium 4 640と付属のファン&ヒートシンク
拡張スロットの固定は青い樹脂製のパーツで可能な構造だが、ネジでも固定されていた 本機に採用されているPCI Express x16接続のグラフィックスカード(GeForce 6600/256MB) HDDはSerial ATAの「WD2500JD」
FDDはメモリカードリーダと一体型 4本ある本機のメモリスロット。シルク印刷にあるように、2本がDDR用、残る2本がDDR2用で、排他利用となる 搭載されているメモリはHynix製のDDR400-512MBモジュールが2枚(計1GB)で、デュアルチャネル構成となっている

 本機で一番気になるのは、対応可能なDDRメモリとDDR2メモリでどれくらい差があるのか、ということだろう。そこで、標準搭載されているDDR400メモリと筆者の手持ちのDDR2-533メモリで、簡単なベンチマークテストによる比較をしてみた。その結果が表2だ。DDR400とDDR2-533の差が非常に小さいことがわかる。

【表2】DDR400とDDR2-533の性能差
 CPUDDR400DDR2-533
3DMark 053DMarks18461846
CPU47964997
3DMark 033DMarks48054803
CPU Tests810821
PCMark 04PCMark44804464
CPU46454639
Memory46344807
Graphics23602364
HDD47594774

 この理由としては、そもそもDDR400とDDR2-533でクロック差が小さいことに加え、L2キャッシュが2MBに拡張されたこと、プロセッサのフロントバスの帯域が6.4GB/secでありデュアルチャネルのDDR400メモリと帯域が合致していることなど、さまざまなことが考えられる。

 DDR2メモリは、チップセット内蔵グラフィックスを利用する場合や、DDR333までのサポートとなっていいるノートPC(DDRメモリで動作電圧が下がったこともプラスに働くだろう)、FSBが1,066MHzのExtreme Edition等では、もう少しメリットが出ると思われる。が、本機のような外部グラフィックスを採用した、FSB 800MHzのシステムでは得られるメリットはそれほど大きくないようだ。

 現在、その差は縮まりつつあるとはいえ、まだDDR2メモリがまだ割高であることを考えると、本機がDDRメモリを採用したのは間違いではないだろう。いっそのことDDRメモリに対応したメモリスロットが4本の方が良かったのではないかとも思うが、一般的な利用であれば今のところ1GB以上に増設する必要性はそれほどないという判断かもしれない。

 本稿執筆時点では、他社の新Pentium 4採用マシンの価格動向は必ずしもハッキリとは分かっていないが、こうしたシステムの価格は、多くの場合、機動的に設定されるため、割高なものになるとは考えにくい。若干ノイジーな点が気になるが、新しい「全部入り」のPentium 4を搭載したシステムを早期に入手したいのなら、候補の1つになるだろう。

□KOUZIROホームページ
http://www.frontier-k.co.jp/
□製品情報
http://www.frontier-k.co.jp/product/game/rine2/index.asp

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(2005年2月23日)

[Reported by 元麻布春男]


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