12.1型液晶搭載のモバイルノート「VAIO type Y」



VAIO type Y

 ソニーは1月5日、VAIOシリーズのデスクトップPCやノートPCの春モデルを一挙に発表した。今回はその中から、12.1型液晶を搭載したモバイルノートPC「VAIO type Y」を取り上げよう。

 VAIO type Yは、バイオノート505の流れを汲むシンプルな1スピンドルモデルで、ビジネスユーザーをターゲットにした製品だ。

 なお、今回試用したのは、試作機なので、製品版とは細部やパフォーマンスが異なる可能性がある。


●最薄部24.9mmのスリムボディを実現

 VAIO type Yのボディは新しく設計されたもので、VAIO type Fと同様に、シンプルなフォルムが美しい。ボディカラーも、VAIO type Fと同じくパールホワイトとブラックを基調にしたものである。

 ボディサイズは285.7×247.8×24.9~35.8mmであり、スリムなボディを実現している。付属のバッテリ装着時の重量は約1.69kgで、12.1型液晶搭載1スピンドルモバイルノートPCとしては、驚くほど軽量というわけではないが(例えば、同じ12.1型液晶搭載1スピンドルマシンである松下電器産業のLet'snote T2の重量は約1.07kg)、気軽に携帯できる範囲に収まっている。

 Let'snote T2を持った後では、かなり重く感じるので、できればもう少し軽くしてほしかったところだ。ちなみに、VAIO type Yは、VAIO type Fなどとは違って、1モデル(VGN-Y70P)のみ用意される。

VAIO type Yの上面。ボディカラーはパールホワイトとブラックを基調にしており、VAIO type Fとよく似ている DOS/V POWER REPORT誌とのサイズ比較。横幅はほぼDOS/V POWER REPORT誌と同じで、奥行きはVAIO type Yのほうがやや大きい

●通常電圧版のPentium M 725を搭載

 VAIO type Yでは、CPUとして通常電圧版のPentium M 725を搭載している。動作クロックは1.60GHzで、このクラスのモバイルノートPCとしては高いパフォーマンスを誇る。例えば、Let'snote T2(CF-T2F)では、超低電圧版Pentium M 753を搭載している。プロセッサナンバーを比較すると、Let'snoteのほうが大きいが、超低電圧版Pentium M 753の動作クロックは1.20GHzなので(コアはどちらもL2キャッシュ2MBのDothanコア)、パフォーマンス的には、VAIO type Yのほうが上だ。

 その代わり、消費電力と発熱が大きいため、バッテリ駆動時間や放熱面では不利となる。放熱に関しては、Let'snote T2ではファンレス設計なのだが、VAIO type YではCPU冷却用にファンが装着されている。

 チップセットは統合型チップセットのIntel 855GMEで、先日発表された最新のモバイルIntel 915シリーズではない。Intel 915GMでは、内蔵グラフィックス機能が大幅に強化されており、3D描画性能が2倍近くに向上しているのだが、ビジネス向けという本製品の性格を考えれば、Intel 855GMEでも問題にはならないだろう。

 メモリスロットとして、SO-DIMMスロットを2基装備しているが、標準で256MB PC2700 SO-DIMMが2枚装着されているので、空きスロットは1基となっている。標準装備の256MB SO-DIMMを外して、代わりに1GB SO-DIMMを2枚装着することで、最大2GBまで増設が可能だ。

底面にはCPU冷却用のファンが1基用意されている。ファンの騒音は比較的静かである SO-DIMMスロットを2基装備。標準で256MB PC2700 SO-DIMMが装着されており、最大2GBまで増設可能だ

●ノングレアタイプの液晶パネルを採用
「コンピュータの電源を切る」ダイアログボックスに並ぶアイコンの横の長さは約9mmである

 VAIO type Yでは、液晶ディスプレイとして、12.1型液晶パネル(1,024×768ドット)を採用している。VAIOシリーズの他のノートPCでは、ツルピカ液晶の一種である「クリアブラック液晶」を採用した製品が多いが、VAIO type Fでは、表面がノングレア処理されている通常の液晶パネルを採用していることが特徴だ。

 クリアブラック液晶は、確かに輝度やコントラストが高く、鮮やかな表示が可能なのだが、映り込み防止用の多層ARコートが施されているといっても、やはり光源との位置関係によっては映り込みが気になることがある。携帯していろいろな場所で使うのであれば、ノングレアタイプのほうが見やすい場面も多い。

 VAIO type Yは、1スピンドルマシンなので、光学ドライブは内蔵していない。IEEE 1394ポートの横にはVAIO関連製品専用電源供給端子が用意されており、オプションのポータブルDVD-ROMドライブやポータブルDVDスーパーマルチドライブを使うことで、ACアダプタ不要で、光学ドライブを利用できる。

 HDD容量は60GBで、このクラスの製品としては十分な容量であろう。HDDはパック式ではないが、底面のHDDベイカバーを開けるだけで、比較的簡単に交換できるようになっている(もちろん、ユーザーによるHDD交換は保証外の行為となるが)。

右側面にIEEE 1394ポートを装備。すぐ横にVAIO関連製品専用電源供給端子(DC OUT)が用意されている HDDは、本体を分解せずとも交換できる構造になっている

 キーボードの配列は標準的で、不等キーピッチもないため、ミスタイプしにくい。キーピッチは約18mmで、キーストロークは約2mmである。キータッチもしっかりしており、快適に入力が可能だ。ポインティングデバイスには、インテリジェントタッチパッドが採用されている。パッドのサイズはやや小さめだが、操作性は良好だ。

キーボードの配列は標準的で使いやすい。キータッチも良好だ ポインティングデバイスとして、インテリジェントタッチパッドを採用。サイズはやや小さめだ

●拡張ポートも一通り装備

 拡張ポートとして、USB 2.0×2、IEEE 1394(4ピン)、外部ディスプレイ出力(D-Sub15ピン)、マイク入力、ヘッドホン出力を装備しているほか、PCカードスロット(Type2×1)とメモリースティックスロットも装備している。

 メモリースティックスロットは、標準サイズだけでなく、携帯電話などで使われているより小型のメモリースティックDuoもそのまま差し込むことが可能だ。PCカードスロットのフタは内側に倒れ込むようになっており、紛失する恐れはない。

 通信機能としては、100BASE-TX LAN機能と56kbps対応モデム機能に加えて、IEEE 802.11b/g対応の無線LAN機能を装備している。本体手前側に、ワイヤレススイッチやワイヤレスインジケータが用意されているのも便利だ。

左側面には、モデムポート、LANポート、外部ディスプレイ出力、USB 2.0×2の各ポートが用意されている 右側面には、ヘッドホン出力、マイク入力、IEEE 1394(4ピン)、VAIO関連製品専用電源供給端子、PCカードスロットが用意されている
本体手前側に、メモリースティックスロットを装備。携帯電話やPSPなどで使われている小型のメモリースティックDuoもそのまま差し込める 中央手前にワイヤレススイッチやワイヤレスインジケータが用意されており、ワンタッチで無線LAN機能のオンオフが可能だ

●付属バッテリで公称約5時間の駆動が可能

 VAIO type Yは、携帯して使われることが多いモバイルノートPCであり、バッテリ駆動時間が重要になってくる。標準で付属するバッテリパックは11.1V、4,400mAhの6セル仕様で、公称約5時間の連続動作が可能とされている。実際のテスト結果については、後述するが、標準バッテリで5時間持つのであれば、十分合格点をつけられる。

 なお、付属バッテリーの型番は「VGP-BPS2A」だが、オプションのバッテリパック(S)の型番は「VGP-BPS2」で、容量が4,800mAhに増えている。そのため、オプションのバッテリパック(S)を利用すると、公称駆動時間は約5.5時間となる。さらに長時間駆動が必要な人のために、バッテリパック(L)も用意されている。バッテリパック(L)を利用すれば、駆動時間は約8時間に延びるので、海外への出張の際などでも安心だ。ACアダプタのサイズも小さく、携帯性は良好だ。

標準で付属するバッテリパックは、11.1V、4,400mAhの6セル仕様 VHSビデオテープ(左)とバッテリパックとのサイズ比較 ACアダプタのサイズも比較的小さい。左はVHSビデオテープ

●パフォーマンスもバッテリ駆動時間も優秀

 参考のために、いくつかベンチマークテストを行なってみた。ベンチマークプログラムとしては、BAPCoのMobileMark 2002、SYSmark 2002、Futuremarkの3DMark2001 SEおよび3DMark03、id softwareのQuake III Arenaを利用した。

 MobileMark 2002は、バッテリ駆動時のパフォーマンスとバッテリ駆動時間を計測するベンチマークであり、SYSmark 2002は、PCのトータルパフォーマンスを計測するベンチマークである。また、3DMark2001 SEやQuake III Arenaは、3D描画性能を計測するベンチマークだ。

 MobileMark 2002については、電源プロパティの設定を「ポータブル/ラップトップ」にし、それ以外のベンチマークについては、電源プロパティの設定を「常にオン」で計測した。なお、ベンチマーク時には無線LANは無効としている。

 結果は下の表にまとめたとおりである。比較対照用に低電圧版Pentium M 1.20GHzを搭載した「Let'snote CF-Y2」(初代機)とPentium M 715を搭載した「Qosmio E10/1KLDEW」、Pentium M 1.40GHzを搭載した「Endeavor NT300」の結果も掲載してある。なお、CF-Y2やNT300に搭載されているPentium Mは、Baniasコアなので、L2キャッシュサイズがVAIO type Yで採用されているDothanコアの半分しかないことに注意してほしい。

 VAIO type YのMoblieMark 2002のPerformance ratingは174で、比較対照用に用意した他機種のスコアよりも高い。また、バッテリ駆動時間を示すBattery life ratingの値は、290(4時間50分)で、Let'snote CF-Y2にはわずかに及ばないものの、駆動時間はほぼ公称通りであり、十分満足できる。

 SYSMark 2002のスコアについてだが、Internet Content Creationは一番高い値を記録している。しかし、Office Productivityでは逆に一番低い。Office Productivityのスコアが振るわなかった理由は不明だが、HDD周りが足を引っ張っている可能性がある。ただし、Internet Content CreationやMobileMark 2002での結果から判断して、VAIO type Yは、このクラスの製品としては高い性能をもっているといってよいだろう。

 また、3DMark2001 SEやQuake III Arenaといった3D系ベンチマークは、CPUの動作クロックやチップセットから想定される通りの結果となった。さすがに、ハードウェアT&Lエンジンも搭載されていないIntel 855GMEでは、最新の3Dゲームをプレイするのは難しいだろう。しかし、一般的なビジネスアプリケーション中心に使うのなら、高い3D描画性能は不要である。

【VAIO type Y VGN-Y70Pのベンチマーク結果】
 VAIO type YLet'snote CF-Y2
(パフォーマンス優先モード)
Qosmio E10/1KLDEWEndeavor NT300
CPUPentium M 725低電圧版Pentium M 1.20GHzPentium M 715Pentium M 1.40GHz
ビデオチップIntel 855GME内蔵コアIntel 855GME内蔵コアGeForce FX Go5200Intel 855GME内蔵コア
MobileMark 2002
Performance rating174142171155
Battery life rating290298141115
SYSmark 2002
Internet Content Creation247150244173
Office Productivity124126149145
3DMark2001 SE
1,024×768ドット32bitカラー(3Dmarks)2,4642,3066,7462,411
Quake III Arena
640×480ドット32bitカラー107.3103.1294114
800×600ドット32bitカラー89.686.324187.2

●忙しいビジネスユーザーにはお勧め

 VAIO type Yは、派手な機能を搭載しているわけではなく、シンプルな構成だが、携帯性に優れたモバイルノートPCであり、PCとしての基本性能も高い。やはり1スピンドルモデルであるため、基本的にはデスクトップPCの代替機というより、持ち歩くためのセカンドマシンとしての意味合いが強い。初代バイオノート505登場時のようなインパクトはないが、細部に至るまで配慮が行き届いた、完成度の高い製品であると感じた。

 Let'snote T2に比べると重いが、CPUの動作クロックが高いため、パフォーマンス的には有利だ。営業の相手先や移動中にノートPCを使う機会の多い、ビジネスユーザーには特にお勧めしたい製品である。

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【1月5日】ソニー、ビジネス向け1スピンドルノート「VAIO type Y」
~15.4型ワイド液晶採用スリムノートも
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2005/0105/sony.htm

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(2005年1月28日)

[Reported by 石井英男]


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