塩田紳二のPDAレポート

WristPDA with Palm OSをようやく入手
ファーストインプレッションレポート



 昨年のCESでは「MSN Direct Watch」を入手したが、2005年のCESでは「WristPDA with Palm OS」を買った。購入したのは、昨年MSN Direct Watchを購入したのと同じラスベガス市内のFossilショップ。

 2年も続けて同じ店で同じメーカーの時計を買うなんて、「なんてバカ」って気がしないでもないが、2002年のComdexでの発表以来いくつかのレポートを書き、発売を待っていた身としてはどうしても買わずにはいられなかったのだ。価格は、249ドル(税別)。105円換算で26,000円ぐらい。時計としてはちょっと高価だが、PDAとしてみれば、まあまあの値段。

 製品パッケージは、円筒形の金属製のパッケージに入っている。ふたを開けるとスポンジ状のクッションの中に時計があり、その下に紙製の円筒形の箱がある。この箱の中に、説明書、専用USBケーブル、ACアダプタ、CD-ROMが格納されている。

 なんだかお菓子の入れ物みたいであんまりハイテク感がない。まあ、このあたりが時計メーカーであるFossilのセンスというやつなのだろう。

 CESレポートでも少し書いたが、このWristPDA with Palm OSは製品化直前まで行きながら延期されていた製品。そのため、今回商品化されたものは以前にレポートしたものとはデザイン/スペック共に違っており、新規設計されたもののようだ。話がややこしくなるので、今回発売されたものを「製品版」、2003年以前にレポートを行い、製品化されなかったものを「試作機」と呼ぶことにする。

 リリースによれば、製品にはFossilブランドの「FX2008」とAbacasブランドの「AU5005」の2つがあり、FX2008は米国内のFossilショップで、AU5005はTiger Directが販売を行なうとしている。この2機種、以前に発表されたようにメタルバンドと皮バンドの2種ではなく、どちらも皮バンドタイプで筐体のデザインが若干異なるものの、基本的なスペックは同一。今回購入したのはFossilブランドのもの。

 ここでは、とりあえず外観やスペックなど製品自体に関する情報をお届けし、詳細な評価は後日行なうことにする。

パッケージは円筒形の金属缶になっている。中には本体以外にACアダプタ、USBケーブル、CD-ROM、マニュアルなど WristPDAを正面から見たところ。本体は金属でできており、わりと高級な質感があるのだがちょっと大きめ

●外観にも変更あり

 本体は金属製で、スイッチ類は側面という外観はほとんど同じ。本体右側面にあるダイヤル型のロッカースイッチは、製品版ではレバータイプに変更されている。

 ボタンの機能は変わらず、本体左側下が「戻る」、右側上が「上」、下が「下」の上下キーに相当する。また、右側中央のロッカースイッチは上下に動かすことでカーソル移動や日付の移動に、押し込むことで「実行」(タップに相当)になる。

本体左側面には、バックボタン(上)とUSBコネクタ(下)がある 右側面には、「下」ボタン、ロッカースイッチ(中央)、「上」ボタンが配置されている。

 また、試作機では本体底部の専用コネクタにアダプタを装着し、アダプタ側に電源ジャックとUSBコネクタを装備していた。しかし、製品版では本体左側面にUSBコネクタが装備され、これを使ってPCとの接続/充電を行なう。

 説明書によれば、付属のACアダプタを使用しなくともUSB経由での充電が可能となっている。ただし、PC側の電力供給状況によっては充電が行なえない場合があり、その場合には付属のACアダプタを使う必要がある。

USBコネクタにはフタがついている。これは蝶番式になっていて、開いてコネクタを接続する。フタは軟らかい素材でできていて、コネクタ側にぴったりとはまるようになっている

 このUSBコネクタ、正面から見た形状はminiBと同じだが、付属のUSBケーブルはコネクタが縦に長くなっている。WristPDA側のコネクタは普段フタがついており、少し奥まった部分にコネクタ自体があるので、形状はminiBながら長くなっているのだと思われる。

 手持ちの普通のminiBケーブルを装着してみたが、なんとか接続できる。普通のminiBケーブルでも充電できているようだ。だが、これはあくまでも筆者が試した結果であり、Fossilが保証する方法ではない。試す場合には、あくまで自分のリスクで試してほしい。

 アダプタ不要で直接USBケーブルが接続できるのは、出張などで長期外出するときに便利。スペック上、WristPDAは3~4日しかバッテリが持たないので、2泊以上の外出時には用心のため充電の準備が必要。この仕様なら、付属のUSBケーブルだけ持って行けば、充電はPCから可能で荷物も軽くなる。

 バッテリの持ちは3日が限度というところ。PDA機能の利用回数やバックライトの利用頻度などによっても違ってくると思うが、毎日こまめに充電が必要という感じである。もっとも、購入直後でいろいろと触って遊んでいた状態なので、普段の使用頻度でまた違った結果になるかもしれない。

 操作用のスタイラスは時計バンドの留め金に組み込まれている。留め金内部のバネでスタイラスを押さえるようになっていて、簡単には外れないはずなのだが、不完全に差し込むと抜け落ちる可能性がある。一応、製品には予備のスタイラスが1つついている。

 このスタイラスは金属とプラスティックからできていて、折りたたみナイフのように開いて使う。

バンドの留め金の部分にスタイラスを格納できる。スタイラスは折りたたみ式になっていて、ナイフのように開いて使う

●最新のPalm OS 4.1マシン

 内部のスペックにも変更が行なわれている。試作機ではDragonball VZ 33MHzであったものが、Dragonball SuperVZ 66MHzになった。この点だけを見れば、2倍の処理速度が実現されており、Palm OS 3.xマシンに比べても格段の改善である。

 メモリは、RAM 8MB、フラッシュメモリ4MBに変更されている。試作機ではRAM、フラッシュメモリとも2MBであった。特にRAMが増えたことで、WristPDAはかなり実用的なスペックとなった。この容量はかつてのPalm VxやWorkPad c3と同じ。OSのバージョンは4.1で、68000系CPU用では最後のリリースにあたる。Palm OS 5.0以降は、プログラムこそ68000バイナリだが、CPUがARMとなりAPIも追加されているため、WristPDAでPalm OS 5.x用のアプリケーションは動作しない。しかし、多くのソフトウェアが3.xなどの過去のバージョンにも対応しているため、問題はないだろう。

 画面は小さいが、解像度は160×160ドットあり、Palm OS 3.xまでの標準画面と同じ解像度。16段階のグレースケール表示が可能で、コントラスト調整が行なえ、バックライトも装備されている。

 予定表やアドレス帳を動かしてみると、まさにかつてのPalm VxなどのPDAそのまま。ただ、画面が小さいので画面上のアイコンなどをタッチするのはちょっと難しい。

 文字入力は画面全体に対して、Jotもくしはグラフティを描画することで可能。長文の入力は困難だが、電話番号程度なら簡単に入力できる。また、ソフトウェアキーボードをメニューから表示させることもできるので、グラフティが面倒ならこっちを使うといいだろう。

 画面が小さいので、小さな領域をタップしなければならない使い方は難しい。Palm OSの予定表だと、予定の横にメモやアラームを表すアイコンが出るのだが、こういうのをタップするのがちょっと難しい。

 表示は大きさで3段階、ボールドの有無を合わせて6種のフォントが選択できる。液晶自体が小さいので、小さなフォントでの表示は見づらく感じる。大きなフォントを使うことで一覧性は損なわれるが、表示自体は見やすくなる。

一番小さいフォントで、ボールドなしの表示 中間サイズのフォントでボールドなし 最大サイズの表示でボールドあり

 標準で内蔵しているアプリケーションは12個。起動画面である「アプリケーション」で、アイコン表示したときにスクロールせずに全部表示できる数である。なお、この「アプリケーション」では、1画面にアイコンを4つ表示する、ラージアイコンによる表示モードをサポートしている。これならば、指でアイコンをタップすることも可能になる。

標準のラウンチャーである「アプリケーション」では、ラージ、スモール2種類のアイコンに切替が可能。ラージアイコンを選べば、指でもタップしてアプリケーション起動が可能だ

●参照中心の使い方なら問題はないが……

 ざっと触った感じだが、PCでデータを入力、WristPDAで参照という使い方ならあまり大きな問題を感じない。だが、入力をしようとするとちょっとイライラさせられることがある。画面全体を使っての入力は、ときどき反応が鈍ることがあるのと、小さなボタンを操作するのが面倒だからである。個体差かもしれないが、タッチパネルがときどき反応を受け付けないことがある。

 だが、表示を中心にし、上下キーやロッカースイッチで操作できるアプリケーションを中心に使えば、わりと便利。Palm用の多数のアプリケーションがそのまま利用できるというのが強みと言えるだろう。

□関連記事
【2004年1月20日】【塩田】Smart Watchを買ってみた
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2004/0120/pda30.htm
【2002年11月28日】【塩田】COMDEXで見たFossilのWrist PDA with Palm OS
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2002/1128/pda.htm

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(2005年1月17日)

[Text by 塩田紳二]


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