発売元であるEGOSYSのホームページを見に行くと、PCIバスのデジタルアンプ、「CARDamp MK-II」の仕様が出てくる。内容をよく読むと面白いことに気がついた。簡単な仕様は、
- 「TRIPATH TA2021」を搭載し、最大出力25W+25W(@4Ω)
- ステレオライン入力端子
- ALPSのボリュームを基板上に搭載
- 外部電源が使用可能
- デュアルタイプの「OPA2134」を使って、プリアンプとヘッドフォンアンプに使用
- ヘッドフォン使用時はスピーカー出力自動OFF
- オペアンプはICソケットを使用
- アンプ内蔵型のアクティブスピーカーには非対応
- スリープモードあり
といった感じだ。ここで注目すべきは、ライン入力があり、ボリュームがあり、外部電源が使えるということだ。つまりPCからは何も信号を受けず、単独で動くと思われる。また、この手のデジタルアンプは、スピーカー出力側に入っているLPFフィルタの関係で直接ヘッドフォンは駆動できず、別系統で持たなければならない。それが交換可能な状態でオペアンプを使っているのもポイントが高い。
●真相をチェック
発表から待つこと数カ月。やっと実機を手にしたので早速その真相をチェックしたい。結論から先に書くと、予想通りこのCARDamp MK-IIはPCに接続しなくても100%単独で作動する。
箱から出したところ箱を開けて驚いたのは、結構しっかりしたケーブル類が付属していることだ。また基板の作りやパーツもそれなりにこだわっている。ヒートシンクで肝心のTA2021が見えないのは残念なところ |
外部入出力左から、ボリューム、ヘッドフォン出力、ライン入力、スピーカー右、スピーカー左、外部電源入力と並ぶ。普通に考えると、こんな所にボリュームがあってもPCの裏なので音量の調整に苦労する |
標準搭載のオペアンプOPA2134が2つICソケットの上に乗っている。この連載でよく登場したOPA2604へも交換可能だ。今回は実験しなかったものの、スペースさえあれば下駄を使ってOPA627を乗せるとヘッドフォンの音は激変するだろう |
単独作動テスト外部電源として、スイッチング電源(15v/7A)とThinkPadのACアダプタ(16V/3.5A)を使ってみた。どちらも問題無く作動する。各LEDはレベルメーターの代わりにもなっているが、もしPCに入れてしまうと見えない |
出力段のコイル過去の経験上、この部分のコイル(LPF)は音質にかなり影響を及ぼす。試した限りでは、空芯やトロイダルコアの方が音はいい。しかし、このスペースには収まらず、空中配線も嫌なので、他の物を考える |
付け替えるコイル株式会社若松通商で売っているカマデンのキット用グレードアップコイル4本セット。データシートを見るとTA2020やTA2041と同じ10μHなので、そのまま流用できる。ただ結構大きいのでそのままでは入らない |
ここまで解れば、後は適当なサイズのケースを購入し、このPCIカードを入れてしまえばヘッドフォンアンプ付きデジタルアンプが出来上がる。既に発売している株式会社カマデンの「TRIPATH TA2020」や「TA2041」を使ったキットと比較すると1万4千円前後は高めであるが、ヘッドフォンアンプがつき、基板自体は完成品だと思えば、同等かそれ以上のコストパフォーマンスではないだろうか?
●ケースに入れる
最近マイブームのケースが今回使用した株式会社タカチ電機工業の「HENシリーズ」だ。価格も比較的安く、ご覧のようにルックスもなかなかいい。カラーバリエーションでシルバーとブラックがあるのも魅力的だ。問題点は幅が最大11cmなこと。高さと奥行きはそれなりに種類があるものの、幅が合わないとどうにもならない。また奥行きの最大は今回使ったもので20cmしかない。このような理由から、電源を内蔵するのは諦め、ACアダプタ式にすることにした。
HEN110 420S目測で買ってきたところギリギリだった。両サイドの放熱板のスリットに辛うじて入る。固定方法さえ考えればスペーサが必要無いので、ケースの裏にネジ穴を開けることなく基板を固定できるので好都合かも |
仮止めフロントとリアパネルに穴を開け、仮止めをしてみた。ちょっと窮屈ではあるものの、いい感じに収まりそうだ。付属のネジは普通の皿ネジだったので、別途、六角レンチで締めるこのタイプを用意した |
配線終了コイルの他にもう一つ拘ったのはボリューム。有限会社ソフトンが販売している「小型22接点抵抗切替え式アッテネータ」が手持ちであったので使用した。ただし、50kΩの所に100kΩをつけたので問題かもしれない |
当初のプランでは、必要無いコネクタ類は全て外すつもりだったが実際やってみると大変だったので、ボリュームだけ外し、他はそのまま残した格好になってしまった。音質に影響が出るかも知れないが、蓋を閉めてしまえば解らないので良しとする。配線自体は、外部電源(+/-)、スピーカー端子(P/N×2ch)、ライン入力(R/L/GND)、ヘッドフォン出力(R/L/GND)、ボリューム(3×2ch)、LED(+/- パワー相当の1つだけ)の信号をそのまま引っ張り出しただけで特に何もしていない。残りのLEDは左右のレベルで明るさが変化するので、フロントに引き出すと更にかっこいいだろう。穴あけは電動の工具は使っていない(持っていない)。一見大変そうであったが、パネルの厚みが2mmだったので実際やってみると大したことはなかった。
交換したコイルはサイズ的に基板上に4つは並ばず、半分を基板表、もう半分は基板の裏に実装。外部電源の入力には気休めでELNAの8,200μF/25Vを入れてみた。ヒートシンクのスリットで固定する方法をとったので、PCIバスの信号は根元でパターンカットし、基板の両サイドは黒のビニールテープで絶縁。この状態でスリットの間に丁度いい具合に入り、各線材からの力も加わりうまく固定している。他に改造するとすれば、電解コンデンサをMUSEなど、自作オーディオ定番のパーツへ交換することだろう。多数使われてる基板実装タイプの部品は細かいので交換しない方が無難である。
また筆者自体はヘッドフォンを全く使わないので、コネクタは汎用品を使ったが、他の部分はそれなりのパーツを投入した。唯一ボリュームのツマミを買い忘れ、とりあえず手持ちの物をつけている。ここはシルバーでもっと径が大きく平べったいのに換えたいところだ。
|