■元麻布春男の週刊PCホットライン■エーオープンのPentium M対応ノートPCベアボーン「1551-AG1」 |
●広がるベアボーンノートPCのバリエーション
元々ベアボーンPCは、販売店等のショップブランド用に、CPU、メモリ、HDD、拡張カードといった機能部品を除いた、文字通り骨組みだけのPCのことを指した。販売店がPCとして販売する時は、機能部品を実装し、OSをインストールするわけだが、このようにすることで、価格変動の大きな機能部品の在庫を最小限に抑えられるし、顧客の求めに応じて価格と性能を自由に調整できるというメリットがある。
最近はキューブ型など、標準的なフォームファクタ(ATXなど)に準拠しないベアボーンPCを良く見かけるが、これはケースや電源とマザーボードがセットで販売される(ケースに合わせた電源、ケースに合わせたマザーボードで構わない)というベアボーンPCならではの特徴を逆手に取ったアイデアといえるだろう。
もう1つここにきて目立つのはノートPCのベアボーンだ。ノートPCのベアボーン自体は、それほど歴史の新しいものではないのだが、以前はベアボーンのノートPCというと、デスクトップPC置き換えのゴツイものばかりで、バリエーションに乏しかった。
しかし最近のベアボーンノートPCは、それなりにスタイリッシュで、持ち運び可能な大きさのものも登場している。筆者も最近1台購入してみたので、取り上げてみたいと思う。
●92,000円のPentium MベアボーンノートPC
そもそもベアボーンのノートPCを購入しようと思い立ったのは、手元に2.5インチのHDD、Pentium Mプロセッサ、SO-DIMMといったノートPC用のパーツに余剰が出たから。要は、手持ちのノートPCをアップグレードしたので、CPUやHDDが余った、ということである。最初は、省スペースデスクトップ、とも思ったのだが、Pentium M対応のベアボーンは意外と少ない。
つい最近、やっとキューブ型が登場したが、筆者が購入を検討していたタイミングではまだ発売になっていなかった。アップグレードしたくらいだから、ノートPCは用が足りているのだけれど、CPUを遊ばせておくのもなぁと思い(遊ばせておくうちに利用価値はアッという間にゼロになる)、ウチにはないタイプのベアボーンノートPCを買ってみることにした。それがエーオープンの「1551-AG1」だ。
1551-AG1 |
エーオープンの1551-AG1は、12.1型のワイド液晶(解像度1,280×800ドット)を搭載した2スピンドルノート。いわゆるツルピカ液晶で、このタイプは筆者は持っていないし、現時点で現役なのが3.5kgを超える2スピンドル機(Athlon 64)と、1.5kg級のシングルスピンドル機であることを考えれば、なかったゾーンではある。
チップセットはIntelの855GMEで、対応するプロセッサはTDP 24.5W以下のソケット479ピンタイプ。要するに通常電圧版のモバイルプロセッサである。具体的にはBanias 1.3GHz~1.7GHz、Dothan 1.5~2.0GHz、Celeron M 1.3~1.6GHzとなっており、筆者の手持ちはBanias 1.4GHzなので問題ない。
その他の機能としては、まずメモリがDDR266/DDR333のSO-DIMMスロットが2つ。AC-97サウンド、10/100BASE-TX Ethernet、V.92 56kbpsモデム、IEEE 1394ポート、USB 2.0ポートなど、このクラスで標準的なインターフェイスを完備する。
スロット構成はType2PCカード×1と、CFスロットの2スロット構成で、光学ドライブはオプションとなっている。難点はUSBポートが本体左側面にのみ用意されている(2ポート)ことで、マウスなどのポインティングデバイスの引き回しがちょっとうっとおしい。ロジクールから発表された2.4GHz帯無線を利用し、レシーバーをマウス内に収納可能な「V500」あたりを検討したいところだ。
無線LANについては、とりあえずminiPCIスロットとアンテナは用意されているが、無線LANカード自体は添付されていない。認定が取れている組合せのカードを明示するか、純正オプションとして提供すべきだろう。
このノートPCでもう1つ良く知られた事実は、日立の「プリウスギア」、デルの「Inspiron 700m」との三つ子機であるということ。細部には若干異なる部分があるが、基本的な設計は共通で、購入するに際して、日立やデルが採用したくらいだから、そんなにヒドイこと(失礼)はないだろう、という安心感があったことは否定しない。
そう思う人が多いのか、はたまた日立やデルへの供給で手一杯なのか、結構品薄のようで、当初は年内ギリギリになるかも、と言われていたのだが、とある店に在庫があったとかで、12月初旬に入手することができた。
購入価格は本体が約92,000円で、15%のポイントという条件だった(内蔵用のコンボドライブはポイントで購入。1万円弱であった)が、手元にパーツがあるか、ノートPCのベアボーンに興味がある人を除けば、ハッキリ言ってデルからInspiron 700mを買った方が絶対に得だと思う。
デルの価格はセールやクーポンによって変動するが、普通にWebで購入してもデル推奨のビジネスパッケージで約12万円。3万円程度の価格差で、CPU(Celeron Mだが)、60GB HDD、コンボドライブ、256MBのメモリ、そしてWindows XP Proがついてくる。Inspiron 700mのマニュアルを見たことはないが、おそらくエーオープンのマニュアルよりは良いのではないかと思う。
こうして比べていくと、全く競争にならない気がしてくるのだが、だからといってエーオープンの価格設定がおかしいと言っているわけではない。げに恐ろしいのはデルモデル、ということなのだと思っている。
●1551-AGの組み立て
逆に1551-AG1の方が良い部分も全くないわけではない。1551-AG1の底面は、2つのパートに分かれて、取り外すことができる。写真の左側はHDDベイ、右側がメモリスロット、プロセッサ、miniPCIスロットだ。プロセッサに簡単にアクセスできるのはベアボーンシステムならでは。もちろんベアボーンとして売られている以上、プロセッサの交換をしたからといってメーカー保証が受けられなくなるわけでもない。
プロセッサの取り付けは、すでに取り付けられているヒートシンクを取り外すことから始まる。ヒートシンクに書かれた順番でネジを外すと、黒いZIFソケットが現れる。ここにプロセッサを装着し、ネジを4分の1回転させれば取り付けは完了。ヒートシンクには、ヒートマテリアル(423ピンの頃のPentium 4で用いられていたシート状のもの)が貼られており、とりあえず初回時はシリコングリースなしでも済むようになっている。
メモリの取り付けだが、底面に見えているのは“本来は”セカンダリスロット。プライマリスロットはキーボードの下にあり、底面からはアクセスできない。このプライマリスロットの扱いには問題がある。
カラー印刷のマニュアルでは、ランチキーパネル(ヒンジカバー、キーボード固定具も兼ねる)をケーブル(電源スイッチ等の接続用)ごと外した後、金属製のシールドパネルを外してプライマリスロットにアクセスするように書かれている。
しかし、実際に筆者が購入した製品では、ケーブルはコネクタ部でテープ留めされており、無理にケーブルを外そうとすると、ケーブルを痛める可能性がある。よく見ると、マニュアル以外に注意書きが入っており、そこには出荷時にキーボードが装着されているので、プライマリスロットを使うな、という意味のことが書かれている。
これらの情報を総合して考えるとマニュアルは、製品がキーボードを装着しないまま販売されていることを前提に書かれているらしい。だが、実際の製品ではキーボードが装着されており、キーボードで隠された部分で、ラーンチキーパネルのケーブルが本体にテープ留めされている。この変更を踏まえて、添付の注意書きはラーンチキーパネルとキーボードを外してまでプライマリスロットを使うな、と言っているようだ。
キーボードが装着されていないことを前提にマニュアルが書かれている、ということがマニュアルに明示されていないため、話がつながりにくい。ひょっとすると、中には勘違いしてラーンチーキーパネルのケーブルを引きちぎってしまう猛者が出るかもしれない。また、プライマリスロットを使わないとカタログスペックが変わってしまうこと(2スロット最大メモリ容量1GBが、1スロット最大メモリ容量512MBへ)にも注意が必要だ。
筆者の場合、作業の途中で、マニュアルと現状が違うことに気づいたので、ラーンチキーパネルをキーボードが外せるくらいまでずらすだけで済ませて、プライマリスロットに512MB DIMMを装着した。この手のものを組み立てる際は、マニュアルをよく読んだ上で、時に応じてマニュアルより現状を優先し、常識を持って対処する、ということが肝心だ。
実際、ケーブルの問題を除いても、ラーンチキーパネルを取り外すのは結構神経を使う作業であり、あまり作業性が良いとはいえない(ヒンジカバーと一体成型されているのがその理由だと思う)。おそらくこの部分の脱着が1551-AG1で最も気を使う部分だ。
HDDは、付属のマウント金具を取り付けて、ベイに固定する。とりあえず手元で余っていた旧IBMの40GBドライブ(5400rpm)を用いた。光学ドライブは純正のコンボドライブ(NB-COMBO-51)を素直にチョイスしたが、取り付けフレームだけを入手することもできるから、どうしてもDVDを焼きたいという向きは別途スリムドライブを入手して、フレームと組み合わせればよい。
これでハードウェアの組み立ては完了、後はサポートされているOS(Windows XPとWindows 2000のいずれか)をインストールすれば、すべての作業が終了する。上記のラーンチキーパネルの問題と、デスクトップに比べてネジが小さく紛失しやすいことを除けば、それほど難しい工程はないと思う。
添付の日本語キーボードは、「む」や「ろ」のキーが小さいタイプ。このクラスのノートPCでは珍しいものではないが、やはり好きにはなれない | 本機の右側面。脱着式のドライブベイに加え、モデムやEthernet、電源コネクタ、TV出力(S端子)があるがUSBポートはこちら側にはない | 本機の左側面。カードスロット(PCカードおよびCF)、USBポート、ディスプレイ(VGA)出力が並ぶ |
●絶対的軽さよりコストパフォーマンスを求めるユーザーに最適
組みあがった1551-AG1だが、ワイドタイプのいわゆるツルピカ液晶だけに、DVDの再生等には適している。液晶パネルの下部には小さいながらもステレオスピーカーが取り付けられているのも、このクラスとしては珍しい部類に入るかもしれない。
不思議だったのは、この液晶を見ていても筆者の目に対する負担がそれほど高くなかったことだ。以前国産某メーカーのノートPCを試用して目の負担に耐えかねてフィルタを貼り、ツルピカを台無しにした経験を持つ筆者には極めて意外だった。目の負担は、単なる表面処理(表面反射)の問題だけではないらしい。
重量が2kgの2スピンドルノートPCというのは、モバイルと据え置きの境界線の微妙な位置づけかもしれない。すでに世の中には1~1.2kgクラスの2スピンドルノートPCが存在しており、その方がピュアモバイラーには適しているだろう。
が、2kgという重量を許容することで、システムの価格は10万円近く安くなる。またパーツの面でも、交換やアップグレードの容易な通常電圧版プロセッサ、性能面で有利な2.5インチHDD、リーズナブルなSO-DIMMが利用可能になる。それらのことを考え合わせると、これも1つの選択なのではないか、という気がしてくる。
□エーオープンのホームページ
http://aopen.jp/
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(2004年12月24日)
[Reported by 元麻布春男]