元麻布春男の週刊PCホットライン

日本HPのオフィス向け複合機「Officejet 7410」




●プリンタの用途

 人はなぜプリンタを購入するのだろうか。大昔は、プリンタの用途といえばプログラムのデバッグが決まりごとだったが、今時そんなことを答える人などいないハズだ。毎年、年末に合わせてプリンタのモデルチェンジが行なわれることから考えて、年賀状の印刷がプリンタ購入の大きなモチベーションであることは間違いない。しかも写真入りの年賀状が大きな市場となっているのは確実だ。

 子供やペットなどを見せたい、という欲求もあるだろうし、とりあえずそれらしい写真を入れておけば、くだくだと文章を書かなくて済む、という事情も考えられる。年賀状以外も含めて、写真の印刷がプリンタの用途に大きなウエイトを占めるからこそ、メーカーは毎年のようにインクを変え、あるいはインクの滴下サイズを小さくして、写真画質の向上に努めているわけだ。

 写真印刷がプリンタユースのメインストリームなのだとしたら、どうやら筆者はプリンタについてメインストリームのユーザーではない。写真を全く印刷しないわけではないが、せいぜい年に数度程度、用紙の数にして20〜30枚、それもL版か2L版だ。

 それに比べれば、A4普通紙に文書を印刷する機会の方が圧倒的に多い。自分が書いた原稿を印刷することはほとんどないが、電車の中で資料を読むとか、ベッドに寝転がって目を通すには、やはり紙の方が便利だ。さすがに100ページを超えるような文書は、ノートPCなどほかの手段を用いるが、10〜20ページ程度のホワイトペーパーは、結構印刷して読むことが多い。

●プリントよりもスキャンを多用

 だが、文書の印刷よりもっと頻度が高いのは、実は文書のスキャンである。毎週、何かしらある発表会や説明会では、必ず資料が配布されるが、IT産業においてさえ、その資料が電子的に配布されることは極めてマレだ。多くの場合、資料として配られるのは紙に印刷されたもの。そしてそれを持ち帰った筆者は、スキャナでまた電子化するのである。

 時間もエネルギーも無駄だと思うのだが、資料を見ながらちょちょっとメモ書きを加えていくのに、紙以上の利便性を持つデバイスはなかなか見つからない。以前、Tablet PCを試用したこともあるのだが、総合的に見て紙より便利だとは思えなかった。結局、配布された紙の資料を、自分で書き込んだメモごとスキャンしておく、というのが筆者にとっては今のところ一番のようだ。

 こういう筆者にとって、複合機というのはとてもありがたい。1台分の場所で済む、というだけでも多少のアラには目をつぶりたくなる。実際、昔の複合機は、プリンタ機能にしてもスキャナ機能にしても、多少の妥協を余儀なくされるものだった。それがこの2〜3年で、1つ1つの機能を取り出しても、それぞれの機能の専用機にほとんど見劣りしなくなってきた。

●価格差以上の機能向上を果たしたOfficejet 7410

 筆者も日本HPの「Officejet 6150」を便利に使ってきた。Officejet 6150は、プリンタとスキャナだけでなく、FAX、コピーの機能を併せ持った複合機で、SOHO/個人事業主をターゲットにした製品。コンシューマー(家庭)向けの「Photosmart」シリーズや「PSC」シリーズとの違いは、外観デザインとADF(自動原稿送り装置)の有無といったところだ。

 今回取り上げるOfficejet 7410は、事実上このOfficejet 6150シリーズの後継となる製品。価格は15,000円ほど値上がりしているのだが、それ以上の機能アップが図られている。

●ネットワークに対応

 Officejet 7410における数多い改良点のうち、まず挙げておかねばならないのは、ネットワーク対応だ。Officejet 6150がサポートしていたUSB 2.0(ただし12MbpsのFull Speed対応)に加え、有線LAN(100Base-Tx/10Base-T)と無線LAN(802.11b/g)に対応する。

 残念ながら本機を有線LAN接続しつつ、無線LANのアクセスポイントにすることはできないが、無線LANをサポートしたことにより、設置の自由度が高まった。いくら規模の小さいSOHO/個人事業主であっても、もはやインターネット環境、さらにはLAN環境のないところなど考えられない。ネットワーク対応は待望の機能だ。

 もちろん、印刷だけでなくスキャナからの取り込みも含めて、本機をネットワーク共有できる(ただし、12MbpsのUSBから100Mbpsの100Base-TXになっても、スループットの向上はほとんどないので、この点を期待しないように)。

●ADFで両面1パススキャン可能に

ハガキや写真用のL版用紙を自動給紙する機能が加わった自動両面印刷ユニット

 筆者期待のスキャナ機能だが、最も目立つのは両面自動スキャンのサポートだ。両面印刷された文書をADFにセットして、スキャンをスタートさせると、裏表が1パスでスキャンできる。

 Officejet 6150では、まず全部の原稿の表面をスキャンし、次に裏面をスキャンするという2パスが必要だった。もちろん、表面から裏面へ移る際には、人が手動で原稿をADFにセットしなければならない。7410であれば、ADFにセットしスキャンをスタートさせれば、自動的に両面のスキャンが完了する。

 ただ、この機能には1つの弱点がある。それはスキャンが終わった原稿は、裏表が逆になってしまうということだ。分かりやすく言うと、1、2、3、4、5、6、のページ順(1の裏が2)にならんでいる原稿がスキャンが終わると2、1、4、3、6、5の順番になってしまうのである(一度スキャンした原稿を引っ張り戻して裏面をスキャンする機構上、これはやむをえないことなのだが)。

 説明会等で配布された資料であれば、スキャンが終わったものは破棄するだけなのでこれでも構わないのだが、よそから借りた資料をスキャンする場合は、返却する前に並べ替えねばならず厄介だ(もう1度両面スキャンにかける、という手もなくはないが)。

 状況によって使い分けられるよう、1パスと2パスを選べるようになっていればさらに良かったのではないかと思う。これはソフトウェア/ドライバで何とかなると考えられるので、今後のソフトウェアアップデートに期待したい。

 もう1つスキャナ機能で残念なのは、ADFから連続して原稿を読み込む際も、光学ユニットがガラス台の上を左右に移動することだ。ADFから原稿を読み込む際は、本体の左端のエリアでのみスキャンが行なわれるため、理屈の上では光学ユニットが左右に移動する必要はない。左に留まって、どんどんスキャンしてくれれば良いのだが、Officejet 6160同様、1枚スキャンが終了するたびに、右端の待機位置まで戻っていってしまう。個人的には一番残念な点かもしれない。

●4辺フチなし印刷に対応

 印刷機能で最も目立つのは、やはり写真プリンタとしての機能向上だ。同時に発表された他のモデル同様、このOfficejet 7410でも4辺フチなし印刷が可能になった。個人的には3辺フチなしで、残り1辺のタブを切り取る方式でもそれほど不便には思っていなかったのだが、数10枚、あるいは100枚以上の写真(あるいは全画面写真の年賀状等)を印刷する人にとっては、「ようやく」と感じることなのかもしれない。

 Officejet 7410に標準添付されている自動両面印刷ユニットは、L版やハガキをストックしておき自動給紙する機能(もちろん両面対応)が加わえられた新しいもので、これと四辺フチ無し印刷機能を組み合わせると、裏面が全面写真の年賀状を簡単に印刷することができる。

 本体下部の用紙トレイにはA4普通紙をセットしておいたまま、本体背面にある自動両面印刷ユニットにセットしたL版写真用紙に写真を印刷する、といった使い方も可能だ。ちなみに、この自動両面印刷ユニットは、日本法人の企画によるものである。

●操作面

 写真印刷の際に便利な機能としては、操作パネルに用意された2.5型カラー液晶ディスプレイと、メディアスロットもOfficejetシリーズには新しいフィーチャーだ。2.5型の液晶ディスプレイは、操作メニューの見易さを向上させているのはもちろん、印刷する写真のプレビューにも利用できる。

 メディアスロットは、メモリースティック/同PRO、スマートメディア、xD-Picture Card、CF(Type1/2)、SDメモリーカード、MMCに対応したもので、アダプタを用いればメモリースティックDuoやminiSDにも対応する。

 ここから直接プリントすることができるほか、PCからネットワークドライブとして利用することも可能だ。このメディアスロットの下にはUSBポートがあり、PictBridge対応のデジタルカメラから直接印刷することもできる。

Officejet 7410の前面。主要な情報は2.5型液晶パネルに表示される 本体右側に用意されたメディアスロット。PictBridge用のUSB端子も用意される

●新たにフォトグレーカートリッジが追加

 印刷品質の点で特筆すべきことは、モノクロ印刷用のフォトグレーカートリッジが追加されたことだろう。これまでHPのプリンタでは、文書印刷用の1)顔料系黒インクカートリッジ、3色の2)カラーインクカートリッジ、3色の3)フォトカラーインクカートリッジが用意されており、2つのカートリッジスロットにセットするカートリッジの組合せを変えることで、使い分けをしていた。

新しく加えられたフォトグレーインク

 たとえば、通常の文書印刷時は1と2の4色、写真印刷時は2と3の6色、といった具合だ。今回追加された4)フォトグレーカートリッジは、グレースケール専用のインクカートリッジでモノクロ写真印刷時に威力を発揮する。カラー写真印刷時も、2と4の組合せは、2と3を組み合わせた通常の6色モードとはまた異なった色再現性を持つようだが、さまざまなイメージに対する適応能力という点で、やはり2と3の組合せが推奨されている。

 となると、2と3と4を同時に利用すれば最も良い結果が得られそうだが、実は米国ではこれを可能にする8色プリンタがすでに製品化されている。これらのプリンタはカートリッジスロットを3つ内蔵するため、プリンタ本体の横幅が大きくなるという問題があり、わが国での発売が見送られたようだが、写真印刷を主に考えるユーザーには気になる存在だろう。

 なお、Officejet 7410に採用されているインクは、色の構成こそ従来のものと変わらないが、化学的な組成を見直すことで色の再現性と保存性(耐光性)が向上している。純正のプレミアムフォト用紙との組合せでは、カラーで約100年、モノクロでは115年の寿命を実現したという。また、カートリッジのインクノズルも倍増(300から600)しており、印刷速度の向上も図られている。

 なお、今回導入された新しい100番台のインクカートリッジには、リージョンコードが導入され、リージョンの異なるプリンタでは利用できない。こう聞くと不便なようだが、現状において日本はHPのインクカートリジッジが最も安価な国の1つ(世界の大多数の国でHPはプリンタシェアトップであるのに対し、わが国では3番手に甘んじており、それだけ競争が厳しいことの恩恵だろう)であり、並行輸入を防ぐためというより、並行輸出を防ぐため、という色彩が強いようだ(持ち運び可能なPhotosmart 325には、リージョンコードは導入されていない)。

●ユーティリティの重さはやや難

 というわけで基本的にOfficejet 7410は、Officejet 6150の後継として、機能、印刷速度ともに強化された製品だ。なぜかOfficejet 6150ではサポートされなかったPC FAX機能(PCのアプリケーションから直接FAXする機能)も追加されている。

 付属のドライバやユーティリティ類が重たい(しかもこのOfficejet 7410では.NET Frameworkランタイムが必須となった)のは相変わらずだが、少なくともシステム起動時のタスクトレイの開放は早くなっている(言い換えれば、タスクトレイの処理が終わってからが長い)。

 もう少しソフトウェアを軽くして欲しいところだが、これだけ多機能では、それも難しいのかもしれない。家庭に置くにはデザインがちょっと武骨だが、数人規模のオフィスや事務所では省スペース性と多機能が両立した本機は重宝することだろう。

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【10月4日】日本HP、写真画質にこだわった複合機5機種(DC)
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(2004年12月2日)

[Reported by 元麻布春男]


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