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Transmeta CEOがCEATECで基調講演

Transmeta CEO
マシュー・ペリー氏

10月6日 開催

価格:会場:幕張メッセ



Crusoeプロセッサを用いたUPCの例。このうちAntelope MCCのみが販売中で、OQOのUPCとVulcanのFlipStartは、近い将来販売が始まる予定。IBMのPC Core Systemはエンドユーザー向けの「商品」ではない

 先日、ダウンロードとOEM版の提供が始まったWindows XP SP2。その新機能の1つが、DEP(データ実行防止)と呼ばれるセキュリティ向上技術の採用である。これをいち早くサポートしたプロセッサがAMDのAthlon 64であることはよく知られた通りだが、AMDに次いで2番目にDEPをサポートしたプロセッサをエンドユーザーの手元に届けることができたのは、IntelではなくTransmetaのEfficeonだった。Intelは2001年にItaniumファミリにおけるサポートを行なったとしているが、DEPをサポートしたWindows Server 2003 SP1のリリースは2005年前半の予定となっており、現時点ではWindowsによるサポートがない。

 DEPをサポートするにはNX bit(No eXecute bit)の実装が不可欠で、プロセッサベンダごとにこれを独自の名前で呼んでいる。たとえばAMDは「EVP」(Enhanced Virus Protection)、Intelは「XD」(eXecute Disable Bit)といった具合だ。そしてTransmetaでの呼び名は「AntiVirus NX」という。同社のCEOであるマシュー・ペリー氏が来日、CEATEC Japan 2005でキーノートスピーチを行った。

 「デジタル生活に革新を起こす技術」と題された氏のスピーチは、技術革新こそが製品の多様化と市場の活性化をもたらす、ということを指摘することから始まった。最初はT型フォードしかなかった自動車が、技術革新により多様化し、それが新たな市場を生み出していったように、コンピュータも大型のメインフレームから始まって、さまざまな技術革新によりさまざまな形へと進化を続けている。中でも近年、多様化が著しいのはモバイルPCの分野で、さまざまな重量、フォームファクタの製品が登場している。

 その最新のものとして氏が紹介したのが、PDAと同じ手のひらサイズでありながら、Windows XPを搭載したPCのフル機能を備えたウルトラ・パーソナルコンピュータ(UPC)だ。OQOのUPC、IBMのPC Core System、AntelopeのMCC、VulcanのFlipStartといった同社のCrusoeプロセッサを搭載したUPCは、どれも小型で持ち運びが容易だ。

 しかし、どんなに持ち運びが容易でも、バッテリが十分な駆動時間を確保できなければ意味がない。化学分野の高度化等によりバッテリ容量は年に10%前後の割合で向上しているものの、このペースでは消費電力が高まっていくばかりのプロセッサやグラフィックスチップの要求には到底追いつくことができない。また、消費電力の増大は発熱量の増大をも意味しており、その冷却のためにより大型の冷却ファンが求められるようになっている。これは、PCの小型化を難しくすると同時に、騒音量の増大をも意味している。しかも現在のトレンドが続く限り、消費電力量はムーアの法則を上回るペースで増大し、消費電力がムーアの法則の持続を阻む要因となる。

 Transmetaはソフトウェア(CMS)をベースにしたアーキテクチャを採用することで、トランジスタ数の最小化を実現した。また、プロセッサの動作周波数と駆動電圧をダイナミックに調整するLongRun技術により、駆動時電力の低減も図った。さらにリーク電流をコントロールするLongRun2技術により、リーク電流の最小化も推進している。これらの技術を合わせることで、アクティブ冷却を必要としないPCの構築が可能となった。

 この技術革新がどのように市場の活性化に結びつくのか。つい先日MicrosoftはWindows XP Media Center Edition 2005をリリースしたが、必ずしも多くの消費者がMedia Center PCを購入したいと考えていない。それは、現行のMedia Center PCが、大型で、高価で、しかも騒音が大きいため、リビングルームに設置するには不向きだと消費者が考えているからだ。Transmeta製のプロセッサを用いたシステムであれば、CEと同じような筐体を採用しながら、騒音の元となる冷却ファンが不要で、なおかつ価格競争力も高い。

 もちろん、こうしたTransmeta製プロセッサの特徴は、コンシューマ向け製品だけでなく、企業向けコンピューティングにも有効だ。同社製プロセッサは、ブレードサーバに代表される高集積型のコンピュータに最適であり、実際1Wあたりの演算処理能力では他の製品を大きく上回る。他社製プロセッサを高集積したコンピュータでは、コンピュータの導入コストと同じくらいのコストをコンピュータルームの空調設備に費やさねばならないが、Transmeta製プロセッサをベースにした製品ならその必要はない。こうした高集積型コンピュータの用途は、何もサーバだけに限ったことではなく、シンクライアントと組み合わせて、クライアントの中でフロントエンドとバックエンドを分離するブレードPCというコンセプトも考えられる、と語った。

次世代UPCに向けたリファレンスデザインとも考えられるStratosphere。TM8800のパッケージシュリンク版であるTM8820、SouthBridgeチップのALi M1563M、グラフィックスチップのATI Mobility Radeonなど、PCマザーボードの主要コンポーネントがMiniPCIカードほどの大きさに収まる。メインメモリは裏面に512MBが直付けされている。現在出荷中のTM8800にはまだLongRun2が実装されていないが、LongRun2が実装されることでC4ステート時の消費電力は500mWから100mW程度(NorthBridgeを含む)にまで低下するという 展示会場にあったEfficeonベースのマルチメディアPC。完全ファンレス動作で筐体も小さい。OSはLinuxベース ブレードPCのコンセプト。クライアントの数だけバックエンドのブレードPCも用意される

□Transmetaのホームページ(英文)
http://www.transmeta.com/

(2004年10月7日)

[Reported by 元麻布春男]

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