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Microsoft Windows Embedded Developers' Conference Japan 2004レポート
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基調講演を行なったマイクロソフト モバイル&エンベデッドデバイス本部本部長の千住和広氏 |
マイクロソフト株式会社は28日、品川プリンスホテルで組み込み用Windowsの開発者向けイベント「Microsoft Windows Embedded Developers' Conference Japan 2004」を開催した。
組み込み系OSのロードマップ。現在のWindows Mobile 2003 2nd Editionの後継としてMagnetoが計画されている |
組み込み用Windowsは、Windows CEとWindows XP Embedded(XPe)が現在の製品。今回は、6月に米国で発表されたWindows CE 5.0の日本語版の正式発表が会場で行なわれた。また、Windows XPのService Pack 2(SP2)に対応したXPe SP2についても概要の説明が行なわれた。
基調講演では、組み込み用Windowsのロードマップが示されたが、次期バージョンは、どれも2005年以降ということで具体的な時期は明示されなかった。XPe の後継としては、Longhorn Embeddedが予定されている。また、現在のPocketPCで使われているWindows Mobile 2003 Second Editionは、Windows CE 4.2ベースだが、次期バージョンであるMagneto(コードネーム)が計画されており、こちらは、CE 5.0をベースにしたものになる模様。
●Windows CE 5.0
Windows CE 5.0は、AV機能やネットワーク機能を強化したWindows CEであり、Media Center Extensionでの利用が想定されている。Pocket PCやスマートフォンに使われているWindows Mobileという名称のOSは、このWindows CEをベースに作られていてカーネルは同じだが、提供される付属ソフトやモジュールなどが違っている。このCE 5.0からは、OEMメーカーに対するソースコードの公開範囲が広がり、さらにOEMがソースを改変したものを商業目的で出荷することが可能になった。つまり、Windows CE 5.0の改良したモジュールを他のOEMメーカーに販売することができるようになったわけだ。
また、CE 5.0の移植キットには、製品レベルのデバイスドライバがサンプルとして追加されるようになった。従来のサンプルドライバはあくまでもサンプルというレベルであり、OEMメーカーが正式なドライバを作る必要があった。同様に、各種プラットフォームの違いを吸収するためのOAL(OEM Adaptation Layer)も、CPUメーカー提供のリファレンスボード用のものが製品品質となり、開発時間が短縮できるようになったという。
Windows CE 5.0の主な強化点とは、以下のようになっている。
・デバイス関連(USB 2.0ホスト、SDIOなど)
・ネットワーク関連(WiFi/WPAネイティブサポート、Bluetoothなど)
・AV関連(UPnP、RDP、DTCP、Windows Media Player強化など)
・ブリッジフレームワーク(他のOSとの協調動作)
・WWWブラウザ強化
全般に、現在、OEMメーカーが独自で提供しているような機能が取り込まれ、開発期間がより短縮されるようになった。たとえば、現在無線LANやBluetoothは、Windows CE 4.2で提供されるモジュールのみでは不十分で、サードパーティ製品や自社開発したモジュールを組み込んでサポートが行なわれている。このため、同じWindows Mobile 2003であっても、メーカーにより、無線LAN ON/OFFのユーザーインターフェイスなどが違っている。Windows CE 5.0では、これらがネイティブサポートされることで、統一された操作が可能になり、デバイスドライバのみを用意すればいいようになった。
AV関連の強化は、Media Center ExtentionやPortable Media Centerを想定したもので、UPnPを使ったネットワーク内のデバイス検出や操作を可能にする。また、Windows Media Player自体も強化され、Windows XP上のWindows Media Player 9でサポートされているWMA ProやLosslessといったフォーマットの再生が可能になった。
Media Center Extentionでは、RDPを使い、Media Center Edition側のユーザーインターフェイスをリモートデスクトップとして操作する。このRDPのバージョンが5.5に上がり、Windows CEの描画システムであるGWES(Graphics,Windowing,and Events Subsystem)上で独自のメモリ空間を持って動くようになったため、より実行効率が上がった。このため、従来のWindows CEよりもスムーズな動作が可能になったという。
ブリッジフレームワークは、Windows CEと他のOSを共存させるための仕組みで、昨年発表されたT-Kernel(TRON)との協調動作に用いられる。2003年の時点では、T-Kernelとの共存は、試作バージョンとして作られたものだったが、CE 5.0から、正式な機能として提供されることになる。
WWWブラウザの機能強化としては、XPのSP2に実装されたポップアップブロックなどがある。その他、P3P(Platform for Privacy Preferences)やインターネットセッティングコントロールパネルなどがサポートされる。
●XP Embedded SP2
また、Windows XPのSP2のリリースを受けて、組込用のWindows XP EmbeddedもSP2対応となった。これには、SP2の主要な機能であるセキュリティセンターやファイアウォールの強化、Bluetoothサポートなどがある。XPeは、組込用のOSだが、EWF(Enhanced Write Filter)という仕組みを使うことで、ROMなどの書き換えできないファイルシステムを見かけ上、書き換えることができる。EWFは、ファイル関連APIとファイルシステムアクセスの間に入り、書き込みを別のメディアに対して行なう。これにより、書き込みのできないメディアであっても、起動中に書き込み処理が必要なXPeの起動用メディアとすることができたり、システムのアップデートなどが可能になる。
XPe SP2特有の機能としては、セーブされたメモリイメージからの起動を可能にする「Hibernate Once Resume Many」機能がある。ノートPCなどで使われているハイバネーションと同じ仕組みを使って、高速にXPeを起動する仕組みである。ノートPCなどの場合と違うのは、再起動したあともメモリイメージを残すことができ、何回でも同じ状態での起動が可能になることである。
●Longhorn Embedded
XPeの次として、Longhornでも、組込用バージョンの開発計画があることが明らかにされたが、Longhorn自体が開発中の現在、その説明はかなり概念的なものに限定されていた。
Longhorn Embeddedでは、MinWinと呼ばれる、縮小セットのOSが構成可能で、現在のXPeより小さい構成のハードウェアでも実行が可能になるようだ。MinWinは、Win32やネットワーク機能(TCP/IP、Winsock2)などの基本機能だけで構成され、低レベルの機能だけを必要とする機器がターゲットとなる。
Longhorn Embeddedでは、単に組み込み可能なOSを提供するのではなく、POS端末やATM、セットトップボックスなどの応用機器別のバージョンが提供されるようになるという。OEMメーカーのカスタマイズは、これに機能を追加するだけに限定されるが、現在よりも開発期間を短縮できる。
カンファレンスと同時に展示会場も併設され、各社のWindows CEデバイスやPocket PCなどが展示されたほか、パートナー各社の展示ブースがあった。ここでは、組み込み用Widnowsの開発サポートやツール、ボードなどの展示が行なわれていた。
□マイクロソフトのホームページ
http://www.microsoft.com/japan/
□ニュースリリース
http://www.microsoft.com/japan/presspass/detail.aspx?newsid=2042
(2004年9月30日)
[Reported by 塩田紳二]
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