ソニーの2スピンドルモバイルノートPC「VAIO type T」レビュー
〜約8時間の長時間駆動を実現



VAIO type T

 ソニーは9月13日、デスクトップPCやノートPCの新製品を多数発表したが、ノートPC分野で注目したい製品が、約8時間の長時間駆動を実現した2スピンドルモバイルノートPC「VAIO type T」である。

 VAIO type Tは、昨年6月に登場した「バイオノートTR」(および今年5月に登場したマイナーチェンジモデルのVAIO type TR)を踏襲した製品となるが、ボディデザインが一新されただけでなく、中身も大幅に強化されている。

 今回は、VAIO typeの試作機を試用する機会を得たので、早速レビューしていきたい。


●VAIO type TRに比べて約3割の薄型化を実現

 VAIO type Tは、光学ドライブを内蔵した2スピンドルモバイルノートPCである。以前は、携帯性を重視したモバイルノートPCは1スピンドルが中心だったのだが、最近は、2スピンドルタイプでも、1kg前半を実現した製品が増えており、人気を集めている。

 VAIO type T(以下type T)は、今年5月に登場したVAIO type TR(以下type TR)と同じ10.6型ワイド液晶を搭載している。type TRのボディサイズは270.4×188.4×34.7〜36.5mmで、重さが約1.4kgであったのに対し、type Tのボディサイズは272×205×25〜34mm、重さは約1.38kgである。

 奥行きはtype Tのほうが多少大きくなっているが、厚さはかなり薄くなり、重量も20gほど軽くなっている。同じ10.6型ワイド液晶を搭載した富士通のLOOX T70Jの重量が約1.5kgであり、このクラスの2スピンドルモバイルノートPCの中では、トップクラスの携帯性を誇る。

 type Tは、搭載CPUの違いによって、上位モデルのVGN-T70Bと下位モデルのVGN-T50Bの2モデルが存在する(直販サイトのソニースタイル専用モデルも用意されている)。ボディカラーは、VGN-T70Bではミッドナイトブルーのみだが、VGN-T50Bでは、ミッドナイトブルーとバーガンディーブラウンの2色から選べることも特徴だ。

 どちらのカラーも、深みのある色で、表面は細かな凹凸がつけられているため、すべりにくく、指紋も付きにくい。左右のヒンジ部分に「VAIO」ロゴが入っているなど、細部のデザインにもこだわりが感じられ、デザインや質感についても文句はない。また、ラッチレスデザインを採用し、見た目もスッキリしている。

 今回は、VGN-T70BとVGN-T50B(バーガンディーブラウンモデル)を試用したが、試作機なので、製品版とは細部が異なる可能性もある。

DOS/V POWER REPORT誌とのサイズ比較。バッテリのはみ出し部分を含めると、DOS/V POWER REPORT誌とほぼ同じサイズだ 左が、上位モデルと下位モデルで選択可能なミッドナイトブルー。右が下位モデルのみで選択可能なバーガンディーブラウン。どちらも今までにあまりない色である VGN-T70Bでは、このミッドナイトブルーのみが用意されている。バッテリが一部後ろにはみ出す格好である
VGN-T50Bのバーガンディーブラウンモデル。赤みがかった茶色という雰囲気で、なかなか落ち着いている バーガンディーブラウンモデルの表面のアップ。表面に細かな凹凸があり、手触りがよい
ミッドナイトブルーモデルの表面のアップ。こうした細かな凹凸はシボ加工と呼ばれるもので、仕上げにも手がかかっている 左右のヒンジ部分に「VAIO」ロゴが入っている

●上位モデルではDothanコアの超低電圧版Pentium M 733を搭載

 上位モデルのVGN-T70Bでは、CPUとしてDothanコアの超低電圧版Pentium M 733を搭載しているのに対し、下位モデルのVGN-T50Bでは、Baniasコアの超低電圧版Celeron M 353を搭載している。動作クロックは、超低電圧版Pentium M 733が1.10GHzであるのに対し、超低電圧版Celeron M 353は900MHzとなっている。

 また、超低電圧版Pentium M 733のL2キャッシュサイズは2MBだが、超低電圧版Celeron M 353のL2キャッシュサイズは、4分の1の512KBである。ちなみに、type TRの上位モデルでは、Baniasコアの超低電圧版Pentium M 1.10GHz(L2キャッシュサイズ1MB)が搭載されていたので、動作クロックは変わっていないが、L2キャッシュが倍増したことになる。なお、VGN-T70BとVGN-T50Bの違いは搭載CPUだけで、それ以外のスペックは全く同一である。

 チップセットとしては、統合型チップセットのIntel 855GMEを搭載。メモリは標準で256MB実装しているが、MicroDIMMスロットが1基用意されており、最大768MBまで増設が可能だ。なお、Intel 855GMEでは、メモリクロックは333MHz(PC2700)までサポートしているが、type Tでは、メモリクロックを266MHz(PC2100)と333MHzから選択できるようになっている(出荷時は266MHzに設定されている)。メモリクロックを266MHzにすると、グラフィックコアの動作クロックも200MHz(メモリクロック333MHz時のグラフィックコアクロックは250MHz)となり、パフォーマンスは犠牲になるが、その分消費電力が下がり、駆動時間が長くなる。

キーボード裏側にMicroDIMMスロットが用意されており、最大768MBまでメモリを増設することができる 「Sony Notebook Setup」で、メモリクロックとグラフィックコアクロックを変更できる。デフォルトでは、省電力優先に設定されている 「コンピュータの電源を切る」ダイアログボックスに並ぶアイコンの横の長さは約7mmである

 液晶ディスプレイとしては、10.6型ワイド液晶パネル(1,280×768ドット)を採用。この液晶パネルは、クリアブラック液晶と呼ばれるもので、いわゆるツルピカ液晶だが、多層ARコートが表面に施されているため、映り込みが抑えられている。輝度やコントラストも高く、DVD-Videoの映像なども鮮明に表示される。

●DVD±RWドライブを搭載

右側面にDVD±RWドライブを搭載。固定式で着脱はできない。下位モデルも同じドライブが搭載されている

 type Tでは、光学ドライブとしてDVD±RWドライブを搭載している。最大記録速度はDVD+R/RWが2.4倍速、DVD-R/RWが2倍速である。なお、光学ドライブは固定式で着脱はできない。

 HDD容量は40GBと標準的だが、小型化・軽量化を重視したために、一般的な2.5インチHDDではなく、1.8インチHDD(東芝製MK4004GAH)が採用されている。type TRでも、1.8インチHDDが採用されていたのだが、2.5インチHDDに比べると性能面では不利となる。

 キーボードのキーピッチは約17mm、キーストロークは約1.7mmである。キー配列も標準的で、不等キーピッチもないので使いやすい。ポインティングデバイスには、インテリジェントタッチパッドが採用されている。type TRに比べて、パッドのサイズが大きくなっており、より操作性が向上している。

 また、キーボード右上には、DVDボタンとAV操作ボタンが用意されている。Windowsが起動している状態でDVDボタンを押せば、ワンタッチでDVDプレーヤーが起動し、DVDソフトの再生が始まるので、ポータブルDVDプレーヤー代わりに使うときにも便利だ。ただし、Windowsを起動せずにDVDなどの再生が可能な、いわゆるInstant On機能は装備していない。

キーピッチは約17mmで、不等キーピッチもなく使いやすい。キー配列も標準的である。インテリジェントタッチパッドのサイズもtype TRに比べて大きくなっている キーボード右上に、DVDボタンとAV操作ボタンが用意されている。Windowsが起動している状態でDVDボタンを押せば、ワンタッチでDVDソフトの再生が可能だ

●オプションでポートリプリケーターが用意されている

 type Tでは、本体にUSB 2.0×2、IEEE 1394(4ピン)、外部ディスプレイ出力、マイク入力、ヘッドホン出力といった最低限のポートを装備している。オプションのポートリプリケーターを装着することで、プリンタポート(パラレルポート)やUSB 2.0×3が追加される。

 カードスロットとしては、PCカードスロット(Type2×1)とメモリースティックスロットを装備している。メモリースティックスロットは、標準サイズだけでなく、携帯電話などで使われているより小型のメモリースティックDuoもそのまま差し込むことが可能だ。また、本体前面には、消音/サウンドエフェクトボタンや音量調整ボタンが用意されており、ワンタッチでミュートなどの操作が可能だ。

 通信機能としては、Ethernet機能と56kbps対応モデム機能に加えて、IEEE 802.11b/g対応の無線LAN機能を装備している。ワイヤレススイッチやワイヤレスインジケータが用意されているのも便利だ。ただし、LAN端子とモデム端子(モジュラージャック)がプラスチック製カバーで覆われているため、カバーの耐久性がやや気になった。

【お詫びと訂正】初出時、本体に搭載するUSBポートが1つと記述しておりましたが、誤りでした。お詫びとともに訂正させていただきます。

左側面には、外部ディスプレイ出力、USB 2.0、IEEE 1394、PCカードスロット、メモリースティックスロットが用意されている。PCカードスロットのフタはダミーカード方式なので、フタをなくしてしまう恐れがある 右側面には、DVD±RWドライブとモデム端子、LAN端子が用意されている モデム端子とLAN端子はプラスチック製カバーで覆われているため、カバーの耐久性が気になる
背面には電源端子のみが用意されている 底面にポートリプリケーター接続用端子が用意されている 左手前にワイヤレススイッチが用意されており、ワンタッチで無線LAN機能のオンオフが可能だ
本体前面には、ヘッドホン出力やマイク入力のほか、消音/サウンドエフェクトボタンや音量調整ボタンが用意されている 電源ボタンにもLEDが仕込まれており、動作中は緑色に光る

●大容量バッテリ搭載で長時間駆動を実現

 type Tがtype TRに比べて改良された点のひとつに、バッテリ駆動時間が大幅に長くなったことが挙げられる。type TRでは、標準で付属するバッテリパック(S)での公称駆動時間が約4.5時間(JEITAバッテリ動作測定法Ver1.0に基づく)であったのに対し、type Tの上位モデルであるVGN-T70Bでは、標準バッテリでの公称駆動時間が約8時間と約1.8倍にも延びている(拡張版SpeedStepテクノロジをサポートしないCeleron M搭載のVGN-T50Bの駆動時間は約6.5時間)。

 type Tのバッテリは、1セルあたり3.7V/2,400mAhの大容量を誇る最新リチウム電池を6セル採用している。type TRでは3セルを直列に接続し11.1Vという電圧を得ていたのだが、type Tでは2セルを直列に接続して7.4Vで利用している(それを3セット並列に繋いでいるので、2×3=6セルになるわけだ)。

 type Tでは、電源回路の改良によって、電圧変換効率を高めており、バッテリの電力を最大限に活用できるようになっている。なお、標準バッテリで約8時間もの長時間駆動を実現しているため、大容量バッテリは特に用意されていない。省電力機能設定ユーティリティもよくできており、細かく設定が可能だ。

 また、ACアダプタがコンパクトになったことも高く評価したい。type TのACアダプタはtype Uで採用されたACアダプタと同じものだが、サイズはほぼ名刺大で、厚さも薄く、携帯性に優れている。ACコンセントに接続すると、プラグ部分が緑色に光るのも親切だ。

6セルタイプのバッテリを採用。左はVHSビデオテープ バッテリは、7.4V、7,200mAhという大容量を誇る ACアダプタも小型化され、携帯性が向上している。左はVHSビデオテープ
通電時にはプラグ内蔵のLEDが緑色に光るので、コンセントに正しくささっているかが一目でわかる。プラグに「VAIO」ロゴが入っているのもこだわりを感じさせる 「VAIO省電力ビューア」では、レーダーチャート形式の表示を採用しており、省電力設定の様子が一目で分かる CPUファンの制御方法や内蔵デバイスの電源オンオフなど、細かく省電力設定を行なえる

●バッテリ駆動時間は長いが、パフォーマンスにはやや不満が

 参考のために、いくつかベンチマークテストを行なってみた。ベンチマークプログラムとしては、BAPCoのMobileMark 2002、SYSmark 2002、Futuremarkの3DMark2001 SE、id softwareのQuake III Arenaを利用した。

 MobileMark 2002は、バッテリ駆動時のパフォーマンスとバッテリ駆動時間を計測するベンチマークであり、SYSmark 2002は、PCのトータルパフォーマンスを計測するベンチマークである。また、3DMark2001 SEやQuake III Arenaは、3D描画性能を計測するベンチマークだ。MobileMark 2002については、電源プロパティの設定を「ポータブル/ラップトップ」にし、それ以外のベンチマークについては、電源プロパティの設定を「常にオン」で計測した。

 結果は下の表にまとめたとおりである。比較対照用に超低電圧版Pentium M 1.10GHzを搭載したLet'snote R3と、超低電圧版Pentium M 900MHzを搭載したLet'snote W2の結果も掲載してある。なお、VGN-T70BとVGN-T50Bは、前述したようにメモリクロックとグラフィックコアクロックを変更できるので、「省電力優先」と「パフォーマンス優先」のそれぞれで計測している(VGN-T50Bのパフォーマンス優先でのMobileMark 2002は、時間の都合により未計測)。

 まず、出荷時設定である省電力優先でのスコアから見てみよう。VGN-T70BのMoblieMark 2002のPerfomance ratingは95、VGN-T50Bでは81で、Let'note R3やLet'snote W2のスコアに比べるとかなり低い。CPUパフォーマンスだけなら、2MBのL2キャッシュを装備したVGN-T70Bが上回るはずなのだが、スコアがふるわないのは、やはり1.8インチHDDを採用していることが足を引っ張っていると考えられる(Let'snoteは2台とも2.5インチHDD)。

 しかし、バッテリ駆動時間を示すBattery life ratingの値は、VGN-T70Bが378(6時間18分)、VGN-T50Bが363(6時間3分)と非常に優秀である。さすがにLet'snote R3には及ばないものの、同じ2スピンドルモバイルノートPCのLet'snote W2の値を上回っている。これだけバッテリが持てば、AC電源のないところで長時間使う場合でも安心して利用できる。

 SYSMark 2002のスコアは、Internet Content Creationは優秀なのだが、Office Productivityは他のマシンの後塵を拝する結果となっている。エンコード作業などが含まれるInternet Content Creationでは、CPU性能が比較的大きく影響するのに対し、Office Productivityでは、HDD性能が効いてくるのであろう。

 3DMark2001 SEやQuake III Arenaの結果は、基本的に同じ統合型チップセットを採用した製品同士の比較であるため(Let'snote W2のみ1世代前のIntel 855GMを採用)、CPU性能で勝るVGN-T70Bが有利である。

 VGN-T70Bの設定をパフォーマンス優先に変更すると、MobileMark 2002のPerformance ratingは4ポイント向上しているが、Battery life ratingは逆に32ポイント(32分)低下している。SYSmark 2002のスコアも多少向上するが、その差はそれほど大きくはない。しかし、3DMark2001 SEやQuake III Arenaのスコアは2割以上も向上している。パフォーマンス優先に変更すると、メモリ帯域幅と同時にグラフィックコアクロックも向上するため、3D描画性能は大きく上がるのであろう。

【VAIO type Tベンチマーク結果】
 VGN-T70BVGN-T70BVGN-T50BVGN-T50BLet'snote R3Let'snote W2
CPUPentium M 733Pentium M 733Celeron M 353Celeron M 353超低電圧版Pentium M 1.10GHz超低電圧版Pentium M 900MHz
ビデオチップIntel 855GME内蔵コアIntel 855GME内蔵コアIntel 855GME内蔵コアIntel 855GME内蔵コアIntel 855GME内蔵コアIntel 855GM内蔵コア
バッテリモード省電力優先パフォーマンス優先省電力優先パフォーマンス優先--
MobileMark 2002
Performance rating959981未計測134117
Battery life rating378346363未計測425341
SYSmark 2002
Internet Content Creation162168133136138115
Office Productivity7980596112199
3DMark2001 SE
1,024×768ドット32bitカラー(3Dmarks)1,875 2,300 1,623 1,956 18501537
Quake III Arena
640×480ドット32bitカラー84.7103.168.57793.886
800×600ドット32bitカラー56.585.750.667.870.160

●携帯性とバッテリ駆動時間を重視する人にお勧め

 type Tは、スタイリッシュで質感が高いボディと、長時間のバッテリ駆動時間、携帯性の高さが魅力である。しかしその反面、1.8インチHDDを採用したことで、パフォーマンスがやや犠牲になっている。1.8インチHDD搭載製品の中では、性能的に見劣りするわけではないのだが、2.5インチHDD搭載製品に比べると、全体的にレスポンスが遅く感じられることも事実だ。

 しかし、モバイルノートPCとしての完成度は高く、使い勝手もよい。パフォーマンスよりも、携帯性やバッテリ駆動時間を優先する人にお勧めしたいマシンだ。

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【9月13日】ソニー、重量1.38kgで8時間駆動の「VAIO type T」
〜type TRから約30%の薄型化
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2004/0913/sony3.htm

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(2004年9月22日)

[Reported by 石井英男]


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