元麻布春男の週刊PCホットライン

2006年に登場するPCI Express 1.1とその後



 Intelが10年に1度のアーキテクチャの革命と呼ぶPCI Expressが実用化されて4カ月弱が経過した。

 現状ではPCI Expressを利用可能なプラットフォームがIntel製チップセットに限られる上、対応するプロセッサも事実上LGA775対応のものに限られるなど、比較的「値の張る」商品であるにもかかわらず、ハイエンドのグラフィックスカードが十分供給されないなどのチグハグさもあり、当初見込まれていたより普及の速度は遅いように思う。グラフィックスカード以外のPCI Express製品は、まだほとんど製品を見かけないのが実情だ。

 しかし、全く新しいものが普及する時には、想定していたより時間がかかることもあるもの。とりあえずPCI Expressには競合する規格が登場していない(PCI-Xがあるサーバーを除く)ことからして、普及は時間の問題だと考えられる。年内にはAMDプロセッサに対応したPCI Express対応チップセットも登場するのではないだろうか。

●2006年にはPCI Express 1.1準拠製品が登場

 このPCI Expressの標準化は、既存のパラレル信号によるPCIバス同様、PCI-SIGで行なわれている。現在製品化されているのはPCI Express 1.0a規格に基づいたものだが、これにモバイルPC向けミニカードの仕様などいくつかの追加と、エラッタの訂正を行なったPCI Express 1.1規格が最終段階にある。2005年後半からPCI 1.1規格を対象とした互換性の検証が始まり、2006年に登場する製品はPCI Express 1.1に準拠したものが主流になるものとみられる。

 このPCI Express 1.1に続くものとして、PCI-SIGでは様々な規格が引き続き策定作業中だ。1つは、現行の2.5Gbpsの2倍のデータレート(5Gbps)の実現を目指す2世代目の物理規格だが、これはまだかなり早期の段階にあるらしい。それより実現時期の早いPCI Express 1.1規格を補完する追補として現在作業中なのがハイエンドグラフィックス規格、サーバー向けのI/Oモジュール(SIOM)規格、ワイヤレス規格、ケーブル規格といったあたりだ(ほぼ実現時期の早い順)。

NVIDIAのGeForce 6800シリーズに搭載された6ピンの補助電源コネクタ PCI-SIGが公開したロードマップ

 最も実用化の近いハイエンドグラフィックス規格だが、実際にはこれを先取りした製品がすでに秋葉原等で売られている。PCI Expressのハイエンド向けグラフィックスカード(ATIのRADEON X800シリーズ、NVIDIAのGeForce 6800シリーズ等を用いたもの)で採用されている6ピンの補助電源コネクタが、実はハイエンドグラフィックス規格で採用される予定のものだ。

 元々PCI Expressは、ハイエンドのグラフィックスカードであっても、こうした補助コネクタなしで対応可能なように規格化を進めたハズだった。実際、作業の途中で最大消費電力は60Wから75Wに引き上げられている。しかし、高性能化、搭載メモリの大容量化に突き進むグラフィックスハードウェアは、とても75Wでは収まりきらない。そこで、ソケットから75W、補助電源コネクタから75Wの計150Wを供給可能にしようというのがハイエンドグラフィックス規格だ。

 注意が必要なのは、この6ピンの補助電源コネクタを用いた規格は、ATXを前提にしたもので、Intelが次世代の標準と推すBTXについては、必要条件を定義している段階に過ぎない、ということだ。これはATXとBTXではサーマルデザインが異なることに由来しているということである。現在、ハイエンド規格はVersion 0.9のものがPCI-SIGメンバーにおけるレビューの段階にあり、10月には評価が完了するものと見られているが、最初のハイエンド規格にはBTX向けの要件が含まれない可能性がある。

 SIOM規格は、サーバー向けにバックプレーン接続するI/Oモジュールの標準化を行なうもので、機械的な規格だけでなく、EMIや熱、ホットプラギング等についても標準化が行なわれる。SIOMに準拠することで、異なるサーバベンダ間でも拡張機器の共有を可能にしようという狙いだ。

 コンセプト的には一時騒がれたデバイスベイに似ているが、デバイスベイがコスト制約の強いクライアントPCをターゲットにしたことから離陸できなかったのに対し、SIOMは単純なコストよりTCOが重視されるサーバー向けになっているのがミソと言えるだろう。SIOM規格は年内にVersion 1.0がリリースされる見込みだ。

●ワイヤレスやケーブル規格も策定が進む

 ワイヤレス規格というのは、何も、ワイヤレスUWBのようにPCI Expressの物理層をワイヤレス化しようというものではない。ワイヤレス機器向けの追加、特にアンテナ回りを規格化することで、PCI Expressを利用した無線デバイスの交換を容易にすることが目的だ。

 ワイヤレス規格では、内蔵用のPCI Expressミニカード上のアンテナの位置や、ノートPCの液晶部に設けられた内蔵アンテナとの物理的インターフェイスが標準化される。さらに、PCカードスロットにとって代わるExpressカードスロット経由でも、内蔵アンテナとのインターフェイスを可能にする方向で話が進められているようだ。ただ、ワイヤレス規格はRCが2005年第1四半期を予定しており、Alvisoチップセットを搭載した最初のノートPCには間に合わないかもしれない。

 ケーブル規格は、PCI Expressを用いてボックス間の接続に使おうというもの。ただし、USBやIEEE 1394を置き換える用途(コンシューマー用途)は狙っていない。想定されている用途のうち、最もコンシューマーに近いケーブル規格の用途は、ノートPCとドッキングステーション間の接続だが、ドッキングステーション自体があまり売れるものではないだけに、一般のユーザーにはあまり縁がないものになるかもしれない。

 想定している主な用途は、サーバーのラック内の接続で、サーバーと周辺機器の接続のほか、現在Myrinet等のプロプライエタリな接続が用いられることが少なくない、クラスタリング用途も視野に入れている(そういう意味ではInifiniBandやGigabit Ethernetとは競合する)。

 このケーブル規格は追補規格の中では早くから構想が打ち出されていたものの、用途により求めるものが異なるため、標準化にはかなり時間がかかりそうだ。おそらく提供可能な帯域(1レーン〜16レーン)、最大ケーブル長などの違いで、複数のスペックがリリースされることになるだろう。現在開発中で9月にもPCI-SIGメンバーに公開される規格はまだVersion 0.5に過ぎず、正式リリースがいつになるのかはまだ分からない。

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(2004年9月17日)

[Text by 元麻布春男]


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