IDF Fall 2004通信インフラストラクチャ基調講演レポート

音声認識付き無線VoIP端末をデモ


通信インフラストラクチャ事業本部本部長兼Intel副社長
ハワード・バブ氏
会場:Moscone Center South(米国カルフォルニア州サンフランシスコ)
2004年9月7日~9日(現地時間)


 IDF2日目、クライアント関連の基調講演に続いて登場したのは、通信インフラストラクチャ事業本部のハワード・バブ氏だ。

 バブ氏の講演のタイトルは“One Network”。Intelが、通信関連の製品を幅広く取りそろえており、LANから都市規模、WANまで幅広いネットワーク構築をサポートできることを訴えた内容である。

 本来なら、通信インフラストラクチャ事業本部の基調講演は、ショーン・マローニ氏が行なうはずなのだが、同氏は、現在韓国におり、VoIP TV電話での参加となった。もちろん、これもデモの一環。

 Intelの通信ビジネスは、Centrinoの無線LANモジュールやGigabit Ethernetデバイスから、通信事業者向けのシステム、そしてXscaleを使ったアプリケーションプロセッサやネットワークプロセッサも扱う。エンドユーザーが使う通信機器に関連する製品から、通信事業者向けの製品まで、品揃えの幅は広い。

 プロセッサ技術やPC周辺機器技術をテコに、通信業界へ入り込もうというのがIntelの戦略であり、XScale技術を携帯電話のアプリケーションプロセッサや、ネットワークプロセッサに応用し、x86サーバー技術で通信機器事業者向けのサーバー機器を開発している。

●半導体技術やPC関連技術をテコに

 IEEE 802.11の分野では、Centrinoプラットフォームのマーケティング力もあってIntel製品のシェアは大きい。Intelが同じシナリオを期待しているのがWiMAX(IEEE 802.16)だ。

 笠原氏のレポートにもあるように、無線LANに比べて広い範囲をカバーできるWiMAXは、いつでもどこでも常にネットワークに接続できるPervaisive Networkの実現には、欠かせない技術と見られている。第3フェーズとして予定されているIEEE 802.16eでは、移動体との通信が実現され、WiMAX-WiFiゲートウェイを使えば、電車やバスの中でホットスポットを運営することも可能になるという。まだまだこれからの技術だが、Intelの通信ビジネスの中では大きな位置を占めているようだ。

 チップセットとともに提供されているEthernetコントローラもまた、通信インフラストラクチャ事業本部の製品である。最近では、Gigabit Ethernetを都市内の通信や、機器間の高速インターフェイスに応用する動きが出ている。

 基調講演では、1Gbit/10Gbit Ethernetスイッチデバイスである“Capilano”を公開した。Intelでは、Gigabit/10Gbit Ethernetの分野での主導権を保ちたいと考えているようで、Capilanoにも力が注がれている。通常、周辺デバイスは、コストを下げるためにCPUよりは1世代古いプロセスを使うが、Capilanoは、Prescottなどと同じく90nmプロセスで作られ、2億個以上のトランジスタを集積している。

1Gb/10Gb Ethernetスイッチデバイス「Capilano」。パケットメモリや10Gb Ethernetの接続インターフェイスであるXAUI(10Gigabit Attachment Unit Interface。Xはローマ数字の10) 、SERDES(SERializer/DESerializer)を内蔵している Fab 11で実用化されているVoIP端末。IEEE 802.11bで通信し、ボタンを押して名前を発音するだけで登録した相手と通話が開始される Fab 11におけるVoIPシステムの概要

 TCP/IPなど、コンピュータ関連の技術を使うVoIPもIntelが突破口にしようとしている分野だ。企業向けPCのコンセプトである「デジタルオフィス」でも、重要な機能として取り上げられていた。バブ氏の基調講演では、その実例としてIntelのFab 11で実際に使われているVoIPシステムの実演が行なわれた。

 このデモは、小型の無線VoIP端末(IEEE 802.11b使用。Vocera Communications製)を使い、Fab 11と基調講演会場で通話を行なうという内容だった。このVoIPシステムには音声認識機能があり、通話したい人物の名前を発音するだけで、接続が開始される。端末の管理は、IA-32サーバー上にインストールされたソフトウェアが行ない、端末との通信には、通常の無線LANアクセスポイントを使う。つまり、無線LANのインフラがあれば、構内どこでも使える「コードレス電話」になるわけだ。

●Intelにおける通信ビジネスの位置

 バブ氏は、「Intelはネットワークの変化を可能にする」と主張する。Intelが提供する技術を使えば、前記のように、既存のネットワークをより高性能で安価なVoIPに置き換えられるといったことを意味している。

 既存の通信技術を変革しつつ、それらを生み出した電話会社などのキャリア系企業ともビジネスを行なわねばならないというのがIntelのジレンマだ。

 それもあってか、Intelの通信ビジネスは、CPUを売るための活動の域は越えてはいるが、Intelを支えるもう1つの柱という水準には達していない。2年ほど前から、オッテリーニ社長は、通信とコンピュータの融合を基本テーマに掲げている。技術面はともかく、Intel内部でのコンピュータと通信ビジネスの融合はまだ道半ばのように感じられた。

□IDF Fall 2004のホームページ(英文)
http://www.intel.com/idf/us/fall2004/systems/
【9月9日】【笠原】“Rosedale”を武器に普及を目指すIntelのWiMAX戦略
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2004/0909/ubiq76.htm

(2004年9月10日)

[Reported by 塩田紳二]


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