■デジタルミュージックプレーヤーは欠かせないアイテム
ここ数年、AudioCDを購入しても直接再生せずに、PCでMP3やWMAのデータとしてリッピングして聴くことがとても多くなってきた。手持ちのAudioCDが500枚を超える数になってくると、聴きたい曲を探し出すだけでも一苦労である。そういうこともあり、PCで作業しているときに聴きたくなったら、すぐに曲を検索して楽しむことができる手軽さはありがたい。 またデータにしておけば、デジタルミュージックプレーヤーに転送して外出先でも気軽に楽むことができる。筆者の生活パターンだと、週に10時間以上は電車移動に費やしている。そういうときに音楽を楽しめるデジタルミュージックプレーヤーは、筆者にとって大切なグッズである。 最初に使い始めたのはSeahanの「MPMAN」だったが、その後もさまざまな機種に乗り換え、すでに6年近くなろうとしている。 もちろん、コンパクトなCDプレーヤーやMDプレーヤーを使っていた時期もあったが、十分な音質を得られる製品が数多く発売され、より利便性の高いデジタルミュージックプレーヤーを使うことがほとんどとなっている。 シリコンオーディオプレーヤーが出たばかりのころは、内蔵のフラッシュメモリが32MB程度しかなく、低ビットレートのMP3データを転送して持ち歩いていた。最近ではメモリ内蔵のモデルでも512MBや1GBといった製品が登場しているし、iPodに代表されるように、HDD内蔵製品も多数登場してきた。 HDDタイプの製品の魅力は、やはり大容量ということである。現在発売されているものでは、小さくても1.5GB、大きいものになると40GBという容量の製品も登場している。もちろん、どの製品も手のひらに乗るようなサイズであり、ビットレートにもよるが数千曲を手軽に持ち歩いて聴くことができるのは大きな魅力だ。
筆者もHDDタイプのデジタルミュージックプレーヤーを利用している。頻繁に利用したのが「RIO Eigen」とCREATIVE「MuVo2」である。メモリタイプのプレーヤーとほとんど同じ大きさで1.5GBという容量のRIO Eigenは、購入直後には曲名などのデータが正しく表示できない、操作時のノイズが発生するといった状況だった。そういうこともあり、一応曲は再生できるとはいえ、ほかに良い機種はないものかと探していた。 そこで発売されたのがCREATIVE MuVo2である。MuVo2には内蔵HDDの容量が1.5GBと4GBの2種類があるが、購入したのは4GBのほうだ。MuVo2を選択したのは、4GBモデルがある、内蔵バッテリがユーザでも交換できる、Creative製品であるという理由からだ。 MuVo2は、音質やUSBポートからの充電、音楽データを含め全てのファイルをUSBマスストレージクラス対応デバイスとして保存できる点では満足できるものだった。 ただ、どうしても操作性に馴染めず一気に乗り換えできずに、その日の気分でEigenと併用を続けていた。操作性に関しては、別売りのリモコンで解決できるかと思ったのだがやはり馴染めず、結局このリモコンはお蔵入りとなった。 当然、この時期にもほかのHDDタイプのデジタルミュージックプレーヤーは存在していたが、EigenやMuVo2に比べてボディサイズの大きなものばかりで選択肢にはあがらなかった。これまでの経験で大きさが気に入らないと、まったく持ち歩かなくなるということが分かっている。 実際に試したわけではないが、筆者にとって抵抗なく持ち歩くことができるのはMuVo2やEigen程度の大きさまでであろう。両者の大きさを比較すると、容積的にはほぼ同じだと思うが、Eigenのほうが幅が狭く、胸ポケットに収まりがいいというだけで、持ち歩く機会が多かった。 そんな中、7月に国内でも販売が開始されたのが、Apple「iPod mini」である。これまでiPodには、あまり興味を持っていなかった。その理由はWindows Media Audio形式のデータを再生できないからである。当時、筆者はほとんどのデータをWMA形式でリッピングしており、iPodに乗り換えるということは膨大な数のCDのリッピングをやり直すことになるからだ。 だが、先行して海外で手にいれたというiPod mimiに触れる機会があり、自分が持ち歩くに十分な大きさ、重さであったこと、品質の良い外装であることは十分確認することができた。WMA形式のデータが再生できない部分は気にはなったが、とりあえず購入してみることにした。 ■iPod miniを手にいれる
購入は決めたものの、どこで購入すればいいのかが問題だった。出荷数は少なく、発売直後に手にいれるのは困難でなないかという噂が流れていたが、大手通販サイトで発売日直後の出荷予定で、予約を受け付けていることを知り早速申し込んだ。 筆者が申し込んだカラーはシルバーである。特にこの色が気に入ったわけではないが、カバーなりケースを使う心づもりであったので、傷が目立たないのではないかという点での選択である。 発売日の翌日には手元に到着し、バッテリを充電した。iPod miniは、USBやIEEE 1394でPCと接続して充電できるということで、まずはUSBで接続したものの一向に充電される感じがなく、付属のACアダプタとIEEE 1394ケーブルを使って充電した。 充電が完了するまでの間、付属品をチェックしてみたが、とても綺麗にパッケージングされているのが印象的だった。 箱に綺麗に収まっているだけでなく、iPod mini本体やACアダプタ、各種ケーブルが1つずつ丁寧に梱包されているのには、ちょっと驚かされた。過剰と感じる人もいるかもしれないが、丁寧なパッキングは購入者としてはうれしいものだ。また、内容はともかくとして、きちんと印刷されたマニュアルが付属している点も、最近の機器しては新鮮な印象を覚えた。
■iTunesの操作性はまずまず
付属のCD-ROMでソフトなどをインストールしたが、ここでインストールされたのはiTunes 4.2で、より新しいバージョンがあるということが表示されたため、最新版にアップグレードした。 筆者の場合、AudioCDからリッピングしているデータのほとんどがWMA形式で、そのままではiPod miniで再生できない。iTunesにはWMA形式のデータを、iPodで再生できるACCやMP3形式にデータ変換する機能が付いている。 128KbpsのWMA形式のデータを変換してPCで再生してみたが、なんとなく音質面で物足りなさを感じてしまったので、結局MP3形式で再リッピングしてみることにした。iPod mini自体の容量も4GBと比較的大きいことと、音質の面を考慮して、192KbpsのMP3形式でリッピングした。 iTunesを使って驚いたのは参照しているCDDBの精度が高いことである。かなりマイナーなCDでもちゃんと曲名やアーティスト名を検索してくる。Windows Media Player 9では検索できなかったCDでもしっかり検索してくれた。 ■戸外用であれば十分な音質、操作性にも満足
実は、最初にiPod miniを触ったときは、大きなホイールとボタン1個だけでどうやって操作するんだろうと戸惑ってしまった。しかし、実機を手にしていろいろと操作してみると、数分後には自由に操作できるようになった。 特に、これまで使っていた機器の操作性に難を感じていただけに、この高い操作性はiPod miniに真剣に乗り換えてもいいかなと思うようになった。 iPod miniはちょっとしたところで気の利いたユーザビリティを感じることができる。例えば、液晶のバックライトが灯くときは徐々に明るくなり、消えるときも徐々に暗くなっていく。これは、性能や機能とは関係ない部分ではあるが、iPod miniという商品を上手に演出している。個人的に気に入ったのが、ヘッドホンを繋ぐとiPod miniの電源が入るところだ。 また、音質に関しても満足している。ほかのHDD内蔵プレーヤーと比べてノイズが少ない。確かに解像度が高いヘッドホンを使うと若干のホワイトノイズが確認できるが、これも音楽が流れてくれば気になることはない。 唯一気になるのがイコライザーである。イコライザー機能をオンにすると、どのような設定にしても再生音が割れてしまうように歪むことがある。最初は使用しているヘッドホンやイヤホンが原因なのかもしれないと思っていろいろ交換してみたが、改善しなかった。とりあえずイコライザー機能をOFFにしておけば問題ないので、音のバランスは再生時に利用するヘッドホンやイヤホンを使い分けることにした。 ■好みによってイヤホンを交換
デジタルミュージックプレーヤーを購入すると、ほとんどの製品にはイヤホンなどが付属している。個人的には、付属しているイヤホンは動作確認用程度の存在価値しかないと判断している。 Eigenに付属するものは、付属品としてはなかなかの音質ではあったが、やはり音質に満足できず単体で発売されているものを利用している。 筆者の場合、電車やバスでの移動中に音楽を聴くことが多いため、イヤホンはカナルタイプのものを利用している。カナルタイプのイヤホンは、耳栓のように耳の中に押し込むことで周りの雑音が聞こえなくなり、小さな音でも雑音に消されることなく聞こえてくる。 また聴いている音が外に漏れる心配がなく、周りの乗客に迷惑をかける心配もない。ただカナルタイプのイヤホンはきちんと装着できないと本来の性能が引き出せないという特徴もある。また、装着感が気に入らないという場合もあり、万人にお奨めはできないが、筆者個人としては外出先で音楽を楽しむときはこのタイプしか利用していない。 筆者が利用しているイヤホンは、SonyのEX70SLを一部改造したものと、EtymoticResearchのER-4Sを使っている。筆者の好みの音は格段にER-4Sのほうである。ただ、ケーブルが長く硬いためちょっと使いにくい。 それに比べEX70SL改のほうはコードが細く柔らかい。またiPod miniを胸ポケットに入れたときに、丁度良い長さのケーブル長のため、手ぶらで出かけるときに重宝している。しかしながら、高音質で聴きたい気分のときにはER-4Sの出番となる。このER-4Sは、現在販売店経由でメーカーにメンテナンスに出しているところだ。 そこで今回、iPod miniをレビューするにあたり、EtymoticResearchから発売が予定されている「ER-6i」のサンプルを販売代理店のイーディオからお借りして試聴を行なった。ER-6iは、すでに発売されているER-6をiPodユーザー向けにアレンジしたものだ。ER-6シリーズは、筆者が愛用しているER-4シリーズ(31,500円)よりもリーズナブルな価格設定となっており、価格は21,000円(ER-6iの販売価格は未定)。
早速、ER-6iで何曲か聴いてみたが全体的にバランスのとれた音質で情報量の多い再生音だ。RockやJPOPといったものからJazzやClassicまでのいろいろなジャンルの楽曲を、iPod miniに付属のイヤホンより良い音質で楽しむことができた。 また、音質だけでなくコンパクトな本体に細くしなやかなケーブルとなっており、扱いやすい点も良いところだ。iPodのイメージを踏襲した白いデザインもiPodユーザーとしては嬉しいのではないだろうか。 同じEtymoticResearchからはポータブルプレーヤー向けに比較的低インピーダンスにセッティングされたER-4Pも発売されている。こちらも試聴してみたが、ER-6iに増して情報量の多いもので、ブラスの艶やかさ、ストリングスの弦の振動が繊細かつリアルに感じられる。 ソースによっては低音が足りないと感じるかもしれないが、ClassicやJazzのようなジャンルには圧倒的にER-4Pの再生音のほうが好みだ。ただ、ER-6iと比べると本体が長いこととケーブルが硬く、扱いが難しい。それよりもiPod mini本体より高価なイヤホンだという点が最も気になるかもしれないが、機会があれば是非試聴して実力のほどをを確かめてもらいたい。 いずれの製品もiPod mini付属のイヤホンよりも高音質で音楽を楽しめるものだ。製品の付属品だけでなく、市販のヘッドホンやイヤホンなども試してみるのも、楽しみ方の1つではないだろうか。 もしも、筆者がEX70SL改やER-4Sを使っていなかったら、ER-6iやER-4Pの購入を真剣に考えていたと思う。どちらを選ぶと尋ねられたら、価格が決定してはいないものの、おそらくER-6iを選択するだろう。それは自分なりに納得できる音質と戸外での扱いやすさを備えているからだ。 もちろん、カナルタイプのイヤホンは、EtymoticResearch以外にもソニーやPanasonic、SHUREなどから発売されているので予算や好みで選ぶといいだろう。 ■追加購入したオプション
iPod miniを2、3日使ってみると気になったのが、PCとの接続の際にケーブルをいちいち差し込まなければならないことだ。やはりドックを手に入れたほうが便利だと思ったが、純正品アクセサリが5,040円という価格で、少し躊躇してしまった。 そこでサードパーティ製を探してみると、同じような機能の製品が見つかった。ミヤビックスの「Pod・On!」である。このドックはiPod mini専用でなく他のiPodでも利用できるものだ。ということは、iPod miniを挿したときには隙間ができるだろうと予想できた。 隙間ができるということは、iPod miniにカバーを着けたままでも挿せるのではないかと考え、こちらを購入することにした。価格も3,150円と純正よりも安い。 もう1つ気になったのは本体の外装に関することである。手触りがサラッとしているため、手にしたときに滑り落としてしまう可能性や、擦り傷などを防止するために、カバーを用意することにした。 いくつかの量販店をチェックしてみたが、プラスチックや金属のケース、シリコン製のカバーが売られていたが、付けたままの状態でドックに挿せるかどうかか確認できなかったことと、ホイールの操作性が著しく失われないかが気になりその場では購入しなかった。 また、当たり前のことだがカバーを付けると、どうしても本体サイズが大きくなってしまうことも購入できなかった要因である。 インターネット上のショップをいろいろと検索してみると、筆者の気になっていた点をクリアしている製品が見つかった。RadTechの「Mini PodSleevz」である。構造は簡単で、iPod miniの本体側面を超極細繊維素材でぐるりと巻いてあるだけのものだ。液晶の部分にはビニールが縫いつけてある。 RadTechのページを見るとMini PodSleevzを付けた状態でもiPod miniに付属するベルトクリップが使えるようで、本体の大きさはほとんど変わることがなく、そのままドックに挿せるはずだと判断した。早速上記のPod・On!と共に注文し、2日後には手にすることができた。 手に入れてみると、どちらの製品も予想していたとおりのもので筆者の期待を満たしてくれた。現在、iPod miniは、Pod・On!を経由でIEEE 1394ポートを利用して接続している。Pod・On!にiPod miniを挿した状態では、かなり隙間が空いておりコネクタ部分だけで支えられている感じだ。もしかすると、これだけの隙間があればシリコン製カバーを付けた状態でも挿すことができるかもしれない。 Mini PodSleevzのほうは、iPod miniにピッタリの大きさで作られており装着するのにきつくて苦労した。だが、頻繁に付けたり外したりするようなものではないので、装着しにくさが問題にはなっていない。 逆に使用中にカバーがずれてくることもなく快適である。また、手に持ったときも滑りにくくなり、間違って落としてしまう事故も、ある程度は防ぐことができるのではないだろうか。 さすがにMini PodSleevzを装着するとホイールの感度は下がるものの、操作に困るようなことはない。逆に敏感なホイールの感度が下がることはメリットになっているのではないだろうか。カバーを付けると放熱に問題があるのでないかと心配していたが、iPod mini自体、動作中にそれほど発熱したりしないので問題にはならないだろう。
■かなり高い満足度のiPod mini
iPod miniだけでは十分満足だとはいえないが、自分の好みの音質のヘッドホンや各種アクセサリを手にいれることで非常に高い満足感を得ている。 いまのところ、旅行や出張といった長時間で使用する機会がないためか、4GBという容量やバッテリの持ちに関しての不満はないが、今後使い方によっては不満を感じる可能性もある。そうなったときには、その時点で手に入る製品を再検討するとは思うが、単に音楽を聴く目的のプレーヤーであれば、iPodの中から選ぶ確率が高い。 当初、気になっていたデータフォーマットの件も、手持ちのAudio CDを再リッピングすることに決めて、空き時間に少しずつ片づけているところだ。ちょっと先が見えない作業になるが、最も汎用性のあるMP3形式に切り替えおけば、今後再生機器で困ることもないだろう。 現在、iPod miniにはクラシックから、ジャズ、ロック、JPOPなどいろいろなジャンルの楽曲をいれて楽しんでいる。すでに外出には欠かせない一品となっている。 □関連記事 (2004年9月1日)
[Text by 一ヶ谷兼乃]
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