会場:San Francisco「Moscone Cneter」
WWDC 2004の基調講演においてスティーブ・ジョブズCEOから発表された新しいシネマディスプレイの3製品は、講演終了後のホール内に展示された。国内販売価格や製品仕様などは別記事を参照していただくとして、本稿では展示された製品を元にした、リリースからは見えにくい情報を中心に紹介する。 '99年9月に最初の22型Chinema Displayが発表されて以来、同社製の液晶パネルディスプレイに継承されてきたクリアパーツ基調のデザインは、この日のモデルチェンジにより終焉を迎えることになった。PowerMac G5をはじめPowerBook G4、さらにMac OS X 10.3“Panther”のユーザーインターフェイスなど、最近のAppleのデザイントレンドがメタル調に大きくシフトしていることを考えれば、今回のアルミニウム筐体の採用は当然とも受け取れる内容である。 デザインに加えて、今回はもうひとつの大きな転換点がある。2000年から同社ディスプレイに採用されてきたADC(Apple Display Connector)が事実上廃止されたことだ。ADCはデジタル映像、USB、電力の供給を1本のケーブル接続のみで行なうインターフェイスで、PowerMac G4 Cube以降の同社製デスクトップ製品のビデオカードに搭載されてきた。 新しいシネマディスプレイのラインナップでは、ディスプレイ側に接続されているケーブルは従来どおり1本だが、PC側は「電源ケーブル」、「DVIコネクタ」、「USB 2.0」、「FireWire 400」の四本に分岐している。これらをPC側のコネクタや電源コンセントにそれぞれ接続することによって、シネマディスプレイは、USB 2.0、FireWire 400のハブとしても機能する仕組みだ。 ADC自体が同社製品のFireWire標準搭載以前に準備された独自規格という点とあわせ、PowerBook/iBookのデジタル映像出力が標準化されたり、PowerMac搭載のビデオカードがTwinView化していくなかで、純正モニタを接続しようとした際に別売のADC-DVIアダプタが必要となっていた点などを含め、ADCの事実上の廃止は遅すぎるほどに必要な決断であったと思われる。 一方でこれは、同社製ディスプレイをPCに開放するというメリットも同時に生みだすことになった。まだPC向けには、16:10の画面比率をもつディスプレイは選択肢も少なく、シネマサイズに興味のあるユーザーにはディスプレイ選択の幅が広がったことになる。 ■夢の総額869,820円。計800万ピクセルを実現する30型デュアル
ラインナップのなかで特に注目されるのは30型の「Apple Cinema HD Display(30型フラットパネルモデル)」だろう。最大2,560×1,600ピクセルの解像度を実現している。この解像度を表示するため、このモデルに限り専用のビデオカード「NVIDIA GeForce 6800 Ultra DDLグラフィックカード」が必要になる。専用としている理由は、この高解像度を表示するためにビデオカード側にDVIのデュアルリンク機能が必要になるということで、同製品が現時点の専用ビデオカードとして用意されている。 また「NVIDIA GeForce 6800 Ultra DDLグラフィックカード」のインターフェイスはDVIが2つで、TwinView機能を搭載しているため2台の「Apple Cinema HD Display(30型フラットパネルモデル)」同時に接続して利用することが可能だ。もちろんそのためには、AppleStore価格で総額869,820円という金額が必要になるわけだが、ユーザーにとってはまさに夢の環境といってもいいだろう。 「NVIDIA GeForce 6800 Ultra DDLグラフィックカード」は、AGP 8X ProでPowerMac G5に搭載されるが、冷却ファンの大型化によって、設置時に1本のPCI-Xスロットに干渉する。そのため同ビデオカードを搭載した場合、利用できるPCI-Xのバスは2本のみとなる。 Apple Computerでは、シネマディスプレイの20型および23型モデルについてはMac/PCの両対応としてラインアップしているが、30型モデルに限りMac専用としている。これは前述したビデオカード側のDVIデュアルリンク機能対応に起因するものと思われるが、PC向けに販売されているGeforce 6800 Ultraで同機能をサポートし、また対応ドライバが提供されている製品が存在するかどうかについては現時点で確認がとれていない。いずれ機会があれば、PCでの30型モデル利用の可不可についてさらに検証してみようと思う。
新しいシネマディスプレイを実際に目にすると、コントラスト比400:1、250あるいは270cd/平方mというスペックどおりに画質は満足できるものだった。視野角も水平、垂直方向に170度と発表されており、実際にかなりの広視野角を体験することができた。チルトは上下方向のみに対応していて、上方に25度、下方に5度傾けることができる。左右への首振りやスタンドによる高さ調節をすることはできないが、VESA規格対応のマウントアームなどを利用することができる。
ディスプレイ本体の調整ボタンは向かって右側面に位置。電源ボタンと輝度調節のボタンが2つついている。これらのボタンはOS側からの設定で無効化することも可能になっているようである。 USB 2.0とFireWire 400のコネクタは、背面の下部にそれぞれ2個ずつ配置されている。PC側で本体にケーブルを接続しておけば、これらはUSB 2.0およびFireWire 400のハブとして機能する。 アルミニウム筐体は従来モデルに比べて、かなり狭額縁化された。製品のそばで説明を担当していたスタッフは、30型モデルのデュアルディスプレイを前にして、ディスプレイを横に並べてもポインタのモニタ間の移動がさほど気にならない幅になっているいう点を強調していた。 ちなみに金属筐体になったということで、FireWrieカメラのiSightをマウントするアダプタも新しくなるという。会場には用意されていなかったが、マグネット式になるということだ。アルミニウム筐体の背面にいかにしてペタリとやるかは興味のあるところだが実物を目にすることはできなかった。このアダプタはこれから出荷されるiSightのパッケージに同梱されるほか、既存のユーザーには別売も予定されている。 製品の質感やディテールなどについては可能な限りの写真を用意したので、参照して欲しい。
□Appleのホームページ(英文) (2004年6月28日)
[Reported by 矢作晃]
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