笠原一輝のユビキタス情報局

【新生VAIOシリーズインタビュー(3)】
モバイルを追求した新しい形を提案する「VAIO type U」
〜VAIO type U開発者インタビュー




ソニー「VAIO type U」

 ソニーが発表したVAIO type Uは本体重量が約550gと、Windows XPが動作する製品としては、発売済みの製品中で世界最小・最軽量を実現した製品だ。

 従来のバイオU101などが、小さいとはいえ、キーボードがついていたのに対して、type Uではキーボードが外され、タッチパネルによるオペレーションに変更されているのが大きな変更点と言える。

 ここは、この製品の特徴に大きな影響を与えていると思う。なぜなら、ノートPCをノートPCらしくしているものの1つがキーボードであるからだ。キーボードを捨てるという割り切りをしても、得るモノがあった、そう開発陣が考えたということだろう。

 開発陣は、このマシンをどのように位置づけ、どのような製品にしていきたかったのか、それを知りたいというのが、今回のインタビューでのポイントになった。


●バイオUユーザーの多くが望んだキーボードのとりはずし

 「VAIO type U」という名称から、バイオUの後継と考えるのが一般的だろうが、その姿は、それまでのバイオU(U1/U3/U101)などと比べて大幅に異なる形状だ。なんといってもキーボードが無くなり、タッチパネルによるオペレーションに変更されたことが大きいだろう。

 この点は、“PC”というアーキテクチャを採用しているVAIO type Uにとって大きな決断ではなかったかと、筆者は思う。過去から現在に至るまでPCは20数年の歴史を刻んでいるが、実のところキーボード以外の入力インターフェイスが成功したためしはほとんどない。

 特に「ペンコンピュータ」は、PCの歴史の中で浮かんでは消えていったが、生き残ったと呼べるものは、今のところ現在進行形のTablet PCだけと言えるのではないだろうか。Tablet PCでさえ、Microsoftの強力なイニチアシブがあればこその製品であって、MicrosoftがTablet PCへの興味を無くしてしまえば“歴史”の仲間入りをしてしまう可能性は高い。それほど、キーボードというものへの信仰は根強いとも言える。

 だから、筆者はtype Uがキーボードレスで、しかもTablet PCの電磁誘導パネルではなく、タッチパネルを採用していると聞いたときは、“ソニーもなかなかやるなぁ”と思うと同時に、“これは生き残れるだろうか”という感想を持った。

 ソニーの関係者も筆者にこんな心配をされると余計なお世話と思うかもしれないが、やっぱり、買う側としては買った製品が今後も残っていくのかは気になるところ。インタビューの冒頭にはやはり“なぜキーボードを外したのか”ということを聞いてみた。

ソニー IT&モバイルソリューションズネットワークカンパニー インフォメーションテクノロジカンパニー 山下美希氏

 「バイオU1/U3/U101とやってきて、お客様から様々なフィードバックがありました。その中にそういうご要望があり、技術的にも実現できるという見通しがたったので、チャレンジしようということになりました」と説明してくれたのは、type Uの企画を担当したソニー IT&モバイルソリューションズネットワークカンパニー インフォメーションテクノロジカンパニーの山下美希氏。要するに、type Uで、キーボードを取り外したのは、バイオUシリーズユーザーからの要望を受けてということなのだ。

 「これまでのバイオUユーザーのご意見として最も多かったのが、キーボードについてでした。小さくて持ち運べるようになると、電車の中で使いたいというお客様が増えていき、じゃあ、そういう時にはキーボードはいらないでしょう、と。そこで、どうせならキーボードを無くしてもっと軽量化して欲しいという意見があったのです」(山下氏)と、小さく、軽くを実現したことで、これまでPCが使われてこなかったようなシチュエーションでもPCが使われるようになってきたという。

 具体的には、山下氏が指摘するように“電車の中”といった、これまでノートPCを使いにくかった空間がそれだという。

 「そうした用途では、主な作業はブラウジングです。それならキーボードは無くてもいいでしょう、という議論はありました」(山下氏)と、企画段階からユーザーが“電車の中のような移動中に使うこと”を前提として企画されたという。

 これは非常におもしろい。現在、多くのユーザーが移動中に何かをブラウジングすると言えば携帯電話が多い。電車の中や駅のホームなどで多くの人が携帯電話を開いて何かを見ている、という光景はありふれたものだ。

 これらの人々に携帯電話ではなく、PCを使って欲しいと言っても、おそらくほとんどの人は「携帯電話でいいでしょう」と答えるのではないだろうか。そんな中で、「移動中の使い勝手を向上させたい、PCとしてもきちんと使えるようにしたい」(山下氏)ということは、なかなかチャレンジングなことではないだろうか。

●“移動中”に使用するタッチパネルと“移動後”に使用するキーボード

 チャレンジングなことだが、筆者としてはその方向性は間違っていないと思う。早晩、携帯電話とモバイルPCの境目なんてなくなっていくだろうと思っているので、キーボードという、“抵抗勢力”はなくせるものならなくした方がいいだろう。

 しかし、キーボードをなくしてより軽いPCを作ったからといって、世の中に受け入れられるかといえば、それが難しいことを歴史が証明している。

 そこで、キーボードを無くす替わりに、どのようなインターフェイスを提案し、それを正当化していくかが、こうした製品を企画・設計していく上での鍵となるのではないだろうか。

ソニー IT&モバイルソリューションズネットワークカンパニー 安形顕一氏

 この点に関して、歴代のバイオUの製品開発をとりまとめてきたソニー IT&モバイルソリューションズネットワークカンパニーの安形顕一氏は、「設計側の観点で言えば、バイオUの形はU101である程度の完成を見ました。では、次にどのようなことをやっていくのかと考えたとき、性能を2倍にするか、それとも性能を維持して小さくするか、という検討をしました。そこで考えたのは、移動中のモバイルと、移動先のモバイルは違うんじゃないかということです」と、利用シーンによってユーザーインターフェイスが異なっていてもいいのでは、という発想がtype Uのユーザーインターフェイス設計の第一歩だったとする。

 実際、この結果、type Uのユーザーインターフェイスは非常にユニークなモノとなっている。1つは、感圧式のタッチパネルであり、もう1つがUSB接続のキーボードだ。この2つをシーンにより使い分けることが、type Uのユーザーインターフェイスということになる。つまり、移動中にはタッチパネルを、それ以外にはキーボードをというわけだ。

●明るいのに薄いを実現した“常識破り”のタッチパネル液晶を採用

 では、なぜタッチパネル? という疑問はあるだろう。「キーボードを取り外すと決めた段階でタッチパネルしかないだろうというのはある程度決めていました」(安形氏)とのように、確かにキーボードを取り外したあと、別のユーザーインターフェイスは何だろうと考えていくと、現実的にはペンオペレーションのような形しか選択肢は残されていない。だが、Windowsマシンでペンオペレーションと言えば、素人の筆者にも、すぐ「Tablet PC」というキーワードが頭に浮かぶが、type Uはそうではない。ではなぜタッチパネルなのか?

 ここで念のため説明しておくと、MicrosoftのTablet PC用Windows(Windows XP Tablet PC Edition)を採用するには、電磁誘導式のタブレットを採用する必要がある。電磁誘導式のタブレットは、専用のデジタイザーペンが必要だが、認識率などでtype Uに採用された感圧式タッチパネルに比べて優れている。

 しかし、ソニーがtype Uにおいて感圧式タッチパネルを採用したのは、それなりの理由がある。1つには「デジタイザーのペンを紛失して利用できない、という事態は避けたかった。タッチパネルであれば、最悪指でも操作できる」(安形氏)と、ユーザーの使い勝手を考えると、専用ペンが必要な電磁誘導式は避けたかったということがあるという。

 そしてもう1つの理由は、タッチパネルの進化ということがあげられるという。具体的には、PCでは初めて“フィルム/フィルムタイプ”のインナータッチパネルを採用していることにある。

 これまで筆者はタッチパネル液晶というものにあまりよい印象を抱いてこなかった。おそらく読者も同じだと思うが、その最大の理由は“暗い、背景が映り込む”というものではないだろうか。その理由は、液晶パネルの前面にタッチパネル用のフィルターを入れる必要があり、そのため液晶面の光が減衰してしまうからだ。

ソニー IT&モバイルソリューションズネットワークカンパニー ITカンパニー 重野信行氏

 「今回のモデルでは、λ(ラムダ)/4(四分のラムダ)板と呼ばれる偏光板を採用しています。この偏光板では入ってきた光を直接一番上の偏光板で吸収します。光を反射してしまうのは同じなんですが、光を吸収して外に出ていかないようにしています。また、一般的なタッチパネルでは5枚の界面で受ける形状になっていますが、今回のモデルではそれを3枚に減らし、中に到達する光を増やすだけでなく、反射を押さえる仕組みを採用しています」(ソニー IT&モバイルソリューションズネットワークカンパニー ITカンパニー 重野信行氏)との通り、type Uでは新しいタイプのタッチパネルが採用されている。

 採用されているのはソニーが自社で開発している低温ポリシリコン液晶であるという。ソニーの液晶はPDAや携帯電話のマーケットでは大きなシェアを持っている。

 type Uに採用された液晶も、現在はPDAや携帯電話など向けの液晶を主に開発しているチームが開発したものだという。

 「以前、弊社もバイオC2GPSという製品でフル反射の液晶にチャレンジしました。ただ、屋外で見るには最適だったのですが、屋内では厳しいものがあったのは事実です。そこで、液晶部隊にお願いして、屋外ではきちんと反射率を稼げ、屋内では普通のPC以上の明るさを持っている液晶、そうしたものを作って欲しいとお願いしました」(重野氏)との通り、type Uに採用された液晶は、この製品向けに新たに起こされたものという。

 ソニーのPDA用の液晶を転用すればさほど難しくなさそうだが、PC用としてはどうしても輝度が十分ではないそうだ。そこで、今回は偏光板などを改良し、一般的なPCと変わらない明るさのタッチパネルが実現できたというわけだ。

 なお、type Uでは、液晶のバックライトに蛍光灯ではなく、白色LEDを利用しているという。「一般的な蛍光灯バックライトの場合、導光板で反射させて表示させますが、厚さが2mm〜3mmぐらいは必要になります。ところがLEDにすることで導光板の厚さを1mm以下にすることが可能でした」(重野氏)との通り、白色LEDを採用したことで、非常に薄い液晶ユニットを実現できたという。

ソニー IT&モバイルソリューションズネットワークカンパニー ITカンパニー 原 希美氏

 おそらく、筆者の記憶が正しければ、これまでPC用にLEDのバックライトが採用された例はほとんどないと思う。1つにはコストが蛍光灯に比べると高いことがあるだろうし、LEDは現在も進化を続けており、採用のタイミングが難しいからとされている。だが、今回そのタイミングをうまくつかんだことで、薄く、明るく、しかもタッチパネルという液晶が実現できたという。実物を見て頂くと一番わかりやすいが、確かにこれまでのタッチパネル液晶のような“暗い”印象はほとんどない。

 「通常、タッチパネルでは、液晶の上にタッチパネルを重ねるため、厚くなってしまうのですが、今回の液晶の厚さは、U101に比べてむしろ薄くなっています」(安形氏)ということで、薄型の液晶が実現できたことで、本体の薄型化にも貢献しているのだろう。

 本体側の設計を担当しているソニー IT&モバイルソリューションズネットワークカンパニー ITカンパニー 原 希美氏は「液晶側の最厚部は約6mmなんですが、基板側の凹凸で吸収することで、実際には5mm以下に抑えています」と、基板側のデザインに凹凸をうまく付けて液晶側と組み合わせることで、システム全体としての厚さを低減する工夫をしたと説明した。

液晶の比較。左側がU101に採用されていたもの、右側がVAIO type Uで採用された液晶 液晶の厚さ比較、左側がU101に採用されていたもので、右側がtype Uに採用されたもの。type U用の方が薄くなっていることがわかる

●PCらしくないことを狙ったデザイン

 今回の製品ではスタイラスもかなり印象的なものになっている。通常、我々が目にするスタイラスは、よくPDAについているような、細いペンのようなものか、Tablet PCに採用されているような電磁誘導式の太いペンのどちらかだ。

 ところが、type Uはこのどちらでもなく、木の葉のようなデザインのスタイラスが付属している。

ソニー クリエイティブセンター バリュークリエイションスタジオ 森澤有人氏

 「私は以前クリエを担当していたこともあるのですが、スタイラスを紛失してしまうという問題がありました。そこで、今回のモデルではどうしてもスタイラスはストラップにつけてしまいたかったのです」とtype Uのデザインを担当したソニー クリエイティブセンター バリュークリエイションスタジオ 森澤有人氏は語る。

 今回のスタイラスは握ったとき、ちょうど三角形になるように指が入るデザインを採用したことで実に持ちやすく、かつ外に持って行くというtype Uのような製品の性格上、装飾的な要素も必要であるというニーズにもマッチしたという。

 「本体の機構的にスタイラスが入る場所がなくなってしまったという事情もありました」(安形氏)と、別の理由もあったそうだが、実際に開発者全員で使ってみると評判がよく、採用されるに至ったという。

 スタイラスを見ても、type UのデザインはかなりPCとかけ離れたものとなっている。既存のPCユーザーにとっては「これがPC?」というのが正直な感想ではないだろうか。だが、デザイナーとしては、むしろそうしたことを積極的に狙っていたという。

初期の設計サンプルでは、ちょうど手の部分にボタンがあるデザインなども検討されたが、それだと持つ時に不自然になるということで、現在のようなデザインが採用された 専用のスタイラスは木の葉のようなデザインが特徴的で、無くさないようにストラップにとりつけて利用する

 「PCというものを感じさせたくないと思っていました。今回キーボードが無くなることで、使い方も全く新しくなるだろうと予想しました。例えば、クラブのDJがターンテーブルの上で使ってみたり、電車の中で作曲したり……とこれまで私たちが考えたことも無かった使われ方をする、そんな新しい形になるのじゃないかと考えたのです」と、むしろPCらしくないことを狙ったデザインであるという。

 そのユニークなデザインを象徴する機能としては、“光るボタン”の存在がある。例えば、type Uはクラムシェル型ではないので、収納時に間違ってボタンが押されないようにホールドスイッチがある。ホールドスイッチ有効時にボタンを押した場合、ボタンに内蔵されたLEDがフラッシュし、キーロックが有効なことをユーザーに教えてくれる。

 このアイディア自体は「設計側には大きな反対を受けました」(森澤氏)との通り、機構設計の側からは様々な理由で反対されたという。それは、ボタンの下には、スイッチなど様々な回路があり、LEDを入れるスペースがほとんどないからだ。

 だが、最終的にはデザインチームから、Flashで作成されたデモを見せられ、その効果を目の当たりにした設計チーム側が「これは絶対にやろう」と協力する姿勢になり、内蔵されたボタンの近くにLEDをうまく配置してなんとか解決したという。

ソニー IT&モバイルソリューションズネットワークカンパニー 中嶋信二氏

 なお、もう1つユニークなのは、ホールドボタンを有効にすると、ディスプレイが消えるという仕様だ。「従来どおりのPCとしての使い方では駄目で、PDAの使い方を参考にしました」(ソニー IT&モバイルソリューションズネットワークカンパニー 中嶋信二氏)と、確かにPDA的な使い勝手と言える。ここにも、PCだけどPCらしくない、という設計思想が息づいている。

 ちなみに、森澤氏は、昨年の10月にソニーが発売したバイオノート505 EXTREME(以降X505)のデザインを担当しているが「昨年あれだけのことをやらせて頂いきましたが、やっぱりあの経験を普及価格帯の製品にも生かしたかったというのはあります」と、X505での経験が、この製品にも生きているということだ。


●X505の経験を生かした省スペース設計

 実はX505の流れをくむというのは、デザイン周りだけではない。基板のデザインにも、X505の経験が役に立っているという。「今回CPUやチップセットなどのコンポーネントにはX505と同じものが採用されています。このため、X505で培った経験がこの基板にも生かされています」(安形氏)との通り、X505でチャレンジした基板の最小化などの経験が生かされている。

ソニー IT&モバイルソリューションズネットワークカンパニー ITカンパニー 川上喜輝氏

 ただし、「X505の方は“薄く広く”というアプローチでしたが、この製品では決められたフットプリント(底面積)の中にどれだけのものを詰め込めるかということを重要視していきました」(ソニー IT&モバイルソリューションズネットワークカンパニー ITカンパニー 川上喜輝氏)との通り、X505はとにかく薄くすることにこだわったマシンであるのに対し、type Uはまず面積を決め、そこにいかに詰め込むかということを重要視したという意味でアプローチはやや異なっている。

 実際、type Uは8層基板として設計されているが、このような製品にしては層数がやや少なめであるので、配線を取り回すのが大変になっているという。

 「通常、ここまで小さな製品だと、層数を増やして配線を回しますが、今回はそれでもできるだけ薄く、軽くという命題がり、8層基板を利用してなんとかそこに納めるように努力しました」(川上氏)とかなり苦労して配線をしていったという。

 シミュレーションの段階では、どう回しても配線が基板を飛び出してしまい、頭を抱えたという。その後、徐々に配線を最適化し、独自の改良を加えることで、なんとか収まるようになった。このあたりは、CPUメーカーのデザインガイド通りに作っているベンダにはできない、大手メーカーならではの芸当と言えるだろう。

 熱設計の点でも苦労の後が見える。今回の基板には中央付近に大きな穴が空いている。実は、これは冷却機構のためのもので、基板のB面(裏面)から空気を吸ってA面からはき出す仕様になっており、B面にあるメモリなどを冷やしつつA面のCPUも同時に冷やせるような工夫がされている。熱設計の担当者からはもっと穴を大きくしてくれという要求もあったりして苦労したそうだ。

 ただ、ユーザーの立場で言わせてもらうと、両手で握っているとほんのり暖かないなと感じるのは事実だ。これについて安形氏は「最高性能を出さないという仕様にはしたくなかった。暖かいと感じる場合には火傷に至る暖かさと、やや暖かいと感じるレベルがあるが、今回は後者のレベルにとどめています。それも困るというユーザーの方の為に、省電力ツールで冷却優先のモードを用意しています」と説明する。個人的には、できれば性能も冷却も、というのを実現して欲しい気はするが、それは贅沢というものかもしれない。

 なお、本製品ではPCカードスロットは用意されていない。しかしながら、通信カード系用にCFカードスロットと、IEEE 802.11b/gに準拠した無線LAN機能が内蔵されている。「今回は無線LANを内蔵したことで、もう十分だろうと判断した」と説明する。確かに、SDカードなどもCFアダプタを介せば利用できるし、特にPCカードが無いから困るということはあまり考えられないだろう。

基板の比較、左上側が従来のU101のマザーボード、右上側がtype Uのマザーボード。左下はmini PCIの一般的な基板で、右下はtype Uに採用された小型の無線LAN基板 マザーボードの基板A面。右上に見える緑のチップがCPU
マザーボードの基板B面。こちら側からファンで吸気してA面側に風をながす設計となっている 標準バッテリ(左)と大容量バッテリ(右)。標準バッテリは11.1V/1,800mAhで、大容量バッテリは11.1V/3,600mAhと容量はちょうど倍となっている

●PCだけどPCらしくない、モバイルでの使い勝手を重視したVAIO type U

 今回のインタビューを終えて思ったのは、type Uは従来のモバイルノートのように、椅子に腰掛けて利用するのではなく、携帯電話やPDAのように、立ったままでも使えることを強く意識した製品であることだ。

 立ったまま利用するのであれば、ブラウジングが最重要課題であろうし、それを実現するためにキーボードを取り払ってしまったという思い切りの良さには素直に感心している。PCがPCであるためには“キーボードが必要”という意見はおそらく今後もすぐになくなりはしないと思う。だからこそtype UでもUSBキーボードがバンドルされているのだと思うが、それでもそうした風潮に一石を投じたという意味で、VAIO type Uは歴史的な1台になるかもしれない。

 だから、type UをほかのPCと比べて見ても意味がないだろう。おそらくtype Uの“移動中の使い勝手”を見た場合、のライバルは、PDAだし、そして携帯電話だろう。

 また、最近ではポータブルHDDプレーヤーも徐々に大きなポジションを占めつつある。iPodのようなオーディオプレーヤーもそうだし、ソニーのポータブルHDDビデオプレーヤーも、VAIO type Uにとっての大きなライバルになるのではないだろうか。

 これらの製品の中で、5〜6万円台のPDAやポータブルプレーヤー、1〜2万円台の最新携帯電話に比べると、type Uの10万円台後半という価格は確かにやや高いと見えてしまうのが、この製品のウィークポイントになるだろう。

 ただ、1つだけ忘れてはいけないのは、この製品がフル機能のWindows PCであるということだ。例えば、家と会社にクレードルを置いておき、どちらにもディスプレイ、キーボード、マウスを用意しておけば、type Uは立派にWindows PCとしての役割を果たすだろう。これは現在のPDAや携帯電話ではできないことだ。

 そのような使い方こそが、タッチパネルとキーボードという2つのユーザーインターフェイスを備えた本製品のアドバンテージになるだろう。

 従来のノートPCに対しては“移動中の使い勝手が向上”し、PDAや携帯電話に対しては“フル機能のWindows PCとして利用できる”ことがアドバンテージになる。そうしたことを考え合わせれば、10万円台後半という価格は決して高いとは言えないと思うのだが、いかがだろうか。


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【5月10日】ソニー、キーボードレスの最小Windows XP機「VAIO type U」
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2004/0510/sony01.htm

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(2004年6月21日)

[Reported by 笠原一輝]


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