元麻布春男の週刊PCホットライン

米国でAthlon 64ノートを買う



キーノートスピーチを行なったVyomesh Joshi副社長。われわれにも気軽に声をかけてくれる気さくな人柄が印象的だった

 6月2日と3日の2日間にわたり、San Diego近郊のCarlsbadで、「HP:Color in Full Bloom」と題された証券アナリスト/プレス向けのイベントが開催された。Hewlett-Packardでプリンタ、スキャナ、複合機、デジタルカメラ等の製品を手がけるImaging & Printing Group(IPG)の拠点の1つがSan Diegoにあり、その関係で開催地が選ばれたもの。同Groupの事業部長であるVyomesh Joshi副社長の勤務地もここである。

 Joshi副社長をはじめとするIPGの役員によるキーノートスピーチでは、これまでHPがカラーイメージング分野にどのような貢献をなしてきたのか、その強みは何かといった歴史に始まり、イベントタイトル通りHPがこれまで以上にカラーイメージング分野に力を注ぐこと、ユーザー自らがカラー印刷を行なうことの利点と必要性などが説かれた。

 また、この春に米国で発表になった500ドルを切る価格設定のカラーレーザープリンタ(Color LaserJet 2550)、ローエンドのオフィス向け複合機(Officejet 4215)、新たなデザイナーを迎えデザインを一新した新シリーズのデジタルカメラの最初のモデルとなるPhotosmart R707(500万画素、光学3倍ズーム機)なども紹介された。

Color LaserJet 2550 Officejet 4215 HPの春の新製品R707。Rのついた独特のデザインだが、ホールド性にも配慮されている

 特にR707については、短時間ではあったもののイベント参加者全員に1台づつ貸し出されるなど、力が入っていた。わが国での発売が未定なのが残念なのだが、赤目除去やパノラマ合成、自動逆光補正など多くのソフトウェア処理機能をカメラ自身が内蔵しており、国産モデルとは全く性格の異なる興味深いカメラだ。

 個人的にはデザインも悪くないと思うし、国内市場に出しても価格(米国での標準価格は349ドル)を考えればそう見劣りするものではないと思うのだが、なかなか難しいようだ。ほかにも、興味深い新製品の紹介も行なわれたのだが、諸般の事情により、ここで紹介することができない。また、別の機会にでも取り上げてみたいと思う。

●米国でAthlon 64搭載ノートPCを購入

 さて、このSan Diego滞在中に、筆者は1つの買い物をした。それはAthlon 64搭載のノートPCだ。5月にシアトルで開催されたWinHECで、x64アーキテクチャ用のWindows XP 64bit Editionや、Longhornの64bit版を入手した。しかし悲しいことに、筆者の手元にはこれらのOSをテストする環境がない。現時点で入手可能な唯一のx64環境であるAMD64アーキテクチャのプロセッサ(Athlon 64/Opteron)を搭載したマシンを所有していないからだ。

 また、MicrosoftのWebサイトでは、すでにWindows XP SP2のRC1モジュールが配布されているが、これが新たにサポートしたセキュリティ機能であるNXも、現時点でサポートしているのはAMD64アーキテクチャのプロセッサのみ。すでにIntelやTransmetaもこの機能のサポートを表明しているが、実装は今年後半になると見られている。今、これらの機能をテストしたければ、AMD64アーキテクチャのマシンを入手するというのが唯一の解となる。

Voodoo PCが直販するAthlon 64搭載ノート「ENVY m:855」

 もちろんAMD64アーキテクチャのマシンであればデスクトップPC、ノートPCを問わない。実際、いつものようにデスクトップ用のマザーボードとプロセッサを買おうかと思っていた。が、せっかくAthlon 64搭載ノートPCが店頭で売られている米国に行くのだから、買えそうなら買ってこようと思ったのである。

【お詫びと訂正】初出時に国内ではAthlon 64ノートPCが販売されていない旨の記述がありましたが、富士通 FMV-NB75HAVが一部流通ルートで販売されています。お詫びして訂正させていただきます。

 とはいえ、米国でもAthlon 64搭載ノートPCがふんだんに売られている、というわけではない。特に、旅行者が簡単に買って持ち帰ることが可能な量販店モデルとなると、先日取り上げたeMachinesのM6800シリーズやCompaq Presario R3000Zシリーズなどに限られそうだ(同じHPのAthlon 64搭載ノートPCでもPavilionブランドのzv5000zシリーズは直販向けのようだ)。

 以前、米国滞在中にホテル受け取りでノートPCを直販ベンダから購入したこともあるのだが、結構なスリルとサスペンスの経験であった。直販でAthlon 64搭載ノートPCを売っているところもある(たとえばVoodoo PC)のは知っているが、可能な限り避けたいことの1つである。

●eMachinesか、Compaqか

 それでも量販店に何があるかなど、行ってみなければ分からない。というわけでまず出かけたのが、Carlsbadのちょっと北にある「BestBuy」のOceanside店だ。BestBuyは全米チェーンの家電量販店で、現在家電の販売額ではナンバーワン。近頃は各店舗に「Geek Squad」(おたく部隊?)という専門部隊まで設け、顧客からのPCに関する相談に応じるなど、PCの販売にも力を入れている。

 BestBuyで見かけたAthlon 64搭載ノートPCは、予想通りeMachinesのM6805とPresario R3140USの2モデル。両モデルとも15.4型のWXGA液晶パネル(1,280×800ドット解像度)を採用した重量3.5kg級のデスクトップ置き換えタイプのノートPCだ。しかも価格は両方とも1,500ドル前後である。これだけ見ていると、両方とも同じODM元が供給しているのではないかとさえ思える。

BestBuyのOceanside店。全米ナンバーワンの家電量販店チェーンで、アメリカのヤマダ電機といったところか eMachines M6805 HP Presario R3140US

 が、細かなスペックを見ていくとこの2つには結構相違点があることに気づく。eMachinesが勝っているのは、プロセッサがMobile版であることと、グラフィックス機能が上回ること、フラッシュメディアリーダーを内蔵していることの3点、Presarioが勝っているのは光学ドライブがDVD+RWであることと、一応スピーカーにJBLのロゴがついていることだ。

 eMachines M6805HP Compaq
Presario R3140US
標準価格1499.99ドル1549.99ドル
CPUMobile Athlon 64 3000+Athlon 64 3000+
Memory512MB PC2700512MB PC2700
GraphicsMobility RADEON 9600 64MBGeForce 4 420 Go 32MB
HDD60GB60GB
Optical DriveCD-RW/DVD-ROMコンボDVD+RW
Flashリーダーありなし
無線LAN802.11g802.11g
LAN10/100BASE-TX10/100BASE-TX
内蔵スピーカーノーブランドJBL Pro

 基本的にAthlon 64は、定格動作クロック時の動作電圧が1.5V、1.4V、1.2Vの3種類があり、デスクトップ置き換えノートPC用のAthlon 64が1.5V動作、Mobile Athlon 64が1.4Vないしは1.2Vということになっている。つまりAthlon 64 3000+が定格上の最高動作クロックである1.8GHz動作している時、通常版の動作電圧は1.5V、頭にMobileがついたバージョンなら動作電圧が1.4Vか1.2Vになっているわけだ(Athlon 64はPowerNow!テクノロジにより複数の動作ポイントを持ち、それにより動作電圧も切り替わる)。

 動作電圧の違いは消費電力に大きな影響を与えるから、バッテリ駆動を重視すればMobile版が望ましいことになるのだが、何せ3.5kg級のノートPC。それほどバッテリ駆動するとは考えられない(おそらくACのない場所で使うことはないだろう)。プロセッサ単体の価格としては、Mobile版が高いハズだが、筆者にはどちらでもあまり関係ないものと思われる(価格からいってM6805のMobile Athlon 64は1.4Vではないかという気がする)。

 残る違いのうち、メディアリーダー機能の有無はそれほど大きなものではない。とりあえずPCカードスロットに、PCカードタイプの4in1アダプタでも突っ込んでおけば用が足りる。スピーカーのロゴも、実際の音質うんぬんというより、気分的なもののように思える。

 となると問題は、50ドル高いPresarioにDVD+RWドライブが付属することと、eMachinesの方がグラフィックス機能が上回っていることのトレードオフを考えればよいことになる。いずれのノートPCも、光学式ドライブは交換できないため、ドライブ、グラフィックス共に、後からアップグレードすることは難しい。

 ただ、グラフィックスの方が外付けができないという点でよりクリティカルな気がする一方で、価格メリットという点ではDVD+RWドライブに分がありそうだ。ここにきて記録型DVDドライブの価格は大幅に安くなっているとはいえ、ノートPC用の薄型ドライブはまだそれほど低価格化していない。直販のBTOにおいてもCD-RW/DVD-ROMコンボドライブを、50ドル程度の追加でDVD+RWドライブにアップグレードすることはかなり難しい。微妙なところだが、Presarioを購入することに決めた。

●2軒目で購入

 というわけで意を決してBestBuyの店員のお兄ちゃん(彼がGeek Squadのメンバーかどうかは知らない)に、Presario R3140USの在庫があるのかどうかたずねた。すると、答えはNoである。実は彼は、筆者がたずねる前、もう一人の若い男性客に一生懸命Presario R3140USを勧めていたのだ。在庫がないにもかかわらず勧めるのも変な話だと思ったのだが、値札を見て納得した。Presarioの方が断然リベート幅が大きかったのである。

 大きく分けるとリベートには、その場で値引きされるインスタントリベートと、必要書類を送ると後からお金(小切手)が送られてくるメールインリベートの2種類がある。基本的にメールインリベートは、米国内に住所がないと受け取れないので、われわれ旅行者にはほとんど関係ないのだが、米国のPCショップ、あるいは新聞のチラシで見かける価格には、メールインリベートを差し引いた後のものが含まれているので気をつけなければならない。

 今回の2機種の場合、いずれも100ドルのメールインリベートが標準でつくのだが、BestBuyではPresarioにのみ期間限定で350ドルのメールインリベートがさらにつく。リベート額は合計450ドルで、実質1,099.99ドルで買えることになる(米国在住者の場合)。これだけのリベートなら、筆者も知人友人と折半することになっても何とかリベートを受け取ろうとするだろう。BestBuyでは、今月の目玉商品の1つがこのPresario R3140USに違いない。そして、これだけの大幅値引きのおかげで売り切れてしまった、というわけだ。せっかく心を決めたのに、あっさりないと言われ、その日は何も買わずに引き下がってしまった。

Fry's ElectronicsのSan Marcos店。シリコンバレーのSunnyvale店に匹敵するような大型店であった。店が大型になったからといって、他店で扱っていない商品があるわけではないのだが、何とはなしに感動してしまう

 しかし冷静に考えれば、テスト用にAthlon 64のシステムが必要という事情に変わりはない。そこで別のショップに出かけることにした。BestBuyは高額リベートで望み薄であることから、今度はFry's Electronicsだ。Fry'sは、北カリフォルニア・シリコンバレーの地場の量販店だったが、最近は南カリフォルニアはもちろん、アリゾナやテキサスなどカリフォルニア州外にも進出している。お店の数ではBestBuyに遠く及ばないが、マニアックな品揃えで人気のある量販店だ。Carlsbadの近郊にも、東に行ったSan Marcosに店を構えている。付近にはBestBuyのSan Marcos店のほか、CompUSAもあるから、何とかなるかもしれない。

 というわけで訪れたFry's San Marcos店だが、やはりここでも売られているAthlon 64ノートPCはBestBuyと同じ2機種だった。しかし、リベートが標準の100ドルだけのせいか、Presarioの在庫があるという。悩んでもしょうがないのでこれを購入、持ち帰ることにした。以前Fry'sのSan Jose店で東芝のノートPCを買ったことがあるから、Fry'sでノートPCを買うのはこれが2回目だ。

 ようやく入手したAthlon 64ノートについては、次回紹介しよう。

バックナンバー

(2004年6月11日)

[Text by 元麻布春男]


【PC Watchホームページ】


PC Watch編集部 pc-watch-info@impress.co.jp 個別にご回答することはいたしかねます。

Copyright (c) 2004 Impress Corporation All rights reserved.