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JAPAN ROBOTECH、ロボットの学習教材「Robo Designer」を発表
株式会社JAPAN ROBOTECHと九十九電機株式会社は10日、ロボット学習教材「Robo Designer」を発表した。 「Robo Designer」は中学生以上から大学生まで幅広い年齢層の学生がロボットによって情報処理の基本や論理的思考、実空間で動くものを作れるようになることを目指した教材。 コントローラ、センサーやアクチュエーターなど入出力系、ボディーなどの構造部品を自由に構成することで、ヒューマノイドは無理だが車輪型のものであれば、個性を出したオリジナルのロボットを作ることができる。 価格は、コントローラやセンサー、モーターなど一通りのパーツが入った「RDS-X01:Platform」が9,975円で7月上旬発売予定、コントローラやセンサー類のみのセット「RDS-X02:Basic」が6,300円。 いずれもロボットの構成やプログラミングを行なう「TiColla」(ティコラ)と呼ばれるソフトウェアが付属。対応OSは、Windows NT 4.0/2000/XPおよび、Mac OS X以降。ロボットとPCの接続はRS-232Cを使って行なう。シリアルポートのないPCの場合はUSBシリアルアダプタを使うことになる。 Robo Designerはセットだけではなく部品単体でも発売される。部品はそれぞれ自由に組み合わせができるように規格が統一され、部材は必要に応じて切断するなどしてロボットを作っていく。またギヤボックスはモーターだけを外してさらにパワーのあるモーターに換装できるよう設計されている。他社製品を組み込むことも可能だという。コントローラもさらにポート数を増やしたものなど、バリエーションを増やしていく予定。
・開発の経緯 開発はロボットによるサッカー大会「ロボカップ」を構成する大学を中心にして産学連携で進められたという。まず、福岡市東京事務所シティセールス担当課長の峯田太史氏が演題に立った。福岡市では市民が科学技術に親しむと同時に、ロボット研究、ロボット産業推進の場所として、ロボット関連複合施設「ロボスクエア」を設置している。「RoboDesigner」はロボスクエアを使った製品第1号となる。
開発を担当した株式会社JAPAN ROBODTECHはロボスクエア内で立ち上がったロボットベンチャー。社長の河野孝治氏は、かつて電子工作キット製造販売会社「ELEKIT」の社長だったが、2002年10月に退職、その後ロボット科学教育コンソーシアム会長を経て、2002年12月にロボスクエア内に事務所を設立した。会社設立は2003年。創業日は鉄腕アトムの誕生日にちなんで4月7日に登記を行なったという。Robo Designer開発には1年以上かかった。 教育用途なので、現在は具体的なカリキュラム概要を練っている段階。実際に中学生に使ってもらいながら、計測や制御の基本を学びつつ、論理的思考力を養い、ものづくりができるようにカリキュラムを練っている最中だという。 ・GUIベースの制御用ソフト「TiColla」
ソフトウェアは、埼玉大学の野村泰朗助教授が教育的観点から設計を行なった。ソフトウェア名は「TiColla(ティコラ)」。ティコラは、低年齢の子供たちが使えるような簡単さと、高専の生徒らが必要とする実際的な教育、双方の橋渡しを狙ってつくられたソフトウェアで、「タイル」と呼ばれるオブジェクトを並べたり、ドラッグアンドドロップすることで動作を組んだりハードウェア構成を考えることもできるし、CやC++を使ったプログラミングにも対応している。 また単に動くだけではなく、きちんと動くためにきちんと計測することの重要性を学ぶことを支援するために、計測やデータ分析の機能が最初から備わっている。また、学習支援機能として、ログを取ったり、プレゼンテーションを支援するための機能が備わっているという。 野村助教授は「モノづくりにおいては標準規格が重要。規格を創ることでモノづくりの幅が広がる。一人では成しえないことができるようになる。そういうユニバーサルな考え方を導入することが重要だ」と語る。コンピュータの中だけではなく、リアルワールドで動くものを作れるようになることを視野に入れた教材を考えようというコンセプトで、ハードとソフト両方の開発を始めたという。 TiCollaは多様なハードウェアと連携するために「ハードウェアコンフィギュレーター」を実装している。まず最初にハードウェアとソフトウェアの連携を測るために、ハードウェアをリソースとして選択する。「ハードウェアコントリビューター」にはそれぞれの機器がどのような能力を持っているかの情報が入っているので、該当画面では「タイル」をドラッグアンドドロップするだけで、ハードウェア構成が決まる。こうやってハードウェアとソフトウェアの橋渡しをして、センサーやアクチュエーターをどう組み合わせていくかデザインしていくことができる。なお新しいハードのデータなどは、ウェブサイトから自由にダウンロードできる形で提供されるという。 ロボット製作においては、おおむねチャレンジの選択、チーム戦略の作成、ロボット設計、作業計画作成、ロボット製作、競技会、という流れを経る。教育となると、ここから先、つまり反省、見直し、改良などの過程が非常に重要になる。その繰り返しを継続して行なうことが重要だ。 「個々の技術は日進月歩で進む。それを学ぶことも重要だが、学び方、問題解決のやり方を学んでいくことがむしろ重要だ」と野村助教授は語った。 東京都立高専電子情報工学科の黒木啓之助教授は、プログラミング教育、論理的思考教育ツールとしてのロボットについて述べた。実際に、ハードウェアとしてのCPUの動作や制御を学ばせるためのツールとして、卒業研究の手前の段階のゼミで教材に用い、CやC++のような開発言語を作れという課題を与えたところ、20時間程度で創ることができた。また東京都立高専では夏に地域に向けてロボット教室も行なっているが、そちらでも活用していくという。
最後に早稲田大学理工学部機械工学科の高西淳夫教授が大学における可能性について述べた。高西研究室は言うまでもなく以前からロボット開発に携わってきた研究室である。機械の動力学・静力学を教え、機械設計の基本を教えることに関しては自負があるが、最近の学生は現物をさわった経験が少なく、原理にふれるような体験をあまりしていないとう問題を感じており、そのため、JAPAN ROBOTECHともディスカッションをし、大学教育のためのアドバイスをしたという。 特に、センサやコントローラーを用いた電子情報工学の教育がなかなかうまく回らないため、そこにRoboDesignerを活用して授業あるいは実験実習のなかで補っていけるよう、カリキュラムの開発を行なっているそうだ。
現在は、夏以降にゼミに入る学生を対象に、センサー、アクチュエーター、コントローラーをインテグレートする教育をロボコンの形で行なえるように「メカトロニクス実習」という科目のなかで採用するべく準備中だという。もちろん大学生の場合はC言語を使ってプログラミングを行なうことになる。 RoboDesignerは10日より株式会社九十九電機・ロボット王国で予約販売が開始される。今後は通販や教材としての販売も考えているという。九十九電機の鈴木淳一社長は、「現在メーカーで開発を行なっている技術者達も秋葉原を散策して基本を学んだ。歴史は繰り返す」と述べた。 □九十九電機株式会社のホームページ (2004年6月10日)
[Reported by 森山和道]
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