COMPUTEX TAIPEI 2004レポート

Transmeta、90nmプロセスルールの第2世代Efficeonを公開


公開された90nmプロセスルールの第2世代Efficeon、メジャーによる実測で8×10mmというダイサイズになっており、約80平方mmと推定される
会場:Taipei World Trade Center Exhibition Hall 1/2/3
   Taipei International Convention Center
会期:6月1日〜5日(現地時間)


 モバイルPC向けCPUベンダのTransmetaは同社の主力製品であるEfficeonの90nmプロセス版のサンプルを初めて一般向けに公開した。4月の末に富士通のあきるの工場で生産された90nmプロセスルールのEfficeonは、1.6GHzのクロック周波数で動作しており、デモではファンレスのヒートシンクのみの冷却機構で動作するなど、来場者の大きな注目を集めた。

●1.6GHzの動作クロックでファンレス動作ということの“衝撃”

 Transmetaが今回自社ブースで公開した90nmプロセスルールのEfficeonは、1.6GHzというクロック周波数で動作していた。Transmeta プロダクトマーケティングディレクターのシャーリー・ホーヘンシェルト氏によれば「90nmプロセスルールのEfficeonはすでに4月上旬に初期サンプルをOEMメーカーに対して提供することが出来た。その後の開発も順調で、今回は実働デモとして1.6GHzで動作させている」と述べ、その順調さを強調する。

 実際、こうした状況はOEMメーカー筋の情報も裏付けている。ある情報筋によれば、今回展示されている90nmプロセスルールのEfficeonは、第3段階のサンプルで、最初のサンプルには、当初のターゲットクロックに到達するための障害になるようなクリティカルパスが有り、配線層に手を入れることでそのクリティカルパスを潰したバージョンであるという。

 今回公開された1.6GHz動作の90nmプロセスEfficeonの熱設計消費電力(TDP)に関しては今回は公表されていない。しかし、展示会場におけるデモでは、このEfficeon 1.6GHzがファンレスで動作していた。このことからも、ファンレスでも動作するようなTDPであることは類推できる。

 なお、昨年の10月に米国で行なわれたTransmetaの発表会で同社のCTO(最高技術責任者)であるデビット・デイッツエル氏が公表したロードマップでは、90nmプロセスルールEfficeonの1.6GHz動作時のTDPは7Wになっていた。そうしたことからも、7Wないしはそれに近い数字であると考えていいだろう。

90nmプロセスルールの次世代Efficeonを搭載したシステムのデモ。1.6GHzで動作しており、ソフトウェアによってクロックが変動する様子などがデモされた NVIDIAの妖精のデモを起動すると、クロック周波数が1.6GHzまで上昇した
90nmプロセスルールの次世代Efficeonを搭載したWindows XP Media Center Edition 2004が動作するPC。ファンレスで、やはり1.6GHzで動作していた こちらはLongRun2のデモ。C4ステートに入っている時には、わずか30mWしか消費していない。LongRun2が動作する状態で公開されたのは初めて

●Efficeonの採用があまり進まない理由は“Pentium Mとの小さい差”

 エンドユーザーに対して超低電圧版に代わる新しい選択肢を提供した形となっているEfficeonだったが、実際に日本のノートPCベンダで採用したのはシャープだけと、Crusoe時代のような活況を呈することにはならなかった。

 これについては、いくつかの原因があると思う。筆者もいくつかのOEMメーカーの関係者に、「なぜEfficeonを採用しないのか」と聞いて回った。帰ってきた答えで多かったのが「性能や機能の面であまりPentium Mと差がないから」とか、「他のモデルではPentium Mを採用しているので、ノウハウもある。そこに1ラインだけEfficeonを採用するのは難しい」というものだった。

 OEMメーカーがラインナップしているPCは、何もEfficeonがターゲットにするようなミニノートPCだけでなく、12Wの低電圧版のCPUを搭載するようなサブノートPCや25Wのシン&ライトのノートPCも製造している。現状、そうした製品ではPentium Mを採用している例が多い。この状況で基板を設計するエンジニアにとっては複数のアーキテクチャのCPUを設計するよりも、1つのアーキテクチャに統一した方が製品間でノウハウを共有でき、設計も容易になる。また、一括して同じ部材を購入することで、CPUの価格交渉を有利に進めたいというビジネス上の理由もある。

 この現状でOEMメーカーがEfficeonを採用するには、上記の問題を吹き飛ばすような明快なメリットを得られなければならない。Crusoeの時にはこれがあった。Crusoeのリリース当時、IntelのCPUには11Wの低電圧版しかなく、7W以下という超低消費電力を実現したCrusoeは、Intel CPUを覆すだけの魅力を秘めていたと言ってよい。

 Efficeonでは、確かに超低電圧版Pentium Mと同じような熱設計消費電力を実現し、かつ処理能力も超低電圧版Pentium Mとほぼ互角に近くなっている。しかし、だからといって、Pentium Mに比べて飛び抜けて優れたところがあるかと言えば、そうではない。これでは、先ほど指摘したような問題を吹き飛ばすことは難しい。

台湾AmoiのEfficeon搭載ノートPC“V5”は2スピンドルノートPC。光学ドライブを内蔵し、1,280×800ドットの12.1型液晶採用というスペックで1.7kg 同じく台湾Amoiの“V3”。こちらは1スピンドルで、1,280×768ドットの10.6型液晶を採用しながら1.25kg iBASEのEfficeon搭載Mini ITXマザーボード

●ULiの小型サウスブリッジとATIのGPUを組み合わせた小型基板を試作

 Transmetaは、この問題に対して2つのアプローチで解決に取り組んでいく。

 1つは以前、この連載でも取り上げた小型パッケージというアプローチだ。Transmetaは昨年の10月に行なわれたEfficeonの発表会で、21×21mmという小型パッケージ「TM8620」の計画を発表している。TM8620は通常版Efficeonである「TM8600」のパッケージサイズ「29×29mm」に比べて半分程度の実装面積で済むというメリットがある。

 また、チップセットベンダのULiは、CPUと同じ大きさのHyper Transport対応サウスブリッジ「M1562S」をOEMメーカーに提供している。これを組み合わせることで、実装面積をPentium Mに比べて大幅に小さくすることができる。

 IntelのPentium Mを利用した場合には、CPUが35×35mm、ノースブリッジのGMCHが37.5×37.5mm、サウスブリッジが31×31mmとなり、合計面積は3,592平方mmとなる。ところが、TM8620+ULi M1562S+ATI MOBILITY RADEONという組み合わせを利用した場合は、1,886平方mmで、圧倒的に小さくできるのだ。

 実装面積が小さいということは、基板設計のエンジニアにとっては非常に重要なことだ。より小さな基板を設計するには、配線のルーティングが重要になるが、チップの実装面積が大きい場合は、基板の表面積のほとんどをチップが占めてしまい、CPUとチップセット、あるいはチップセットとメモリ間の配線を引き回すのが難しくなる。このため、結果的に基板を大きくせざるを得なくなることが少なくない。実際、OEMベンダの基板設計のエンジニアと話すと「パッケージは小さければ小さいほどよい」と皆が口をそろえる。

 こうしたニーズをふまえて、TransmetaではTM8620、ULi M1562S、ATI MOBILITY RADEONを搭載し、PCカードよりやや大きい程度の超小型基板を設計し、今回のCOMPUTEXで公開した。公開された物は、電気的な配線はされておらず、あくまで“チップを作ってみた”というレベルものだが、近い将来、実際に配線も行なわれ、動作が可能になる予定であるという。

3種類のEfficeon。右上が現在リリースされているTM8600、右下が21×21mmの小型パッケージとなるTM8620、左側が通常パッケージの90nmプロセスルールの第2世代Efficeon Transmetaが試作した、超小型マザーボード。現在は配線はされていないが、技術的には動くように配線することも可能という

●Dothanに対する差別化を実現する90nmプロセスルールのEfficeon

 もう1つのアプローチが、Efficeonそのものの強化だ。Transmeta日本法人社長の村山隆史氏は「弊社は90nmプロセスルールで、複数の機能拡張を行なう。これらにより、IntelのDothanとの差別化を明確にしていく」と述べ、いくつかの機能を強化することで、Dothanに対抗していくとした。

 1つは、すでに明らかになっているとおり、LongRun2の実装だ。LongRun2は、トランジスタの基準電圧を動的に変動させることで、リーケージ(漏れ)電流と呼ばれる消費電力を削減するものだ。これにより、90nmプロセスルールのEfficeonでは、パフォーマンス/ワットと呼ばれる消費電力あたりの性能が大幅に向上する見込みだ。前出のディッツエル氏が昨年10月に公開したロードマップでは、90nmプロセスルールのEfficeonでは1.6GHzで7Wを実現し、さらに1.4GHzで5Wを、1GHz版に至っては3WというTDPを実現する。

 現時点で、IntelがOEMメーカー筋に説明しているロードマップでは、DothanのULV版(TDP 5W)であるPentium M 733(1.10GHz)を第3四半期に投入し、2005年の第1四半期にPentium M 753(1.20GHz)を投入する計画になっていることを考えると、90nmプロセスルールのEfficeonがULV版Dothanを性能で上回る可能性は十分にある。

 OEMメーカー筋の情報によれば、Transmetaは90nmプロセスルールの投入を第3四半期の終わりあたりから第4四半期にかけてと説明しているため、第4四半期にEfficeon 1.6GHzと733(Dothan-ULV 1.10GHz)が対峙する可能性があり、EfficeonがPentium Mを上回るというのもあり得るのではないだろうか。

 このほかにも、90nmプロセスルールのEfficeonではいくつかの拡張が行なわれる。「弊社ではMicrosoftのNX(Windows XP ServicePack2でサポートされるCPUハードウェアによるウィルス防御機能)をサポートする。これは、CMSの拡張により実現される」(村山氏)と、NXのサポートを明らかにしている。

 対してDothanはNXをサポートしておらず、今のところIntelは対応時期について明らかにしていない。そうした現状を考えると、NXのサポートが1つのアドバンテージとなる可能性は高い。さらに、OEMメーカー筋の情報によれば、90nmプロセスルールのEfficeonではPrescottでサポートされているSSE3のサポートも行なわれるという(つまりCMSが拡張されることになる)。現在のDothanは、SSE2までのサポートとなっており、この点も90nmプロセスルールのEfficeonのメリットとなるだろう。

●8,000万ドルの増資により研究・開発体制を強化するTransmeta

 ここのところ、厳しい決算が続いているTransmetaだが、すでに明らかになっているように昨年の12月に第2次の株式公募を行ない、市場から8,000万ドルを調達することに成功したという(NECエレクトロニクスとの提携で発表された分も含む)。

 村山氏によれば「これらの新規の資金は研究・開発体制の充実に回されており、今後より強力な新製品を開発していく体制が整いつつある」とのことで、順調に開発が進む90nmプロセスルールの第2世代Efficeonに続く次次世代製品の開発も進められているという。

 現在Transmetaは第3世代Efficeonの開発を行なっているという。現時点では、第3世代のEfficeonがどのような仕様になっているのかは、断片的な情報しかないが、2005年後半に登場するというスケジュールであるため65nmプロセスルールを採用することはほぼ確実であるという。さらに、OEMメーカー筋の情報では、第3世代Efficeonでは、次期Windows「Longhorn」を意識した機能拡張が行なわれると説明されている。

 2005年の後半と言えば、Intelがデュアルコアのプロセッサを投入する時期であり、それらをどうするのか、あるいはLonghornでサポートされると見られるセキュリティ機能、ハードウェアによるバーチャル化などの機能をどうしていくのか、あるいはx64への対応などが焦点となるだろう。

□COMPUTEX TAIPEI 2004のホームページ(英文)
http://www.computex.com.tw/computex2004/

(2004年6月2日)

[Reported by 笠原一輝]


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