プロカメラマン山田久美夫のデジタルカメラレポート

デジタル時代を牽引する家電系メーカー



 ラスベガスコンベンションセンターで開催されたPMA2004。閉幕から間が空いてしまったが最後のレポートをお届けしたい。

 PMAの会場は2階建てになっており、1階は銀塩時代から参加していた老舗メーカー。そして2階はデジタル時代になって新参入してきた家電・デジタル系メーカーのブースが並んでいる。

 旧・銀塩陣営から見れば、2階は外様のような存在なのだが、ソニー、松下、アドビ、HP、エプソン、カシオなど、世界有数のメーカーブースが軒を並べており、活気あふれる展開をしているのがとても印象的だ。

 筆者は今回で14回目のPMA取材となるが、数年前から参入し始めた家電・PC系メーカーのブースが占める割合が年々増えている。その一方で、フィルム・カメラメーカー系メーカーの一部は、ブースを縮小している。なかでも今年は、PMA最大級のブース面積を誇っていたコダックが、ブースを縮小したことは、今回のPMAのなかでも大きな話題となった。

●ハイコストパフォーマンスの新シリーズ「W1」を発表したソニー

 ソニーは今回、Cyber-shotシリーズの中核となるPシリーズの新製品3種と、新ラインナップとなる「Wシリーズ」を公開した。

 なかでも最大の注目は、2.5型液晶搭載500万画素3倍ズーム機でありながら399ドルを実現した「DSC-W1」。日本では昨年来、「DSC-T1」が大人気だが、本機はその流れを汲む新シリーズだ。

 この「W1」は、見方によっては、「T1」の廉価版といえなくもないが、「T1」が屈曲光学系を搭載したスタイリッシュな薄型モデルなのに対して、こちらは薄型の沈胴式3倍ズームを搭載した、より実用性を重視した新シリーズといえる。もちろん、「T1」のような超薄型モデルではないが、日常的に気軽に持ち歩けるレベルであり、単三型2本での駆動ができるため、電池切れの心配も少なく、旅行先でも安心だ。しかも、液晶モニタは2.5型と大きく見やすい。

 米国市場では、薄さやコンパクトさ、高い質感はあまり高く評価されず、画素数とズーム倍率といった機能面とコストとのバランスのほうがプライオリティが圧倒的に高い。簡単にいえば、いくら小型軽量で薄く、高品位でも、その分、価格が高くなるなら、商品としての価値はないと、ディーラーのバイヤーが判断するわけだ。しかも、日本のように、1店舗であらゆる機種が置いてあるケースはごく希で、通常はバイヤーが扱うと決めた商品のみが展示され、それ以外は選ぶことができないわけだシステムになっている。

 PMAで各社が続々新製品を投入するのは、それが商談の場であり、商談で選ばれなかったモデルは、店頭に置かれないという、厳しい現実が待っているわけだ。

 このような米国市場の特徴を考えてみると、日本で「T1」が人気でも、米国には同じ500万画素3倍ズームの2.5型液晶搭載機として「W1」を399ドルのモデルとして、別途、ラインナップしなければならなかった理由がある程度、理解できるだろう。

 また同社はほかにも、Pシリーズ初のクレードル対応モデル「P-100」もラインナップ。さらに、8cm CD-Rを記録媒体にしたポータブルストレージも同時発表するなど、意欲的な展開が見られた。

●ワイド系大口径ズーム搭載本格派モデルを発表した松下電器

 松下電器は、ライカレンズ搭載2/3型500万画素機「LUMIX DMC-LC1」を正式発表。

 本機は昨秋のCEATECで参考出品されたものであり、事実上の姉妹機といえる「ライカ DIGILUX2」が先行発表されていたこともあって、強烈なインパクトはなかったが、その存在感はなかなかのもの。

 実機を手にすると、想像以上に質感が高くて高級感があり、なかなか本格的なモデルに感じられた。リング操作を中心とした操作性も、どこか懐かしく、とても安心感がある。

 他社では同じ2/3型でも、800万画素機が出揃ったこともあって、その点についてブースで聞いたところ、500万画素機である点についての否定的な意見はなく、むしろ好感を持って受け入れられているということだった。

 これにはちょっとした理由がある。それは姉妹機である「ライカ DIGILUX2」がPMAの名物となった、DIMA主催の画質比較テストの1,300〜1,799ドル部門で、4/3型CCD搭載機「オリンパス E-1」を破ってトップに選ばれたのだ。このテストは同一被写体を同一条件で撮影したものをプリントし、それを比較しながら、複数の審査員が投票し、決定するもの。得票数が僅差とはいえ、2/3型500万画素機が4/3型500万画素機に勝ったのだから、これは会場でも結構な話題になっていた。

 もちろん、「DIGILUX2」と「DMC-LC2」では絵作りが微妙に違うと思われるが、それでも2/3型500万画素機の実力の高さを多くの人に知らしめたという点では、これらのモデルの評価に大きく貢献したことは疑う余地がないだろう。

「ライカ DIGILUX2」 DIMA主催の画質比較テスト

●超薄型400万画素機や液晶回転式500万画素機を出品したSamsung

 韓国唯一のデジタルカメラメーカーであるSamsung。同社はもともと銀塩カメラを手がけていたこともあって、家電系で唯一、1階フロアにブースを構えていた。

 今回のPMAでは多数の新製品を発表。なかでも注目されるのは、400万画素CCDを搭載した超薄型単焦点モデル「Digimax U-CA401」。一見、単焦点タイプのEXILIMのような雰囲気だが、こちらは400万画素のオートフォーカス式と、より本格的な仕様となっている。マクロも6cmまでとメモ用にも便利そう。また、バッテリは専用充電池のほか、一次電池であるデュラセルCP1が使える点も心強い。

 ただ、雰囲気や質感があまりにEXILIMに似ており、もう少しSAMSUNGらしさを前面に打ち出して欲しいところだ。

 また、同社のハイエンド機として、液晶回転式の1/1.8型500万画素CCD搭載3倍ズーム機「Digimax V50」も発表。メタル外装でなかなか高品位なもので、レンズもシュナイダーブランド。MPEG-4ムービーにも対応するなど、なかなか意欲的な製品に感じられた。

●メタル外装の小型高機能500万画素機や8色プリンタを出品したHP

 日本では販売されていないが、欧米では年間数百万台レベルのデジタルカメラを販売している大手メーカーが「HP(Hewlett-Packard)」だ。

 今回発表されたのは、TIのイメージプロセッサーを搭載した新シリーズ。なかでも、代表格といえるモデルが、コンパクトなメタル外装の500万画素3倍ズーム機「HP Photosmart R707」だ。

 もともと、HPのモデルはコストパフォーマンス優先の、比較的実用本位なモデルが多いわけだが、本機はかなりコンパクトでスタイリッシュだ。

 しかも、これまで同社のプリンタドライバで実現していたような、さまざまな画像処理・編集機能をカメラ側で実現している点が大きな特徴だ。まず、これまで撮影後にPC側で処理していた代表的なものといえる、赤目軽減機能やパノラマ合成といったものから、画面内からシャドー部や顔の部分だけを抽出して明るくするといった、かなり凝った処理までカメラ内で処理できてしまう。

 さらに、撮影された画像を解析して、その結果を基に撮影(機能設定)アドバイスをするといった機能まで備えているなど、かゆいところに手が届くモデルという印象だ。

 ブースでデモを見る範囲では、その実力の片鱗しか体感できなかったのが実に残念だったが、デジタルカメラの新しい方向性を感じるモデルに仕上がっていた。

 また、シリーズ最高峰となる500万画素光学8倍ズームの「Photosmart 945」も出品。このモデルも日本国内では入手できないモデルだが、DIMAの画質テストで同クラスでトップとなるなど、なかなかの実力を備えているようだ。

 一方、HPは米国できわめて高いシェアを誇るプリンタのトップメーカー。それだけに本国には、日本市場には導入されていないモデルも数多い。今回のPMAでも、8色インクを採用し、カラー液晶を搭載した「Photosmart 7960」というハイエンド・フォトプリンタを出品し、注目を浴びていた。

●注目の超小型顔料系6色インク採用プリンタを発表したエプソン

 世界初のレンズ交換式レンジファインダーデジタルカメラを出品したセイコーエプソン。

 しかし、本業(?)であるインクジェットプリンタ分野でも注目すべき新製品を数多く発表していた。なかでも、最大の注目機種は、6色タイプの顔料系インクを初めて搭載した本格派ホームプリンタ「PictureMate」だ。

 同社はこれまで、6色タイプ以上の写真画質を追求した顔料系インクを上級モデルにしか搭載してこなかった。しかし、高耐久性を実現した顔料系インクは、なにも本格的な作品作りのための上級機だけに要求されるものではない。むしろ、自宅のインクジェットプリンタで気軽にL判やはがきサイズのプリントを楽しみたいという、一般ユーザーにも大きなメリットがあり、多くのユーザーが心待ちにしていたものでもある。

 「PictureMate」は4×6インチ、つまりポストカード判までの完全フチなしプリントが可能なホームプリンタだ。

 これまでの小型フォトプリンタといえば、昇華型やPRINTPIXタイプが定番であり、インクジェットタイプは少数派。HPも昨年から日本国内発売を開始した超小型ダイレクトプリンタ「PhotoSmart 245」もあるが、こちらは染料系の3色インクタイプであり、実用十分な画質とはいえ、多色インクに慣れた目には、若干物足りない感じもあり、保存性の面でも心配があった。

 しかし、今回の「PictureMate」では、顔料系で、しかも6色インクを採用した、上級機に勝るとも劣らないほどの、本格派モデルに仕上がっている。つまり「つよインク搭載リビング用プリンタ」という感じだ。

 そのため、画質面でも、保存性の面でも、顔料系インク搭載フォトプリンタに匹敵するほどの実力を実現している。なかでも保存性については、額縁保存で100年、アルバム保存では200年もの耐久性を実現しているという。

 また、インクは6色一体型のカートリッジに納められており、4×6インチ判のフォトペーパー100枚とセットで販売される。価格は29ドルであり、1枚あたり29セントと、同サイズの銀塩プリントと同等か、やや割安な設定になっている。

 ボディサイズも比較的コンパクトで、ボディー上部に移動用の取っ手が設けられている点も大きな特徴だ。駆動にはAC電源が必要なので、完全なモバイルプリンタというわけではないが、自室からリビングに持っていったり、必要なときだけ棚から持ち出すといった使い方であれば、これでも実用十分だろう。

 もちろん、PictBridge対応であり、メモリカードもCF、SD、メモリースティック、xD-Picture Cardに対応する。PCなしにデジタルカメラからのプリントを、どこでも楽しめるモデルというわけだ。

 カラー液晶モニタやビデオ出力機能がない点は、実に残念だが、PictBridgeやDPOFを活用すれば、カメラ側の液晶モニタでプリントするコマ選びができるので、意外に不便さは感じないかもしれない。

 これまで本格的なフォトプリンタというと、A4サイズのインクジェットが中心だったわけだが、本機のようなリビングにも使える、オシャレな雰囲気のプリンタは数少なく、なかなか貴重な存在といえる。本体価格は199ドルと、なかなか手頃なもの。おそらく近い将来、日本国内でも発売されると思われるが、真のリビング・フォトプリンタとして、高い人気を獲得しそうだ。

 また、上記以外のプリンタも、ラインナップをほぼ一新。最高解像度を5,760dpiにアップし、DURABriteインクと呼ばれる顔料系インクベースの製品を中堅機にラインナップ。さらに、染料系インクの複合機もラインナップも充実させるなど、意欲的な展開をしてきた。もっとも同社は海外専用機も多いことから、同じ機種が国内発売されるとは限らないが、この春の国内向け新製品も大いに期待できそうだ。


(2004年2月26日)

[Reported by 山田久美夫]


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