会期:2月17日~19日(現地時間)
Intel Developer Forum開幕前日の17日(現地時間)、報道関係者向けの記者会見などが行なわれ、同社が推進するデジタルホームに関する内容のプレビューやInternational CESで発表したリアプロジェクションテレビ(RPTV、Rear Projection TV)用の半導体であるLCOSなどに関する説明が行なわれた。 ●LCOSはイメージクオリティと低コストが同居するとIntel
Intelのコンシューマエレクトロニクスグループ エコシステムデベロップメントディレクターのスティーブ・リード氏は「LCOSは従来のRPVT用のマイクロコントローラに比べて低価格でかつ高画質を実現することができる」と述べ、同社がリリースを予定しているLCOSの優位性をアピールした。 RPTV(リアプロジェクションTV)とは、スクリーンの後ろにプロジェクタを置いてスクリーンに投影するタイプの大画面TVで、プラズマや液晶などに比べて画面サイズあたりの単価が安価なことから、米国ではかなり普及している。ただし、画面の裏側にプロジェクタを入れないといけないという構造上、厚さがでてしまうのが欠点で、日本ではあまり普及していない。 IntelがCESで発表したLCOSは、RPTVを作るのに必要なマイクロディスプレイで、非常に小さな液晶ディスプレイのような構造をしており、マイクロディスプレイに映っている画面をスクリーンに投影するしくみになっている。 現在のRPTVには主にHTPS(High Temperature Poly Silicon)やDMD(Digital Micromirror Display)と呼ばれる方式のマイクロディスプレイが採用されている。例えば、プロジェクタ市場で非常に大きなシェアを持っているTI(Texas Instruments)はDMD方式を採用したDLP(Digital Light Processing)をマイクロディスプレイとしてTVメーカーなどに提供している。 リード氏は「LCOSにはHTPSやDMDに比べて明快なメリットが存在している。LCOSではDMDに比べて反射角が小さく、少ない面積で1ピクセルを実現できる。このため、DMDと同じ面積のチップを作った場合、DMD方式に比べて実現できるピクセル数を増やすことができる。しかも、同じコストでだ」とLCOS方式のメリットを語った。要するに、DMDはLCOSに比べて反射角が大きく同じ面積で実現できるピクセル数はLCOSに比べて少なくなるなる。チップサイズが同じであればコストはほぼ同じとなるため、ピクセル数が多ければ多いほど同じコストであっても画質が向上することになるため、LCOSを利用したRPTVはDMDを採用したRPTVに比べて同コストであっても高画質を実現できるというのだ。
●コンポーネントだけでなくビルディングブロックを提供していくIntel IntelはLCOSのマイクロディスプレイをOEMメーカーとなるTVメーカーに対して提供することになるが、ビジネスモデルはまさにPCのそれを踏襲する。 例えば、OEMメーカーとなるTVメーカーには、単にマイクロディスプレイのパネルというコンポーネントだけを提供するのではなく、必要最低限のものをビルディングブロックとして提供する。実際にLCOSなどのマイクロディスプレイを利用してRPTVを製造する場合には、マイクロディスプレイを利用して画面に投影するためのライトエンジンを製造する必要がある。Intelではいくつかのライトエンジンメーカーとすでに話を始めており、そうしたライトエンジンメーカーから実際にLCOSを組み込んだ状態でライトエンジンが提供されることになるという。
このライトには、LCOSのパネルを1~3つ組み込むことが可能で、例えば40インチクラスには1パネルで、50~60インチクラスには2パネル、60インチ以上のクラスには3つのパネルを利用して製造するなどスケーラブルな対応が可能になるという。解像度も720p、1080i、1080pなどHDクオリティにも対応可能になっており、実際会場には720p表示が可能なLCOSで製造されたTVが公開されていた。
また、PCのビジネスがそうであるように、LCOSを利用したRPTVを製造するためのデザインガイドも提供していくという。これによりOEMメーカーはTVのデザインや機能、GUIといった他社との差別化を図る部分にリソースを集中することができ、高品質な製品を安価にかつ迅速に投入することができるとリード氏は述べた。 ●Intelのプロセス技術で歩留まりの問題を克服する とはいえ、LCOSの成功を疑う業界関係者も少なくないのが現状だ。例えば、歩留まりに関する問題を指摘する関係者は少なくない。実際、DMD方式に比べてLCOSは少ない面積で1ピクセルを表現するため、シリコンの歩留まりはDMD方式に比べて悪いのではと考えられている。歩留まりが悪ければ、結局は高コストとなってしまい、同じサイズ(=コスト)でありながら高画質というLCOSの特徴が絵に描いたもちになってしまう。 実際、記者会見でも報道陣からそのような質問がされていた。これに対してリード氏は「弊社では業界随一と自負しているプロセス技術と、それを実現するエンジニアがいる。その問題は解決できると考えている」と述べ、問題ないとしている。こればかりは実際に生産されてみないとなんとも言えないところであり、今後のIntelのお手並み拝見というところだろう。 なお、LCOSはIntelにとって新しい家電ビジネスという側面があると同時に、既存のプロセス技術を利用している工場の有効活用という面もある。Intelのポール・オッテリーニ社長兼COOは、CESでの講演でLCOSの最初の製品は0.18μmで製造されるが、2005年頃には0.13μmへと移行すると説明している。現在Intelは0.13μmの工場をPCプロセッサの主力工場として利用しているが、今年の終わりにかけてPrescottが立ち上がり90nmプロセスルールへの移行が進めば0.13μmの工場は生産能力が余ってしまうことになる。そうした工場で、LCOSを作ることができれば、そうした0.13μmプロセスルールのラインを有効活用することができる。そうした意味でも、LCOSはIntelにとっての戦略商品であるということができるだろう。 ●日本でRPTVが普及するかは未知数だが、大画面TVの低価格化の1つとして注目したい 冒頭でも述べたように、現在日本では奥行きという問題を抱えているRPTVはほとんど普及していないのが現状だ。しかし、LCOSが本格的に立ち上がりインチあたりの単価が大幅にさがるようであれば、日本でもRPTVをという動きはでてくるかもしれない。そうした意味で、今後も注目していきたい製品だと言っていいだろう。 なお、リード氏によれば、LCOSを利用した製品は2004年の後半から2005年頃にかけて北米などを中心とした市場に投入される予定であるという。 □IDF Spring 2004のホームページ(英文) (2004年2月18日) [Reported by 笠原一輝]
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