International CES 2004 基調講演レポート

フィオリーナ会長がHP版iPodを披露
〜アーティストらとともに、デジタル著作権管理への取り組みを宣言


HP版iPodを掲げるフィオリーナ会長兼CEO

会場:Las Vegas Hilton

会期:1月8日(現地時間)



 「2004 International CES」初日の8日午後(現地時間)、HPのカーリー・フィオリーナ会長兼CEOによる基調講演が行なわれた。この中でフィオリーナ会長は、HPはデジタルエンターテイメントについて、製作から流通までのシステム全体の観点から取り組むこと、デジタル権利保護技術を開発することなどを述べた。

 また、Apple Computerの携帯音楽プレーヤー「iPod」のOEM供給を受け、販売すること、プラズマディスプレイをはじめとする多数の家庭向けエンターテイメント機器を発売することなどを発表した。

●プラズマディスプレイなど、多数の機器でホームエンターテイメントシステムに注力

 フィオリーナ会長は基調講演で「来年のクリスマスの頃の話です」と、1本のビデオを紹介した。

 “デジタルが足りない”と悩む男の部屋に、“デジタルエンターテイメントのグル(導師)”を名乗るカーソン氏がやってきて、男の部屋のビデオテープやDVD、AV機器の類をすべて捨て、デジタルエンターテイメントシステム完備の部屋に改装する、という話。HPのフラットパネルディスプレイとホームサーバー1基だけが置かれている改装後の部屋を見て、“僕のビデオテープはどこに行った?”と聞く男にカーソン氏が、コンテンツはすべてホームサーバー内にデジタル化されて格納されているか、またはネットワーク経由でダウンロードするようになっていることを説明する。

 今となってはとくに目新しくも無いデジタルホームのビジョンだが、なぜかオカマっぽいグルや、捨てられる旧式ディスプレイのブランドが「Dell」だったりする、といったギャグを散りばめて、テンポよく見せることで、基調講演の聴衆を飽きさせなかった。

 この後、フィオリーナ会長は、ビデオに登場した機器はすべて、HPが発売を予定しているものであることを明かす。

男の家にやってきたカーソン氏(左)は、「やっだー、なにこれ、石器時代のモノ?」などと、男のAV機器やビデオテープを(オネエ言葉で)貶しまくる カーソン氏は男のAV機器やPCをすべて捨てて、クールな部屋に改装。左が改装前、右が改装後
HPのディスプレイとホームサーバー。ホームサーバーのデザインがラックマウントサーバー様なのが興味深い iPAQが統合リモコンになる HPのデジタルプロジェクター

 フィオリーナ会長はまず、コンシューマー向けの42型プラズマディスプレイを、今後18カ月の間に出すと発表。詳細は明らかにされなかったが「最新のイメージングエンジンを搭載し、TV以上のものになる。どんなソースでも、どんなコンテンツでも見せてくれる製品になる」と述べた。

 さらに、低価格な家庭向けのデジタルプロジェクタを発売すること、7日(現地時間)の基調講演でMicrosoftのビル・ゲイツ会長兼CSAが発表したWindows Media Center eXtender(Windows MCX)をサポートすること、静止画や動画、音楽などのコンテンツを一元管理する「HPエンターテイメントHUB」を開発すること、同社のPDA「iPAQ」を統合リモコンにすることなど、多数のホームエンターテイメント向け機器をリリースすることを発表した。

●豪華アーティストとともにコンテンツ保護技術開発を宣言

 もっともHPのデジタルエンターテイメントへの取り組みは、上記のようなフィオリーナ会長が言うところの「ガジェット」だけではなく、デジタルエンターテイメントの製作、配布、消費の全プロセスをカバーするものだという。

 その一環として、フィオリーナ会長はコンテンツ保護技術の開発を表明。データ内にコピーコントロールフラッグを埋め込み、データ自体の暗号化も行なうものになるという。

 また、コンテンツ保護技術を組み込み、著作権を損ねないDVDを作成できるDVDムービーライタを作ると発表した。

 この発表に賛同するアーティストの代表として、U2などのプロデュースで知られる音楽プロデューサー、ジミー・アイオヴィン氏が登壇。ファイル共有ソフトなどによるアーティストや音楽業界の被害を訴え、HPの取り組みを称えた。さらに、U2のギタリストであるエッジ氏ら、アイオヴィン氏ゆかりのミュージシャン6人も登壇し、会場を盛り上げた。

コンテンツ保護技術を装備したDVDムービーライター ジミー・アイオヴィン氏はコンテンツ保護の必要性を情熱的に(ややヒステリックに)訴えた。その後、そのメッセージに賛同するアーティストが登壇(写真右)。アイオヴィン氏の右がU2のエッジ氏、左がエミネムのプロデューサーであるドクター・ドレー氏

●“合法的なオンライン音楽サービス”のiPodとiTunesに参入

 アイオヴィン氏はスピーチの中で「音楽はインターネットのキラーコンテンツ」と述べたが、フィオリーナ会長もデジタルエンターテイメントシステムにおける音楽を重視しているとした。

 そして、制作、配布、消費というプロセスをすべて自前で用意する音楽配信サービスに乗り出すことを、HPでも検討していたが、「すでにそういうサービスを提供している会社がありました。iTunesは、合法的な音楽ダウンロードの70%を占めているのです」と述べ、Apple Computer(Apple)との提携を発表した。

 提携内容は、6月以降に、Appleの携帯音楽プレーヤー「iPod」をHPブランドから発売すること、Appleの音楽管理ソフト「iTunes」をHPからも提供すること、音楽配信サービス「iTunes Music Store」に参加することなど。

 「まだ1つしかないのですが」と言いながら、HP版iPodの実物も披露した。Apple版との違いは本体色が白から水色になっていること、HPのマークが刻まれていること、の2点だけのようだ。

 さらに「iTunesで音楽をダウンロードしようとしたのですが、その前に本人が来てくれました」と言うと、女性ミュージシャンのアリシア・キーズ氏が登場。生演奏を行ない、やはりHPの音楽配信への取り組みを称えた。

色こそ違えど、iPodそのもの 背面は鏡面仕上げ。この写真では指に隠れて見えないが、HPのマークが刻まれている アリシア・キーズが生演奏

●音楽だけでなく、映画の製作、流通にも取り組み

 続けて、音楽以外の分野として、映画にも取り組んでいることを披露。

 昔のテレビ番組や映画をアーカイブし配信するサービスや、ロバート・レッドフォードが主催する独立系映画祭「サンダンス・フィルム・フェスティバル」、新たな脚本家と映画監督を発掘するコンテスト「プロジェクト・グリーンライト」に対し、金銭および技術における支援をしていることを明らかにした。

 また、CGアニメ映画「シュレック」、「シュレック2」の制作に技術的に参加していることも述べた。

 プロジェクト・グリーンライトからは主催者のプロデューサー、クリス・ムーア氏と、俳優のベン・アフレック氏が登壇。HPの技術で映画の製作・配信コストが下がったことなどを述べた。

「シュレック」にはHPも参加。未公開の「シュレック2」の予告編も上映された プロジェクト・グリーンライトのクリス・ムーア氏(左)とベン・アフレック氏

 家庭用デジタルエンターテイメントというと、とかく機器に関心が偏りがちだ。が、HPは機器はもちろん、コンテンツの制作から配信までの全プロセスで、デジタルエンターテイメントに関わっていく姿勢を強調した。

□2004 International CESのホームページ(英文)
http://www.cesweb.org/
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【1月9日】ビル・ゲイツ基調講演レポート
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2004/0109/ces03.htm
【1月9日】AppleとHPが戦略的提携。HPプランドのiPodを今夏発売(AV)
http://www.watch.impress.co.jp/av/docs/20040109/hpapple.htm

(2004年1月9日)

[Reported by tanak-sh@impress.co.jp]


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