■すっかりPDAとして馴染んでいるPocket PC
PDAを持ち歩くようになって、もう何年過ぎただろうか。これまで使ってきたPDAには、キーボードが付いているハンドヘルドタイプも数機種存在したが、ここ数年はパームトップタイプのPDAの割合が高い。特にWindows CE搭載のPDAがメインになってきている。 先月まで使っていたのは、2002年8月に購入した東芝のPocket PC「GENIO e550G」。何かと新しいもの好きの筆者は、新しいPDAが発売されるたびに乗り換えてきたが、GENIO e550Gは、意外にも1年以上使い続けてきた。 しかし、GENIO e550Gは内蔵バッテリをユーザーが交換できない仕様になっており、1年半近く使ってきて、そろそろバッテリの寿命も気になりはじめている。修理扱いで交換ができるものの、修理期間中はPDAが使えないとなると、多少なりとも困るものだ。 筆者のPDAの使い方としては、スケジュール管理をはじめとして、メモや屋外でのメールチェック、掲示板のログチェックである。メールに関しては、ほとんどが受信だけになるが、稀に送信も行なうことがある。掲示板のログチェックに関しても、読むのがほとんどで、PDAから書き込むことはほぼない。そのためハンドヘルドタイプのPDAよりも、よりコンパクトなパームトップタイプを好んで使っているのだろう。 ■次のPDAはどれにするのか
まず最初にザウルスやPalm OSを搭載した機種は検討外とした。これは、PocketPCに馴染んでしまっていて、他の環境に乗り換えるリスクを抱えたくなかったからである。 今年の夏くらいからWindows Mobile 2003 software for Pocket PC(以下、PocketPC2003)を搭載した機種が発表されはじめ、筆者もこのOSを搭載した機種への買い換えを考えはじめた。秋には個人でも購入できる製品がいくつか登場してきたが、積極的に乗り換える気持ちにはなれなかった。 理由はいくつかあるが、どうしても譲れない条件があり、その条件を満たした製品が登場していなかったためだ。 その仕様とはCFスロットとは別に、もう1つメモリスロットが欲しいというものだ。現実的にはSDIO/MMCカードスロットとCFカードスロットが搭載されている機種ということになる。 どちらかというと、SDIO/MMCカードスロットだけを搭載したPocketPC2003搭載機が先に市場へ投入されたため、購入まで至ることは無かった。2つのスロットにこだわるのは、ひとつはPHSや無線LANなどの通信デバイスで利用し、もうひとつはストレージとして利用したいからだ。 10月に入ると、ようやくSDIO/MMCカードスロットとCFカードスロットを搭載した機種が市場に登場しはじめた。これらの情報をチェックしていると、有望な製品がいくつか候補にあがった。候補にあがったのは、Toshiba PocketPC e800とHP iPAQ h4355、HP iPAQ h2210である。 Toshiba PocketPC e800は、アプリケーションの対応が前提であるものの、480×640とVGAの解像度を持つ液晶、HP iPAQ h4355は、2スロット搭載機ではないがキーボードがついてる点、HP iPAQ h2210はコストパフォーマンスに優れている点に興味をもった。 もちろんこれら以外にも、2スロットを搭載したPocketPC 2003搭載機は存在するが、買い換えるまでの興味を持てるものはなかった。 特に東芝製のPocketPC 2003搭載機は、筆者の希望している仕様は満たしているが、それまで使っていたPocket PC「GENIO e550G」と外見がそれほど変わらず新鮮味がない、カメラが必要ない、メモリも多いほうがいいのは当然だなのだが、これまでの自分の利用方法を振り返ってみても64MBで十分だということで今回は見送ることにした。 さらに、現時点ではToshiba PocketPC e800とHP iPAQ h4355は国内販売されていない。結局、コストパフォーマンスに魅力を感じたHP iPAQ Pocket PC h2210(以下、iPAQ h2210)が購入の第一候補となった。 ■なかなかお目にかかれないiPAQ Pocket PC h2210
PDAを物色していたおりに、新宿などの量販店のPDA売り場を一巡したが、置いてあるPocketPCは東芝、カシオなどのものがほとんど。国内でiPAQが発売された頃は(当時の)Compaq製品も店頭で発売されていたが、現在ではiPAQを店頭に展示してあるショップが、極めて少なくなっているには驚かされた。 結局、購入の候補が絞れていたのと、比較的買いやすい価格だったため、実機を触らないままインターネットショップで購入した。ちょうど、11月中旬にとあるサイトを覗くと即納との表示があったためその場で申し込んだが、実際にiPAQ h2210が送られてきたのはそれから2週間経過した12月初旬だった。 ■第一印象は軽くて小さく、キー類の操作感が良いこと
iPAQ h2210を手にして最初に感じたのが、軽いということだ。それと、実際には並べてみるとそれほど大きく差は無いのだが、いままで画面の大きなGENIO e550Gを使っていたせいか、iPAQ h2210がコンパクトな印象を受けた。 さっそく電源を入れ、最初のウィザードを一通りこなし、しばらくボタンを押してみたり、画面をタップしたりして感触を確かめながら操作してみた。 大きく違いを感じたのは、画面下のボタンとカーソルボタンだ。ボタンに関しては比較的大きく、オードソックスな丸い形状だということで押しやすい。またカーソルボタンに関してても、形状が大きくなり操作しやすいと感じた。 PDA本体を手にとり、片手でボタンやカーソルボタンを使う機会が多い筆者にとって、軽い本体と操作性の良さは、今回の買い替えでもっともありがたいものとなった。 元々、GENIO e550Gにそれほど不満はなかったので、iPAQ h2210への移行は急いでなかったのだが、想像していた時期より随分前倒しで完全移行してしまった。
本体を手にいれると、つぎはアクセサリの調達だ。まず新しく調達しなければならないものとしては、液晶保護シートやスタイラス、ケースが思いつく。 iPAQ h2210本体を扱ってないショップでもサードパーティのアクセサリは販売していたため、これらのアクセサリは意外と手に入れやすかった。ストレージはデジカメのお下がりであるPanasonicの256MB SDメモリーカード、通信カードとしてはGENIO e550Gのときから使っていたNTTドコモ「P-in Free 2PWL」を利用することにした。 まず購入したのは液晶保護シートだ。店頭に行ってみるとh2210対応とあるものは一種類。他の製品用の液晶保護シートならば、500円~1,500円くらいのレンジでいろいろな種類があるのだが、今回は迷うこともなくこの液晶保護シートを購入した。 購入したのはミヤビックス「OverLay Brilliant」である。1枚1,480円と比較的高価な製品であるが、実際に使ってみると非常に良い感じなのである。光沢処理が施されたタイプで、文字のにじみがなく、液晶の彩色が損なわれることがない。 そのほかにケースやスタイラスの購入も検討してみた。スタイラスに関しては、標準添付のものが、気になるほど使用感が悪いものでなかったので使い続けることにした。ケースに関しては、iPAQ h2210のコンパクトさを損なわない製品を探してみたが、いまのところ筆者の希望に合った製品はなく、いまだに物色中だ。 次に出先のPCでActiveSyncを実行するためのシンクケーブルを購入しようとしたが、純正オプション品を在庫しているショップがなく、インターネットのサイトでH3900/H3800/H5400/H1900用用の特売品のUSBシンクケーブルを見かけたので、それを注文して手にいれた。 iPAQ h2210はH3900/H3800/H5400/H1900用と拡張コネクタが同じ形状だということを知っていたので、多分使えるだろうということで注文したが、充電機能はないものの、ActiveSyncを使うには十分なものだった。現在でも在庫があるかわからないが、送料、消費税別で500円であった。 その他には出先での充電用にACアダプタを用意した。これは以前iPAQ H3630を使っていたときに購入したもので、iPAQ h2210本体付属のチャージアダプタと組み合わせて利用している。ちなみに、自宅ではクレードルで充電を行なうため、このチャージアダプタは利用していなかった。
■Windows CEの操作感が向上
さて肝心のiPAQ h2210の感想であるが、はっきりいってとても良い。4万円弱でこのレベルの性能のPocketPCが手に入るのだから驚きである。GENIO e550Gと比べ、CPUパワー自体はそれほど変わっていないと思うのだが、Windows CEは格段にきびきびと動作する。これはPocketPC 2003になってOS自体がチューニングされた結果もたらされているのではないだろうか。とにかく、操作時のもたつき感がなくなったのは喜ばしいことだ。 今回の乗り換えで最も不安な要素だったのは、筆者が利用してきたアプリケーションの、PocketPC 2003上での互換性だ。筆者が主に利用しているものには、日本語入力としてATOK for PocketPC、メーラーとしてAxMail、その他ユーティリティとしてGSPocketMagic、GSTPower2などだ。このなかでAxMailは正式にPocketPC 2003への対応が発表されていないが、今のところ問題なく動作している。 また、NTTドコモ「P-in Free 2PWL」に関しても、日本HPやNTTドコモでは動作確認がなされていないが、スイッチでPHSと無線LANを切り替える使い方であれば、問題なく動作している。 ■国内未発売のmicro keyboardをつけてみた
iPAQ h2210には、国内では発売されてない純正オプションがいくつか存在する。その中の1つに「micro keyboard」というものがある。これはiPAQ h2210本体下部に差込む、極小キーボードである。35個のキーと2種類のFnキーによって、フルキーに近い入力性が確保されているものだ。 国内では販売されておらず、micro keyboard本体と同じくらいの送料がかかるが、個人輸入することにした。商品が届いたのは、注文後約一週間。
装着するまえに、ドライバをインストールする必要がある。当然ながら日本語版のドライバは付属していないので、英語版をインストールた。ドライバのインストールが終わり再起動した後、micro keyboardを装着した。 とりあえず、簡単なWindows CEの操作を行なってみたが、特に動作に問題はない。続いてATOK for PocketPCを使った日本語入力も試してみたが、基本的な操作で困ることはなかった。 まだ、いろいろなシチュエーションで試したわけではないが、メモをとったりメールを返信するときにだけ装着して、micro keyboardから日本語を入力するといった使い方の範疇では特に問題は発生していない。 インターネット上の掲示板などを見ると、連続使用でmicro keyboardを認識しなくなるといった例が見られるが、今のところ筆者のところでは同種の問題は発生していない。ATOK for PocketPCを使った日本語入力も可能である。 ■不満点がないわけでもない
ほぼ満足できる仕上がりになっているiPAQ h2210であるが、気になる点がないわけではない。 まず、CFカードスロットにカバーがないことだ。購入した直後はブラケットが納まっている形になっているが、CFカードスロットの使用率が高い筆者としてはいちいちブラケットを持ち歩き、差し替えるといった操作は面倒なので何かしらカバーがほしかった。 PHS通信や無線LANを使うときはP-in Free 2PWLを挿し込んでいるので問題はないが、それ以外のときはスロットの接点に刺さらない程度にP-in Free 2PWLを軽く挿してしのいでいる。 もうひとつは本体の裏側にリセットスイッチがある点だ。現在は購入してないが、もしカバーを購入した場合、いちいち本体を取り外してリセットボタンを押すか、リセットスイッチ位置に穴の開いたケースを選ぶことになる。リセットスイッチは意外と頻繁に使うスイッチなので、できれば裏側以外の面に装備してほしかった。 それと、海外で発売されている純正オプションを国内向けに発売、サポートしてもらいたい。大容量バッテリやmicro keyboardは、国内でもニーズがある機器だと思うのだが、現在は発売されていない。今後、この2つの純正オプションが発売されることを期待したい。 あとは、不満というわけではないが、iPAQ h2210にはBluetoothが内蔵されている。今のところ、筆者としてはほとんど利用する機会がない。できればBluetoothではなく無線LANが内蔵されていると、無線LANスポットが拡張カードなしで利用できるので便利なのだが。 ■結果的には大当たりだった「iPAQ Pocket PC h2210」
気になる部分は何点があるが、iPAQ h2210はとても満足できる仕上がりだ。筆者にとって、十分なスペックで、以前にも増してPDAとして活躍している。 出かけるときには、必ずポケットに入れ、電車やバスでの移動中など、ちょっとした時間にダイヤルアップしてメールチェックするといった使い方をしている。 GENIO e550Gのときにも持ち歩いてはいたが、必ずというわけではなく、重要なメールが届きそうなときに持ち歩くこともある、という程度だった。それがiPAQ h2210になって、自分でも不思議なくらいに常時持ち歩くようになっている。 iPAQ h2210よりも低価格なPocketPCは存在するが、モバイルで利用する可能性があるのであれば、やはり拡張スロットを2つ搭載しているモデルが使いやすいのではないだろうか。そういう意味では、このiPAQ h2210はとても魅力的な機種である。 上位機種h55xxのようなジャケットによる拡張性は望めないが、多くの個人ユーザにはSDIO/MMCカードスロットとCFカードスロットが搭載されていれば十分な仕様だろう。拡張スロットが2つあるPDAとしては、4万円弱という価格もありがたい。 あとは、今現在、未発売となっているmicro keyboardや大容量バッテリが、国内でも正式に発売され、サポートされることを願いたい。 ただ、シャープのザウルスやソニーのクリエに比べると、国内のPocketPC搭載機はあまり活気がないようなイメージを持ってしまうのは筆者だけだろうか。様々な機能が搭載されているザウルスやクリエが、次々に新製品を投入しているのをみると、国内のPocketPCメーカにもより魅力的な製品の投入を期待せずにはいられない。 □関連記事 (2003年12月26日)
[Text by 一ヶ谷兼乃]
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