会場:米国ネバダ州ラスベガス市 ラスベガスコンベンションセンター
GPUベンダのNVIDIAは、COMDEX Las Vegas 2003が開催されている会場近くのホテルで記者会見を開催し、同社が「NV36m」のコードネームで開発してきたノートPC向けGPU「GeForce FX Go 5700」を発表した。 GeForce FX Go 5700は、10月に発表されたデスクトップPC向けGPU「GeForce FX 5700」のノートPC版で、ダイこそ同じながらノートPC向けに省電力機能の「PowerMizer 4.0」を搭載するなど最適化が施されている。 ●3D描画性能だけでなく省電力機能なども向上 「最初のDirectX 9世代モバイルGPUとなったGeForce FX Go 5600/5650の世代において、我々はDirectX 9を初めてノートPCに持ち込んだ。今回のGeForce FX Go 5700では、さらにビデオプロセッシング、ソフトウェアの互換性、新しい省電力機能などを組み込んでおり、ノートPCのユーザーにさらに大きなメリットを提供できる」と、NVIDIA モバイルビジネス ジェネラルマネージャ ロブ・チャンガー氏は、GeForce FX Go 5700の持つアドバンテージを説明した。 今回発表されたGeForce FX Go 5700は、CeBIT 2003の会場で発表されたGeForce FX Go 5600および、その後追加されたGeForce FX Go 5650の後継となる製品で、これまでNV36mの開発コードネームで呼ばれてきた製品だ。 その開発コードネームからもわかるように、NV36の開発コードネームで知られるGeForce FX 5700のノートPC版に当たるのが本製品ということになる。実際、ダイそのものは、デスクトップPC向けのGeForce FX 5700と同じであり、モバイル向けに省電力機能が追加されていたり、動作周波数が異なるのが大きな違いとなる。
●バーテックスシェーダを強化し、エンジンクロックを向上させた3D描画機能 今回、NVIDIAはそのメリットを説明するのに、4つのポイントを上げた。それが冒頭でチャンガー氏が語った3D描画性能の強化、ビデオ再生機能の強化、ソフトウェアの互換性、省電力機能の強化の4点だ。 3D描画性能の強化という意味では、演算ユニットの強化、クロック周波数の向上、3D描画機能の追加という3つの点で、前世代のGeForce FX Go 5600/5650に比べて強化されている。 ピクセルシェーダのクロックあたりに処理できるピクセル数は4パイプと変更されていないものの、バーテックスシェーダのエンジンは1エンジンから3エンジンへと増やされている。これにより、ジオメトリ演算の性能が大幅に向上、同クロックであればGeForce FX 5950とジオメトリ性能では同等の性能を持っている。 クロック周波数は、従来のGeForce FX Go 5650がエンジン325MHz/メモリ600MHzであったのに対して、GeForce FX Go 5700ではエンジン350MHz/メモリ600MHzへと向上している。なお、DTR(=デスクトップ代換)ノートPC向けには450MHz/600MHzというモデルも用意される。 エンジンクロックが25MHz向上しており、クロックが上昇した分の性能向上も期待できる。メモリクロックが上がっていないのが気になるが、「今回はDDR1のメモリのみをサポートした。これはDDR2にすることで、性能は向上するが、消費電力が上がってしまうからだ」(NVIDIA モバイルビジネス プロダクトマネージャのビル・ヘンリー氏)と、消費電力を上げないために、あえて変更しなかったようだ。なお、メモリバス幅は従来通り128bit幅となっている。 3D描画性能の強化という意味では、GeForce FX Go 5700ではGeForce FX 5950でサポートされているようなUltraShadow、IntelliSample HCTといった3Dの機能を搭載している。 これらの強化により、1,024×768ドット/32bitカラー/4X FSAA有効/8x 異方形フィルタリング有効などの設定で、前世代となるGeForce FX Go 5650に比べて1.25~1.5倍程度、3D描画性能が向上しているという。
●HDTV用のコンポーネント出力をサポート、日本向けにはD端子もサポート
GeForce FX Go 5700ではビデオ再生機能も強化されている。GeForce FX Go 5700では、新たにHDTV用のコンポーネント出力がサポートされており、高画質のビデオやテレビ出力をHDTVなどに出力することができるようになる。 今回、実際にノートPCへコンポーネント出力を用意し、そこから会場の巨大モニターに1,920×1080iの解像度でビデオ出力する。デモも行われた。なお、ヘンリー氏によれば「日本のD端子も、特に追加チップは必要なく、サポートすることができる」ということだ。 また、今回の発表会には、EPIC GamesやEAなどの担当者がゲストとして招かれており、実際にGeForce FX Go 5700を利用したゲームのデモが行なわれた。 EPIC Gamesは同社が今年末にリリースを予定しているUnreal Tournamentの最新版となる「Unreal Tournament 2004」をGeForce FX Go 5700搭載ノートPCでプレイするデモを行なったほか、EAはNVIDIAのGPUを採用することで、GPUの問題でサポートにかかってくる電話が減った、などのプレゼンテーションを行なった。 ●新たにSmartDimmerテクノロジが追加されたPowerMizer 4.0 GeForce FX Goシリーズは、PowerMizerと呼ばれる省電力機能を備えており、CPUのSpeedStepテクノロジやPowerNow!テクノロジと同じように、GPUの負荷率に応じてGPUのエンジンクロックや駆動電圧を下げることにより、消費電力を下げることが出来るようになっている。 PowerMizer 4.0では、さらにメモリクロックのクロックゲーティングが可能になっており、メモリに対してアクセスがない場合には、メモリのクロックを停止し、メモリの消費電力を下げる仕組みが採用された。 PowerMizer 4.0の最大の目玉は、SmartDimmerテクノロジがと呼ばれる輝度を自動的に調整する仕組みが入っていることだろう。これにより、アクティブ時とアイドル時の輝度を動的に変更することが可能になる。 例えばキー入力をしている時には輝度を明るめに設定し、キー入力もなくPCがアイドルモードに入ったときには輝度をダイナミックに変更するような使い方や、最高輝度を制限する使い方などが可能になる。ノートPCにおいて液晶ディスプレイはCPUに次いで電力を消費するデバイスといえるので、うまく使えば省電力の効果は大きいだろう。 なお、GeForce FX Go 5700の3D描画時の最大消費電力は8Wで、クロックが上がったにもかかわらず消費電力はGeForce FX Go 5650と変わっていないという。これは、GeForce FX Go 5650が1.18Vであったのに対して、GeForce FX Go 5700では1.1Vと駆動電圧が下げられているためだ。
●搭載製品の登場は2004年の1月頃となる見通し GeForce FX Go 5700は、単体チップ版のみ用意され、メモリが統合されたエンベデッド版は用意されていない。パッケージは31×31mmのFCPGAで、ピン配置は同社が“G2”と呼ぶピン配置になっており、基本的にはGeForce FX 5650/5600の単体版とピン互換だ。IBMファブで製造されており、製造プロセスルールは0.13μmとなっている。 また、OEMベンダとして東芝が採用を予定していることが明らかにされた。今回の発表会に東芝の関係者も出席したが、特に搭載予定製品、発表時期などに関しての言及はなかった。 NVIDIAの社長兼CEOのジェンスン・フアン氏は、「GeForce FX Go 5700はすでにOEMメーカーに対して出荷を開始しており、来年の1月には搭載製品が市場に出回ることになるだろう」との見通しを明らかにした。
□COMDEXのホームページ(英文) (2003年11月19日) [Reported by 笠原一輝]
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