液晶TVにバイオが入った?
〜ソニーの新液晶一体型PCバイオV



ソニーのバイオV。キーボードやマウスがワイヤレスなので、一見すると液晶TVのようだ

 ソニーから発売されたバイオVシリーズは、15型の液晶ディスプレイ一体型PCだ。液晶一体型PCは、ソニーが2001年に発売したバイオWの大成功を受けて活気づいており、各メーカーから製品が投入されている激戦区だ。そのバイオWの成功を引き継ぐ形で新製品として投入されたのがバイオVとなる。

 リビングに置くのがバイオWであるならば、バイオVは各個人の部屋において使う“パーソナル”向けの製品となっている。キーボードやマウスをワイヤレスにすることで、一見するとTVのような外観に仕上がっており、これまでの液晶一体型PCとは一線を画す製品に仕上がりだ。



●見た目は液晶TVそのもの、だけど中身はバイオ

 バイオVの最大の特徴は、その外観にある。写真を見てそのままズバリであるように、液晶TVの見た目そのものなのだ。バイオWでは、キーボードが本体にくっついた形になっていたのだが、バイオVではキーボードとマウスをワイヤレス化し、完全に取り払ってしまうことが可能になった。このため、キーボードとマウスを他の場所に置いて隠してしまうと、液晶TVそのものにしか見えない。

 バイオVでは、システムボードなどは液晶の裏側に、電源やハードディスクは本体とスタンドを支えるボックスに収納しており、実にコンパクトにまとまっている。奥行きは20cmしかないため、同じ15型の液晶を搭載した液晶ディスプレイと並べてみると、正面から見る限りパソコンには見えない。

 さらに、液晶の周りにアルミのパネルを貼り、液晶の下部にスピーカーを入れることで、高級感を出しており、PCらしくない仕上がりになっている点もTVらしく見せることに貢献している。

 もう1つ、バイオVをTVらしく見せることに貢献しているのが、クリアブラック液晶と呼ばれる高輝度液晶パネルを採用していることだ。クリアブラック液晶は、液晶内部の偏光板やフィルターなどを改良することで輝度を上げた明るめの液晶で、TVやビデオの再生といったアプリケーションに向いている。

 実際、市販されている液晶TVは400cd/平方mを超える輝度を実現しており、そうした液晶TVに負けないクオリティでTVを再生するには、同じように輝度を上げていく必要があるのだ。実際に、筆者の手元にあった簡易輝度計で計測してみたところ、もっとも明るい状態で414cd/平方mと計測できた。これだけ明るければ、PCとして利用する場合には目に刺さる感じがするほどの明るさで、TVを見る場合に、よりTVらしく見せることに貢献しているといっていいだろう。

 なお、輝度はキーボードにあるボタンで調節できるので、PCとして利用する場合に輝度を下げるのも簡単だ。

 実際、TVの表示品質だが、TVチューナのオプションで明るさを若干あげて、コントラストを若干下げてみたところ、かなりTVらしい画面になった。TVの表示品質によっぽどうるさい人でなければ、バイオVがPCであるということにはなかなか気づかないだろう。

キーボードとマウスを置いたところ。こうするとPCのように見えるが、キーボードとマウスをはずすと液晶TVのように見える 電源スイッチは、電源が入ると緑に光り、スタンバイモードではオレンジ色に点灯する 本体の右側面。DVD-R/RWドライブ、Type2 PCカードスロット×1、メモリースティックスロット(メモリースティックPRO対応、高速転送モードは未対応)が用意されている
本体の左側面。アンテナ、Sビデオ入力端子、コンポジット入力、ビデオオーディオ入力、USB(USB 2.0対応)×2、Ethernet、IEEE 1394(4ピン)、モデム、オーディオ入出力が用意されている 後面にはUSBポート(USB 2.0対応)×2と電源コネクタが用意されている。下のスタンドは360度回転が可能 筆者宅にあった15型の液晶ディスプレイ(NEC三菱電機ビジュアルシステムズ RDT156S)と並べてみたところ、若干バイオVの方が前にでているが、ほとんど変わりがない
奥行きを比較してみたところ。若干後ろの電源ユニット部が厚いのがわかるが、あまり大きな違いがないことがわかる 液晶全体も前後に動くようになっており、見やすい角度に調整することができる


●リモコンで簡単操作、さらにiEPGによる録画予約も可能に

 バイオVのもう1つの特徴は、ほとんどの操作をリモコンで行なえるようになっていることだ。リモコンを利用すると、本体のスタンバイ、レジュームといった基本的な作業のほか、TV(Giga Pocket)、ビデオ再生(Giga Pocketエクスプローラ)、DVD再生(PowerDVD XP)、音楽再生(SonicStage)、ホームネットワーク(VAIO Media)という主要アプリケーションをワンタッチで起動できる。

 たとえば、TVを見たければ、バイオVを起動し、“テレビ”ボタンを押す。すると、Giga Pocketが最大画面で起動し、TVとして利用できる。TVを見ている途中で録画したければ、リモコンの“録画”ボタンを押すことで簡単に録画できる。録画した番組を追っかけ再生しながら見るには、リモコンのメニューを押して録画中の番組を選択すれば、すぐに追っかけ再生が可能だ。このように、まるで液晶TV+HDDレコーダを使っているかのように、リモコンですべてを操作できるのだ。

 さらに、バイオVも含めて、秋モデルのバイオシリーズに添付されているリモコンには“番組表”というボタンが用意されており、iEPGの番組表を呼び出してリモコンだけで予約を行なうことができる。ただ、この機能を利用するには、アップデートプログラムの適用が必要で、後日Giga Pocketのサポートページで公開されるソフトウェアのインストールが必要になるので注意したい。

 このように、キーボードを全く使わなくても、TV、録画、ビデオ再生、DVD再生、音楽再生、ホームネットワークの操作がすべて可能になっている。液晶TVに、HDDレコーダがついて、DVDレコーダ、DVDプレーヤーもついている。さらに、ミュージックサーバー機能もついている上、ホームサーバーにもなってしまう。これらすべてがリモコン1つで操作できてしまう、本機はまさにそうした製品だ。

付属しているリモコン。ほとんどの操作はこのリモコンで行なえる 主要な操作部。TV、ビデオ、DVD、ミュージックなどのスイッチで、簡単にアプリケーションを切り替えて利用できる


●高画質モードで16時間、標準モードで32時間の録画が可能

 内蔵されているTVチューナは、他のバイオシリーズにも採用されているGiga Pocket Engineだ。Giga Pocket Engineには、機能の違いで、DX版とスタンダード版があるが、バイオVに搭載されているのはDXのつかないスタンダード版だ。

 バイオRZシリーズに採用されているDX版との違いは、3次元Y/C分離回路、ゴーストリダクション回路、3次元DNR回路(2次元DNR回路を搭載)、ビデオ出力端子、DV-アナログ変換ボードが省略されている点などだが、高画質にこだわるユーザーでなければ、十分なクオリティは確保されている。

 録画モードは、高画質モード、標準モード、長時間モードの3つのモードから選ぶことができる。ビットレートや録画時間などは以下のとおりだ。

 高画質標準長時間
圧縮方式MPEG-2MPEG-2MPEG-1
ビットレート8Mbps 5Mbps  1.41Mbps
解像度720×480ドット720×480ドット352×240ドット
録画時間約16時間約32時間88時間

 ハードディスクは80GBが搭載され、システムのC:ドライブに15GB、D:ドライブに60GBが標準で割り当てられている。

 ハードディスクの容量が足りなくなったら、本体右側面に内蔵されているDVD-R/RWドライブ(DVD-R/RW書き込み等倍、CD-R書き込み16倍、CD-RW書き込み8倍)を利用して、録画データを書き出してしまえばいいだろう。Giga Pocketエクスプローラのメニューから、DVD作成ソフトウェア「Click to DVD」を呼び出すだけで簡単にDVDビデオにして保存できる。

 実際にやってみると、2、3クリックだけで簡単にDVDビデオを作成することができる。難しいと思われがちなDVDビデオの作成が、2、3クリックでできてしまう点は評価していいだろう。

 ただ、1つだけ気になる点を上げるとすれば、TVチューナのアンテナや、外部ビデオの入力端子、さらにはEthernetの端子が本体の右側面に用意されていることだ。バイオVは、ディスプレイを360度回転させることができるが、回転させるたびに、これらのケーブルも一緒に回転してしまい、ややうっとうしい。

 マザーボードが液晶の裏側に入っている関係で、Ethernetポートや拡張ボードであるGiga Pocket Engineが、この場所に来てしまうという制限はわからなくもないが、ユーザーとしては、液晶TVと同じように、本体の裏や後面など、ケーブル類が目立たないような位置にコネクタがでていてほしいものだ。この点は次期モデルで改善してほしい。

アンテナ、Ethernet、ビデオ入力のケーブルは本体の左側面に装着する。従ってケーブルなどは横にはみ出る形になってしまう。前から見るとややうっとうしい感じがする。なお、製品にははみ出ないようなL字型のスマートなアンテナが付属する 付属のアンテナでもGiga Pocketで録画したファイルをブラウズして再生することが可能。まさに気分はHDDレコーダだ


●外出先からTVを見ることができるVAIO Mediaのバージョン2.6

 バイオV(に限らず秋モデルのバイオシリーズ)にプレインストールされているソフトウェアも、夏モデルに比べてバージョンアップがされている。主なものをピックアップすると、下図のようになっている。

 夏モデル秋モデル主な変更点
Click to DVD1.21.3VAIO MediaファイルからのDVDへの書き込みが可能に
VAIO Media2.52.6外部ネットワークからアクセスする際にライブTVを再生可能に
SonicStage1.51.6CDDB2に対応
SonicStage Mastering Studio1.01.1楽曲の音そのものを解析するMood Logic社のデータベースを採用し、アナログソースの曲名も自動入力
PictureGear Studio1.02.0取り込み日を記録して時系列で写真を見られるカレンダービュー機能など

 この中で注目したいのは、ホームサーバーソフトウェアのVAIO Mediaが若干バージョンアップされてバージョン2.6となっていることだ。従来のバージョン2.5では、外出先のネットワークから、VAIO MediaのサーバーがインストールされたPCにアクセスして、録画した動画、SonicStageで取り込んだ音楽、PictureGearで保存した静止画などを閲覧することができた。バージョン2.6では、それに加えて外部ネットワークからライブ放送のTVを見ることができるようになったのだ。

 バージョン2.6でライブTVやビデオを外部ネットワークから利用する場合、従来からサポートされていた、MPEG-4(ビットレートは1Mbps/512kbps/280kbps/160kbpsから選択できる)に変換して転送するという仕様に加えて、Giga Pocketが録画する高画質(MPEG-2/8Mbps)、標準(MPEG-2/5Mbps)、長時間(MPEG-1/1.41Mbps)と同じ品質で送信するというモードが追加された。現実的に8Mbpsという広帯域でアクセスできるかというのは別の議論だと思うが、そうした使い方も可能だ。

 なお、VAIO Mediaのクライアントソフトウェアは、バイオシリーズ以外の、Windowsが動作する他社製PCにインストールすることも可能だ(ただし、動作確認が行なわれているのはバイオシリーズのみ)。従って、他社製のノートPCなどを持っているユーザーでも、自己責任の範囲内ながら、インストールして利用できる。

 また、細かいところだが、SonicStageがバージョン1.6にバージョンアップされ、CDDB2に対応した。バージョン1.5まではMusicNaviのみの対応で、CD情報の取得には、アーチスト名やCD名、商品番号などを手動で入力する必要があったが、CDDB2に対応したことでほとんどの場合自動でタイトルを取得することができるようになり、使い勝手が向上している。

VAIO Mediaのメインメニュー。バージョン2.6では従来の音楽、静止画、ビデオだけでなく、ライブTVを見ることも可能になった ビデオの設定はMPEG-2やMPEG-4など、利用環境の帯域幅に合わせた設定が可能

外からTVやビデオを見るには、グローバルIPが割り当てられている環境と、固定アドレスではない場合にはDDNSが利用できる必要がある。なお、ソニーが提供するMEETサービスというDDNSサービスも用意されており、これを利用することもできる


●CPUはCeleron 2.20GHz、チップセットにはSiS651を採用

 液晶TVとしての機能がことさらに強調されているバイオVだが、もちろんPCとしても普通に使えるスペックとなっている。CPUはCeleron 2.20GHzが採用されており、メインメモリは標準で256MBだが、最大で1GBまで増設できる(その場合は、標準の256MBのモジュールを取り外す必要がある)。

 なお、メモリスロットは、液晶の裏側に用意されているが、ユーザーレベルではアクセスできないようになっている(マニュアルなどにも増設方法はふれられていない)。増設に関しては購入した販売店ないしはサポートセンターなどに依頼する必要があるので、必要であれば購入時に増設してしまうのがいいだろう。

 チップセットはSiSのSiS651。グラフィックスコントローラはSiS651に内蔵されており、標準でメインメモリのうち32MBを確保するようになっている。SiS651に内蔵されているグラフィックスチップは、SiS315相当で、最新のGPUなどには歯が立たないものの、一応の3D描画性能は備えており、一昔前の3Dゲームであればなんとか実用になるだろう。

 HDDは80GBで、TVチューナ内蔵のPCとしてはやや少ないような気がする。ただ、バイオVはマイクロソフトのOffice2003 Personalなしのモデルで16万円弱という実勢価格になると予想され、実際、ソニーの直販サイト「ソニースタイル」http://www.jp.sonystyle.com/index.htmlでは159,800円と非常に安価となっている。そのため、80GBという選択も致し方ないところなのかもしれない。なお、バイオVではUSB 2.0ポートが4つ、IEEE 1394(4ピン)のポートが1つ用意されており、足りない場合にはそれらを利用してHDDを増設するという考え方をすればいいだろう。

 なお、バイオVは3モデル用意されており、

・PCV-V10/W(白ボディ+Officeなし)
・PCV-V10B/W」(白ボディ+Office 2003 Personal付属)
・PCV-V10B/B(黒ボディ+Office 2003 Personal付属)

 がある。ソニースタイルの価格で、Officeなしのモデルが159,800円、Office付属モデルが179,800円となっており、店頭モデルの実売価格もそれに近いものになると予想されている。

 個人的には、黒いボディ色のほうがシックな感じがして気に入っているのだが、黒ボディの製品にはOfficeなしモデルは設定されていないのがやや残念だ。バイオVはTVの代わりに使う製品であるので、Officeは特に必要ないと筆者は思うので、直販専用モデルだけでも、Officeなしモデルを用意してほしかったところだ。ぜひ次期モデルでは設定してほしい。


●省スペース重視のユーザーや安価にホームサーバー機能を追加したいユーザー向け

 以上のように、バイオVはなによりもTVの機能を主眼に置いて設計された製品で、キーボードとマウスがワイヤレスというデザインも相まって、一見すると液晶TVそのものだ。それだけでなく、HDDレコーダやDVDレコーダのように使えるなど、これ1台で多くのことができるようになる。

 たとえば、15型の液晶TVは、だいたいが7万円弱といったところで、HDD/DVDレコーダがだいたい10万円ぐらいだと考えると、それだけでバイオVのOfficeなしモデルの価格である16万円弱を超えてしまう。さらにPCとしても利用することを考えれば、その付加価値の高さは称賛に値するだろう。

 ずいぶん前から、TVの将来はTV in PCなのか、PC in TVなのかという議論がよくされている。要するに、TVの機能を取り込んだパソコンが主流になるのか、それともPCの機能を取り込んだTVが主流になるのかという議論だが、今回のバイオVを見ていくと、どうもそうした議論はあまり意味がないのではないかという気がしてきた。今回のバイオVは言ってみれば、液晶TVとPCのおいしいところ取りといった製品で、その中間にあるような製品だといえるのかもしれない。

 さて、バイオVをお薦めしたいユーザーだが、TV、HDD/DVDレコーダ、ホームサーバーなどがほしいが、設置場所があまりないユーザーがまず考えられる。それに加えて、すでにリビングにはホームサーバーとなるPCなどがあって、自室や寝室などからそれにアクセスするクライアントとしても使えるTVチューナ内蔵PCがほしいユーザーにとってもバイオVは魅力的な選択肢といえるだろう。

□関連記事
【9月9日】ソニー、15型液晶一体型デスクトップ「バイオV」
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2003/0909/sony1.htm

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(2003年9月12日)

[Reported by 笠原一輝]


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