松下電器産業は、7月27日、同社のITプロダクツ事業部神戸工場で、「手づくりLet'snote工房」を開催した。 同社のノートパソコンLet'snote T2を、工場の施設を使って実際に組み立てるというもので、昨年に続いて2回目の開催。小学校4年生から高校3年生までを対象に募集、北は新潟から、南は熊本まで、選ばれた親子27組が参加した。今回は、この様子をレポートする。 ●神戸の地の利を生かして開催
松下電器の「手づくりLet'snote工房」は、日本国内での物づくりにこだわる同社ITプロダクツ事業部が、その地の利を生かして、実際に組立を体験してもらおうという、子供を対象とした夏休み向けの特別企画だ。 いまや、パソコンの生産は、海外拠点への移管が増えているが、ほぼ全量を国内で組み立てているのは松下電器など一部メーカーに限られる。神戸に一貫生産の設備を持っていることで、こうした企画の実現が可能になったともいえるだろう。 パナソニックAVCネットワークス ITプロダクツ事業部プロダクトセンター 北林正行所長は、「自社技術、自社生産にこだわる神戸工場の物づくりを直接体験してもらい、松下電器のこだわりを知ってもらうこと、そして、ふだんユーザーとの接点が少ない工場の社員が直接ユーザーと触れあう機会のひとつとして開催している」と話す。 工場の社員も休日返上で出社。日々の業務の合間を縫って、手づくり工房用の生産設備の準備や、子供向けのお楽しみ企画といった趣向を凝らしたイベント準備にも多くの時間を割いていたようだ。 昨年に続き、2回目となる今回は、夏休み期間中に2回に分けて手づくり工房を開催する予定。7月27日の1回目は350通を超える応募のなかから選ばれた27組が参加した。 今回の参加者のうち、女の子の参加が半数。「応募も約半数が女の子からだった」(ITプロダクツ事業部プロダクトセンター製造グループ工場管理 山成隆文副参事)と、意外な傾向が見られている。 ●配線処理は子供の小さな手が活躍? 午前10時からの開校式では、北林所長の挨拶のあと、パソコンの中身を簡単に説明。その後、2階の生産ラインに移動した。 同工場では、パソコンの生産に関してはセル生産方式を採用。通常は、7~8人で1台のパソコンを生産する形になっているが、今回の手づくり工房では、これらの作業をひとりで行なう形になる。
参加者は、5つのグループに分かれ、それぞれのグループに複数の社員がついて、先生役として子供たちの作業を支援。生産ラインのリーダーである須貝浩一氏が前方に設置したプロジェクターを使いながら、実際に作り方を示し、子供たちが順を追って組み立てを行なった。 「当初は、W2でやろうという話もあったが、とても小学生には組み立てられないだろう、という結論からT2にした」(山成副参事)というが、T2でも配線部分などではかなり細かい作業があった。 小型軽量としては最先端をいく機種だけに、その筐体内の凝縮度はデスクトップパソコンとは、やはり異なるレベル。今回の工房では、ボトムケース、メイン基板およびサブ基板、キーボード、ハードディスク、天板(液晶モニター)、トップパネルに部材が分かれ、これを組み立てたが、子供たちの小さい手の方がかえって組立には有利なような感じも受けた。 子供たちが苦労していたのが配線の処理。線を基板とボトムケースの間を通したり、基板の上を決められた形に縦横に這わせたりといった点が難しかったようだ。 ネジ締めに関しても、大小、形の違うドライバーを用途に合わせて使い分けし、ハードディスクのコネクタなどもしっかりと差し込むといった作業に苦労していた。 とはいえ、だんだんノートパソコンの形になってくると、子供たちの顔色も変化。最後に、自分が選んだカラーの天板とサイドカバー、そして自分の名前が入ったシールを貼り付け、世界に1台のオリジナルLet'snote T2ができあがった。この間、約1時間30分。正午過ぎには、参加者全員のLet'snote T2が完成した。 ●特別仕様の自分だけのLet'snoteが完成 今回の工房で組み立てられたLet'snote T2は、8月1日から受注を開始した特別カラーが採用され、天板部分にはPanasonicのロゴとともに、特別にLet'snoteのロゴが右上部に加えられている。そして、背面の「日本製」と書かれた部分には、あえて「Made In Kobe」と記載されたことが通常モデルとは異なる。 「神戸工場は、日本の物づくりを実践している工場であり、最先端の生産技術と、サービスという付加価値を提供できる。だからこそ、日本での生産、そして神戸での生産にこだわりたい」という北林所長の思いがこの「Made In Kobe」の文字に反映されているといえそうだ。 その後、工場の食堂での昼食、DVDドライブなどが当たるお楽しみイベントのあと、Let'snote T2の動作検証作業を実施。ここで確実に動作することを確認し、梱包作業へと移った。 梱包作業では、モニターを磨いて、筐体の指紋などをふき取り、マニュアル、付属品などとともに本体をダンボール箱に同梱。これらの作業も実際に子供たちが行なった。 梱包後は、宅配便業者に手渡すという作業まで行ない、実際にパナセンスを通じて発注した際と同様に、工場から出荷するシーンまでを演出。午後3時からの閉校式の最中に、宅配便業者がパソコンを届けにくるという形で、それぞれの参加者に自分が組み立てたパソコンが手渡された。 参加した子供たちの間からは、「わからないところは、工場の人が親切に教えてくれ、楽しく組み立てができた。自分専用のパソコンを自分で作れたことがうれしい。長い間、大切にしたい」といった声があがっていた。 参加費は12万円。特別企画であることから、通常にLet'snote T2を購入するよりも低価格であるというお得感もあるが、それ以上に、特別仕様のノートパソコンを自分で組み立てるという醍醐味は、大人でも同じ。ぜひ大人も参加してみたい、と思わせるイベントだと感じるのは筆者だけではないだろう。 大人向けになると、仕様変更の要望が多くなり、工場側の準備が大変になるという側面があるかもしれないが、ぜひとも実現して欲しいものだ。 なお、今年第2回目は、8月30日に開催される予定。受付は8月6日必着でハガキで申し込む形になる。 詳細は、下記URLを参照していただきたい。 □手づくりLet'snote工房 ●Let'snote T2が完成するまで
□関連記事 (2003年8月4日)
[Text by 大河原克行]
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