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ソニーコンピュータサイエンス研究所を一般公開
~開発中のインターフェイスなどを多数デモ

3Dインターフェイス「VelvetPath」のデモ

会期:6月13日~14日

入場料:無料



CSLが入居するビル

 株式会社ソニーコンピュータサイエンス研究所(CSL)は13日、都内の同研究所において「オープンハウス2003」を開催し、研究成果を公開した。同イベントは14日も行なわれているが、登録制となっており一般の入場は招待状が必要。開催時間は15:00~18:00。

【追記】
記事初出時、「一般の入場も可」と記載しましたが、入場には招待状が必要です。



●会長はAIBOの父、クオリア研究者も所属

 CSLはその名のとおり、コンピュータサイエンスを研究する機関として'88年に設立された。CSLの成果はオブジェクト指向OS「Aperios」などがある。現在ではその研究範囲を、コンピュータサイエンスから、脳科学、システム生物学などにまで広げている。

 CSLの会長は、「AIBOの父」として知られるソニーの土井利忠 執行役員上席常務が務める。また、脳科学を研究する茂木健一郎氏が所属することでも知られている。同氏の研究は、先日発表された新ブランド「QUALIA」を、出井伸之会長兼CEOがインスパイアする要因となった。

 CSLは基礎研究を行なう「基盤研究室」、ユーザーインターフェイスを研究する「インタラクションラボラトリー」、脳科学や芸術工学を扱う「CSL-Paris」の3つの研究室で構成される。

 オープンハウスはCSLの研究成果を広く公開するイベントで、研究者本人が研究所内に各々のブースを構え、研究成果を発表するパネルを解説したり、デモを披露しており、学園祭のような雰囲気をかもし出している。ソニーグループ社員、招待された他研究機関の関係者、報道関係者の見学日として設定された13日は、所属を超えた研究者間でのコミュニケーションが活発に行なわれていた。

 ここでは、コンシューマーに近い分野を扱うインタラクションラボラトリーの発表を中心にレポートする。

CSLオープンハウスの受付 混雑するインタラクションラボラトリーのフロア

●未来のインターフェイスが集結

 インタラクションラボラトリーは1つの階を独占して、研究中の奇抜なインターフェイスを多数展示している。そのほとんどについて実際に動作するところを見ることができ、見学者が体験できるものもある。さながら新技術を使ったテーマパークで、どの展示も多くの注目を集めており、展示フロアへの入場制限がかかるほどだった。

 中でももっとも派手なのが、「VelvetPath」と名付けられた「TouchEngine:Interactive 3D CG for Creation and Communication」。一言で言ってしまえばペンオペレーションによる画像ブラウザで、ペンの筆跡や太さなどで3次元空間に画像を簡単に配置できる仕組みだが、デモではプロジェクタで壁に大きく投影された3Dインターフェイスを操作しており、映画「マイノリティ・レポート」でトム・クルーズが操作していた3Dインターフェイスを思わせた。画像の配置が容易になることで、画像のブラウズだけでなく、プレゼンテーションなど様々な目的に柔軟に対応できるインターフェイスとなっている。

「VelvetPath」のデモ。ペンで書いた緑の軌跡どおりに画像が並ぶ(写真左、中)。このページの冒頭の画像では「うに」という文字の形に画像を並べている。特定の画像を拡大するなどの操作も容易。3Dオブジェクトにテクスチャを貼るなどの操作も簡単(写真右)

 また、“感触を再現できるタッチパネル”である「Tactile Interfaces for Future Computing Appliances」も注目を集めていた。タクタイル・インターフェイスは、タッチパネルの周囲に圧電アクチュエータを装備し、タッチパネル上のボタンを押したり、タッチパネルに表示されたテクスチャをなぞると、その感触を振動や音で生成し、クリック感などのフィードバックに乏しいタッチパネルインターフェイスの欠点を補う技術。

 同技術は2002年のプライベートイベント「Sony Dream World 2002」でも展示されていたが、今回はソニーのクリエやバイオに実装され、より実用的な形で公開されていた。すでに一部で実用化されており、コンシューマ製品への投入も予定されている。

タッチした感触を生成するタクタイル・インターフェイス。ボタンをタッチすると、ボタンがへこんだようにアニメーションし、クリック音が鳴り、指にクリック感が伝わる ペンでテクスチャをなぞると、テクスチャの感触がペンに伝わる。感触はタッチパネルの四隅にあるアクチュエータで生成される

 PC上のファイルを時系列でブラウズする「Time-Machine Computing」や、デジタルカメラとスキャナの複合装置による画像編集装置「DataDesk:an augmented desk system」は、PCユーザーにも身近に感じられる展示だ。このほか、机に埋め込んだ銅線で静電容量を測定し、机上の手や指の位置を検知する「SmartSkin:interactions for the multiple-finger/hand input device」は、ゲームやデータのブラウズへの応用が楽しみなインターフェイスだ。

時系列でファイルをブラウズするインターフェイス「Time-Machine Computing」。時間軸に沿ってファイルが配置されるほか、使用頻度の高いファイルほど明るく表示されるなどの機能を備える 「DataDesk」。写真上のユニットにデジカメとプロジェクタが内蔵されている。下に置いた原稿を撮影し、その画像をデスク上にプロジェクタで表示。表示された画像にさらに手書き文字などを書込み、再度撮影し、PCに取り込む、といった作業が容易にできる。取り込んだ画像はPC上にサムネール表示されているが、この表示を複数のPCでシームレス共有できるコラボレーション機能も備える
「SmartSkin」。机の下にエナメル線のメッシュ(写真で青い線が引かれているところ)があり、机上の静電容量を測定、机上の手の位置を検知する。デモでは手を置いた部分のドットを大きくしたり(写真左)、机に投影されたボールを手で動かすゲーム(写真右)を表示していた。またメッシュの間隔を1cmにし、解像度を上げたデモも見ることができる 写真左の研究者の手の中には、LinuxベースのIPフォンがある。この端末は単なるIPフォンでなく、写真中央の端末との通信機能を備えるが、各種通信の切替は、端末同士を近づけるなど、直感的な操作で可能になっている

●一見地味な基盤研究室だが

「DNS運用健全化」の展示では、任意のドメインのDNS設定をその場でチェックしてもらえる。画面はimpress.co.jpをチェックしたところ。きちんと設定されていた。

 基盤研究室とCSL-Parisはインタラクションラボラトリーの1つ上の階を分け合っている。基礎研究らしく解説パネルを中心とした地味な構成で、内容も高度に専門的なものが多い。また、CSL-Parisの展示はすべて英語で解説されており、ややとっつきにくいところもあるかもしれない。が、研究者に質問することができるし、休憩所も用意されているので、時間をかけて理解すれば興味深い知識が得られるだろう。

 中でも「ロボットによる言語獲得」では人間とロボットが言語でコミュニケーションする様子が実際に披露されるほか、研究者自身により日本語で内容が解説される。

 また「DNS運用健全化」の展示では、インターネットに欠かせないDNS(Domain Name System)の設定チェックツールをデモ。到達できないドメインが、公的な組織が多いはずのne.jpで12.8%、gr.jpで11.2%もあるなど、意外と杜撰に管理されている実態を見ることができ、驚くだろう。

□ソニーコンピュータサイエンス研究所のホームページ
http://www.csl.sony.co.jp/

(2003年6月13日)

[Reported by tanak-sh@impress.co.jp]


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