元麻布春男の週刊PCホットライン

メインメモリが買いにくくなった理由【考察編】



●相性や互換性について考えてみる

 テストを振り返って率直に思うのは、メモリが買いにくい時代になったな、ということである。メモリとシステム/マザーボード間の互換性が実に微妙になっているからだ。メモリとシステム/マザーボード間の互換性は、おおむね次の4段階あると思われる。

1.システムが起動しない
2.システムは起動するが動作が不安定
3.システムは安定して動作するが本来の性能が発揮されない
4.システムは安定稼動し、本来の性能が得られる

 幸い、今回のテストにおいて1に遭遇することはなかったが、市場で売られているマザーボードとメモリの組み合わせによっては、こういうこともあるようだ。また、起動したと思っても、OSのインストール中にエラーが出る(ファイルが読み出せない、など)こともある。こうした場合、再試行でファイルを読もうとせずに、素直にメモリのスロット位置を変えたり、メモリの構成そのものを変えることをお勧めする。

 いずれにしても1や2といった明らかな互換性問題は、まだしも対策がたてやすい。最近、一部の販売店などが実施している相性保険(相性保証)でも、カバーされるハズだ。しかし、3のように組み合わせによって生じた性能低下の場合、判断は微妙だろう。何せ、組み合わせ的には問題のないメモリモジュールでも、インストール方法を間違うと、本来の性能が発揮されないからだ。これで文句を言われては、販売店もたまらないだろう。

 ユーザーとしては、正しいメモリの実装法を理解した上で、自分の必要に応じたメモリを購入したいところだ。しかし、それがなかなか難しい。現在、秋葉原などで流通しているメモリは、次の5種類に分類される。

1.PCベンダが自社のシステムに対して提供する純正オプションとしてのメモリ製品
2.ベンダ保証があり、DIMMのスペックはベンダのWebサイトなどで調べられる製品
3.ベンダ保証はないが、DIMMの製造元はわかっておりスペックはDIMM製造元のWebサイトなどで調べられる製品
4.ベンダ保証はなく、DIMMの製造元も不明だが、使っているチップのスペックはチップ製造元のWebサイトなどで調べられる製品
5.ベンダ保証はなく、DIMMの製造元、チップの製造元とも不明なため、スペックは販売時の表示を信じて買うしかない製品

 最近1はあまり見かけなくなったが、サーバやワークステーションでは今も主流となっている。また、やや変則的かもしれないが、直販系のPCベンダが提供するメモリもこの範疇に入る。2は、いわゆるメーカー製、あるいはリテールパッケージと呼ばれるもので、保証書と共に化粧箱に収められた形で流通している。メルコやアイ・オー・データ機器などがよく知られた存在だ。

 これに対して3以下は、いわゆるバルク品扱いとして売られているメモリである。基本的にメモリベンダの保証はなく、販売店での初期不良交換が提供されるくらい。したがって、不安を感じたら相性保険などの購入時オプションをつけることを勧めたい。ただ、3に関しては製造元がわかっているため、DIMM、DRAMチップともにスペックはわかる(購入後にしかわからないこともある)。また、Intelによるバリデーション結果などを確認することも可能だ。

 4はメモリチップを購入したサードパーティが製造したモジュールで、チップのスペックはわかっても、モジュールとしての仕様はハッキリしないことが多い。したがって、チップとしてIntelなどによるバリデーションをパスしたものであっても、メモリモジュールとして互換性が保証されるわけではない点に注意が必要だ。

 5になると、販売店を信じて買うしかなく、可能な限り相性保険などをかけておきたい。だいたい価格は1〜5の順番で、現在3と5で最大2倍ほど価格が違う(モジュールベンダのブランド力などにより異なるが)から、相性保険をかけてもはるかに安いハズだ。

 さて、ここで問題なのは、PCベンダが自社製PC用に提供する1は別として(実はこれも本当はハッキリとはしないのだが)、2以下のメモリの場合、デュアルチャネルモードやダイナミックページングモードの可否がわかるほどの情報を踏まえて購入することが難しい、ということだ。たとえば、今回用いた4種のメモリのうち、直接購入したCrucialのみが2で、残りは3に該当する。だが、いずれのメモリも購入時にスペックを指定して購入できたわけではないし、型番を指定して同じものが買える保証もない。

 今回用いたCrucialの場合、Web上のショッピングサイトで調べられる型番はCT3264Z40B.8Tというものだが、実際に届いたメモリは親会社であるMicron TechnologyのMT8VDDT3264AG-40BC4というものだった。なぜ2つの型番を設けているのかというと、おそらくCT3264Z40B.8Tを購入しても、MT8VDDT3264AG-40BC4が送られてくるとは限らないからだろう。つまり筆者が次にCT3264Z40B.8Tを注文した場合、MT8VDDT3264AG-40BC4に相当するメモリモジュールがくるだけで、必ずしもピッタリ同じものとは限らない。以前はこれでも良かったのだが、性能に影響を及ぼすダイナミックページングモードやデュアルチャネルモードの可否、という問題が絡んでくると、相当品では満足できない可能性が出てくる。


●これからのメモリ購入

 このメモリの同一性の問題について、国内大手の1社であるメルコにたずねてみた。同社はDD400という型番でPC3200 DIMMの販売を行なっている。得られた回答によると、同社では同じ型番であるからといって、バンク構成などの細かな仕様まで同一である保証はない、ということであった。通常、同一の型番でも複数の仕様(バンク構成、チップ構成が異なるもの)が存在する。その理由は様々だが、1つの例としてビットクロスの問題が挙げられている。すなわちDRAM製造プロセスの進歩にともない、チップ1個あたりの大容量化により、同じ容量のモジュールを少ないチップ数で構成した方が安価になる、ということだ。構成が変わるたびに型番を変えることも考えられなくはないが、おそらくこれをやると在庫管理、販売管理が煩雑になりすぎて、メーカーばかりか販売店も手を焼くことになるだろう。そのツケは価格の上昇という形でユーザーに降りかかってくる。

 ただ、ダイナミックページングモードやデュアルチャネルモードによる性能向上についてはメーカーの方でも認識しており、それが2枚組みのメモリパッケージ(メルコでいえばDD400×2)の提供につながっている。こうした製品であれば、2枚のメモリは細部まで同一であることが保証される。それでも2組のDD400×2が同一である保証はないが、需要があるなら4枚組パッケージの製品化(DD400×4?)が検討されるだろう。他のメモリメーカーも、メルコと同様な2枚組みのパッケージを製品化していることからして、おおむね同じような事情だと思われる。

 3のメモリになると、購入時にユーザーが自分の目で確認するしかない。購入前にスペックが知りたければ、ショーケースの中のメモリをジックリ見て、Webで調べて、もう1回ショップに戻って買う、ということになるだろうが、戻ったときに同じメモリが残っている保証はない。この前売っていたXXXXという型番のメモリ、といっても、同じものが再び入荷する保証もない。メモリチップメーカー純正のDIMMを型番を指定して、長期に渡って調達できるのは大口契約しているPCベンダくらいのものだ。

 結局デュアルチャネル時代になって、性能を気にするユーザーは、メモリを買う際にこれまで以上に注意しなければならないことになったようだ。メモリに関する規格化が進んでも、デュアルチャネルの組み合わせとなると、規格では到底カバーできない。また場合によっては、購入しようとしているメモリが、今使っているシステムで動くというだけでなく、将来の増設を見越して購入する必要さえでてきそうだ。もちろん、選択肢としては、メモリの増設などしない(最初に十分な容量のメモリを購入する)、というのも1つの有力だろうし、外部AGPビデオカードを使うから、多少のメモリ性能差には目をつぶる、というのも1つの見識かもしれない。実は筆者は、メモリの増設などしない派? である。

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【6月11日】【元麻布】メインメモリが買いにくくなった理由【状況編】
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2003/0611/hot264.htm
【6月12日】【元麻布】メインメモリが買いにくくなった理由【ベンチマーク実験編】
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2003/0612/hot265.htm

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(2003年6月13日)

[Text by 元麻布春男]


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