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PCデポ、4つの事業の柱を確立
~ソーテックなどとの低価格PC提携戦略は出足上々

野島隆久社長

5月29日 発表



 神奈川県を中心に、パソコンショップの専門店展開を行なっている株式会社ピーシーデポコーポレーション(PCデポ)は29日、2003年3月期連結決算を発表した。

 売上高は前年比25.7%増の375億9,800万円、営業利益は22.5%増の5億5,200万円、経常利益は18%増の7億3,300万円、当期純利益は7.9%増の3億4,700万円となった。決算月を変更したことで、今期は11カ月11日間での決算となっており、経常利益では約7%ほどの影響があったと試算している。

 前年実績に比べて連結業績は大幅に向上しているが、その背景には、昨年7月にPCデポのフランチャイズ展開を行なう株式会社ピーシーリテールを子会社化したことが大きく影響している。そのため、前年度は大きな差がなかった連結と単独の業績に大きな差がある。

 単独決算では、売上高は前年比11.1%減の256億5,900万円、営業利益は12.5%減の2億7,200万円、経常利益は0.6%減の4億9,900万円、当期純利益は16%増の2億5,800万円となった。中でも、既存店舗の売上げ実績は前年比22%減という大幅なマイナスとなっている。


●収益確保に貢献した4つの柱

 だが、野島隆久社長は、「昨年度1年間の取り組みによって、収益構造を切り替えることに成功した。4つの事業の柱を創出したことで、安定した事業を推進できる体質を確立できた。また、パソコン総合専門店として、他社との差別化が明確にできるようになった」という点を強調する。

 野島社長がいう4つの柱とは、1)商品販売、2)中古販売、3)ブロードバンド、4)技術サービス。各事業が、それぞれに収益確保に貢献できる体制が出来始めたのだという。

商品販売戦略

 「商品販売」という点では、主要メーカー製パソコンを核にしたパソコン+プリンタ+インターネット設定をセットとした「おまかせセット」を初心者向けに用意する一方、ソーテックと提携してダイレクト販売を中心に展開している「VALUE UPシリーズ」、マウスコンピュータとの提携により独自製品として用意した「ADVANCEシリーズ」といったマニア向け商品を強化。これにより初心者からマニアまでの幅広い層を獲得する体制が整ったという。

 野島社長は、「3月から発売したVALUE UPシリーズは、4月には35店舗で2,000台を超える販売実績となった。5月に発売したADVANCEシリーズも組立PCとして評価を得ている。周辺機器に関しても、初心者向けの製品から、マニア向けのパーツまでフルラインで取り揃えた。パーツはロードサイド店としてはナンバーワンの品揃えだと自負しているし、1個の店で初心者からマニアまで対応できる製品を揃えたのはPCデポだけ」と胸を張る。

 3月以降、単月の販売金額は増加傾向にあり、「主要パソコンメーカー製品の売り上げが落ち込まずに、VALUE UPシリーズ、ADVANCEシリーズの売り上げが加わった状況」だという。

 「中古販売」に関しては、買い取りから再生、販売までを店頭一貫して行なう体制づくりがほぼできあがったとした。買い取りおよび再生については、35店舗全店で実施。販売に関しては、25店舗が行なえる体制となった。今後の新規出店店舗には、必ず中古パソコン販売機能を盛り込む考え。

 ブロードバンドでは、ヤフー!BBのADSLサービスと、驚速ADSL、ウイルススキャンなどをセットにしたADSL導入パックをわずか1円という価格で提供したほか、@FreeDおよびビッグローブのサービス、驚速、ウイルススキャンをセットにしたモパイル導入パックを2,970円(Air"H版は4,970円)で提供するなど、初心者でも低価格ですぐにネットワーク環境を利用できるような仕組みを提供している。

 また、技術サービスでは、1)パソコン購入者に対する6カ月、12カ月のパソコン無料点検、2)パソコン5年間保証、3)他店購入品修理サービスの3本柱を用意している。

 「月間200台の修理を行なう大型店舗の場合、160台が他店で購入したお客様という例もある。無料で点検を行なっても、ハード、ソフトの機能強化を行ないたいという要望があり、無料点検をきっかけにした機器販売平均単価が12,000円程度、サービス料も平均2,500円程度となっており、サービスのプロフィット化を実現している」という。

 先にも触れたように、既存店舗では売上高では、22%減と大幅な落ち込みだが、経常利益では5%減に留まっているのも、こうした中古販売、技術サービスおよび独自色を持ったパソコン製品の販売により収益面での下支えがあるからだ。

 「昨年度は、売り上げを維持しようと思ったら無理な価格競争に参入するしかなかった。だが、あえてこれに参入せず、安定した収益を生み出す体質へと転換を図った。今年度は、こうした体制をベースとして、パソコン販売で攻勢をかけたい」とする。

中古販売戦略 技術サービス戦略


●PCとAVによる複合店舗「EXPO DIGITAL CENTER」を積極展開

 2004年3月期の連結業績予測は、売上高で420億円、経常利益で8億5,000万円、当期純利益は3億5,000万円と増収増益を見込む。

 子会社化したピーシーリーテルを今年度は完全に合併することで20億円の効果があるものの、既存店舗の売り上げが前年比5%減で推移すると予測し20億円のマイナス、また年度内に既存店舗を5店舗閉鎖することで33億円のマイナスを見込む。

出店戦略

 一方、新規出店としては、下期にPCデポの新店舗を3店舗オープン、これで23億円の売上げ効果。PCとAVによる複合店舗として昨年11月に第1号店を埼玉県熊谷にオープンした「EXPO DIGITAL CENTER」を6月に千葉県富里に、7月に千葉県浦安にそれぞれオープンし、先行した熊谷をあわせて年間54億円の売り上げ効果を見込む。これによって、トータル44億円の売り上げ増を予定している。

 閉鎖する店舗のうち、5月に神奈川県の鶴ヶ峰店、金沢文庫店をすでに閉鎖。7月には市川妙典店を閉鎖する。さらに、9月に1店舗、年内にもう1店舗の閉鎖を予定している。

 PCデポに関しては、半径5kmに50万人の商圏があることを出店条件とし、EXPO DIGITAL CENTERは、半径15Kmに30万人の商圏があることを見込む。1店舗あたりの売り上げ規模は、PCデポで年間15億円程度、EXPO DIGITAL CENTERで年間23~28億円を予定している。

 「PCデポの場合は、都市圏における売り場面積300坪前後、100台の駐車場の店舗づくりが基本路線だが、これらは大手家電量販店の標準からは小さく、物件が余っている。また、EXPO DIGITAL CENTERは、ローカルエリアに700~1,000坪の売り場面積を標準とするが、これも郊外のホームセンターなどから見ると小さいサイズで物件が供給過剰な状態となっている。居抜き(かつて別の店舗が出店していた場所に、他店が撤退後、入居し新店舗を構えること)をうまく利用することで、5分の1以下の費用で出店できる」というメリットも活用する考え。

 また、野島社長は、「すでに複数の大型家電量販店が出店し、1~2年経過したエリアだと、購入後のアフターフォローに困っているユーザーが多いという傾向がある。そのタイミングで、かゆいところに手が届くサービスを提供する形で新規出店すれば、量販店との無謀な低価格競争をせずに収益拡大が見込める」と、新規出店戦略における基本的な考え方も明らかにした。

 課題となるのは、新業態となるEXPO DIGITAL CENTERの成否だろう。野島社長も、「まだAV製品だけで売り上げを確保できる段階にはなく、パソコン販売に依存している」と明かす。今後、新規出店計画では、PCデポと同数のEXPO DIGITAL CENTERを出店する計画だけに、独立した形で収益を確保できる体制を早期に確立できるかが注目される。

□ピーシーデポコーポレーションのホームページ
http://www.pcdepot.co.jp/
□ニュースリリース(PDF)
http://www.pcdepot.co.jp/company/ir/press/pdf/renketsu1503q4.pdf

(2003年5月30日)

[Reported by 大河原克行]


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