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NEC、2003年3月期連結決算発表
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NEC 金杉明信社長 |
4月24日発表
NECの金杉明信社長は、2003年3月期連結決算発表とともに、2003年度の経営方針を明らかにした。
金杉社長体制となって臨む新年度では、景気回復の先行き不透明感、IT業界の厳しい環境が継続していること、さらに、同社の株主資本比率が低いことによるバランスシートの改善に課題があることを踏まえた上で、成長事業のさらなる拡大や課題事業の改善などを骨子にした経営方針となった。
金杉社長は、具体的な経営方針として、1)主力事業強化による安定収益の確保、2)課題事業改善によるダウンサイドリスクの排除、3)健全な財務構造の再構築、4)IT・NW統合ソリューションによる成長戦略の確立、の4点を掲げた。
主力事業としては、ITソリューション事業による収益拡大を掲げ、サービス、ソフト領域における成長をベースとすることを示した。「とくに、大規模オープンシステムで先行した実績を生かし、他社との差別化を図りたい」(金杉社長)とした。
2002年度におけるITソリューション事業は前年比5.7%減の2兆826億円、営業利益は1,058億円となり減収増益。
だが、SIサービス/ソフトウェアの売上高は前年4%増の5,417億円となり、営業利益率は8%を獲得するなど牽引役となっている。同分野は引き続き増収増益を目指し、2003年度には、10%の営業利益率を狙うという。
そのほかのITソリューション事業では、2002年度実績で、インターネットサービス/サポートサービスが3,503億円、サーバー/ストレージ/ワークステーションが3,631億円、パーソナルプロダクトが6,834億円、その他ハードウェアが1,441億円となっており、ハードウェアに関しては、投資の手控えとPCサーバーを中心として価格の下落が激しいことから、状況は厳しいとしながらも、「パソコンでは大手企業中心にリプレース需要が期待でき、海外需要の増加、IT投資促進減税による追い風もある」(金杉社長)として、パソコン需要の拡大を期待していることを示した。
パソコンの2002年度の出荷実績は前年比7%減の260万台とマイナス成長だったが、2003年度は6%増の275万台を目指す。
SI事業が牽引役に | PC事業はV字回復 |
だが、価格下落が激しいPCサーバーに関しては、「海外生産比率を高め、新たな流通経路を活用するなどの効果によって価格低下を実現している。しかし、より付加価値の高い方向へシフトしたいと考えており、IA64によるハイエンド領域への取り組み、フォールトトレラントシステムによる展開、地球シミュレータで培ったノウハウを生かすといった点を他社との差別化にしたい」と話した。
ネットワークソリューション事業では、ブロードバンドアクセスの急速な普及、企業向けネットワーク関連市場の活性化、地上波デジタル放送の開始といったいくつかの明るい要因があるが、それ以上に同社が期待しているのが携帯電話事業。ネットワーク事業の成長の鍵を担うものと位置づけている。
とくに、海外事業の成長を見込んでおり、海外向けは2002年度の実績に対して、2003年度は5倍の売上げを目指す。「とくに上期に関しては、海外における2.5G、3Gの立ち上がり時期でもあり、前年同期比2倍の伸びを見込んでいる。年間の売り上げ構成比も3分の1程度まで引き上げることになる」とした。
具体的には、iモードの海外展開による2.5G事業において、中国市場へのハイエンド機の投入、欧州市場への本格展開を計画。また、3G事業においては、ハチソン向けの事業を皮切りに、「First&Best」をキャッチフレーズに最先端端末の継続投入を図るという。
「第1四半期は、高い立ち上がりとなっており、中国、欧州だけで3~4倍の成長になるだろう」とした。
また、国内市場に関しては、カメラ付き携帯電話の比重があがっており、「今年はカメラ付き携帯電話がほぼ100%となる。海外でも70%程度を占めるだろう」と予測している。
課題事業としては、パソコンおよびデバイス関連事業があがっている。
昨年来、懸念材料となっていたパソコン事業の黒字化については、「今年度はブレイクイーブンのところまできた。昨年秋に投入した製品によって、商品力が回復し、シェアもV字回復している。2003年度は年間を通じて黒字貢献することになる」(NEC・金杉明信社長)として、2003年度は黒字回復が確実なことを強調した。
パソコン事業に関しては、今年7月にNECカスタマックスとNECカスタムテクニカの合併によって、商品企画力、マーケティング力の結集、顧客リレーション体制の再構築、統合による効率の徹底追求を図るほか、全世界規模での資材調達の推進、部品の共通化、調達先の集中化などをすすめる。また、パソコン事業とBIGLOBE事業の融合による新たな製品、サービスの提供を図ることを明らかにした。
一方、デバイス関連事業では、DRAM事業、LCD事業、PDP事業の3つの事業で2002年度に300億円程度の赤字を計上しており、これを2003年度に回復させるのが課題。
DRAM事業では日立製作所との合弁によるエルピーダメモリに移管後、自立化を推進しており、300mmを自主工場にて立ち上げるなど、高付加価値ビジネスへのシフトを進める、一方、LCD事業においては、産業系マーケットへのフォーカスによる事業の集中とSCMによるコスト削減を進める。また、PDP事業に関しては、今年1月以降、歩留まりが急速に向上しており、安定生産および安定供給体制が確立できること、業界ナンバーワンとなる明所コントラスト、ノイズの少ない鮮明な画像などの技術的優位性を発揮して、業績改善を目指す。
「3つの事業をあわせてブレイクイーブンに持っていきたい」(金杉社長)としている。
さらに、回復の目処がついたパソコン、デバイス事業以外についても、全社業績モニター制度を導入して、成長率、利益率、キャッシュフローの3つの指標で各事業をランク分けして、「課題事業検討ゾーン」にある事業に関して、撤退、再編を検討することが可能な体制をつくる。
大きな課題となっている財務体質の強化については、株主資本の拡大を目指して、主力事業の強化、課題事業の改善、ノンコア事業の売却によって利益を創出し、株主資本を引き上げる考えだ。
NECでは、こうした施策を通じて、2003年度の売上げ見通しとして、前年比2%増の4兆8,000億円、営業損益は1,800億円、当期純損失は300億円の黒字を見込んでいる。
金杉社長は、3月28日の社長就任会見の際に、2003年度は利益倍増を目指すとして、営業利益2,000億円を目標とすることを掲げていたが、1,800億円の目標については、ややトーンダウンという感じもある。だが、金杉社長は、「今後のリスクなどを勘案した数字であり、事業遂行目標としては2,000億円を目指す」と強気の姿勢を見せた。
□NECのホームページ
http://www.nec.co.jp/
□ニュースリリース
http://www.nec.co.jp/press/ja/0304/2401.html
□関連記事
【3月28日】NEC、金杉新社長体制が本日付けでスタート
~利益倍増、社員の意識改革目指す
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2003/0328/nec.htm
(2003年4月25日)
[Reported by 大河原克行]
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