NVIDIAのGeForce FX 5800 Ultraは、CineFXアーキテクチャを採用した最新ビデオチップである。以前に、GeForce FX 5800 Ultraリファレンスカードのレビューを行なったが、リファレンスカードとは異なる冷却機構を採用した注目の新製品リードテック「WinFast A300 Ultra TD MyVIVO」が登場した。 リファレンスカードの冷却機構「FX Flow」は、2スロット分を占有する巨大なもので、騒音もかなりうるさかった。また、リファレンスカードの時に比べて、ドライバのバージョンも上がっており、性能も向上していることが考えられる。そこで、WinFast A300 Ultra TD MyVIVOの静音性やパフォーマンスをレビューしていきたい。
GeForce FX 5800 Ultraは、CineFXアーキテクチャを採用したGeForce FXシリーズの中でも、最上位に位置するモデルである。GeForce FX 5800 Ultraについては、以前の記事(http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2003/0222/hotrev199.htm)も参考にしていただきたいが、最上位モデルだけあって、コアクロックは500MHzと高く、メモリクロックも1GHzに達する。そのため発熱も大きく、リファレンスカードでは、FX Flowと呼ばれる冷却機構が採用されていた。 FX Flowは、銅製の大型ヒートシンクとシロッコタイプのファン、プラスチック製カバーから構成されており、高い冷却性能を実現する。その代わり、サイズが大きく、スロット2つ分を占有する。また、ファン回転時の騒音もかなり大きい。 GeForce FX 5800 Ultra搭載ビデオカードは、供給が潤沢とはいえないものの、いくつかの製品が市場に登場している。そのほとんどは、リファレンスカードと同じFX Flowを採用しているが、Leadtek ResearchのWinFast A300 Ultra TD MyVIVOは、FX Flowではなく、独自の「WinFast Twin Turbo II」と呼ばれる冷却機構を採用していることが特徴だ。 WinFast Twin Turbo IIは、2つのファンとカード全体を取り囲むヒートシンクおよびスチール製のフレームから構成されている。2つのファンは、左側(ブラケットに近い側)が吸気、右側が排気となっており、効率よくビデオチップやビデオメモリの熱を排熱できる仕組みになっている。 WinFast A300 Ultra TD MyVIVOは、FX Flowを採用した他のGeForce FX 5800 Ultra搭載カードと違って、ブラケット部分は、AGPスロット1スロット分しか占有しない。ただし、下の写真を見ればわかるように、ファングリル部分が斜めに出っ張っているため、隣のPCIスロットにカードを装着することはほぼ不可能である(マザーボードの内部コネクタからI/Oを引き出すためのブラケット類なら装着できる)。 また、消費電力が大きいため、AGPスロットからの電力供給では足りず、周辺機器用電源コネクタにも電源を供給してやらないと、正しく動作しない(起動はするが、動作クロックが自動的に下げられる)点はリファレンスカードと同様だ。
次に、パフォーマンスを計測してみた。比較対照用として用意したのは、GeForce 4 Ti 4600搭載ビデオカードとRADEON 9700 PRO搭載ビデオカード。テスト環境は以下の通りである(なお、前回リファレンスカードをレビューしたときとは、CPUが異なっているため、値を直接比較することはできない)。 WinFast A300 Ultra TD MyVIVOの付属CD-ROMに収録されていたビデオドライバのバージョンは6.14.01.4300であったが、NVIDIAのWebサイトでは、より新しいバージョンである6.14.01.4345が公開されているので、両方のドライバで計測を行なうことにした。 GeForce4 Ti 4600のビデオドライバのバージョンは6.13.10.4345とし、RADEON 9700 PROのビデオドライバのバージョンは、6.14.01.6307(CATALYST 3.2)である。描画パフォーマンスにかかわるプロパティの設定に関しては、基本的にデフォルトのままであり、FSAAの設定のみを変更している。
ベンチマークテストとしては、DirectX 8環境でのパフォーマンスを計測する3DMark2001 SEとUnreal Tournament 2003、Codecreatures Benchmark Pro、OpenGL環境でのパフォーマンスを計測するQuake III Arena、Direct X9環境でのパフォーマンスを計測する3DMark03を用いた。
そこで、3DMark03の個別テストの結果を比べてみることにした。結果は表にまとめた通りである。ちなみに、総合値である3DMarksのスコアは、GT1~4までの結果から算出され、それ以外のFill RateやVertex Shader、Pixel Shader 2.0などの値は、3DMarksには反映されない。 まず、GT1~4については、最新ドライバで全体的にスコアは上がっているが、特にその差が大きいのが、GT4である。付属CD-ROMのドライバではわずか16fpsであったのに対し、最新ドライバでは36.6fpsと約2.3倍にも向上している。 また、それ以外のテスト結果を見てみると、Fill Rateはほとんどスコアが上がっていないのに対し、Vertex Shaderは約1.2倍に、Ragtrollは約1.35倍に向上している。また、Pixel Shader 2.0については、約3.4倍にもスコアが向上している。 つまり、最新ドライバでは、Pixel Shader 2.0周りのパフォーマンスが大きく改善されているのだ。GT4は、GT1~4の中で、唯一Pixel Shader 2.0を利用した描画が含まれるテストであり、GT4のスコアが向上したのも、Pixel Shader 2.0の性能が向上したためであろう。 【3DMark03の詳細結果】
【テスト環境】
WinFast A300 Ultra TD MyVIVOは、独自の冷却機構を採用しているということで、温度と騒音が気になるところであろう。 GeForce FX 5800 Ultraでは、詳細プロパティに「温度設定」という項目が追加されている(付属CD-ROMのドライバでも最新ドライバでも温度設定の項目が表示されたが、前回のリファレンスカードに付属していたドライバでは表示されていなかった)。 温度設定では、GPUコア温度と周辺温度という2種類の温度が表示される。周辺温度は、ビデオチップの周りの基板かビデオメモリの温度を示しているのだと思われる。なお、コア減速しきい値という値が表示されているが、この数値は「140」のままで、変更することはできなかった。 また、デジタル温度計(エー・アンド・デイのAD-5624)を用いて、ヒートシンクの表面温度もあわせて計測してみることにした。計測は、ケースに入れず、パーツをむき出しのまま行なった。また、計測時の室温は約19℃である。 FX Flowを採用したリファレンスカードと同様に、WinFast A300 Ultra TD MyVIVOでも、デスクトップ画面を表示している状態や2D描画しか利用しないアプリケーション実行時においては、基本的にファンは停止している。そこでWindows起動後、特にアプリケーションを実行せずに、30分間放置しておいた状態で、ファンが装着されている側の中央部の表面温度を計測したところ、約53℃とかなり高くなっていた。 また、裏面中央部の温度は約41℃であった。その状態で、詳細プロパティの温度設定の項目を開くと、GPUコア温度は68℃、周辺温度は59℃と表示されていた。フレームの表面を触っても、かなり熱く感じられる。長時間このまま放置しておくには不安を感じる温度である。 次に、3DMark03をループモードで30分間連続実行させて、同様に温度を計測した。3DMark03実行中は、常にファンが回った状態となる。この場合、ファンが装着されている側の中央部の表面温度は約37℃、裏面中央部の温度は約36℃とかなり低くなっていた。3DMark03を終了しても、約2分間ファンは回り続けた。ファン停止直後に詳細プロパティの温度設定の項目を開くと、GPUコア温度は40℃、周辺温度は34℃まで低下していた。 しかし、その後また30分程度放置しておくと、フレームの温度は最初と同じ程度まで上昇する。WinFast A300 Ultra TD MyVIVOは、3Dアプリケーション実行時にはファンが回転するため、ビデオチップやビデオカードの温度を低く保つことが可能だが、ファンが停止している状態が長時間続くと、かなり温度が高くなってしまうようだ。
今度は、騒音について検証してみることにした。ただし、騒音計できちんと計測したわけではなく、あくまでも筆者の主観に基づいた判断である。 FX Flowは、まるでドライヤーのような騒音に驚かされたものだが、WinFast A300 Ultra TD MyVIVOのファンも回転時にはかなりの騒音を発する。FX Flowに比べると多少静かだとは思うが、CPUファンや電源ユニットのファンよりもはるかにうるさい。実際の音については、前回のリファレンスカードのレビュー時とほぼ同じ距離から、音声付き動画を撮影してみたので、参考にしてほしい。
WinFast A300 Ultra TD MyVIVOは、「VIVO」(Video-In Video-Outの略)という言葉が付いていることからもわかるように、ビデオ入出力機能を装備していることが特徴の一つである。 付属のVIVOケーブル経由でビデオ(コンポジット出力)端子にテレビなどを接続すると、自動的にそのディスプレイが認識され、Windows起動後にnVIEWのセットアップウィザードが表示される。コンポジット出力経由でテレビに接続した場合、最大1,024×768ドット表示が可能だが、1,024×768ドットでは細かな文字は潰れてしまう。実用的に使えるのは、800×600ドットまでであろう。
ビデオキャプチャ機能を利用するには、付属CD-ROMに収録されている「nVIDIA WDM Driver」を組み込む必要がある。 また、WinFast A300 Ultra TD MyVIVOでは、キャプチャソフトとして「WinFast PVR」が添付されている。WinFast PVRは、画面デザインが独特だが、機能的には特に不満はない。 キャプチャ画質のプロファイルとして、「MPEG-1 通常画質」「MPEG-1 優良画質」「MPEG-1 最高画質」「MPEG-2 通常画質」「MPEG-2 優良画質」「MPEG-2 最高画質」「VCD NTSC」「VCD PAL」「DVD NTSC」「DVD PAL」「Windows Media Video」「未圧縮AVI」が用意されているほか、解像度やビットレートを自由に指定することもできる。 新たにプロファイルを作成する場合、キャプチャ可能な解像度は、160×120/320×240/352×240/352×288/640×480/720×480/720×576/320×480/352×480ドットから選べ、ビットレートは、1~10Mbpsの範囲で指定できる。ビデオコーデックとしては、MPEG-2やMPEG-1のほか、IndeoやDV形式、非圧縮AVIなども選択できる。また、タイムシフト再生機能やPIP(ピクチャーinピクチャー)機能も装備している。 「MPEG-2 最高画質」を選ぶと、解像度は640×480ドット、ビットレートは6Mbpsとなる。今回のテスト環境(Pentium 4 2.40B GHz、Intel E7205、メモリ512MB)では、MPEG-2 最高画質ではたまにコマ落ちが発生した。そこで、解像度はそのままにして、ビットレートを5Mbpsに下げてみたところ、コマ落ちは感じられなくなった。ハードウェアエンコーダを搭載しているわけではないので、CPU負荷は大きいが、高クロックのPentium 4やAthlon XPを利用しているのなら、十分実用的に利用できるだろう。
WinFast A300 Ultra TD MyVIVOは付属ソフトも豊富で、全部で5枚のCD-ROMがバンドルされている。ドライバCD-ROMには、ドライバや「WinFast PVR」のほかに、「3Deep」「Cult3D」「DirectX 8.1/9」「WinFast DVD」「Coloreal Bright」「Coloreal Visual」「Coloreal Embedded」「Colorific/True Internet Color」、各チップセット用のAGPドライバが収録されている。そのほか、「Ulead COOL 3D SE」や「Ulead VideoStudio 6 SE」、ゲームソフトの「Big Mutha Trcukers」「GunMetal」が収録されたCD-ROMが付属している。 そのほか、VIVOケーブルやDVI-VGA変換コネクタ、ビデオケーブル、Sケーブル、電源分岐ケーブルが付属している。
WinFast A300 Ultra TD MyVIVOは、独自の冷却機構やビデオ入出力機能を搭載したハイエンドビデオカードであり、その性能は現時点でトップクラスである。 ただし、ブラケットは1スロットしか占有しないといっても、事実上隣のスロットは使用できず、ファンが回転していない状態が長く続くと、ビデオカード全体の温度がかなり上昇してしまうなど、不安な部分もある。 騒音についてもFX Flowよりは静かだが、とても静音を語れるレベルではない。ライバルのRADEON 9800 PROは、GeForce FX 5800 Ultraほどの大がかりな冷却機構を必要としないので、コンシューマにはこちらのほうが好まれそうだ。 もちろん、静音性よりも機能や性能を重視するというのなら、WinFast A300 Ultra TD MyVIVOを選ぶという選択肢もありうるだろう。 □関連記事 (2003年4月18日)
[Reported by 石井英男@ユービック・コンピューティング]
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