期待は大きかったPHS端末「DDIポケット AH-J3002V」



■沢山買い物をしていると、必ず出会うハズレもの

日本無線「AH-J3002V」。PHSとしては画面も広い。筆者がこれまで使ってきた端末とはボタンのレイアウトが異なる部分が多いため、購入一週間経過したいまでもなじめないままだ

 筆者はIT関連の記事を書いたりしている商売柄、パソコン関係商品、通信関係商品を自腹で買ってじっくり試してみることが多い。この連載も、その中から読者が興味をもっていそうな商品やサービス、もしくはあまり知られていない有益なモノをピックアップして紹介している。

 いろいろな商品やサービスを自腹で購入し、一ユーザーの立場になってみると、実際には満足できないモノが意外と多く存在する。

 製品やサービスを購入するときは、製品カタログを熟読したり、メーカーやベンターのホームページを参照して、購入後の使い方や効果をある程度イメージするものだが、実際に購入して使ってみると、抱いていたイメージと現実のギャップを感じてしまうのが「満足できない」原因になっているのではないだろうか。

 このギャップが大きかった製品やサービス、いわゆる「ハズレ」に出会う確率が高くなる、ある種の条件のようなものが存在する。その中でも比較的ハズレ度が高いのが新製品だ。

 筆者が製品を購入するときには、周りのライター仲間やインターネット上のBBSなどで、実際に購入したユーザーの感想やレビューなどをチェックして、あらかじめアタリなのかハズレなのかを予想することが多い。

 しかし、新製品となるとユーザーも少なく、発売日にワクワクしながら購入してみたら、自分が「人柱」となってしまったことも少なくない。新製品は購入前の期待も大きいだけに、不具合や初期不良に当たってしまうと、その反動が大きく、ハズレ度がより高く(深く?)なってしまうわけだ。

 今回紹介するのは、DDIポケットの新サービス「Air H" PHONE」に対応した日本無線の新端末「AH-J3002V」である。前置きを読んでもらえば御想像いただけると思うが、今のところ、筆者にとっては最近稀に見るハズレ度の高い買い物となってしまった商品だ。

■筆者にとってのPHS端末の位置づけ

パナソニック「KX-HV210」

 筆者は新しいモノ好きということもあってか、複数の携帯端末を持っている。いま現在は、NTTドコモ「P504is」、AU「C3003P」、DDIポケット「KX-HV210」、DDIポケット「AH-J3002V」の4つである。中でもDDIポケットの端末は、屋外でのメール送受信端末という位置付けで利用している。

 DDIポケット「KX-HV210」を外出先でのメール端末として使い始めたいきさつについては、以前の記事を参照してもらいたい。DDIポケットの「エッジeメール」は、他の携帯端末やPHSと比べると、端末単体で扱えるメールの文字数が多いこと、オプション料金を支払えばメールの送受信が制限なくできるという大きなメリットがある。

 出かける際には、なるべく持ち物を少なくしたい。そのため、メールチェックくらいは携帯端末でできるように、仕事用のメールアドレス宛てのメールを、携帯端末宛に転送している。ただ、ほとんどの携帯端末では、対応文字数が少ないため、転送しても肝心のメールの内容が途切れてしまい、意味をなさないのだ。

 その点、「エッジeメール」に関しては、文字数制限が最大10,000文字と多い。長文のメールマガジンなど、一部のメールを除けば、ほとんどの場合でメールの内容が途切れることなく読むことができるのだ。

 DDIポケット「KX-HV210」を使ってきて、メールチェック用の端末としては概ね満足している。ただ、操作時のレスポンスの遅さと、Webブラウザが搭載されていない点が不満であった。それでも、定額でエッジeメールが利用できるサービスに対応した端末は、つい先日まで「KX-HV210」しかなく、他の機種を検討するといったことすらできない状態だった。

 そんな中、今年2月末頃に筆者が抱えてる不満点を解消した仕様の端末が発表になった。それが日本無線の「AH-J3001V/3002V」である。

■期待の日本無線「AH-J3001V/3002V」とは?

 AH-J3001V/3002Vに関しての詳しいスペックは、DDIポケット「Air H" PHONE」のページや、メーカーである日本無線のAH-J3001V/3002Vのページで参照してもらいたい。

 AH-J3001VとAH-J3002Vのほとんどの仕様は同じで、唯一違うのが背面の小さな液晶の有無である。もちろんデザインや色なども異なるが、基本仕様としては、ほとんど同じ端末と言っていいだろう。

 この端末に筆者が興味を持ったのは、全角10,000文字のメールの受信が定額で可能なことや、Compact HTMLに対応した株式会社ACCESSのWebブラウザ「Compact NetFront」が搭載されていること、日立製のアプリケーションチップセット「SH-Mobile」を採用しているため、高速動作が期待できるという点だ。

 それ以外にも、一般的なUSBケーブルでパソコンと接続して、プロバイダへのダイヤルアップ接続ができるところや、一般的なプロバイダのメールサーバーにアクセスして、メールの送受信が直接端末だけでできる点なども魅力に感じた。

 ただ、データ通信に関しては、64kbpsのPIAFS方式や32kbpsのパケット通信にのみ対応し、128kbpsのパケット通信はサポート外となっているが、筆者にはあまり関係のないことなので気にはならなかった。

 発売予定が4月1日ということで、3月末頃に店頭で予約を申し込んだ。念のため、KX-HV210は引き続き利用するため、新端末を新規で申し込み、2台を併用して様子をみることにした。

 また、DDIポケットでは、特定の料金プランを選択したユーザーに対して、6月末までAirH"PHONEセンター利用時のパケット料金が無料になるキャンペーンも行なっている。

■分かりにくい料金プラン

 4月1日になり、早速販売店に行き端末を受け取った。新宿の量販店など一部店舗では希望する電話番号の下4桁を選べる期間限定のサービスを行なっていることを知っていたが、筆者が端末を購入した店舗では、そういうサービスがあることは説明されなかった。

 DDIポケットの端末は、購入時点では電話番号が登録されておらず、販売店で提示されたいくつかの番号の中から好きなものを選択し、それを端末に登録する仕組みになっている。希望の番号を選べるサービスは受けられなかったものの、提示された5つの番号の中に、幸運にも憶えやすい組み合わせがあったので、それを選択した。

 購入時には料金プランを選択しなければならないのだが、6月末までAirH"PHONEセンター利用時のパケット料金が無料になるキャンペーンを受けられるようなブランをとりあえず選択した。

 申し込んだのは1,200円の無料通話分が含まれた「スーパーパックS」に「メール放題」のオプションを付けたもの。端末が気に入らなかった場合に、数カ月で解約する可能性もあるため、年間契約割引は申し込まなかった。

 実は、事前にどのようなプランがあるのか、DDIポケットのページで調べてみたものの、どのプランが自分の使い方に適合するのか、よく分からなかった。パケット料金が無料になるキャンペーンがなかったら、何を選べばいいのかとても迷ってしまっていただろう。

 DDIポケットのホームページを何度となく読み返しているうちに、どのプランでどのオプションを付けた場合には、何が課金対象となり、パケットあたりの金額は幾らになるのかということが、やっと分かるようになった。

 データ通信を行なう場合、PIAFSと32Kパケット方式でも異なるし、AirH"PHONEセンター経由なのか、自分で契約しているプロバイダ経由なのかなど、細かな条件により、料金が大きく異なってくるのだ。

 料金体系を熟知していないと、無料通話部分に含まれると思っていた通信が、実は無料の対象になっていなかった、などのトラブルを招く可能性が高い。実際、販売店で契約担当者と話をさせてもらったが、契約できないプランとオプションの組み合わせを提案されたり、何に対して課金されるかといったことが、あまり分かっていなかったようだ。

■実際に手にしたAH-J3002Vの印象

 購入手続き終了後、電話番号の登録などに40分後ほどかかったあと、ようやく端末を受け取った。

 さっそく使い始めたが、まず最初に感じたのが液晶の見にくさ。最近の携帯端末同様に液晶は2型サイズが確保されているものの、SFカラー液晶のため、バックライトが光らない状態だと、明るいところでも見づらい。

 液晶の見易さは、個人の受け取り方で左右されてしまうので、気になる方は実機で確認してもらうしかないが、ゲームボーイカラーよりは見やすい、と言えば参考になるだろうか。

 当たり前であるが、視野角も狭く、高画質液晶を搭載した携帯電話の液晶のイメージを当てはめてしまうと、筆者のようにギャップを感じてしまうだろう。

 端末の物理的な厚さは、それほど気にならない。重さがバッテリ込みで約96gと、携帯電話などと比べて軽いことが影響しているかもしれない。ボタンの操作に関しては、もうちょっとボディから飛び出していると押しやすいのだが、これも使っていくうちに慣れてしまう程度の問題だ。ただ、ボタン操作をするとギシギシといった「キシみ」が気にはなるが、端末の価格を考えるといたしかたないところか。

 早速、その場でオンラインサインアップした。このオンラインサインアップという手続きは、「pdx.ne.jp」ドメインのメールアドレスを新規に取得するためだ。オンラインサインアップを終えると、AH-J3002Vを使って、メールの送受信ができるようになる。

 まずは、簡単なメールを自分のアドレスに送ってみた。ボタンに割り当てられた文字や機能に慣れてないせいか、ちょっと入力に戸惑うものの、操作に対しての反応は良く、「SH-Mobile」を採用している効果を感じることができる。

 KX-HV210の操作では、端末の反応の遅さが気になったものだが、このAH-J3002Vに関しては気にならない。操作に慣れているせいか、NTTドコモのP504isまでの良い反応ではないが、ストレスを感じることはない。この時点までは、筆者がイメージしていたAH-J3002そのものであった。

 次にブラウザを使って、コンテンツを見ることにした。端末のメニューの中にある「オフィシャルメニュー」をクリックして、CLUB AirH"のページに入ると、とりあえず16のサイトが登録されている。

 新規にスタートしたサービスなので、現時点では登録サイトが少ないため、全てのサイトをざっくりと見てみた。電波状態が良く、移動しない環境で試してみたが、多少もたついた感じを受けた。筆者が持っているNTTドコモのP504isのほうが、さくさくとページを表示ができる印象だ。

 AirH"PHONEセンターに接続する場合、32Kパケット方式で通信を行なうが、28.8Kのiモード、32KでもPIAFSの通信と比べると多少遅さを感じる。ただ、携帯端末でのブラウズなので、それほど情報量の多いページを表示することはなく、気にすることはないだろう。

 ただ、AH-J3002Vの場合、ページ戻り送りのボタンがあるため、ブラウズしているときの操作性は悪くない。この端末でアクセスできるサイトのブックマークが充実していけば、とても役立つツールになりそうである。

 ちなみに、端末の設定を変更すれば、AirH"PHONEセンターでなく、自分が契約しているプロバイダを利用することもできる。ただ、AirH"PHONEセンターに接続していないと、pdx.ne.jpドメインのメールの送受信はできないという制限がある。

ブラウザやメーラは、カーソルボタンとその左右にあるボタンで操作できる。ボタンを押したときの、端末の反応も早い AH-J3002Vにはサブ液晶も搭載されている。サブ液晶には電波状態やメール、モードなどのアイコンが表示される他に、アナログ式時計を表示することもできる。その他、メールを受信したり、電話の着信時には好きな色で光らせることもできる

■使っていくうちに、いろいろと気になるところが……メール編

 これまでの話は、端末を購入し自宅に帰るまでの間、とりあえず触ってみた感想だ。自宅に戻ると充電器に端末を置きフル充電した。充電している間は、辞書のように厚いマニュアルに目を通すことにした。さすがに全部に目を通すことができないので、目次から必要だと思われる部分をかいつまんで読んでいった。

 そのあと、仕事に関係する自分宛のメールを転送するように、プロバイダの設定を行なった。転送するメールの種類や条件は、これまで使ってきたKX-HV210とまったく同じ内容だ。設定が終わってしばらくすると今回新たに取得したpdx.ne.jpドメインのメールアドレスにメールが転送され始めた。このアドレスにメールが届くと、AH-J3002Vが自動的に受信を開始し、端末自体にメールが取り込まれる。取り込まれた時点で、メールサーバーのメールは削除される仕組みだ。

 しばらくその状態のままにしておいたら、AH-J3002Vに4、5件メールが届いていた。メールを確認しつつ、文字サイズなどを調整し、メールチェック用携帯端末として使えることを確認した。

 メールの一覧から、カーソルボタンの上や下を押し、希望のメールを選択、円形のカーソルボタンの真ん中にある決定ボタンを押せばメールの内容を読むことができる。この状態で、カーソルボタンの左や右を押せば、次のメールを表示したり、前のメールに戻ることができる。カーソルボタンの左右にあるページアップ/ダウンのボタンによりメールをページ単位で送ったり、戻ったりすることができる。

 次のメールを読むためにわざわざメール一覧に戻る必要がないため、読み飛ばしながらメールをチェックするには都合が良い。

 表示速度はKX-HV210に比べて格段に速く、快適だ。無事メールが転送されることが確認できたため、しばらくはKX-HV210を持ち歩かずに、AH-J3002Vだけを携帯することにした。しらばく端末を操作してみた後で再度充電器に置き、その日は寝ることにした。充電器を置いている場所は、DDIポケットの端末には電波状態が悪く、メールの自動受信などはできない。

 このAH-J3002Vにはメールに絵文字を使うことができる。AH-J3002Vで用意されている絵文字は2種類ある。DDIポケットの端末で利用できる「絵文字」と「Web入力用絵文字」である。

 いわゆる絵文字は携帯電話、PHS会社間で統一されておらず、自分の端末と違う会社の携帯端末を使っている相手に絵文字を使ってメールしても、同じキャラクタが表示されないということは良く知られている。「絵文字」のほうはDDIポケットの独自キャラクタであるが、「Web入力用絵文字」のほうは、iモードの絵文字と同じ文字コード、同じキャラクタの体系になっている。

 そのため、AH-J3002Vで「Web入力用絵文字」を使ったメールをiモード端末の相手に送っても、そのまま表示されて便利だ。しかし、逆に絵文字を使ったメールをiモード端末から、このAH-J3002Vに送っても絵文字は残念ながら表示されない。それはiモード側のサーバーで、docomo.ne.jpドメイン以外へのメールで使われている絵文字は全て「=」に変換されてしまうからである。

 とりあえずiモードユーザー向けに送信だけであるが絵文字を使ってメールを送ることができるのはありがたい仕様だ。

■しばらく使っていると、メール関係の致命的なトラブルが数件発生

 翌日、端末を持ち、電波状態の良い場所に行くと、メールの自動受信が始まった。しばらくそのままにしておき、再度端末を確認すると受信中の画面が表示されていたため、もうしばらく時間をおくことにした。だが、10分ほど過ぎてから端末を覗いてみると、まだ受信中の画面のままだった。

 何かおかしいと感じ切断ボタンを押したりしたが反応がない。ボタンを押したり、長押ししたり、いろいろな操作をしてみたが、何も反応しない状態になっている。電源も切れない状態だ。しかたないので、一旦電池を抜いて、再起動させた。その後、手動でメール受信をしてみたが、特に問題はなく受信が終了し、問題のメールも確認してみたが特におかしい部分はなかった。

 その後もこのメール受信時の端末がフリーズする現象は、たびたび発生している。そのつど電池を抜いて対処しているので実害はないが、どうしたものだろうか。

 4月5日の土曜の朝、端末を覗いてみたところ、サーバーにメールが届いているとの表示。すぐさま手動で受信を試みた。すると、メール受信中の画面が表示され、受信を始めると途中でメールが受信できないというエラーになり、端末にメールを取り込めない現象が発生した。

 電波状態でも悪いのだろうと、それほど気にせずにいたところ、外出先の電波状態のいい場所でも同じ現象が再現されてしまった。何度試してもメールは取り込めない。もし、メール放題の料金オプションをつけていなかったら、その度に課金されているはずである。

 どうしても原因が分からないので、DDIポケットに問い合わせしようと思ったものの、既に土曜の17時を過ぎており、問い合わせできなかった。

 その週末も何度となく受信を試みたが、結果としてはダメだった。ほかのユーザーにも同じようなトラブルが起こっていないか、インターネットを検索してみたところ、何人か同じような問題に遭遇しているようであった。

 全く同じトラブルではないが、うまく受信できない場合でも、受信を失敗しているメールさえクリアできれば、他のメールは正常に受信できたとの情報もあった。筆者も、受信でつまずいているメールが受信できないか何度もトライしたが、うまくいかなかった。

 以前のDDIポケットの端末であれば、サーバー側のメールを削除するメニューがあったのだが、このAH-J3002Vには用意されていないため、原因のメールを削除することもできず、困ったまま月曜の朝を迎えた。

 月曜になりDDIポケットに問い合わせしたところ、画面で受信途中まで進むのであれば、DDIポケット側の問題でないため、端末メーカに問い合わせてくれと言う。あまり時間がなかったため、サーバー側のメールを削除してくれないかと依頼してみると、検討しますとのことで一旦電話を切った。

 しばらくすると、折り返し電話が入り、やはりDDIポケット側でサーバー側のメールは削除するわけにいかないという返事だった。この説明を受けたときには、八方塞がりな気分になったものの、DDIポケット側から一つの提案があった。

 それは、AH-J3002Vのメールの設定で受信制限の機能があるので、その設定を0行にして、受信を行なってみてくださいというものだった。工場出荷状態では、受信制限600行という設定になっていたが、筆者はその受信制限をしない設定に変更していた。

 提案通り、受信設定を0行にしたところ、メール受信は正常に行なわれた。ただし、制限行を0にして、受信するとメールヘッダーの部分だけが受信され、メールの内容は何もない状態になる。メールの件名と送信元、送信日時は分かるが、肝心のメールの内容は消えてしまう。

 今回は、メールを消すこと自体は、問題を解決する手段として仕方ないと、諦めていたので、気にはならなかった。逆に、こちらの希望に対して的確なアドバイスをしてくれた、DDIポケットのサポートには非常に感謝している。

 その後、受信制御を効かない設定に戻した。その日のウチは、前述のフリーズの件も含めて特にトラブルは発生しなかった。自宅に戻ってから、どのようなメールが原因だったのかを調べるため、パソコンで同じメールを開いてみたが、特に問題となりそうな記述があるわけでもなく、原因不明なままだ。

 ここでメールのトラブルが終わったと思ったら、新たなトラブルが確認できた。そのトラブルとはメールの文字化けである。

 携帯端末で見たところ、判読不能な文字列が並んでいたため、初めはHTML形式のメールだろうと思っていたのだが、同じメールをパソコンで確認してみると普通のテキスト形式のメールだったのだ。要するに文字化けを起こしていたのだ。

 メールの転送時におかしくなってしまったのか、漢字コードの処理がうまく行っていないのか、はっきり分からないが、DDIポケットのサービス自体も含め、AH-J3002Vのメール端末としての完成度は、低いとしか表現できない。品質の低い製品を出荷している日本無線、その端末を使ってサービスを開始しているDDIポケットの企業姿勢に疑問を感じるのに十分なトラブルである。

■AH-J3002Vで気になったところ……ブラウザ編

 AH-J3002Vのトラブルはメール機能だけにとどまらない。ブラウザの操作中にもおかしな動作が確認できた。

 AH-J3002Vに搭載されたブラウザはACCESS製「Compact Netfront 2.0」だが、Compact HTMLや、128bitのSSL通信、Cookieに対応している。要するにインターネットの一部のサイトやiモード向けに作成されたページを閲覧できるというブラウザだ。

 実際には、ブラウザからサイト側に送られる情報によって、ページの制御をしているところもあるために、全てのページを見ることができるということではない。

 ACCESSのブラウザは、いろいろなPDA、携帯電話などに採用されているし、「Compact Netfront」に関しても、アステルのPHS端末「AJ-51」に搭載された実績があり、AH-J3002Vを使ったホームページ閲覧も、ある程度は枯れた技術が採用され、問題も少ないと筆者は予想していた。しかし、実際にAH-J3002Vのブラウザを使ってみると、いくつか気になる点が見受けられる。

 筆者がiモード端末に登録している検索エンジンやポータルサイトなど、いくつかのURLを、AH-J3002Vで表示させてみた。

 キャンペーン期間中なので、AirH"PHONEセンター経由で各サイトにアクセスしたときのパケット料金は無料だ。そのようなこともあって、いろんなサイトをAH-J3002Vでアクセスしてみた。すると、頻繁に「サーバーが見つかりません」とエラーメッセージが表示され、目的のページが閲覧できない状態になる。

 しばらくは電波状態が悪いのかと思っていたが、そうでもないようなのだ。電波状態のいい場所で、操作をしても同じ現象が確認できる。それは電波状態が悪く表示できない場合には、「サーバーが見つかりません」とエラーが表示されても、そのページのURLを確認すると正しいアドレスが表示されるのだが、頻発するエラーのときにURLを確認しても「HTTP:///」と表示され、どうもリンク先のURLをうまく取得できていないようなのだ。いわゆる深いところにあるページをAH-J3002Vで見ることは難しいようだ。もしかするとブラウザ自身の抱える問題なのかもしれない。

 また、ページを表示している状態でブックマークに登録すると、稀に端末がフリーズすることがある。ボタン操作で回復することもあるが、電池を抜いて再起動しないと復旧できないこともあった。

 さらに、一度だけしか発生していないが、いろいろなページを閲覧していた時に、突然端末が再起動したことがあった。その後、再発していないが、再発するようであればハード障害や初期不良として検討しなくてはいけないだろう。

■AH-J3002Vで気になったところ……その他編

 メーカー側からみると問題ではなく仕様だと判断されるかもしれないが、いくつかのトラブルに遭遇した。

 まずは、端末を折りたたんだときに、液晶画面とボタンが触れてしまうことだ。同じような現象はNTTドコモの初期のSo503iにも確認できたが、その後、良品と回収交換することで問題は解決された。

 So503iの回収交換時は、ほかにも問題があり、必ずしも液晶画面とボタンが触れる不具合のためだけに行なわれたわけではないが、DDIポケットでも対策を考えて欲しいものだ。

 とりあえず、筆者は液晶部分に保護シールを貼ることで対処した。AH-J3002V用の保護シールは販売されていないため、同じような大きさのNTTドコモD251i用の製品を流用した。

 ボタン操作をするとギシギシとキシむ感じがすることは前にも触れたが、強度的に不安を感じる場面がある。例えば、端末を折り曲げた状態で、軽く押さえてみると端末の電源が切れてしまうことがあるのだ。押さえた状態が正常な状態とは言えないが、もうちょっと筐体の強度があるといいのではないだろうか。

 これもトラブルとまではいかないが、日本語入力時に思ったように変換されないことがある。AH-J3002Vには、日本語入力補助としてCompact VJEが搭載されている。

 KX-HV210にも同じCompact VJEが搭載されているのだが、KX-HV210ではうまく変換されていた単語が、AH-J3002Vでは変換されないという場面に何度も遭遇した。それぞれの端末にCompact VJEのどのバージョンが搭載されいるかはわからないが、ここまで日本語入力効率が異なるのは、搭載されている辞書の違いが原因ではないかと簡単に想像できる。有料でも構わないので、もっと変換効率のいい辞書ファイルが提供されるとありがたい。

 文字入力にも、これまでの機種とは大きく異なる部分がある。例えば、ひらがなを入力するときに、8ボタンを押していくと、“や/ゆ/よ/ゃ/ゅ/ょ”と変化する端末が多いが、AH-J3002Vの場合には“や/ゆ/よ”と変化する。“ゃ/ゅ/ょ”を入力するときには、左上端のボタンを押して[や]を[ゃ]に変換する必要がある。アルファベットを入力するときにも、これと同じような感覚で大文字なり小文字なりの入力モードにしておいて、a/b/cなりA/B/Cと入力することになる。

■現在のところ、完成度の低い端末と判断せざるを得ない

 通話以外の機能を中心に紹介してきたが、通話に関しては特に問題を感じない。アンテナの感度に関しても、移動中でなければKX-HV210と大きく異なるようなことはない。電話帳に登録できる項目には、住所などはないものの、2つの電話番号や2つのメールアドレス、グループ、指定着信音など基本的な項目は用意されており、シンプルではあるが、困ることもないだろう。

 ただ、筆者が購入したAH-J3002Vは、情報端末としてはありとあらゆる問題が発生している。インターネット上のBBSなどをチェックしてみると、筆者のところで発生した問題のいくつかは他のユーザーでも起こっているようである。発売直後の製品には、ちょっとしたトラブルはつきものではあるが、AH-J3002Vに関してはDDIポケットや日本無線のホームページでアピールされている、重要な機能で起こっている問題であり、企業としての姿勢に疑問を感じる。

 トラブルが発生しているユーザーの割合を知ることはできないため、不良製品とまでは判断しないが、筆者にとっての「ハズれ」端末であったことには変わりはない。もしも、製造やサービスが起因している問題であれば、すぐにでも対応してもらいたいものばかりである。

 これまで遭遇したトラブルを紹介してきたが、AH-J3002Vには、おもしろい部分もある。AH-J3002Vは一般に流通しているUSBケーブルで、パソコンと接続することができる。もちろん、パソコンと接続して通信を行なうこともできるのだが、添付のファイル転送ユーティリティを使えばAH-J3002V内のファイルを直接操作することができる。MIDIデータや画像データをパソコンから直接転送することもできるし、仕様は公開されていないがパソコンで編集した電話帳を転送して使うといったことも可能だ。

 公開された充実した仕様や、以前はアステルの「AJ-33(日本無線製)」を使っていたこともあり、筆者はAH-J3002Vに対しては大きな期待を持っていた。実際に操作してみると、操作自体の反応も速く、ハード自体の素性がいいだけに、今回遭遇したトラブルは非常に残念であった。

 今後、手元のAH-J3002Vをどのように使っていくかは悩みどころだが、魅力を感じている端末だけに、ここ数カ月は利用していくつもりだ。ハードウェア交換になるのか、ファームウェアの更新なのかはわからないが、何かしらの対応策が公開されることを期待したい。

 できれば、KX-HV210で行なっていたように、DDIポケットサービスカウンターやコミニュケーションプラザに出向かなくとも、ユーザー側でファームウェアのバージョンアップができるとありがたいところだ。

 以前、AJ-33を持っていたときには、頻繁にファームウェアが更新される上、アステルプラザやサービスステーションにいちいち持ち込む必要があった。もちろん、ファームウェアが更新されたことは公開されず、ユーザー間の口コミやインターネットなどで情報交換されていた。

 ファームウェア更新の際にメーカーに要望したいのが、接続する先としてAirH"PHONEセンターとその他プロバイダを登録でき、簡単に切り替える機能を付加してもらいたい。また、搭載されている辞書の見直しも同時にお願いしたい。もちろん、今後予定されている自営標準2版への対応もなるべく早く実現してもらいたい。

 今後は、まず筆者のところで起こっている問題を、一ユーザーの立場として、DDIポケットや日本無線に連絡し、対処をお願いするつもりだ。もしも読者のなかでAH-J3001V/3002Vのユーザーが居れば、ちょっとしたトラブルでもDDIポケットや日本無線に是非フィードバックして頂きたい。


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(2003年4月8日)

[Text by 一ヶ谷兼乃]


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